傘をもたない人。 2017年6月13日
ランチをとるために外出したとき、その人は言ったのです。
「傘さすの嫌いなんだ」
…え?
唐突な断言です。そんな考え方、あるんですね。宣言どおり、彼女は小雨の中、普通に傘なしで歩いていきます。なんだか新鮮です。
元来ナマケモノな私は、傘を持つのがメンドクサイのですぐに影響されます。会社帰りに多少雨が降っていても、なんとか傘なしで帰ろうと試みます。
「いつも使っている駅じゃなければいける」
屋根のある通路を使い、ビルからビルへ渡り歩いていくとあっという間に駅の通路へ。意外と簡単に実現できちゃいます。さすが新宿なのです。
いや、都心だからこそ、傘がなくても意外とどこでも行けるんじゃないか? そう思ったら違う場所でも早速トライです。遠回りしてでも地下通路を探し、地上に出たら、あっちのお店、こっちのお店へと雨宿りしながら移動します。いつもは立ち寄らない場所に入ったりして。たまには「ひゃっ」と言いながら、走って移動も楽しいものです。あんまり雨がヒドイ時は、ゆっくりお茶でもして贅沢な時間を過ごし…。
あれれ、なんだか傘を持たないだけで新しい時間の過ごし方を発見してる? さすがに、雨の中を平常心で歩くのは無理ですが、あの一言だけでだいぶ触発されてしまったようです。
どうやら、絵本の中のてんとうちゃんも、雨の日にかたつむりくんと過ごしたことで何かが変わったようですよ?
かたつむりくん
雨がふって、葉っぱの下であまやどり。退屈していたてんとうちゃんのところにやってきたのはかたつむりくん。
「あ、かたつむりくん!のせて」
「ぬっふん。のせてあげても いいのよ〜ん」
かたつむりくんの進み方は驚くほどゆっくり。
「ねえ、もっと はやく すすんでよ」
だけどかたつむりくんは、ぬるるん るん るーん。
「ぬふふ。ぼくは、いつでも ゆっくりなのよ〜ん」
どうやら、かたつむりくんのペースがあるみたい。
ゆっくりゆっくり、ぬるるん るーんの彼だけど、意外と進む道は勝手気ままな回り道。危険な道だってなんのその。てんとうちゃんの知らない角度から見えてくる景色は何だかひと味違うのです。
「やってみなくちゃ わからないのよ〜ん。びっくりも たのもしいのよ〜ん。」
むむ、なんだか深いぞかたつむりくん。
ぬるるん時間にすっかり慣れてきた頃、かたつむりくんはてんとうちゃんに大事なことを教えてくれます。
「ほおら、ね!」
読み終わった後に思うのは、自分のこと。毎日慌てていて、何か大事なことを見逃していないかな。もしそうだったとしたら、もったいない! なんだかもうちょっとだけ自分時間を大切にしてみたくなるのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
なんと言っても刺さるのは、かたつむりくんのこんな言葉。
「じぶんのカラにこもって、ゆっくり待つじかんも だいじなのよ~ん」
新しい発見をするためには、自分の殻をやぶるのも、自分の殻にこもるのも、実は同じくらい大事なことなのかもしれませんね。
のんびりゆっくり、かたつむり絵本。
磯崎園子 (絵本ナビ編集長)
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