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「新宿絵本日記」

あと10分あったら、なにができる? 2018年3月26日

 

「はっ……、あと10分。」

 

これは、親子で寝坊したことに気が付き、時計を確認した時のつぶやき。次の瞬間には、もう布団をはねのけ飛び起き、息子を揺り起こし、台所へ走ります。「寝坊、ごめん!」と短く冷静に大きな声で告げながら、着替えと朝ごはんと洗面を全て同時に進行させ、10分後には奇跡的に息子を家から放り出し、後ろから「いってらっしゃーい」と声をかけているのです。

 

そして思います。
「なんという10分間だ」

 

自分も支度しなくちゃいけないのに、自らの機敏さを思い返し、充足感にどっぷり浸っているうちにあっという間にこれ以上ないくらい無駄な10分が過ぎていきます。

 


10分って、短いようで、意外と長い? 長いようで、やっぱり短い?
こんな朝の出来事を思い出しながら、会社で隣の人に聞いてみます。
たった今、自由な10分があったら何をする?

 

「うーん、ここにいるなら仕事をするかな」
「本を読むには短いから…絵本を読むかな」

 

やっぱり優秀なスタッフが揃っているようです。

 

「10分ですか?お茶を買いに行きます」
「寝ます」

 

まあ、そうですよね。

 

「外に出る」
「旅行に行く!」(だから10分だってば)

「瞑想する」

 

だんだんとぼんやりした答えになっていきます。

 

「ぼーっとする」

 

正解!
でも、この絵本の中に登場するハムスター達には驚かされます。だって、たった10分の間でツアーを組んで家族でバカンスを存分に楽しんでしまうんですから…

あと10ぷんでねるじかん

あと10ぷんでねるじかん

「あと10ぷんでねるじかーん!」
これは、リビングにいるパパの声。
さあ、したくをしなきゃ。
だけど…ぼくの部屋ではなんだか大変なことが起き始めた!?

やってきたのは、ハムスターの大家族。
くつろいだり、おもちゃで遊んだり、それはもう大はしゃぎ。
おきがえ、はみがき、寝る前の読書、やることは沢山あるのに。
「あと5ふんでねるじかーん」
すると、さらにハムスターたちが大勢やってきて…。

『おやすみ、ゴリラくん』『いじわるブッチー』なども大人気、ペギー・ラスマンのおやすみ絵本は、ドキドキでハチャメチャ。ゆっくり寝るどころではありません。ストーリーはおやすみ時間までのカウントダウンのみ。ところが絵本の中では、静かになるどころか、どんどんにぎやかになり、いつの間にか部屋の中はぎゅうぎゅうなんですから。ああ、寝るまであと1分しかない~!!

ベッドに入って寝るまでの10分。これは長いのでしょうか、短いのでしょうか。確かにやるべきことを行って、まっすぐにベッドに入り、静かに電気を消せば充分間にあう時間です。こんな大騒ぎをしてたら10分なんて全然足りないはず。だけど…本当にそうでしょうか? 絵本の中のぼくは、ちゃーんと眠りに入っているんです。子どもってそういうものなのかもしれませんよね。

おやすみ前に読むのか、昼間に読むのか。それは子どもたちの自由です。でも、どのページにもたくさんの遊びとストーリーが隠れているので、その辺りは覚悟の上で、ね。…あ、こんなところに『おやすみ、ゴリラくん』のおじさんの家が!?

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

「ねるまでの10ぷんりょこう」、なんて素敵な響きなのでしょう。私も今度、仕事中に「宙ぶらりんの10ぷんツアー」っていうのを企画・実行してみようかな、なんてね。怒られちゃいますね。
 

磯崎 園子(絵本ナビ編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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