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「新宿絵本日記」

いやだいやだのその先に…。 2018年4月15日

 

「あーいやだいやだ…」

 

仕事中、心の中でつぶやきながらふと思い出したのは、デパートのエスカレーターの前で「いやだ!いやだ!」とかれこれ15分以上も泣き叫び続けていた2歳の頃の息子のこと。

 

どうしてそうなったかと言えば、エスカレーターの始まりの階段部分に自分の足で乗りたかった、ということなのです。それを察知できずに、ひょいっと抱っこしてしまったという訳。そうなるともう手をつけられない。もう一回下まで降りて行ってやり直ししたってだめ。「乗りたかった」のであって、もう過去は取り戻せないのです。やり直すのもいやだ!ここから離れるのもいやだ!まわりの大人が出来ることは、泣き止むのを待つ、のみ。途方に暮れたものです。

 

だけど、こうやって振り返ってみると気がつきます。「自分でやりたかったのに、できなかった」。いやだいやだの原因って…結構前向き? 


では私の場合は?
例えば、このまま会議室でバンッと机を叩きながら言ってみます。
「いやだいやだいやだー、この仕事やりたくないーーー!」
すると、まわりの人たちは驚くでしょう…… 何を言ってるの、この人は?って。言いっぱなしで終わらせてはくれません。大人は自分で回収していかなければならないのです。

 

・なぜ「いや」なのか。
・では、どうしたいのか。
・それをするためにはどういう方法があるのか。
・それは、より良い方向に向いているのか。

 

間髪入れずにとうとうと述べていかなければなりません。でないと、みんなそっぽを向いてしまいますからね。とりあえず、理屈が大事なのです。

 

あー、いやだいやだ。そんな理屈っぽい大人なんて放っておいて。ルルちゃんは思う存分言えばいいのです。いやだいやだいやだーーー!

いやだいやだ

いやだいやだ

あらあら、ルルちゃん。
なんだかとっても怒っている顔。
何でもすぐに「いやだ いやだ」って言うのです。
手を広げて、足を広げて、「いやだ いやだ」。
それなら…

「かあさんも、いやだって言うわ」
大変!ルルちゃん。抱っこもしてくれないって。
それどころか、美味しいおやつも、おひさまも、大事なくまちゃんまで…「いやだ」って言いだしちゃった!!

毎日、子どもに「いやだ」って言われているママやパパが読めばクスっと笑ってしまいそうなこのお話。まさにいやいや期のルルちゃんは「困ったちゃん」。だけど、とっても愛おしいのです。それでは、「いやだ」って言っている最中の当人がこの絵本を読むと、どうなるのかしら? 意外とケラケラ笑っているのかもしれません。だって、滑稽ですものね。

わかっていても、「いやなものは、いや」。そんなどうにもならない子どもたちの気持ちを、ユーモラスに愛らしく描きだしているのはせなけいこさん。『ねないこだれだ』でもお馴染みの、せなさんの貼り絵の技法は、素朴で、それでも表情がはっきりと伝わってきて、本当にお話にぴったり。きっとママやパパたちの記憶の中にも、小さい頃読んでもらった記憶が残っている方は多いことでしょうね。合わせて「いやだいやだのえほん」シリーズもおすすめです。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

https://www.ehonnavi.net/ehon/217/%E3%81%84%E3%82%84%E3%81%A0%E3%81%84%E3%82%84%E3%81%A0/

「ルルちゃんはどうするの?」
そこで終わってしまうのが面白いところ。せなさんの絵本には余韻がたっぷりなのです。実際にみんなはどうするのでしょう。

 

いやなものは、いや!いやだ、けど我慢。なんでいやなんだっけ? いやだ…よね?そう思わない?

 

…いやだいやだのその後の話。考えてみれば、対応の仕方こそがその人の個性であり、魅力につながっていくのかもしれません。この感情、結構大切にした方がいい気がしてきます。

 

というわけで、やっぱり私も続けてみようかな。
「いやだいやだいやだーーー!!」

磯崎 園子(絵本ナビ編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
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