【編集長の新宿絵本日記】自分の想像力に負けるな! 2020年3月22日 『こわーいはなし』
今でこそ楽観、傲慢、ご都合主義な私だけれど、実はかなりの怖がり。
普段は何も気にしていない顔をして。
やることをやっていれば慌てることはない、と発言し。
だからといって楽しむことはやめたくない、と豪語し。
仕事も母親業もいつも通りですよ…と言っておきながら。
突然眠れなくなる夜があるのです。
何がどうと言うことでもなく。
具体的な理由があるわけでもなく。
だけど、はっきりと不安と心配と恐怖が襲ってくる。
それは、色で言うなら限りなく黒に近いグレー。
形で言うなら、もやもやっとして霧のよう。
放っておくと大きくふくらんで、しまいにはギロリとこちらをにらんでくる。
あせればあせるほど、眠れない。
外が少し明るくなった頃、バタッと記憶が途切れるのです。
そして次の日から数日間、発言が少しおかしくなって周りに迷惑をかけてしまうのです。
なんてわかりやすい。
今、世間をおびやかしている「コロナ」のせい。見て見ぬふりをしていると、いつの間にか私の中で「それ」は勝手に成長し、モンスター化していくのです。モンスターと上手に付き合えるならいいけれど、負けてしまうくらいなら、現実をきちんと把握しなくてはいけないのに!
……いや、待てよ。
モンスター使いなら、家の中にいました。今こそ教わる時なのかもしれません。
子どもたちの方が、よっぽど自分の想像力の扱い方を知っているのです。
こわーいはなし
雪の降る夜、ちいさなおばけが迷子になった。
困ったおばけは、通りがかった子に話しかけます。
「もしもし ちょっと おたずねします」
「……きゃあーー!」
当然、その子は驚き逃げ出し、大慌てで家に帰って言うのです。
「たいへんだ! 山の上でおばけにあった。
大きな目玉でぎろりとにらんで…」
それを聞いたばあさんがじいさんに言います。
「山のおばけは大きな口でにやりと笑って…」
おじいさんは、子どもたちに気を付けるように注意します。
「口にはぎざぎざとがった歯がいっぱいで…」
伝わるごとに、おばけの姿はどんどん恐ろしくなっていく。
その話を聞きつけて、一番驚いたのはなんと……!?
せなけいこさんの贈る「真冬の怪談話」はこわい? おもしろい?
もちろん、どちらもです。一番こわいのは、みんなの想像力だったりして、ね。
親子でドキドキしながら読むのも、みんなで大笑いしながら読むのも。
どちらもおすすめの楽しい1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
今日も母親から電話がかかってくる。
彼女も同じようにモンスターを育てているのかもしれません。
今度は、私がその扱い方を懇切丁寧に伝える番ですよね。
大人たちよ。
……自分の想像力に負けるな!
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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