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私が今ハマっているこの絵本3冊!

vol.4  探している答えはいつも本の中に

「あなたの今ハマっている絵本3冊を教えてください」
ふいにこんな質問をしたら、どんな答えが返ってくるのでしょう。

 

そんな好奇心がきっかけでスタートしたこの連載も、4回目となりました。今回登場してくれるのは、今会社でも一番生活の中で絵本に触れているかもしれない、4歳(年中)と7歳(小2)の女の子の子育て真っ最中の現役ママ、メディアセールス部の田中です。

 

「最近、仕事が楽しくて仕方がない!」と、理想的なコメントを残す田中さんが現在取り組んでいるのは、絵本ナビの新しい記事型コンテンツ「絵本ナビスタイル」のディレクション。さぞかし忙しいのでは?と聞くと、その方が安心するという答えが。役に立っていると実感すると、子育てが仕事のネックになってしまう…という不安から解放されるからなのだそう。そんな前向きな彼女の姿勢は、まわりを明るくしてくれるキャラクターなのです。

 

絵本大好き!二人の女の子と一緒に過ごす生活の中から、どんな選書をしてくれるのだろうと思っていたら、意外にも…!?
 

絵本から受ける印象は、子どもの頃から変わらない

―― 年中さんと小学2年生っていうと、まさに絵本を広く楽しめる時期! 3冊を選ぶのはさぞかし大変だったかと思いますが、その前に。田中さん自身と絵本の関わり方を教えてもらえますか?

テレビを殆ど見ない家庭だったので、物心ついた頃から、私にとって「本」は「友だち」でした。いつも探している答えは本の中にありましたし、図書館っていう場所も大好きで。学生時代はずっと、カバンの中に本がないと落ち着かないくらいだったんです。

―― では、小さい頃から大人になるまで、絵本や本との付き合いは続いていたんですね。

そうです。でも、大学生になって、友人にプレゼントとして絵本をあげようと思った時に、また新しい楽しみ方を見つけたといいますか。「私と思考回路が似ている友だちには、この絵本をあげたい!」とか、本にあまり興味がない子には、飾るだけでも楽しい絵本を選んでみたり。絵本って、こんなに素敵な要素がたくさん詰まっているのにこの価格。本当に安いと思うんです。


――思っていたよりも、絵本との付き合いがとても長い田中さんに、この質問を投げるのは、なかなか厳しいとは思うのですが…、聞きます。「あなたの今ハマっている絵本3冊といえば?」

 

今ハマっている3冊! これが難しいのは、今だけではなく、ずーっと好きな絵本っていうのが多くて…現時点では絞りきれなくて5冊あります。


―― 欲張りを隠さない、その勇気に免じて…今回は特例にします(笑)。

1冊目は、まさに「今」ハマっている絵本『いっさいはん』です。まだ発売されてから間もない絵本ですが、これはもう完全に自分のために読んでいます。

いっさいはん

いっさいはん

SNSで大反響の“1歳半ぐらいの子どもの行動”が絵本になりました。じっとしてられない、ごみを集める、なんでも散らかす…くすっと笑えて子どもが愛おしくなる一冊。

日常の中で、ちょっとイラっとした時にも、これを読めばもう「可愛い、可愛い」が止まらなくなる。子どもたちの小さい頃に全部あてはまるんです。

「例えばこのシーンとか。あ、これも!こっちも!」…止まりません。

子どもたちとも一緒に読みます。お姉ちゃんの時はこうだった、ああだったとか。そうすると、子どもたちも、自分がこんなに可愛かったんだ!って嬉しいみたい。当たり前のことですけど、子どもたちの可愛さって期間限定ですよね。今日の可愛さは、明日にはもう変わっているかもしれない。そう思うと、とにかく今を楽しまなきゃ!って思わせてくれるんです。

 

実は、お姉ちゃんが1歳半だった時は大変だったんですよ。自分に余裕がなくて…。ちょっと悔やんでいる部分もあって。だから、そういう「可愛いと思う」気持ちを忘れそうになる度にこの絵本を取り出してきて読んでいます。子どもたちと自分用に2冊持っています。

 

―― 2冊目は『だいじょうぶ だいじょうぶ』。これは、大人になってから読むようになった?

 

いえ、小さい頃から読んでいます。私の両親は割と厳しくて。その代わり、祖父と祖母が何をしても褒めてくれたんです。私の自尊心は二人にもらったのかも。自信をなくした時も、「ああ、私大丈夫だ。このまま行っていいんだ」って。絵本の中の「だいじょうぶ だいじょうぶ」っていう言葉は、自分のそういう事も思い出します。祖父は2年前から認知症を患っているので、私の事ももう覚えていないんですけど、読んでいれば私は祖父のことをいつでも思い出して忘れないという意味でも、この絵本は大切です。

だいじょうぶだいじょうぶ

だいじょうぶだいじょうぶ

小さなぼくが不安な気持ちになると、いつもおまじないの言葉で助けてくれたおじいちゃん。生きていくためのしなやかな強さを育む、心にしみる絵本です。

どくしゃのみなさんへ
おじいちゃん、おばあちゃんをさそって、みんなで、さんぽにでかけよう。ゆっくり、のんびり、あるいていけば、ほら、ぼくらのまわりは、こんなにも、たのしいことがあふれてる。――いとうひろし

―― 今も読んでいるとのことですが、どのくらいの頻度で読むんですか?

 

絵本を読むのは、私にとって生活の一部です。それは、子どもが生まれる前から。絵本って、3分位あれば読めちゃうじゃないですか。それで気分転換が出来る。だから、まだみんなが起きる前の朝早い時間や、お茶の時間とか。ちょっとした時にしょっちゅう読んでいます。

 

子どもと絵本を読む時は、好きなものを選ばせますが、時間がない時は、私のセレクトで読むんです。『だいじょうぶ だいじょうぶ』も、よく登場する絵本の中の1冊です。「だいじょうぶ」って大切な人に言ってもらうと本当に大丈夫な気がしますよね。それを娘たちにも潜在的に届けたいというか…絵本を読むことで、それができている気がしています。

 

―― 生活と絵本がこんなにも密着している事に驚きです。会社の中でも一番絵本を活用している人なのかもしれませんね。では3冊目は…?

 

『あさになったので まどをあけますよ』。まずタイトルが好き。荒井良二さんも好き。眺めているだけでも、気持ちが明るくなる色使いも好き。

あさになったので まどをあけますよ

あさになったので まどをあけますよ

新しい1日をむかえるために窓をあける子どもたち。なにげない日々の繰り返し、その中にこそある生きることの喜びを描いた絵本。
 

その中でも「あさになったので まどをあけますよ」、この一説がすごく好きです。
私も朝、まずカーテンと窓を開ける習慣があって、晴れていれば一日のテンションがあがりますし、くもりだとちょっとさがる。そういう無意識に過ごしていた時間を、言葉で表してくれると、自分の見ている景色にも意味が出てくるっていうか…。「よし、今日も私は朝が来るのを喜べている、育児を楽しめている」って。朝がきたんだって実感できるんです。

 

荒井さんの作品を読んでいると、「子どものためにいい絵本をつくりたい」という思いを感じるんです。例えば「毎日のなにげないことが幸せ」と感じられるように、日常を描くときにとてもきれいな色で表現していて。それを読み手として受け取って、自分の気持ちをいい方向に持っていけるようになる。絵本を通して子どもに伝えたいことって、そういう事だったりします。

―― 「絵本で育児」って、もっと広い意味で捉えることができるのかもしれませんね。目から鱗でした。では特別にあと2冊!

 

『ぼくをさがしに』。これも子どもの頃から読み続けている絵本。自分が欠けているなあ…っていう思いは常にあるんですけど、絵本の中では、欠けているピースが見つかって、きれいな丸になった途端に歩くスピードが速くなって、景色が見えなくなる。それを読むと、欠けててもいいんだ、むしろ、そのほうが周りをみれるし、楽しめる。そんなに欠けたピースのことを考えなくてもいいんだ、って思えます。

 

『おめでとう おひさま』には、とても好きなフレーズがあります。「なるべく わらう」「なるべく けんかしない」。ついつい完璧を求めて、到達できないと口惜しさを抱いてしまう自分がいて。「なるべく」って言える人でいたい。なるべく、の隙間のできない部分さえも遊んでしまえればいい。私自身としても、親としてもそういう姿勢でいたい。だからよく読みます。

―― なるほど、絵本の中から答えを導きだせるのは、小さい頃からずっと読んできているからこそ、なのかもしれないですよね。ところで、こういった普遍的な答えを見せてくれる絵本。子どもの頃に読んだ時の感想と、大人になった今と、全然違うんじゃないですか?

 

いえ、まったく変わらないです。同じです。同じことを思えるから安心できるんだと思います。

 

―― そうなんですね!
色々と発見のあるインタビューでした。ありがとうございました。

 

子育てをする前から、ずっと絵本と親しんできていた田中さん。年を重ねるごとに感想が変化していく事が「絵本の面白さ」だと思い込んでいた私にとって、一番驚いたのは、絵本から受け取る印象がずっと変わらないという答えでした。

 

子どもの頃から大人びていたのか、あるいは今も変わらずに子どもの心を持ち続けているのか。その辺りについて、また改めて聞いてみたくなっちゃいました。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

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絵本ナビ編集部
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