【news】戦後72年。忘れられつつある戦時下の日本のモノやコト
戦後生まれにはなじみのないモノやコト
戦後72年の今年。戦中を知る人がどんどん少なくなっています。当時のメディアを通じて、あるいはじかに体験している人にはわかっているモノ、コトが、戦後生まれの世代には何のことかわからない、いまひとつ理解しきれない若い世代、今の子どもたち。たとえば、「掩体壕(えんたいごう)」という言葉は、本土決戦が近づきつつあった時期に飛行場やその周囲につくられたコンクリート製の飛行機用シェルターで、敵機から戦闘機などを守るために建造されたもの。いまでも全国各地に残っているのです。
「金属回収令」は、昭和16年(1941)に、砲弾などの軍需生産のために公布され、家庭のヤカンや洗面器から寺の鐘、公園の銅像まで、官民に鉄や青銅の供出が求められたこと。
「松根油(しょうこんゆ)」は、松の切株を乾蒸することで得られる油状の液体のこと。陸海軍などはそれを原料に航空機用のガソリンを得ようと本気で考え、松の根を掘り出すため、国民が小学生まで動員されたのだそうです。
戦時下日本のコト・モノを探索しイラストでその実像を伝える、これまでなかったルポ発売!
これら戦時のさまざまなモノやコトにスポットを当て、ある時は現地を歩き回り、ある時は史料・古写真を探索し、忘れ去られつつあるこれらの事物をカラー・イラストで紹介するという画期的な本が、終戦72年目のこの8月10日、株式会社 学研プラス(東京・品川/代表取締役社長:碇 秀行)から発売になりました。
独自の視点で描く、戦時下日本の事物
風船爆弾、照空船、金属回収、松根油…ルポイラストの名手の著者が、焦点があたることの少ない戦時下日本の事物を独自の視点から紹介。それらがまとう時代の空気感ごと描く『歴史群像』人気連載待望の書籍化!歴史学者・加藤陽子先生との対談も収録。
■本書の主な内容
<第一章>決戦兵器の理想と現実 青い風船爆弾/明治の榴弾砲/現存する掩体/幻の照空船
<第二章>戦時下日本の空気感【其の一】 空襲警報/防空頭巾発達史/窓ガラス防護の謎/金属供出と上野大仏
<第三章>戦時下日本の空気感【其の二】 戦時マネキン/ラヂオ体操/野菜増産/上野水族館悲史/松根油/わらの応用/竹槍
<第四章>軍事歴史雑記帖 日清戦争の軍装/ガスマスク/有刺鉄線/ベルリン警察/ツェッペリン飛行船/哨舎/象戦車
<対談>加藤陽子×モリナガ・ヨウ
著者のモリナガ氏は1966年生まれのイラストレーター・絵本作家で、戦車や模型などのミリタリージャンルや、築地市場や東京スカイツリーなどの建物や新幹線などの乗り物をテーマとした絵本など、その細密かつ温かみに溢れる筆致で表現された作品はとてもわかりやすく、幅広い読者を魅了している作家さん。昨年は『築地市場 絵でみる魚市場の一日』で第63回産経児童出版文化賞を受賞されているんですよ。
『迷宮歴史倶楽部』でも、その「温かみと緻密さ」という個性はいかんなく発揮されています。たとえば「掩体壕」を扱った回では、掩体壕が今ものこる調布や九十九里浜の各地を取材し、専門家から話を聞き、そのうえで、温かくやわらかいと同時に緻密なイラストと、真摯である一方で軽妙な語り口でその実像を浮き彫りにしている。掩体壕の作り方や構造、サイズなどを細かく紹介する一方、いまも野原に残された掩体壕の姿を、「『風の谷のナウシカ』の、途中で力尽きた王蟲(オーム)を連想させる」と表現するところがモリナガらしさ、なのです。
ベストセラー『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』の著者、東大大学院教授・加藤陽子先生も絶賛!
本書には特別企画として、著者と東大大学院教授・加藤陽子先生との対談もたっぷり4ページ収録されています。加藤先生はベストセラー『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』の著者としても知られる日本近現代史の研究者。本書についても「戦時下で民草(たみくさ)が味わった空気が再現されています」と絶賛しています。戦車、模型。建物、乗り物に代表されるモリナガ・ワールドに、また新たな世界が加わり、さらなる貴重な資料として読まれることでしょう。是非、参考にしてみてくださいね。
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