【STEAM教育特集】第3回:子どもの好きなもの別 家庭でできるSTEAM実践アイデア[前編]
STEAM特集3回目の記事となる今回は、家庭でできるSTEAM的な学びについて、より具体的に取り上げていきたいと思います。第1回、第2回でご紹介した通り、テーマを決めて試行錯誤しながら探究するSTEAM型の学びにおいて、すべてのスタート地点となるのが何かを表現したい!という子ども自身の「ワクワクした気持ち」。好きなことに夢中になるうちに学びが深まる、という大枠は理解できたものの、大人たちはどんな具体的なサポートを…?
この疑問について教えてくれるのは、STEAM教育家・中島さち子さん。大人ができる探究のサポートや実践の具体例を聞きました。幼児でも取り入れられるものから、デジタルを活用したものまで。お子さんの「好きなこと」別にご紹介します!
中島さち子
STEAM教育家。国際数学オリンピックにて日本人女性初&現在唯一の金メダルを獲得。ジャズピアニストとしても活躍する。
内閣府STEM Girls Ambassador。経済産業省『「未来の教室」&
2018年には初の絵本『タイショウ星人のふしぎな絵』(絵:くすはら順子、文研出版)を発刊。
1、2個できたら十分!子どもの興味やペースを大事に
思考錯誤しこねくり回して、探究(STEAM)へ
これからご紹介するアイデアは、簡単なものから難しいものまで並行して並べています。発想を自由にするためにたくさん並べましたが、この中から1、2個でもできたら十分!
また、お子さんがまったく違うことに興味を持ったら、ぜひその内容・やり方を応援してあげましょう。子どもは気持ちが乗ってきたらどんどんオリジナルの遊びを開発し、それが探究(STEAM)につながっていくはず。
声かけの例、
公園で遊ぶ、虫取り網で走り回る、手で絵を描くなど、昔からの自然の中での基本的な遊びは、今でもとても重要です。また、デジタル・プログラミングだけでなく、ダンボールや紙やクレヨンや簡単な回路など、身近な素材でもできるティンカリング(思考錯誤してこねくり回す)も大事です。難しいものについては、大人はあくまでも探検の協力者というスタンスで少しだけ協力し、子どもの要望に合わせて環境を整えたり、子どものアシスタントとして動いたりして一
わが子と一緒に不思議や発見・発明を楽しむコツ
◆探究しよう
STEAMの学びで大事なことは、いろんなプロフェッショナルに
その際、プレイフル・シンキング(*)でも鍵となる
「大きな視点(俯瞰する力、メタ視点)」
「振り返り」
「間違いを恐れない成長的マインドセット」
「まずやってみること!(Learning by Doing: 構築主義)」
「共創(協奏)すること」
「心や頭や身体を自由に解き放ち、たくさん使うこと」
「物事をいろんな方向から眺めること」
などはとても大切な要素です。STEAMは一生尽きないワ
*「プレイフル・シンキング」は、同志社女子大学の上田信
◆「強制」にならないように。そして見守る
大人が「やらせよう」としてもうまくいかないことが多いもの。それよりも子どもたちから自分で自由に生まれてくる・変わってくることが大事。個人によって興味が異なるので、子どもの反応を見つつ「強制」にならないようにしたいですね。大人の期待する反応にならないからといって失望せず、むしろ本人なりのペースや発見・発明をゆっくり見守って楽しんでくださいね。
◆親が「良し悪し」を決めないで
声かけについては答えを誘導するような質問、親が評価を決めてしまうような言葉はできるだけ避けたいですね。子どもは自然と、大人に「良い」と思ってもらえるものを目指すようになってしまったり、やらされている気持ちが湧いてきてワクワクが冷めてしまったりするためです。
◆子どもの意外な質問も面白がろう
大人も本当に不思議に思った疑問を口にしたり、逆に子どもの新鮮な質問を面白がったりしてあげると、自然と一緒に今まで気づかなかった「なぜだろう」のワクワクに引き込まれるかもしれません。また、日々のいろんな発見や発明は、なるべく記録させる(ドキュメンテーション)こと、いろんなことを振り返ったり、新しい気づき・発展に繋がったりしますよ。
それでは家庭で取り入れられるSTEAM的学びのアイデアをご紹介してきます!
楽器演奏など音楽が好きな子
■コンサートやライブイベント等で本物の音・音楽、一流の演奏を聞きに行く。
■身近なものからいろんな音を発見し、オリジナル楽器を発明する。叩き方、弾き方、素材などによる違いに耳を澄ます。発見した音や発明した楽器に名前をつける。
【学びを深める声かけ例】
・わぁ、
・あれ、その音さっきと違うね!何か変えた?(返事はなくてもニヤッと笑ってくれたら十分!)
■いろんな鳥や動物、コップ、葉っぱなど、身近にあるさまざまな音をよく聴いて、ちょっとした違いにも耳を澄ます。できれば面白い音は録音して、その音を声や他の道具でまねしてみる。目をつぶっていろんな紙をちぎり、素材やちぎり方の違いなどで音がどう変わるか耳を澄ます。
■お母さんの音、お父さんの音、空の音、石の音、椅子の音などを考えてみる。
■いろんな擬音語を作り、擬音語を繰り返して音楽を作ってみよう。
*参考:絵本「ドオン!」「もけらもけら」など。
■発見・発明した音や、思いついたメロディを歌ってみて、逐次録音して聞いてみる。
■太鼓やスピーカーなど音が大きく鳴っているものの上を触ったり、そこに砂を置いた紙をのせて砂の動き・踊りを見たり。
*クラドニ図形のようなもの。
■世界のいろんな楽器を触ってみる+作ってみる。
*身近な素材で簡単に作れる楽器の例:鳥笛やギロ、カリンバ、三味線、太鼓、カホーン、マラカス、木琴など。音の違いに耳を澄ませて。
■何かお題に沿って、簡単な楽器や身近な素材で作ったオリジナル楽器を用いて、即興演奏に家族やお友だちと挑戦!(風、雨、雪、雷、鈴虫、旅行、ママなど何でもOK)
【学びを深める声かけ例】
・そのメロディ、なんだか懐かしい…。いいなぁ。私には◎◎の時のあの景色が見えた!
■パソコンやタブレット上で録音素材を組み合わせて音楽を作ってみる。
■楽器の構造について研究してみる。木琴やピアノの弦の長さは?素材は?形は?吹き方は?
■遠くの人に何かを音で伝える方法を試したい!どうすればよい?(色々音信号を考えてみる)
■オシロスコープなどで、いろんな音(楽器、声、叩く音など)の形を見て遊ぼう!
■音楽を聴いて絵を描く。逆に、絵を見て思いつく音楽を自由に表現しても。
■紙芝居に音をつけてみよう!(サウンドエフェクト)
■お絵描きアプリ「paintone」で絵を描き、そこに音もつけてみる。
■音楽ソフト「KAGURA」などを用いて、ダンスをしながら音楽を作ってみよう。
■プログラミングソフト「Music Blocks」 や「Springin’ 」を使い、コーディングで曲を作ろう(動く絵もつけてみましょう)。
■「Google Teachable Machine 」や「PoseNet 」などの簡単な機械学習のツールを用いて、こうしたら音が出る!といったような面白い仕掛け(音楽ドッキリ箱)を作ってみよう。また、どんな音がいいかも考えてみて。
■ちょっとした回路やセンサーを用いてできそうな、面白いスライム楽器など考えてみよう。まずはアイディアを絵に描いて、どんなものをどんな風に触るとどんな音が出たら面白いかを考えてみて。
[豆知識]
ピアノは黒鍵だけで弾くと、かなり素敵な音楽が作れます。例えば12個の黒鍵の中から好きな5個を選んで、その5個だけで音楽を作る!(スケールを決める)。即興でもかなり音楽的なものが作れますよ。ちなみに、琉球音階はドミファソシで作れます。
こんなものも活用してみよう!
・紙、石、砂、木、机、コップなど身の回りのもの(色々な紙・板など)
・録音ツール。スマホやタブレットの録音ツールでも
・世界のいろんなパーカッション、笛
・ミキシングツール
・オシロスコープ。無料アプリもあります
・「paintone」「KAGURA」「Music Blocks」 など音楽関連のおもしろソフト、アプリ
・「Google Teachable Machine」「PoseNet」 などの簡単なAI学習のツール
乗り物が好きな子
■ターミナルや駅などで本物の乗り物を間近で見たり、実際に乗ったりしてみる。いろんなおもちゃの乗り物、三輪車、自転車などを試し乗りしたり、解体したり、長さを測ったり…。
■乗り物の絵を描いてみる。ダンボールなどで実際にプロトタイプ(模型)を作ってみる。
■その際に、例えばタイヤがなかったらどうなるかな?タイヤが四角い電車はないかな?どうやって動いているのかな?なぜ飛ぶのかな?なぜ浮くのかな?どうやったら何キロくらいのものをのせられるのかな?高さは何メートルくらいかな?など色々考えてみる。
【学びを深める声かけ例】
・(おうちでおもちゃを片付けている時に)お片づけの手伝いをしてくれる車があるといいのにね…あ、それ面白い!どんなもの?絵で教えて!
・このクレーンとあのクレーンは何か違うのかな?50トンって〇〇ちゃんの何人ぶんだろう?
・なんであの新幹線はお鼻が長いんだろう。
・この世の中にタイヤがなかったらどうなるのかな?タイヤが四角い電車はないのかな?
・飛行機はなぜ飛ぶのかな?なぜ空に浮くんだろうね?
・どうやったら、もっと重いものを乗せられるかな?この乗り物は何キロまで運べるかな?
■こんな乗り物があったらいいなあと思う未知の乗り物を、まず描いてみて、実際に作ってみる。あるいは、何か動物や虫に似た乗り物を作ってみる(まずは動きを観察する)。家にあるブロックや積み木、空き箱や折り紙、ダンボールなどで創作を促す。ロボットトイ「toio」「KOOV」なども用いて、未知の生き物を作ってみても楽しい。新しい「いのち」の名前や性格も考えよう。
■課題を設定して、それを解決するような乗り物を考える。
【学びを深める声かけ例】
・宇宙探検に出かける乗り物を作ろう!火星探査機を作ろう!
・この山の中の村には一人で住むお年寄りが多くいらっしゃいますが、みんな買い物に行くときに毎回遠くまで歩かなくてはならず大変なようです。〇〇ちゃんがこの村の村長さんだったら、どんな乗り物やサービスで助けてあげるの?
■ビー玉や空き缶、消しゴム、ストロー(木材)など身近なものを使ってピタゴラスイッチのようなものを作ってみる。Have Some Fun! のビー玉遊び「SlowP」、BRIO(
*特に欧州のおもちゃメーカーに素材の良いものが多いようです。
■プログラミング玩具「キュベット」、ブロック「レゴ デュプロ くるくるゆうえんちセット」「ニューブロック プログラミング」、モーターキット、「KOOV」「MESH」「toio」「OZOBO」「Robobloq」など、実際に動くロボットと遊んだり。電力やモーターの仕組みやセンサーなどを用いて動くものをいじくりまわしたり、何か作ったりできると、それも楽しいですね。
*「レゴ マインドストーム」「Arduino」といった基盤を用いればさらに自由度は高くなりますが、難しければ簡易工作キットでも。そこからさらに、まちづくり、遊園地デザインへ!
■水力発電、風力発電、太陽光発電の仕組みを実際に簡易工作で作リ、電気を貯めて、実際に電灯などで(自分が貯めた電気を)使ってみる。興味が出たら、世界にはどんなエネルギーがあって、どのくらいどんな国が毎日使っているのか調べてみる。
【学びを深める声かけ例】
・船はなんであんなに重いのに浮かぶのかな。どうやって動かしているのかな。エネルギーってなんだろう。
こんなものも活用してみよう!
・画用紙、クレヨン、絵の具、ペン、ダンボール、ティッシュの箱、ハサミ、のり、テープ
・蝶つがいや多彩なミニタイヤ、滑車、はぐるま、プラレールなど
・ロボットおもちゃ(「
・再生可能エネルギーを実際に作るキット/世界のエネルギー事情を表すデータ
お絵描きや絵本が好きな子
■いろいろなジャンルのアーティストや伝統工芸、アニメーションなどを見る。
■身近なところや自然の中から面白い形、美しい形を発見する。いろんな顔に見えるものなど(比喩的なもの)を探したり、上下左右や内外からものを見たり、遠くから見たり、違うところに置いてみたり。ほかにも、虫めがねやスマホ用マイクロスコープなどでミクロの面白い形・逆に大きな目線で見たときの巨大三角形など、いろんな視点からものを見る楽しさに気づこう。
*日々気づいたこと、発見・発明は写真や動画、言葉で記録しておくと良いでしょう。
■自由にお絵描きしてみる!いろんなタイプのクレヨン・色鉛筆・絵の具などを試し、画材での違いや色の重ね方・線の強弱・塗り方で、塗りやすさや印象の違いがあることに気づく。逆に鉛筆だけ、太い筆だけなどで描くとどんな感覚になるか試してみる。耳を塞いで絵を描く、目をつぶって絵を描く、利き手ではない手で絵を描く、といったことも。
■部屋の床や壁や天井を新聞紙などでしっかり養生し、もしくは家の外で汚れても良い格好で、思いーっきり!絵を描く。すごく大きい・すごく小さい絵を描く。
■自然や身近な所からいろお花、草、果物などを探してきて、絞って色水を作ったり混ぜたりしながら、オリジナル絵の具を作る。染め物にも挑戦を。
■ミカンのしぼり汁などの果物、野菜の汁、砂糖水などを使って「見えないペン」で文字や手紙、絵を描き、届けて、大人と一緒にあぶり出して読んでみる。
【学びを深める声かけ例】
・この水色、どうやって作ったの?さっきのより濃いね!/太陽は本当に赤いのかなぁ
*アメリカでは、太陽を黄色で描くことが多いですね。
■小さなドットシールをたくさん用意し、それを貼って絵を描く。あるいは、色折り紙などをたくさん切り刻んで、それらを下書きした絵にどんどん貼って、切り絵アートをお友達や兄弟、ママ・パパと一緒に作ってみる。
*わが子の超ミニチュア写真をたくさん作り、それをドットにしても良いですよ。
■折り紙を色々切って、同じ形で平面を敷きつめるテセレーションアートで遊ぶ。
*参考:絵本「タイショウ星人のふしぎな絵」
■自分の描いた絵にセリフをアテレコしたり、効果音や匂いをプラス。また、何か木や砂をのりでくっつけたり、3次元にしたり、下から光を当てたりして、自由に発展させてみる。
■いろんな音や触感、匂い、味などを体験し、それを絵で表現してみる。
■いろんな光や影を観察して描いてみる。またペットボトルやいろんな形のコップに水を入れて、暗い部屋で下から携帯のライトや懐中電灯をあてて、光の動きを楽しむ。身の回りから不思議な、あるいは美しい「光」を色々と探してみましょう。
【学びを深める声かけ例】
・(絵本を読んでくれた時)…あ、そのキャラクターはそんな高い声なんだね!この人は?
・なんか、この絵のタオルはいい匂いがしそう!ここはどんな感じの手触りなの?
・見て!あそこに小さな虹があるよ!どうなってるのかな…。
■オンラインゲーム「Google Quick, Draw! 」で、お題に合わせていろんな絵を描き、AIがわかってくれるか遊ぶ。
■お絵描きアプリ「paintone」で絵を描き、そこに音もつけてみよう!
■パソコンやタブレット上で絵を描く。あるいは紙に書いた描いた絵をパソコン上に取り込む。動きや音なども考えデジタル絵本を作る。
■錯視やだまし絵を描いてみる。YouTubeでも色々参考動画があります。
■作品づくりに挑戦する!
・自分の好きな絵本の一部やキャラクターを3コマ漫画やパラパラ漫画にしてみる。
・それぞれのコマを別の紙に描いて紙芝居を作る。最初は3〜5枚からスタート。
・自分でストーリーを考えてみる。夢などをもとにしてもOK。
・初級編で作った作品よりも長編作りに挑戦。
・立体絵本やデジタル絵本、ストップモーション動画(クレイアニメなど)作りに挑戦してみる。お母さんやお父さんをアシスタントに任命して!
・出来上がったら表紙を作って製本や発表会をし、作品として大事にする。
【学びを深める声かけ例】
・そのフレーズ、詩みたいで情緒的で、リズムもすごくいいね!(本当に心に響いた時)
・見て見て、この手、本当に穴が空いているみたいだよ…!
・今度はママが出てくるお話も書いてみて!
・はい。〇〇さん!次のお仕事は何でしょうか。
■絵を用いた伝言ゲーム/パーツごとに違う人が描いて組み合わせて遊ぶ/3分間紙から鉛筆を離さず線を描き続ける(複数名)など、絵を用いたゲームを考えて挑戦!
■絵本に登場する食べ物などを実際に作ってみる。レシピがのっていない場合は、見た目から材料を考え、実際に調理してみる。作って気づいたことをメモし、オリジナル絵本に還元する。
【学びを深める声かけ例】
・(パンケーキが出てくる絵本を読んだとしたら)パンケーキ見ていたらおなか空いちゃった!作ってみない?でも、何からできているのかな?
こんなものも活用してみよう!
・いろんな紙、多彩な鉛筆・色鉛筆・クレヨン・オイルパステル(「クレパス」、「パッセル」、「セヌリエ」「カランダッシュ」「ホルベインチョークアート」)
・絵の具、スケッチブック、画板、画板スタンド、ペンタブレットなど
・いろんな音、触感、匂い、味のもの/花や草、果物など
・オンラインゲーム「Google Quick, Draw! 」、お絵描きアプリ「paintone」、デジタル絵本制作アプリやソフト、ツール「Springin’」「Scratch 」「ビスケット」「Music Blocks」 など
・ビデオカメラ、ストップモーション編集用ソフト「KOMAKOMA」「Stop Motion Studio」など
・レシピ動画やレシピ本
体を動かすのが好きな子
■スポーツ大会やダンスショーを観に行ってみる。
■いつもの遊びのルールを少し変えて遊んだり、オリジナルの新しいスポーツを考えたり。
■伝統工芸のコマ(ネフ社のコマも美しいですよ)やけん玉、お手玉などで遊び、良い素材のものの手触りを楽しむ・動きを観察する。また、こうした道具を用いた新しい遊び・スポーツを考える。
■プログラミングトイ「toio」などを用いて、紙コップや鉛筆、動物などのための新しいスポーツゲームを発明。
【学びを深める声かけ例】
・どんなルールだと面白くなるかな?例えば負けと勝ちを逆にしたらどうなる?
・足が遅い方が有利になるスポーツを作ってみて!
・目が見えない方と一緒に楽しめるスポーツやゲームを考えてみよう!
■例えば、速く走るために、腕の振り方、スタートの構えなどいろいろ試して自分にぴったりの練習方法を探してみる。また、チームプレイの場合は(ドローンや台などを用いて高いところからプレイを撮影しておくのも〇)、終了後、簡単な碁盤や紙などを用いて、ざっくりゴール前の動きなどを確認し、どうすればよかったのかな?と振り返り議論する時間をもつ。
【学びを深める声かけ例】
・タイムをはかったり、動画を撮ったりして比べてみようか?
・記録をとっておくと、いろんなことが見えてくるよ!先週と比べてどうかな。
・ご飯はいつどのくらい食べた?/今日は雨だから身体の動きも違うのかも!
△△君は今日シュート数は少ないけど、すごくいい動きをしていたよね。シュートすることが全てじゃないよね。何かこのデータの中で足りないこと、見えないことってあるのかな。
■好きなプロ選手のやり方や練習方法を研究し、マネしてみる。前後を動画に撮り比較する。
【学びを深める声かけ例】
・あの選手は何でこんな練習をしているんだろう。
・あの選手と、〇〇ちゃん(子ども)は何が違うかな(プレイ年数や体格、年齢などを比較)。じゃあ、全く同じ練習をしてもダメなのかもしれないね?〇〇ちゃんにあった練習方法は、どんなものなんだろうね。
■自分の手や足、鼻などを認識するAI学習ツールやセンサーなどを用いて、自分の踊りに合わせて何かが画面内で飛び出したり、音が出たり…という拡張現実(AR)やプロジェクションマッピング、テクノロジーを用いた身体的な表現を楽しむ。
■発展版として、そうした技術をダンス練習やパフォーマンスに応用できないか考える。
【学びを深める声かけ例】
・この技術、面白い!これ使って何かストーリーを考えて素敵なパフォーマンスできないかな。
[豆知識]
「統計」全般において注意すべきことですが、記録の良し悪しや試合結果だけで判断をせずに、しっかり分析をすることが大切です。良くても悪くても、それが「なぜ」なのかを考えるクセをつけたいですね。また、手元にあるデータが全てではない場合もあるので、足りないデータがないか、データの背後に隠れている要素、など広い視野で考えることが大切です。データに偏りがないか、そもそもいくつくらいの誰のどんなデータを取っているのかなどもきちんと確認しましょう。
こんなものも活用してみよう!
・いろんなボール、フラフープ、いろんな靴、袋、コマ、けん玉、お手玉、プログラミングトイ「toio」、電子ブロック「MESH」など
・ランニング計測アプリ
・ビデオカメラ(フォームチェックなど)
・プロ選手データ(ネット上で公開されているもの)
・ノートやエクセルなど。ドキュメンテーション日記として、クラウド管理でチーム共有しても良い
・ゲーム開発のためのソフトウェアや工作キット(センサーなどを含む)、「PoseNet 」など
お店屋さんやお医者さんごっこなど、対人コミュニケーションが好きな子
■いろんな素敵なお店やお医者さんに行き、何が素敵なのかを何度も研究する。どんな風にコーヒーを入れたり、どんな風にお花を活けたり、話しかけたりしているか観察・メモし、ママ・パパや兄弟、お友達と一緒に後から振り返る。
【学びを深める声かけ例】
・どんな風に声をかけてもらった時に嬉しかった?
・お店によって音楽も違ったね。
・あの店員さん、姿勢がピシッとしてて綺麗だね!
■ごっこ遊びを発展させてみる。どんな表情でどんな声を出し、どんな言葉使いをすると良いか、どんな空間デザインだと人や動物が気持ちよく過ごせるか考え、とにかく何度もプレイテスト!
*いずれ、本当にお茶や食べ物を出しても良し、プロに見てもうらうのも良し。
■お店屋さんごっこをする際は、できるだけ具体的なサービスを考える。例えば、値段、オリジナルの商品名、商品の並べ方、販売の工夫(割引クーポンや特徴的なサービスなど)はどのようなものがいいか。また、お店の名前やロゴ、お店のデザイン、お店のスタンプなどを作って、実際に家族やお友だちに来店してもらう。
*いろんな会社のロゴをまずは発見・研究してみると良いですね。
【学びを深める声かけ例】
・(客になりきって)ちょっとこの部屋は寒いです。暖か目にしてもらえますか?
・(客になりきって)このロゴはかっこいいですね!どんな意味があるんですか?
* ロールプレイでいろんなお客様になりきる。
・(あえて辛口なフィードバックを与え)どんな風に対応すればよかったのかな?
■スライムなどを用いて食品サンプルを作ってみる。店頭の食品サンプルを参考にすると良いですね。
【学びを深める声かけ例】
・この食品サンプル、本物にそっくり!どうやってこのふわふわした感じを作ったの?
■お店の宣伝動画を作ってみる。そのためにも、まずはお店の一番良いところ、お客様にどんな体験をしてほしいのか、宣伝文、特徴となる色、形、フォントなどをまず考える。ARやアニメーションなど新しいテクノロジーを用いたサービスを考えて仮のお店の宣伝プランを作ってみても。カメラにかざすとお城になるお店とか…⁉
■出店計画を練る。この街のどの辺りにどの程度の広さでお店を持つと良いかを考える。
■街の良いところ・悪いところ探し!また、近くに伝統的な工芸品などがあれば、調べる。
■食・医療・環境・貧困などの現在の問題や状況を(街・県・国・世界レベルで)調べ、データを見える化。解決策を考えてみましょう。
こんなものも活用してみよう!
・身近な色々な素材(紙、ダンボール、はさみ、のり、色ペン、テープ、エプロン、白衣など)
・色々なスライム(のり、ホウ砂、シェービングクリーム、水)、インク、ティッシュペーパー、コップ、割り箸、ピンセットなど
・様々なロゴやデザイン、色々な食・医療・環境・貧困などにまつわるデータ(ネット情報)
・街の地図・情報、録音機材、画像・動画編集ソフト(イラストレーターなど)、ARソフト
1つ完成したら発表し合うこともオススメ
お子さんの探究プロセスを深めるためのポイントを列挙してきましたが、いかがでしたか?
これらはほんの一例。子どもによっても好きなものは様々ですので、遊び方をネット検索や動画などで探してみたり、イベントやワークショップでヒントを得たりするのもいいですね。
実際にそのジャンルに特化した教室に通わせてみたいと思う親御さんもいるかもしれませんが、お住いの場所によっては限界があることも。そんな時はオンライン上で学べるソフト・動画・クラスなどにも注目してみるのもいかがでしょう。
また、興味が出てきたら子どもたちは自分でYoutube などを検索して、どんどん学びを深めていくかもしれません。利用時間限度は決めたり、ある程度のネット上のリスクは予めきちんと伝える必要はありますが、大人側が少し余裕(我慢)を持って接すると、それが子どもなりの探究のきっかけにつながるかもしれませんね。
どんな遊びにも共通して言えることですが、大切なのは子ども自身の自発性。最初から難しすぎるチャレンジを強いたり、大人が口出ししすぎたりしてしまうと、子どものワクワクした気持ちが消えてしまいます。あれこれ言いたくなってもグッと我慢し、半歩先を見据えたヒントを与えてあげるという感覚でちょうど良いかもしれません。
また、冒頭でも記載の通り、子ども一人一人に自分のペースがあります。じっくり向き合うタイプもいれば、次々新しいことに目移りするタイプも。好きなことが明確なタイプもあれば、長らく特段「好き」なことが見つからない、というタイプもあります。他の子どもと比較することなく、その子自身が楽しいと思えるペースを発見してあげられると良いですね。
そして、何かひとつ表現するのもが完成したら、友だち同士や学校などで発表し合うこともオススメ。ぐんと楽しみが広がっていきます。近くに同じ興味関心をシェアできる仲間がいなければ、動画サイトやSNSで発信し、仲間を見つけられるのも現代ならではのメリット。「リビング」で始まった遊びが、いつしか「世界」へと広がっていくことを想像すると、大人もワクワクしてきませんか?
ぜひ普段の遊びに取り入れてみてくださいね。
次回は[後編]とし、生き物が好きな子、工作が好きな子等を取り上げていきます。お楽しみに。
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