【STEAM教育特集】第4回:子どもの好きなもの別 家庭でできるSTEAM実践アイデア[後編]
STEAM特集のスタートから4回目の記事となる今回は、3回目の前編に引き続き、子どもの興味・関心に合わせて家庭でできるSTEAM的な学び・活動について、具体的なアイデアを紹介していきたいと思います。考案してくださったのは、今回もジャズピアニスト・数学研究者・STEAM教育者の中島さち子さんです。
中島さち子
STEAM教育家。国際数学オリンピックにて日本人女性初&現在唯一の金メダルを獲得。ジャズピアニストとしても活躍する。
内閣府STEM Girls Ambassador。経済産業省『「未来の教室」&
2018年には初の絵本『タイショウ星人のふしぎな絵』(絵:くすはら順子、文研出版)を発刊。
試行錯誤やティンカリング (いじくり回すこと)で楽しもう
ものづくり(エンジニアリング)に重点を置いて!
今回は「ものづくり(エンジニアリング)」の要素が大きいです。日本だと“エンジニア”という言葉には専門的なプログラマーなどのニュアンスがありますが、海外ではもっとハンズオン(体験型学習)など含め、カラフルに・いろんなストーリーを作りながら自分なりのアイディアを形にする世界、という響きを持っています。
ぜひ女の子も男の子も、自分のオリジナルな好みに合わせていろんなものづくり・アート/デザインを楽しみ、それが社会をどうよくしてくれるか、誰かを喜ばせるかなどを考えながら、大人も一緒になってああでもないこうでもないという試行錯誤やティンカリング (いじくり回すこと)を楽しんでくださいね。
また、何かテーマを決めてものづくりをするときは、
◆どうしてそのテーマにしたのか(動機、コンセプト、想い)
◆失敗も含めた、途中途中のいろんな記録・ドキュメンテーション(写真・動画を含む)
◆最後の仕上げ(包装や仕上げ塗り、やすりなど)
まで、しっかり大事にしてあげると良いと思います。いろんな他のお友だちとともに作ったり、いろんな角度からの考え方、嗜好、やり方なども時に味わえると良いですね。
*なお、今回は画像など含め、こどもたちが主体的創造的なプロジェクト・遊びを繰り広げるこども園「さくら」の堀昌浩園長にもご協力・一部監修をいただいています。
*3回目記事でご紹介しているアイデアを実践する上でのポイント 、アウトプットの仕方もぜひ読んでみてください。
「なんか嬉しそうな顔してるね!」…そんな言葉も混ぜれば探究心がもっとメキメキと!
この中で紹介している「学びを深める声かけ例」は、主に次へのアクションへ誘導する内容となっていますが、子どもの姿・状態を表す言葉を前後に加えることで勇気づけられたり、次への継続を生み、探究する気持ちがさらにUP!ぜひ試してくださいね。
【 例えば… 】
・「わぁ、動物さんのそんなところ、よく気づいたね!」
・「おっ!なんかすごく集中している顔をしているね!」
・「なんか、嬉しそうな顔してるね!」
・「うーん、今、本当に夢中になっていたね!」
・「なるほどね!そういう考え方もあったか。おもしろい!」
・「なんか、楽しそうだなぁ…」
・「おっ、それいいね!嬉しそうだねー」
・「今、こっちの言うことも聞こえなくなるくらい、
・「それ、本当に好きなんだね!」
では、具体的にアイデアをご紹介していきます。
動物や昆虫、外の世界(星空・宇宙などを含む)が好きな子
■山や海、森、動物園などに赴き、実物を観察したり触れたりスケッチしたりする。釣り・魚獲りなども(お友だちと一緒でも楽しい)。
■スマホにマイクロスコープを取り付け、虫の眼や足、羽などの形を拡大して見て、写真を取ったりスケッチしたり。気づいたことをメモしていく。あるいは、ドローンなどを利用して、いろんな角度から自然や生き物を眺めてみる。
■紙や粘土、ダンボールなどを用いて、動物を再現!足はどうやって動いている?羽はどうついている?目や足の指はどんな形?バランスは?足と胴体の長さの比は?どんな部分が関節(コネクター)となって動いている?
[豆知識]
リンク(節)機構をうまく利用して、動物や虫(ダンゴムシなど!?)の形や動きを段ボールなどで表現してみましょう!
ワットのリンケージ、4節リンク機構、ミウラ折りなどは、段ボールとシカゴネジなどのコネクターがあれば、比較的簡単に作れます。高校生ぐらいの兄弟がいるご家庭や、数学好きなママパパならば「
◆中島さんオススメ リンク構機・作品参考リンク集◆
*中島さんも段ボールで試してみました! おもしろい動きをする<4節リンク機構>
*風で動く謎の生き物 テオ・ヤンセン「ストランド・ビースト」
※粘土素材については次項目「工作、ものづくりが好きな子」参照。
■地球上に今、自分の好きな動物や関連する動物がどれくらい存在するのかを調べて、その数を絵(グラフ)などで表現してみる。いろんなテーマを考えランキングを作ってみる。
*例:世界で一番大きい生き物は?世界で一番よく食べる生き物は?(「一番よく食べる」というのは、どう決めたらいいのかな?)等。
■動物・生物・植物の気持ちを考える。普段何か育てている場合は、日々観察し、発見したことはメモして、それがなぜかなどを考える。ペットの気持ちになって、ペットの日々をつづった絵本を作っても素敵!虫や魚、植物でもペットの心の声をよりよく聴くにはどうしたらいいか、未来のツールなどを考えてみる。
■どうしてその生き物が、その形、色、性質を持っているのか調べてみる。
【学びを深める声かけ例】
・日本にしかいない動物っているのかな。
・この川は、なんでこんな形をしているのかな。千年前、1万年前はどうだったのかな。日本や世界は昔、どんな形だったんだろう。
・微生物ってこうやって見るととても美しいんだね。どうしてこんなに丸いのかな?どうやって生まれてきたのかな…よい微生物もいるのかな。ウイルスと菌って何が違うのかな。納豆の中にはどんな菌がいるんだろうね!見えるかな…?お腹の中でどうなるのかな?
・わぁ、動物さんのそんなところ、よく気づいたね!
・その動物、面白い!この動物はどうやって動くの?/食べるの?
■テーマを設定し、その環境に適したオリジナルの生物(動物、虫、魚など)を発明してみる。たくさんの動物を発明したら、オリジナル動物園を作ってみる。お友だちに体験してもらう。
【学びを深める声かけ例】
・アンドロメダ大星雲の中にもし動物や虫がいるとしたら、どんな形をしていると思う!?
・酸素が足りなくなったら、どんな動物が生きていると思う?
・宇宙にサバンナや海があるとしたら、どんな生き物がいるんだろう…。
・もし今の時代に恐竜が蘇ったら、どうなるかな。温度や湿度は昔と一緒なのかな。
・おっ!なんかすごく集中している顔をしているね。
■宇宙の状況や海の中、空の様子などを(温度、気圧ほか)調べ、今の自分の周りの温度、気圧と比較する。重力がない状態を想像し、どんなことが起こるか考えてみる。
*例:どうやってご飯を食べる?靴下を履く?枕をする?胃袋はどうなる?
■宇宙空間を擬似的にVRや360度画像、ライブ映像などで体験する。宇宙に限らず、世界中のいろんなところをバーチャル旅行する。
*例:NASAが提供する国際宇宙ステーションのライブ映像、「きぼう」の3Dギャラリー(スマホ用V Rゴーグル)、宇宙3Dシミュレーション「Celestia」、NASA ×Google 共同開発のVR「Access Mars」、Google Earth の「Voyager」機能による世界旅行(3Dも可能)体験など。
■宇宙に行くにはどうしたら良いか考える。ロケットを作るにはどうしたらいい?形は?段ボールなどでまずは試作品を作ってみよう!(お友だちと一緒に会議も♪)
■星空観察!天体望遠鏡や肉眼にて、いろんな星を探してみる。「Star Walk」など、今の星空の様子を美しく魅せてくれるスマホのアプリも活用。自分で簡単なプラネタリウムを作ってみても。
■自然の中でいろんな写真や音の記録をとり、それらを組み合わせてストーリーをつけ、一つの作品を作る。匂いや味、触感もなんとか記録がとれないか(未来の自分に残せないか)色々と方法を考えてみる。メディアは動画でも写真でも、文章でも、絵でも。
■小さなロボットと遊びながら、新しい生き物(ロボットやAI)と触れ合う。育成系ゲームも時には◎(何かを大事にしたいという気持ちが育つかも)。
■世界のいろんな文化的な料理を検索し、作ってみる。あるいはケーキやお菓子、パンなどにどんなものが入っているか、目に見えない材料について色々と探ってみる。
こんなものも活用してみよう!
・虫取り網、虫かご、画用紙、描くもの(筆など)、段ボール、粘土、ストローなど身近なもの
・スマホ用マイクロスコープ、ミニドローン(とプログラミングソフト)など
・動物・生物に関わるデータ
・宇宙関連のV Rツール、ライブ映像、星空に関わるアプリ「Star Walk」など
・育成系ゲーム、ロボット「Ozobot」など
工作、ものづくりが好きな子
■折り紙や画用紙、いろんな粘土、専用キット等で、自由に自分でテーマを決め好きなものを作る。
【学びを深める声かけ例】
・なるほどー。そのアイディア、面白いなぁ。
・(自分で作った工作が壊れてしまった時)さらによくするチャンスだよ!どんな風に壊れたちゃったの?直せるかな?作り直すなら、今度はどんな風に作ればいいと思う?
[豆知識]
紙粘土、油粘土、土粘土、樹脂粘土など、粘土にもタイプはいろいろ。紙粘土は乾燥すると硬くなります。土粘土は水を加えると再度変形できます。遊びとしては油粘土が良いでしょう。最初にアルミホイルなどでざっくりした形を作ってから粘土で造形してもOK。もし本格的に将来に残る作品を作りたい場合は、オーブン粘土やアポキシ樹脂粘土(2つの粘土を混ぜ合わせて、化学反応が起きている数時間の間に作品を作る)がおすすめです。
色などはアクリル絵具やポスカ、油性ペンなどで塗れます。絵の具の場合、本格的にカッコよく仕上げたいならば、下地に「プライマー」
■好きなものの形をデッサンし、全体のバランス、色、形などを研究する。ミニ建築家・ミニデザイナーになって、いろんな橋やかっこいいテント、椅子、テーブルなどを設計・実際に作ってみる。親や兄弟、お友だちに使ってもらい感想をもらう。
【学びを深める声かけ例】
・なんか、嬉しそうな顔してるね!
・あの車、かっこいい!何でかな?色かな。あの四角がいいのかな。あ、ここに対称性(右と左がおんなじ形だったり…)があるんだね。
・大体、良いデザインには3つの構造があるんだって!大中小の形。これだと、どうだろう…。
*大人自身もデザインについての考察を深め、こどもたちと一緒になって議論してみると良い。一人の人間として、自分の好き嫌いを述べることも、時には刺激になるかもしれません。
■牛乳パック、割りばし、紙コップ、段ボール、ストロー、風船、ペットボトルなど、身近なものを活用し、何かテーマを決めていろんな作品を考え、描き、試作品を作ってみる。
*テーマ例:コロナで家にこもりっきりな時にあったらいいなと思う道具(装着するもの?)/ペット用の遊び道具/熱いものを食べる時に利用できそうなもの
【学びを深める声かけ例】
・光らせるにはどんなパーツが必要かな?
・あのバッタはなんであんなに遠くまで飛ぶのかな。ミニバッタ、段ボールで作ってみる?飛ぶかな・・・
・あぁ、春の空気をもっと感じたい!何か家でも春の風を感じられる、良い道具考えて!
・うーん、今、本当に夢中になっていたね!
・(モーターや滑車、歯車などを与え)こんなパーツがあるけど、使ってみる?
・動きが速すぎるのを遅くするにはどうしたらいいのかな?
・来週、いろんなお友だちがおうちに来るよ!庭に、何かみんなが入れる大きなオリジナルテントをみんなで作ってみる?壊れないようにしないと!
■椅子や帽子などを、普段と違う使い方ができないかな?と考える。椅子を帽子にしたり、帽子に枠組み+サランラップをつけて臨時のボールにしたり…。また、異なる2つのものを結び付けて新しいものが作れないか考える。鉛筆と定規をくっつけたらどうなる?野菜とタイヤをくっつけたらどうなる?
*参考:絵本「はじめてであうすうがくの絵本」
■面白い作品を作ったら動画を撮ってiMovieなどのソフトで自分で編集し、「Youtube」「Vimeo」などWEB上にアップしてみよう。作り方のアップも良い。
*個人情報が気になる場合は、顔が写らないようご注意ください。オーバーヘッドカメラにて手元だけ写し、少し編集などを加えるだけでも、十分魅力的な動画が作れます。
*ライブストリーミングをする場合は、マイクやカメラを準備し、配信ソフト「O B S」を利用すると良いですね!その場合、事前にある程度ストーリーとシーンの準備を。
■いろんな手触り・色・匂いのスライムなどを作ってみる。また、それをデコレートし何か食べ物に見立てたり、アートとして可愛いく仕上げて写真や動画にて記録する。
【学びを深める声かけ例】
・透明にするにはどうすればいいのかな?
・もっと硬くするにはどうすればいいだろう?動画サイトで調べてみようか?
・なるほどね!そういう考え方もあったか。面白い!
・アイスクリームみたいなスライム、できないのかな。
・この動画、面白い!今度○○ちゃんも動画アップしてみたら?手伝います!
■光で遊ぶ。いろんな半透明のセロファンやペットボトル、ギザギザがあるコップなどにいろんな光(スマホの光など)をあて、天井や壁紙に照らし、その不思議な形や色、動きを楽しむ。いろんなセロファンやダンボールを組み合わせて、オリジナルな影絵アートツールを作る。
■新しいオリジナル玩具を作る。まずはテーマ設定。・スケッチから!最後はパッケージ(包み)にまで気を使い、オリジナルアートトイデザイン。過程もしっかりドキュメンテーション(記録)し、過程も含めてSNSなどに上げていくと面白い。
■いろいろな実験にチャレンジ!
・導電シールや導電ペンを用いて、はんだごてのいらない回路を作り、LEDを光らせる
・オリジナルの温度計をペットボトルなどを用いて作ってみる。
・コインやレモン、バナナなどで電圧をとり、スマホなど身近なものを充電してみる。
【学びを深める声かけ例】
・ここにも電気があるらしいよ。〇〇ちゃんにも電気が通っているのかな!?
・なんか、楽しそうだなぁ…。
■ネット上でいろんな3Dモデルを探し「Blender」「 Fusion360」などの3Dモデル編集ソフトで開く。また、3Dスキャナー「Structure Sensor」で自分やママ・パパ、お友だち、作品などを3Dスキャンし、ミニチュアの自分などを3Dプリントしてみる。色を塗ってみても。
こんなものも活用してみよう!
・いろんな紙(硬いもの、柔らかいもの)、いろんな粘土(紙、木粉、石粉、樹脂、プラスチック、シリコンほか)、段ボール、ストロー、輪ゴムなど様々な身近な素材
・のり、ホウ砂、水、インク
・電子回路キットやロボット製作キット・プログラミングソフトなど
・モバイル3Dスキャナー(「Structure Sensor」など)
・3Dプリンター
・3Dモデル編集ソフト(「Blender」「 Fusion360」など)
・3Dペン
ブロック、積み木、パズルが好きな子
■エッシャー(だまし絵で知られる版画家)などの面白いアーティストの作品展を見に行ってみる。
■自分の好きなものを作ってみる。パーツを増やし、表現の幅を広げる、異素材のものも組み合わせる。オリジナルピタゴラスイッチを作ってみる。
【学びを深める声かけ例】
・どうすれば、もっと安定するかな?
・見本より、もっと面白くするにはどうしたらいい!?…そのアイデア、素晴らしい!
・おっ、それいいね!嬉しそうだねー。
■2次元、3次元共に、何かを組み合わせてできた作品をいろんな方向から眺めてその形の特徴を記録する。動きをつけて、その動きもいろんな方向から眺めて記録する。このパーツをこう動かして、こんな作品をしたい!という夢があれば、まずは夢をスケッチし、それを動かすカラクリを考え、実際に試作品を作ってみる(モーターや滑車、磁石などを利用してみよう)。
■お題に沿って構造設計に挑戦!
*テーマ例:橋、家、テーマパークなど
【学びを深める声かけ例】
・今、こっちの言うことも聞こえなくなるくらい、すごい集中し
・近くの橋や家の構造を観察しに行ってみようか!あれ、作れないかな。
・お友だちや、じいじ、ばあばのおうちも作ってあげよう!何があるといい?
・面白い椅子を作ってみて!どうやったら、お母さんも座れる椅子になる?
*参考:先出の「工作・ものづくりが好きな子」で紹介した、リンク(節)機構を参照。
【学びを深める声かけ例】
・お部屋の中でいろんな面白い形や「顔」みたいに見える模様(怒ってる顔、
*いろんな発見は、その時のツブヤキと共に記録しておくと素敵ですよ。
・それ、本当に好きなんだね!
■「T3パズル」や「In the Garden」などのテセレーションパズルに挑戦!オリジナルなしきつめかたをどんどん作り、作品は写真に記録したり、気がついたことや仮説もどんどんメモする。
■素材や形にこだわったさまざまなアートトイで遊び、どんなおもちゃが好きか、どんなおもちゃだと気持ちよくどんどん自由な発想が出せるか、などおもちゃの世界の奥深さについて考えてみる。
*例:スイスのネフ社などバウハウスの質の良い木の素材・面白い形の積み木・スロープ
ドイツ・デュシマ社のフレーベル積み木、ウール・レンガ積み木
シュタイナー教育に基づいたグリムスの積み木
ブリオの他、日本古来から伝わるけん玉や隈研吾氏発案の三角形積み木など
■「ポリドロン」「マグフォーマー」などの、自由自在に組み合わせていろんな形を作れるブロックを用いて、自由に作品作りに挑戦!お友だちや兄弟、親の作品などで、いろんな角度の発想も楽しむ。
■レゴ社の「デュプロくるくる遊園地」や学研ステイフル「ニューブロックプログラミング」、「キュベット」などでいろんな作品を作り、時にはプログラミングで色々と動かしてみる。
■折り紙でいろんな美しい立体を作り、それらを組み合わせてさらに大きな作品作りに挑戦!あるいは、ミウラ折りのように3次元的に動いたり、曲面になったりする形を折り紙で挑戦して、探究を深めてみる。
■「Think!Think!」「DEARWONDER」など、面白いパズルアプリに挑戦!いろいろな発見を記録していく。パズルの中に潜む算数の不思議を発見・研究の上、自分でも新しいパズルやゲーム作りに応用。デジタルで作っても良い。できたら、誰かにぜひ挑戦してもらおう。
*これに限らず、算数的研究が少しでも含まれていれば、ものづくりなど含め算数・数学の自由研究コンクールに応募してみると良いかもしれません!過去作品はこちらから。
■パソコンやタブレット上で、立体空間で自分の作品を再現してみる。
■ハードディスクを買って、ゲームエンジン「Unreal Engine」や「Unity」をダウンロードし、まずはそこにあるいろんなデフォルトの環境を取り込み、VRゴーグルなどを用いてVR世界を体験。少しずつ、そこに自分の好きなものを置いたり、音を付けたりして、オリジナルのバーチャル空間を作っていく。
こんなものを活用してみよう!
・段ボール、紙、木、ビー玉など
・ネフ社・デュシマ・グリムス・ブリオなどの積み木、レゴ、ニューブロックプログラミング、ポリドロン、マグフォーマー、T3パズル、テセレーションパズルなど
・パズル系プログラミングソフト、立体図形で遊ぶアプリ「Think!Think!」「DEARWONDER」など
・エッシャー関連の本・テセレーションにまつわる数学の面白い本
・画用紙、ハサミ、のり、色ペンなど。あるいはグラフィックデザインのソフト
・VRゴーグルとゲーム開発ソフトウェア(「Unreal Engine」など)、VRパッケージ
ゲームが好きな子
■世界にあるいろんなじゃんけんや指ゲームなどで遊び、自分たちでも少しルールを変えて試してみる。
【学びを深める声かけ例】
・そのじゃんけん、面白い!じゃんけんってなんでグーチョキパーの3種類なのかな?
■「人狼」などのコミュニケーションゲームに家族やお友だちと挑戦。自分たちで少しルールを変えたり、必要な素材を手作りにしたりして発展させる(社会や経済、学校などをテーマにした新しいコミュニケーションゲームを考えても。演出や演技も求められる)。
■いろんなユニークなサイコロを作り(正四面体サイコロ、目が1、3、5、7、9、11の立方体サイコロ、歪んだサイコロなど)遊んでみる・サイコロゲームを考える。
【学びを深める声かけ例】
・変なサイコロを作って対決してみようか!パパ・ママも面白いサイコロ作ってみたよ!
・うーん、今、本当に夢中になっていたね!
■いろんな形・大きさのルービックキューブに挑戦!どうなっているか調べてみる。一辺が6や7のルービックキューブなんて作れるの?これを真似して作ってみよう!どうくっついているのかな?
■カードゲームマジックに挑戦(算数・数学の応用)・知能系おもしろアプリに挑戦。
【学びを深める声かけ例】
・こんなソフトがあるみたいだよ!お友だちがいろんな作品を出してるよ!やってみたら?
■あやとりや折り紙、お手玉でも、いろんな遊び方を開発!世界には、どんなあやとりや折り紙、お手玉の方法・形があるか、調べてみる。文化的な特徴は?他にも、けん玉、コマ遊び、鞠つきなど古くから伝わる遊びをしてみたり、昔この国ではどんな遊びがあったのかな?と調べてみたり。自由研究を(紙・写真だけでなく動画・音・G I Fなども含め)まとめてみる。
*参考:本「オセアニアのあやとり」
■面白いゲームの特徴(レアキャラの確率、音、動き、色など)を研究。
■オリジナルゲーム・オリジナル占い作りに挑戦!自分ならばどんなオリジナルゲームを作りたいかアイデアをいっぱい出して、たくさん試作をしてみよう!お友だちや親戚などにもどんどん試してもらい、ユーザーテストの結果をフィードバックしてもらおう。
*例:
・じゃんけんやカードゲーム、サイコロ人生ゲームのようにランダム性があるもの。
・輪投げやオセロのように徐々にうまくなれるもの
・コミュニケーションゲーム
・ロールプレイゲーム
・育成系ゲーム、冒険RPG、eSports
【学びを深める声かけ例】
・今のストーリー面白い!メモして、段ボールとかで作ってみたら?
・そんなにそのゲームが好きならば、そのゲームの1レベルを自分で作って送ってみたら?
■「Springin’」「Scratch」「ビスケット」 などのプログラミングツール、言語を使用し、iPad などでデジタルゲーム作りにも挑戦。作品は公開して共有する。
■目を使わない・耳を使わない・手を使わない・言葉を使わない、など制限をかけ新ゲーム開発。例えば言葉でプレイヤーを動かすゲームを具体的に考え、まずはフェークでも良いのでアイデアをスケッチやプロトタイプ動画にしいろんな人に見てもらう。どうやったら実現できるか考える。いろんな専門家にも聞いてみよう。
■ゲームが上手い選手のプレイを観戦し(オンラインライブビューイング)、研究する。
■「Google Teachable Machine」や「Quick, Draw!」のようなAIに学習や判断させるオンラインゲームで機械学習にて遊び、応用を考えてみる。
■ゲームや遊びの歴史、世界での違いなどを調べてみる。その上で、新しいゲーム作りに挑戦。
こんなものも活用してみよう!
・知能系おもしろアプリ、オンラインゲームサイト、家庭用ゲーム機。「Think!Think!」「DEARWONDER」「Coolmath Games」「Wii」など
・ゲーム作成プログラミングソフト「Springin’」「Scratch」「ビスケット」「p5.js」など
・サイコロ・カード(トランプなど)・碁盤・石・定規・ビー玉など。身近なものなんでもOK
・いろんな、古くから伝わる遊び道具(けん玉、お手玉、カルタ、百人一首、鞠など)、遊び方(あやとり、折り紙など)
・AIに学習や判断させるオンラインゲーム。Google「Teachable Machine」「Quick, Draw!」など
・「Twitch」「Youtube」などのオンラインライブストリーミング
好きなことがコレと言って見当たらない子
■なるべく自由な発想ができるような余白がある遊び空間で遊ばせ、時に仕掛け、自由にティンカリング! 本人のペース・やり方で、ゆったり遊ばせる。もちろんお友だちと一緒もOK。
*例:
・ガラクタばかりを並べたワークスペース
・模造紙と画材を広げた、汚しても良い自由なキャンバス空間
・本格的な画材とキャンバスを準備したアートスタジオ
・いろんな音を出せる音楽プレイグラウンド
・ほとんどなんにーもない真っ白な空間やキャンバス
・粘土などがたくさん置いてある陶芸スペース
・おもちゃがたくさんのトイプレイグラウンド
・置いてある陶芸スペース
・おもちゃがたくさんのトイプレイグラウンド
その中で、面白いストーリー、新しいおもちゃの発想などができた時は、記録したり、少し(作品として)一歩深めたりすると良いですね。
■好きなトピックがあったら、絵本がわりに夜一緒に(大人が読むような専門書でも)パラパラと読んでみる・写真や動画を見てみる。
■「もし明日太陽がなくなったら…」「もし海が急に干上がったら…」「もし急に世界中の気温が10度高くなったら…」などのシナリオを子どもと一緒に楽しんで考えてみる。
■川がよく氾濫して困っている街、橋が壊れて困っている村、お年寄りがたくさん一人暮らしをしている町などいろんな状況を仮定して、そこの町や村作り、課題解決案するようなサービス、アイテム作りなどをおままごとのように行う。
■ちょっとしたソフトやアプリを、大人も一緒に新しく学び楽しみながら、応用を考えてみる。
■好きなことにこだわりすぎず、ちょっとでも楽しそうかな?と思ったら、絵本作り、音楽を聴きながら絵を描いたり、詩や曲を鼻歌レベルでも作ったり、スライム作り、工作をしたり。また、不思議な動物を考えてみたり、不思議な音のする楽器を作ってみたり、新しいスポーツを考えてみたり、オリジナルゲームを作ってみたり…。いろんな発見・発明を楽しむ。
■時には本や動画などで面白そうな実験や遊び、ゲームなどを見て、今後の遊び・学びの参考に。
■ハムスターや犬・猫、植物などを大事にしている場合は、その観察の中から見えてきたいろんな発見を大事にする(観察日記をつける、研究としてまとめるなど)
【学びを深める声かけ例】
・その絵、素敵。触感が絵に現れている!こっちの触感だとどうなる?
・ハムスターのそんなところに気づいたんだ!すごいよく見てるね。研究ノート作ってみたら?
・それ、すごい発見・アイディアだと思う!研究としてまとめてみたら!?それがわかったら、世界のいろんな人の役に立つよ!
・今日は寒いねー。もし今、空から氷がバシャバシャ降ってきたらどうする?
・この絵、最高!ママ(パパ)大好きなんだよね。この□□□なところがすごく良い。〇〇ちゃんはどんな絵が好き?
・50年後、100年後になったら、どんな車が走っているんだろう…。
・毎日生きていればいろんなことがある!今日の気持ちはどんな色?
・おっ!なんかすごく集中してい
こんなものを活用してみよう!
・公園、遊び場。自分の部屋でも。特に、汚しても良い場所を時に作ると良い。
・いろんなタイプの紙、石、ダンボール、プラスチック、粘土、色鉛筆、クレヨン、チョーク、な絵の具といった、様々な素材・画材。テープ、割り箸、紙コップ、輪ゴム、はさみ、のり、カッター、とんかち、ネジまわし、釘、果物、野菜など
・いろんな面白い遊び道具(ブロックなど)
・タブレットや面白いソフトウェア、ハードウェア(VRゴーグルなど)
・たくさんの絵本、本、お友だちの作ったゲーム作品など。時に「Youtube」 や 「Twitch」などの動画・ライブ配信サービスで他の人の作品を見たり、世界でいろんなものの作り方・テクノロジーの使い方などを紹介しているチュートリアルを探すのも良いですね。
中島さち子さんからのメッセージ
すぐに没頭できることが見つからなくても心配ナシ
いかがでしたか?何かちょっとしたヒントや気づき、面白そう!というようなアイディア、ツールに出会えていたら、幸せです。
すぐに没頭できることが見つからなくても心配無用です!小さい頃は、とにかく自由に、自分なりのペースで遊ぶことが一番。その様子をよく観察していれば「これは興味あるのかな?」「この遊びは他と違って楽しそうだな」という素ぶりに気づくことがきっとあるはず。なお、子どもたちは(大人でも)好きなことがどんどん変わっていって当然!何か一つに没頭し続けることは、あまりないことです。また、ペースも遊び方もハマり方も人それぞれ。没頭できるものや何か一つ夢中なものがないからと焦る必要はありません。ただ、一つでも、1日でも、何か好きなものを長く深く遊び探究した体験があると、それは小さな自信・創作の喜び体験にも繋がります。だから、何か、あれ?これ好きかも…というものに出会えた時は、さりげなく応援してあげる程度で大丈夫です。「これが好きに違いない」「これにハマって欲しい」と思い込みすぎると、逆効果になる場合もありますので、ご注意ください!
とにかく、まずは時に、ストレスなく自由に遊べる時間・環境を作ってみましょう。遊びは、創造性を養う大きなきっかけです。ただ、「制約」が創造性を促すこともあります。いろんなカラフルな素材・道具が準備してある空間も素敵ですし、ある意味では何にもないようなお部屋や砂場で想像力を駆け巡らせるのも素敵です。
こどもも小さな大人。自分の好き嫌いやペース(しかも親とは異なることがほとんど)を持っていますので、彼らの創造性を信じ、ゆったり待ちながら、一緒になっていろんな試行錯誤やものづくり、社会との関係を考えることを楽しんでみてください。
親御さんが忙しい時は、それもチャンス。彼らの感性で空間やツールもどんどん生み出していくことでしょう。自分の感性で色々と試してみた時は、そのオリジナルな発想の価値を認め、大人の方同様、敬意を見せてください。
研究者や芸術家は、自分のペースで好きなことができた人が多い!
なかなかうまくできない時、何度やっても失敗しイライラしてしまう時、人以上になかなか時間がかかってしまう時も、ある意味でチャンスです!失敗やなかなかできない時・苦しい時こそ、大きな創造的な学び・成長につながるものです。人には見えない角度から物事が見えたり、大きな発見につながったり、自分と向き合う時間になったり、切り替える方法を見つけたり。周りでヤキモキせず、失敗しても大丈夫!という空気にて、自分なりのペース・試行錯誤を応援してあげてください。
なんのやる気が出ない時も、何かエネルギーをためて次なる大きな創造に向かう充電期間。ゆっくり構えましょう。なお、研究者や芸術家は、その世界に秀でていたからプロになれたというよりは、自分のペースで好きな世界に出会うことができたからこそ継続し自分の結果を生み出していけることが多いです。そして、そうした「(自分なりの)好き」は、どんな仕事につくにしても、今後の人生の辛い時期などに自分を支えてくれる喜びや自信となるはずです。
わが子を信じてポジティブに転換を
うちの子はすぐ消極的になる・すぐ飽きちゃう・自分勝手だ・頭が悪いから…のような否定的な言葉は、たとえ他の方の前での謙遜だとしても、あまり使わない方がよいですね。知らず知らずのうちに刷り込まれたり、自信の無さに繋がってしまいます。また、言葉以上に、どう親が自分のことを(本当は)見ているか、は、こどもたちは敏感に感じ取ります。
他人との比較ではなく、その人自身のものの見方や取り組み方を、ポジティブに見ましょう。
・消極的 → 慎重に丁寧に考える
・すぐ飽きる → 好奇心が大きく、いろんなことを試してみる
・自分勝手 → 自分の意見をしっかり持って考えようとしている
・頭が悪い → これはN G!頭が良い悪いではなく、ユニークな発想・感性を持つ、など
大人自身がものの見方を創造的・多角的・メタ的に広げながら、こどもたちの根本を信じて向かい合うと良いと思います。
ただし、人や生物を傷つけたり、自分や誰かを否定したり、あまりに危険なことをしてしまう時は、しっかり目を見て(同じ高さの目線で)、何がいけないと思うか、大人に伝えるのと同じように本気で伝え、こどもと一緒に議論してみましょう。こどもはこども扱いする必要はなく、小さな大人として、しっかり向き合ってあげることで、こども自身も生きることの喜びや自信を育んでいくはずです。
大人も一緒に失敗したってOK。それが子どもたちの刺激・勇気に
ここまで、お子さんの創造性発揮のための活動例を、テーマ別に描いてきましたが、実はこれらは大人も一緒!お母さんお父さんも、こどもの時の発見・発明の喜び・驚きを忘れず、いろんな不思議を面白がりながら、ああでもないこうでもないと(自分にあった活動・プロジェクトにて)試行錯誤してみてください。時に、間違えたり失敗することももちろんO K!感情を揺らすことも良いと思います。歴史上の天才と呼ばれる方々も、みんな、たくさんたくさんの間違えや失敗や苦しみの中から、多様な新しい視点を生み出してきました。
また、親が一生懸命試行錯誤していたり、時には間違えながらも考えたり取り組んだり…。
ワクワク・ドキドキしている様子を見ることは、子どもたちにとっても刺激・勇気になります。子どもたちが一生懸命遊んでいる傍で、お母さんお父さんも等身大で何か(別のことにでも)に悪戦苦闘し、感情を動かしながら色々な発見・発明・失敗を繰り返す姿を見ているうちに「自分は自分でいいんだ」という感覚や自信も身についてくるはずです。
同時に、それは、大人側の生きる力・喜びにもつながるはずです。大人はいつまでも大きな子どもであり、子どもは小さな大人です。互いに年齢を超えて、対等にぶつかり合ったり尊敬しあったりする中で、お互いの主体性が花開いていくのではないかと思います。
親だって”やる気にならない”もある。それを認めつつ「与えるお勉強」にならないよう、子どもと伴走(伴奏)を。
今回の事例の中で何度か写真でも登場いただいた、こども園「さくら」では、本当にワクワクするような、子どもたち主体の遊び・探究・プロジェクトがどんどん自発的に起こっています。その仕掛けは実は(その創造に伴走・伴奏している)保育者側のマインドセットにもあるのかもしれません。
こども園「さくら」園長の堀昌浩先生は、大人・こどもが<共主体>という考え方が、実は育児の中ではとても大事なのではないかとおっしゃっています。大人(こどもにとっては学びや人生の伴走・伴奏者)が、同時に「主体的なマインドセット」を獲得すること、その過程でいろんな気持ちを動的に動かしていくメンタルローテーションを何度も回し、メタ認知的に物事を捉えられるようになっていくことが大事だと。それがないと[STEAM]はただのお勉強になってしまうのではないかと。
ぜひ、なかなかうまくいかない・なかなかやる気にならない(!?
*メタ認知…メタ=「高次の」。自分の記憶・感情・思考等を客観的にとらえ、その認知をより高い視点から認識すること。
奇しくも、新型コロナウイルスの影響でおうちでの活動が多くなってしまった時期に、前編、後編のアイデア紹介がリリースされる形となりました。先に「制約」について述べましたが、今のコロナによる制約は、もしかしたら逆に創造性を育んでくれるかもしれません。少しでもヒントにしていただき、まずはくれぐれも心身の健康・安全をとにかく大事に、その上でなるべくワクワク日々を過ごしていただけますように。
そして、本企画をヒントに何か面白い作品やプロジェクトができたら、その過程などを含め、ぜひ教えてください。一人一人が社会を動かす今。ぜひ、こどもも大人も一緒に、多様な視点を持ちながら、素敵な未来を作っていきましょう。
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