【STEAM教育特集】第6回:絵本ナビユーザーのギモン・質問に専門家が回答!
当特集では以前、STEAM教育についてのギモンを絵本ナビユーザーさんからお寄せいただくアンケートを実施しました。STEAM教育特集6回目の記事となる今回は、その集まったギモンの中からいくつかをピックアップし、専門家に答えていただきました。
ご回答いただいたのは、当特集でもおなじみの中島さち子さん。STEAM教育への理解をより深めることができ、絵本と関係する話も出てきますので、要チェックですよ!
【参考】
第2回:中島さち子さんが語る!親は子どもの探検の仲間。一緒にワクワクする学びを
第3回:子どもの好きなもの別 家庭でできるSTEAM実践アイデア[前編]
回答してくださったのは…
中島さち子
STEAM教育家。国際数学オリンピックにて日本人女性初&現在唯一の金メダルを獲得。ジャズピアニストとしても活躍する。
内閣府STEM Girls Ambassador。経済産業省『「未来の教室」とEdTech』研究会に研究員として参加。米日財団日米リーダーシッププログラムフェロー。(株)steAm代表取締役、(株)STEAM Sports Laboratory 取締役、(一社)Follow the MUSE 共同代表。
2018年には初の絵本『タイショウ星人のふしぎな絵』(絵:くすはら順子、文研出版)を発刊。
【ギモン1】STEAM教育における文系学問の位置づけは?
なぜSTEAMの中に、文学などの文系の学問が含まれないのでしょう。また、STEAM教育における国語や英語(外国語)といった文系の学問の位置づけは? ―A.Kさん(30代)
文系学問は「A」 に含まれ、『リベラルアーツ』という意味合いで多角的な視点をもたらします。
STEAMの「A」は、元々Art(アート・デザイン)を指し示す言葉として挿入されました。日本ではArtと言うと絵を描くことや楽器を奏でることを思い浮かべがちですが、諸外国では<世界を見る新しい視点を生み出す><コンセプト・ストーリーを生み出す>世界として認識されています。また「A」がArtsを指すと考える場合は、より広くリベラルアーツとして捉えられ、それは教育、語学、政治、経済、環境などを包括します。
世界では当初STEM教育が発展しましたが、近年ではSTEM教育であっても、それをどのような文脈・視点・ストーリーで生み出すか、という問いやコンセプトの部分の重要性が認識されており、「A」を重視したSTEAMを推進する地域や国も増えています。
理解が深まる♪こちらもCheck →「STEM」から「STEAM」へ。「A」がもたらす変化とは?
【ギモン2】子どもにとってPCは脳に悪影響を及ぼしそう。使うメリットがあるの?
子どもにはPCにあまり触れさせたくない。視力も悪くなるし、脳に悪影響を及ぼしそう…。それ以上のメリットがあって、PCでの教育が取り入れられるのでしょうか? ―Fさん(30代、園児のママ)
PCを使ってプログラミングをすることだけが目的ではありません。創造の喜びに目覚めていくことが大切。
STEAM教育は、必ずしもPCを使いません!海外では、特に小さい頃は花や葉っぱを用いたり、電子回路でも野菜を用いたり、折り紙や段ボールなど含め、クラフト的なもの全般は大人気STEAMです。
確かにプログラミングを通じていろいろなアイディアを形にできる可能性はぐっと広がりますが、プログラミングはあくまでも全体像の中のごく一部。むしろ、それを通じて何をしたいのか、五感や身体性を通じた表現、ユーザ体験、ストーリー…多角的な要素の試行錯誤を通じ、それぞれが創造の喜びに目覚めていくことが大切です。五感の拡張のために技術ができることもたくさん。ツールに惑わされず、何が心踊らせるかに目を向けて頂ければと思います。
【ギモン3】STEAM教育で地域貢献できるようになるには?
子育てが終わった私がこの取り組みを理解し、地域に貢献できるにはどのように学んでいけば?―T.Sさん(50代)
子育て中でも終了後でも、自分が好きなもの等<生きた知>をインタラクティブに届ける挑戦を。
STEAM教育の面白いところは、<知>が受動的な知識にとどまらず、社会の中でどのように生きているのかという応用的・実践的な面を体験的に理解しながら、主体的・創造的な<知>に育っていくことを目指す点です。そのため、従来の学校や先生・保護者だけでなく、子どもたちが多様な地域の方、企業・研究者・アーティストなどと出会い、互いに刺激を与え合いつつ学びを構築していくという考え方・仕組み・環境も大切になります。例えば英国ではそうした方がSTEAM大使となり学校にいらっしゃることも。
子育て中でも終了後でも、ぜひ何かご自身の好きなものや専門の中に眠るいろいろな<生きた知>をインタラクティブ(受け手・送り手相互)に届ける挑戦をして頂ければ幸いです!専門分野の本を読んでみる、
「偉い人がすごいことを教える!」などと構えすぎず、
【ギモン4】STEAM関連の習い事・塾を選ぶ際の観点は?
STEAMをテーマにした習い事教室や塾が最近増えてきているように思います。子どものどういったところを見て選べばいいでしょうか? ―K.Yさん(40代、小学生のママ)
子ども自身が心踊ると思うものを信じ、取り組んでみよう。
STEAM教育やプログラミング教育に当然正解はなく、好きになるタイミングや没頭具合も人それぞれ。ただ、強制されたプログラミングなどは技術を学んでも面白くなく忘れた…で終わることも多く、本来の意義から離れることも。できるだけ子どもたちの自由な創造性・主体性を重視し、(正しく教えるというよりは)試行錯誤や独創性を許容する環境が望ましいと思います。
また、好きなことが実はプログラミングや回路や数学や…に繋がっていると知ると、突然夢中になることも。そして、子どもは小さな大人。お子さん自身が心踊ると思うものを信じまずは取り組み、続かない場合も自分の責任で振り返りつつ、ゆっくり歩めれば素敵だと思います。
理解が深まる♪こちらもCheck!→ 中島さんからのメッセージ。STEAMを取り入れるうえで大事なこと
【ギモン5】絵本好きなわが子にできるSTEAM教育は?
わが子は絵本が大好きですがまだ4歳。今から絵本を使ってSTEAM教育ができれば教えてください。初めて読ませる絵本だったら、このあとどうなる~?みたいな物語のあてっこ?(想像?)で遊ぶことはよくしていますが、これもSTEAM教育につながりますか? ―Y.Oさん(30代、園児のママ)
自分でストーリーを考えたり絵を描くことも◎。その経験が思考の研磨になり、喜びに。
素敵ですね!絵本は本当にすばらしい世界であり、とくに親子で一緒に絵本を読む時間は、やはりかけがえのないものです。絵本そのものにも、いわいとしおさんやヨシタケシンスケさん、長新太さん、安野光雅さん、山下洋輔さん、林明子さんの絵本など、いろいろと多角的創造的に考えさせる仕掛けがある面白い名作がたくさんたくさんあります。日本や世界の昔話も!
一緒に先のことを想像するのはとても良いSTEAMの学びになると思いますし、他にももしここでこうしてたらどうなったかな、これは本当にこうなのかな、など色々と自由な想像を一緒に膨らませて新しいストーリーを考える、などもとても良いと思います!
夢などをベースに親子で一緒に絵本作りも楽しいですね。切り絵や立体などを交えた、インタラクティブな仕掛け絵本作りも楽しいですし、まずとにかく自分でストーリーを考えたり絵を描くことそのものが非常に貴重な感性と思考の研磨になり、喜び(自己肯定感)にもつながると思います。
また、海外では色とりどりの面白い実験や活動がつまったSTEAM本も多く発売されており、一緒にいろんな実験やものづくりを楽しまれるのも、良い経験・思い出になるかと思います。
理解が深まる♪こちらもCheck!→ 絵本が好きな子にピッタリのSTEAM実践アイデア
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幼児さんママから子育て卒業ママまで、幅広い疑問に回答いただきました。本格的な導入の前だけに、正直まだSTEAM教育のイメージができなかったという方もいたかと思いますが、「PCを使うことだけがSTEAMではない」「絵本も活用できる」等、新しい発見があったのではないでしょうか?
この新しい学びについてさらに理解が深まり、ワクワクするような情報を今後も発信していきますので、ぜひお楽しみに!
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