【読んでみた】気になる児童書『いい人ランキング』。キーワードは”いじめ遺伝子”?!
絵本ナビ ショップチームの山本です。
先日、社内の本棚を眺めていたところ、ある児童書の背表紙が目に留まりました。
さわやかな青色に惹かれて手に取ったところ…
なんだか、タイトルがとても印象的なのです。
『いい人ランキング』
へぇ、「いい人」の定義を決めるってお話なのかな。
さぞかし和やかな優しい物語なのだろうな、と思いきや…
表紙のイラストが、ほんのり寂しい雰囲気を醸し出しています。
え、どうして?
「いい人」をランキングにして、いったいどんな物語が始まるの?
「いい人」でいれば、安全だと思っていた。
夏休み明けの教室で起こった小さな変化。それはやがて・・・。
木佐貫桃は中学2年。母の再婚によって、2学期から名字が変わった。
クラスメイトには違和感があるのは最初だけ、慣れれば別にどうということのない小さな変化だとばかり思っていた。
9月の終わりの文化祭。開催する予定だったミスコンを職員会議で禁止されたことから、2年1組は「いい人ランキング」というコンテストを行うことに。
しかし、桃が第1位になったことからクラスの空気は変わりはじめ・・・。
小さなきっかけがさまざまな連鎖を引き起こし、少女が追いつめられていく過程、そして意外なところからその状況を打破していく姿が、リアルに、そしていきいきと描かれる。
不器用な子にエールをおくる、ちょっとビターな青春小説。
本を開くと、とある姉妹の通学中の会話から物語は始まります。
タイトルのインパクトもさることながら、「新しい名前」「再婚」など、文章の中にちょっと心をくすぐるワードが散りばめられています。
そして、姉妹の会話がリアルで軽快。
読みやすい文章と気になる展開に促されて、息つく間もなく一気に読み切ってしまいました。
この本のテーマは、なんと「いじめ」でした。
「いい人」というタイトルから入ったのに、まさかこのテーマに行き着くとは・・・。
そして、読み終わった私が思う、この物語の最大のキーワードは
『いじめ遺伝子』
「いじめ」は連鎖するもの、ということでしょ?まずそう思ってしまうのですが・・・
いえいえ。
この言葉には、ただ「いじめは悪い事」というだけではなく、もっと深い見解に基づいた「意味」があるんです。
いい人ランキングから始まった、突然のクラスの変貌。
繰り広げられる展開に、きっと歯痒い思いをする人もいるでしょう。
過去の悔しい記憶が蘇る人もいるでしょう。
でも、読み進めていくうちに、「いい人ランキング」からの「いじめ遺伝子」の流れの中に、何だか見えてくるんです。
いじめって、いったい何なのか。
いじめは何故なくならないのか。
「いい人」ってどういうこと?
この本に書かれている事が、その疑問の完璧な正解にはなり得ません。
けれど、この本を読んで気づく事は多いと思います。
そして、それを考える「きっかけ」にはもってこいです。
付け加えておきますが、決して暗い、辛いだけのお話ではありません。
登場人物の強さに憧れますし、読み終わった後にはいっそ爽快感もあります。
その上で、向き合いたいものがそっと目の前に置かれた感じ。
文章はとても読みやすく、見せ方もとても良く、久しぶりに脇目も振らずに読んでしまったなぁ…と達成感を感じながら奥付を見たところ、作者は「チームふたり」の吉野万理子さんでした。こりゃあ面白いわけだ。
「いじめ遺伝子」を理解して、私は少しだけ視野が広がりました。
もし過去に行けるのなら、中学生の頃の自分にこの本を手渡したいくらい。
いじめ、というデリケートなテーマではありますが、まずは物語としてぜひストーリーを楽しんでもらいたい。きっと、登場人物と一緒に、壁に立ち向かいたくなるはずです。
小学生、中学生だけでなく、ちょっとこの本が気になってしまった高校生や大人の皆さま。
ぜひ、読んでみてください。
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