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月別児童書ランキングBEST10

【ランキング】2022年11月の児童書人気ランキングBEST10は?


今、絵本ナビで売れている児童書は? 話題になっているのはどんな本? 2022年11月の児童書人気ランキングをご紹介します。11月は、ベスト10内に2022年後半の新刊が3点も入りました。さて、どんな新刊が入ったのでしょう。クリスマスギフト向けの動きも出てきているようです。毎日の読書や贈り物選びのご参考にお役立てください。

2022年11月の児童書人気ランキングBEST10【2022/11/1~11/30】

第1位は『父さんのゾウ』(2022年8月の新刊)悲しみに向き合う少女オリーブと家族の物語

父さんのゾウ

オリーブは小学生の女の子。オリーブの父さんのとなりには、オリーブだけに見える灰色のゾウがいます。いつからいるのかといえば、オリーブが赤ちゃんだった時にママが亡くなってからずっとです。父さんに影を落とす大きくて灰色のゾウ。ゾウは、父さんの悲しみそのものなのです。

オリーブの身の回りの世話をしてくれるのは、やさしいおじいちゃんです。おじいちゃんは家事を楽しんでやり、毎日手の込んだ美味しいお弁当を作ってくれます。学校のお迎えにも来て、オリーブがワクワクするようなことも考えてくれます。
また、オリーブが悲しい気持ちの時には、小さな灰色の犬のフレディがいつもそばにきてなぐさめてくれます。

ある日、100周年を迎える学校の創立記念パーティに向けて、くらしの中やおうちの中にある古いものについて調べ、発表することになったオリーブ。すぐに、昔ママが使っていた自転車を持って行きたいと考えますが、父さんは自動車整備工でありながらも、なかなか直してくれません。

「オリーブがお父さんを元気にしないと、いつまでたっても自転車を直してくれないよ」そんな親友の言葉に背中を押されて、オリーブは、おじいちゃんや親友の手をかりて父さんのゾウを追い払おうと試みます。はたしてオリーブは、父さんのゾウを追い払うことができるのでしょうか。

対象年齢は小学校中学年ぐらいからですが、大人の方にも読んでほしい一冊です。ページ数は144ページと読み応えがありますが、横書きで進んでいく文章は読みやすく、ところどころに入ったやさしいタッチの挿絵も、子どもたちが無理なく読み進めていく時の助けとなることでしょう。子どもたちが読んだら、オリーブの感性にすっと共感して、オリーブとすぐに友だちになってお話に入っていくのではないかと思いますし、一方大人が読むと、子どもたちが見ている世界の繊細さにハッとさせられるのではないでしょうか。

物語の後半には、父さんのゾウを追い払う行動や、心にずっと閉じ込めていた自分の気持ちを外に出すことを通して、オリーブにも大きな変化が訪れます。その場面には、すっかり理解したつもりでいたオリーブの気持ちをあらたに発見する驚きが隠されていて、最後まで読んだ後には、物語をもう一度最初から読み返したい気持ちに駆られました。

オーストラリアのクイーンズランド文学賞児童書部門の大賞を受賞し、各国で翻訳されているという本書は、子どもの心の内にある感情を丁寧に描く物語。悲しみにどう立ち向かうべきかとまどっている子どもにも、悲しみの中にいる大人にもそっと寄り添ってくれる優しさに満ちています。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

読者レビューより

お父さんのそばにいつもいる灰色のゾウ。
オリーブだけに見えるこのゾウは、お父さんの悲しみ。
それを追い払おうと決めるオリーブのお話です。
おじいちゃんや犬のフレディの存在は、オリーブにとってすごくありがたく大切な存在なんだなぁと思いました。
そして、悩みを聞いて一緒に考えてくれる友達も、なんて素敵ないい子なんだろうと。
人の力は大きくてかけがえのないものですが、悲しみに立ち向かうには、それだけではダメなようです。
気持ちの変化・・・オリーブと一緒に味わえる、そんな1冊です。
人の心は複雑で、人により悲しみや辛さの捉え方も重さも様々ですが、人の気持ちがよく描かれている1冊に思います。
(まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子12歳)

濃くて、可笑しくて、ちょっぴり切ない……がまくんとかえるくんが織りなす温かな物語

ふたりはともだち

仲良しのかえる、がまくんとかえるくん。ふたりの間で繰り広げられるのは、濃くて、可笑しくて、ちょっぴり切ない……様々な愛すべきエピソード。アーノルド・ローベルの「がまくんとかえるくん」シリーズは幼年童話の傑作として、子どもから大人まで、たくさんの人たちに40年以上も愛され続けています。

そのシリーズ第1作目が『ふたりはともだち』、5つのお話が収録されています。

春が来たからと大急ぎでがまくんの家に走っていき、「おきなよ!」と大きな声で呼びたてるかえるくん。お日さまがきらきらして、雪も溶け、新しい一年がはじまったかと思うと、いてもたってもいられないのです。ところが、がまくんは布団の中。もう少し寝ていたいのです。11月から眠っているがまくんは「5月半ば頃にまた起こしてくれたまえよ。」なんて言うのです。そこで、かえるくんは……?

がまくんを外に連れ出して遊ぶためなら頭の回転だって早くなるかえるくんと、カレンダーに合わせて簡単に5月だと思い込んでしまうがまくん。最初のお話「はるがきた」で、幼さと可笑しさがたっぷり詰まったふたりのキャラクターを存分に味わうことができます。

続く「おはなし」と「なくしたボタン」では、それぞれのやり方でお互いを思いやっている様子(大いに巻き込みながらね)を、「すいえい」ではちょっぴりブラックな面をのぞかせつつ、思いっきり笑えるエピソードを披露してくれます。

すっかりふたりの世界観に夢中になった頃、登場するのが最後の「おてがみ」です。

悲しそうな顔で玄関にすわっているがまくん。なんでも「もらったことのないお手紙を待つ時間」なんだと言うのです。それを聞いたかえるくんは、がまくんに内緒でお手紙を書くことにします。ところが、配達を頼んだのがかたつむりくんだったので……。

国語の教科書に採用されたことで、今では多くの子どもたちに知られているのがこのお話。いずれ届くことも、その内容までもわかっているお手紙をじっと待つがまくんとかえるくん。その幸せそうな様子に、「手紙」の持つ力を感じずにはいられませんよね。

シリーズ4冊。がまくんとかえるくんのキャラクターを知れば知るほど、どのお話も読み返したくなる珠玉のエピソードばかり。日本では三木卓さんの翻訳で楽しむことができます。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

第3位は2タイトルが同数の売れで並びました。

ネートと一緒にナゾを解こう!

ぼくはめいたんてい(1)

みどころ

1982年の発売以来、たくさんの子どもたちに愛され、読み継がれてきた「ぼくはめいたんてい」シリーズの第1巻目。マージョリー・W・シャーマットさんによる全17巻となるこちらのシリーズは、5歳ぐらいから小学校低学年の子どもたちにちょうど良いハラハラさで、子どもたちがはじめて物語の楽しさに出会えるシリーズでもあります。つぎつぎにネートに降りかかるナゾ解きの面白さはもちろんのこと、巻ごとに増えていく個性的な登場人物、ネートからママへの置き手紙の内容など、読めば読むほど多くの楽しみをも発見できるでしょう。

すべての漢字にふりがながついているので、はじめての読み物としてもぴったり。ひとり読みに移る前に、まずは読んであげながら親子で一緒にナゾ解きを楽しんでみるのもいいですね。シーモントさんの温かくユーモアたっぷりの挿絵と、訳者の小宮由さんの柔らかな語り口も、子どもたちの読書をやさしく応援してくれます。お話の最後には「めいたんていのこころえ」もついていて、もし周りでなにかナゾが起きた時の役に立つかも!? さあ、ネートとどんどんナゾを解いて、一緒に名探偵になろう!

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

楽しく個性的な登場人物がいっぱい!

初めての本格的な冒険物語との出会いに

エルマーのぼうけん

さあ、リュックサックに道具をつめて、エルマーと一緒に冒険の旅に出発しよう!

これは僕の父さん、エルマーが小さかった頃のある冒険のお話です。ある雨の夜、エルマーは、年取ったのらねこから、「どうぶつ島」に捕らえられているかわいそうなりゅうの話を聞きます。りゅうは、空の低いところに浮いていた雲から落っこちてきたちっちゃな子どものりゅうで、ジャングルの猛獣たちに捕まえられて、川を渡るために働かされているというのです。

エルマーは、すぐに助けに行こうと決心します。早速ねこにどうぶつ島のことや、持っていくものを教えてもらい、旅の準備に取り掛かります。エルマーがリュックサックにつめたのは、「チューインガム、ももいろのぼうつきキャンデー二ダース、わゴム一はこ、くろいゴムながぐつ、じしゃくが一つ、はブラシとチューブいりはみがき‥‥‥」などなどたくさんの道具。そして「どうぶつ島」へと繋がる「みかん島」行きの船に忍び込んだエルマーは、六日六晩たってようやく「みかん島」へ。ここで食料のみかんをリュックいっぱいに詰め込んで、夜の間に「どうぶつ島」へと渡ります。

「どうぶつ島」へ着くと、早速りゅうがつながれている川を探しに、気味の悪いジャングルの中を歩いていくエルマー。ジャングルでは、おかしな喋り方をするねずみや、うわさ好きのいのししに出くわしたり、とら、さい、ライオンなど恐ろしい猛獣たちにつぎつぎと出くわします。猛獣たちはたいていお腹をすかせていて、食べられそうになることもしばしば。さてエルマーは、どんな風に猛獣たちの危険をくぐり抜け、どうやってりゅうを助け出すのでしょうか?

特に注目したいのは、リュックサックに詰めた道具たちの活躍と、見返しに描かれた「みかん島とどうぶつ島のちず」。道具は、はじめはこんなものが何の役にたつのだろう? と思ってしまいそうなアイテムばかりなのですが、エルマーの知恵も合わさって、驚くほどぴったりはまって役に立つ様子にワクワクさせられます。道具を介した猛獣たちとのやりとりもユーモアたっぷり。何回読んでも繰り返し楽しませてくれる場面がいっぱいです。
「みかん島とどうぶつ島のちず」には、エルマーが冒険した場所や、エルマーの足取りが細かく描かれています。地図を見ながらお話を読み進めていくと、よりエルマーと一緒に冒険しているような臨場感が味わえるでしょう。お話の途中で、また一章ごとに、お話を読み終えた後になど、ぜひ地図をたっぷり眺めながら読んでみて下さいね。

日本では、1963年の刊行から50年以上も読み継がれ、幼年童話の最高峰とも呼ばれる本書。作者は、ニューヨーク生まれのルース・スタイルス・ガレットさんという女性で、このお話でニューベリー賞(アメリカで毎年最もすぐれた児童文学作品に与えられる)を受賞しています。さし絵は、お継母さんのルース・クリスマン・ガネットさんによるもの。細かいところまで丁寧に描かれながらも、ユーモアあふれる魅力的なエルマーやりゅう、猛獣たちのさし絵が、物語を一層楽しく盛り上げます。さらに英語版の文字の大きさや書体を決めたのは旦那様のピーターさんだそうで、刊行時は、家族総出でこの本を作るのに取り組まれていたそうです。

この後も、『エルマーとりゅう』『エルマーと16ぴきのりゅう』と続いていく、エルマーとりゅうのとびきりの冒険と友情の物語。内容は5才ぐらいから楽しめるかと思いますが、子どもがひとりで読むのは小学2年生ぐらいまでは難しいのではということと、なかなかのハラハラドキドキの冒険となりますので、はじめはぜひ大人が読んで聞かせてあげて下さいね。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

第5位 エルマーのぼうけんセット

3位にランクインした「エルマーのぼうけん」のセットが5位に! 『エルマーのぼうけん』『エルマーとりゅう』『エルマーと16ぴきのりゅう』の3冊セットです。

4歳から小学校1、2年生へのクリスマスギフトにおすすめ!

エルマーのぼうけんセット

エルマー少年とりゅうの子の冒険物語3部作。ユーモアたっぷりのお話は、読むものの心を空想の世界に羽ばたかせながら、物語のリアリティーに引き込みます。幼年童話の最高峰として読みつがれているロングセラー。

第6位 番ねずみのヤカちゃん

番ねずみのヤカちゃん

ドドさん夫婦の家の壁と壁のすき間に住む、おかあさんねずみと、四ひきの子ねずみ。そのうち四ひき目は、「やかましやのヤカちゃん」とよばれていました。
どうしてこんな名前がついたかって?

それはね…このヤカちゃん、とてつもなく声が大きかったからなんです。

たとえばこんな風。おかあさんねずみが、ドドさん夫婦に存在を気づかれないよう「けっして音をたててはいけない」と注意している時も「うん、わかったよ、おかあさん」と答える声のなんと大きいこと!他にもおかあさんねずみの注意に対して、全部うんと大きな声で答えるヤカちゃんのお返事の繰り返しが何とも愉快でたまりません。でもお返事のしかたから、ヤカちゃんがとっても素直でまっすぐで良い子だということが伝わってきて、どんどんヤカちゃんを応援したくなってしまいます。けれどもやっぱりその大きな声のせいで、ドドさん夫婦の家にねずみがいることがばれてしまって…。ここからドドさん夫婦のねずみ退治作戦が始まります。ドドさん夫婦とヤカちゃんの対決の結末やいかに…?

繰り返しの楽しさや、ヤカちゃんの声の大きさ具合、ドドさん夫婦とヤカちゃんとのやりとり、ここぞという時に役に立つおかあさんねずみの歌など、注目したい楽しみ満載のこちらの読み物は、一度読んだら子ども達のお気に入りになるに違いありません。『なぞなぞのすきな女の子』でおなじみの大社玲子さんのさし絵もユーモラスで楽しく、特にころころ変わるヤカちゃんの表情と目の動きはみどころたっぷりです。

アメリカ生まれの詩人・翻訳家であるリチャード・ウィルバーさんによって書かれたこちらのお話は、アメリカでは1963年に出版された後、ストーリーテリングによって多くの子どもたちに親しまれているのだそうです。ぜひ日本でも、さまざまな場所で大人から子ども達へ声に出して読んであげると、一層楽しい世界が増すことでしょう。
さて、ヤカちゃんの大きな声のところはどんな風に読みましょうか。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

第7位は同数の売れで3タイトルが並びました。

第7位 かいじゅうでんとう

かいじゅうでんとう

大事なものをうっかりなくして焦ったり、妹の前でいいカッコをしようとしたり、近所の吠える犬や体の大きい子が怖かったり‥‥‥。主人公の男の子の気持ちに共感しながら、どんどん読めちゃうお話です。「かいじゅうでんとう」から現れた、何でも頼みを聞いてくれるという「かいじゅう」。「かいじゅう」が出すなぞなぞも楽しいので、ぜひ挑戦してみて下さいね。

第7位 こどもに聞かせる一日一話 「母の友」特選童話集(2022年9月の新刊)

こどもに聞かせる一日一話 「母の友」特選童話集

「こどもに聞かせる一日一話」は、福音館書店の雑誌「母の友」で長く続く人気企画です。短くておもしろい童話を30話一挙に掲載。気軽に読めて、子どもとおとなが一緒に楽しめると毎年好評をいただいています。この本には、21世紀以降、約20年分の「一日一話」から選んだ楽しいお話を中心に『ぐりとぐらのピクニック』や『だるまちゃんとうらしまちゃん』など、過去に「母の友」だけに掲載された、絵本の人気者たちの未単行本化作品を収録しています。

第7位 新版ヒキガエルとんだ大冒険(1) 火曜日のごちそうはヒキガエル

新版ヒキガエルとんだ大冒険(1) 火曜日のごちそうはヒキガエル

ヒキガエルのウォートンが、恐ろしいミミズクにつかまった! 誕生日のごちそうに食べられちゃうの!?

小学校の国語の教科書にも長い間取り上げられているこちらのお話。大人の方には懐かしく感じられる方も多いのではないでしょうか。1982年に日本で初めて刊行された後、2008年に訳を新たに装丁も大きく変わり、さらに手にとりやすく、読みやすくなりました。

土の中で暮らしているヒキガエルのきょうだい、ウォートンとモートン。ある冬の日、ウォートンはモートンが作った美味しい砂糖菓子をおばさんに届けるため、寒い雪道をスキーで出かけます。しかし途中で足をケガして、たちの悪いミミズクにつかまってしまうのでした。ミミズクは6日後の自分の誕生日の特別なごちそうとして、ウォートンを食べるといいます。けれどもウォートンとミミズクは毎晩、お茶を飲んでたくさんおしゃべりをするように。もしかしたらミミズクの気が変わるかも? と淡い期待を持つウォートン。読者である私たちもウォートンがどうか食べられませんように、と祈らずにはいられません。そうするうちにもミミズクは、カレンダーの日付をいちにちいちにち「×」で消していき、誕生日はどんどん近づいて‥‥‥。
はたしてウォートンは食べられてしまうのでしょうか?

どんな絶望的状況にあろうとも決してあきらめない勇敢なウォートンの姿と、お話のあちこちで感じられる登場人物それぞれの優しさに、子どもたちは何を感じとるでしょうか。来たるミミズクの誕生日には予想外の展開が次々とおとずれ、心があちこちに大きく揺さぶられます。さまざまな感情をウォートンとともに体感し、ウォートン以外の登場人物の気持ちをも汲みとることで、言葉にできない豊かなものが子どもたちの中に育まれていくようなそんなステキな作品です。

ヒキガエルのウォートンとモートンのお話がもっと読みたくなったら、ぜひ続けて「ヒキガエルとんだ大冒険」シリーズをどうぞ。こちらはなんと続編が6冊も出ています。1人で読むなら3年生ぐらいから、読んで聞かせてあげるなら5歳ぐらいからおすすめの名作です。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

第10位 スノーマン クリスマスのお話(2022年10月の新刊)

スノーマン クリスマスのお話

ジェームズは、お父さん、お母さん、牧羊犬のバーディと一緒にいなかの農家で暮らす男の子。毎年クリスマスにはおばあちゃんがやってきて、大好きな『スノーマン』の絵本を読んでくれます。クリスマスイブが明日に迫った日、いつものように絵本を読んでもらったジェームズは、ベッドの中で『スノーマン』のお話のことを考え、雪が降って『スノーマン』のお話のようにならないかなあ、と考えます。でもいくら窓の外をながめても雪は見えません。

しかし眠っているうちにいつの間にか雪が降りはじめて、目が覚めた時には、外は真っ白。ほんとうの雪が降ったのです。ジェームズも犬のバーディも、こんなに積もった雪を見るのははじめてでした。雪でたくさん遊んだ後、ジェームズは庭の中で一番好きな「ナラノキ畑」にスノーマンを作りはじめます。はじめは小さかった雪の玉はだんだん大きくなって雪の体となり、頭部分ははしごを使わないと届かないほど大きなスノーマンに。耳にはリンゴ、鼻にはミカン‥‥‥。さらにうれしそうな笑顔になるようにあるものを加えるとスノーマンが完成しました。

「ぼくは、このうれしそうなスノーマンがなによりも大すき!」
そしてその晩ジェームズに起きたある奇跡とは!?

子どもにとっての願いや幸せがたくさん詰まっている、やさしくて温かな物語。うまくできたスノーマンを家族が見に来て褒めてくれる場面、『スノーマン』の絵本をいつも読んでくれるおばあちゃんと共有したある体験、クリスマスプレゼントに欲しいものが届くかどうかを心配する気持ち。欲しいものの理由に隠れたジェームズの一番の切なる願い‥‥‥。

1978年に発表されて以来、世界中で愛されているレイモンド・ブリッグズの絵本『スノーマン』が、絵本の雰囲気そのままに、『スノーマン』の世界に憧れる男の子の物語としても誕生しました。お話をつけたのは、イギリスを代表する児童文学作家マイケル・モーパーゴ。さらに、アニメ『スノーマン』を担当したロビン・ショーによるたくさんのイラストが満載の豪華な一冊です。なぜ、文字のない絵本に敢えて物語をつけたのか? について、マイケル・モーパーゴの思いがつづられたあとがきも必見です。さらに巻末には、「世界のクリスマス」を紹介するページや、「かんぺきなスノーマンをつくるには」というスノーマンの作り方が紹介されているとびきり嬉しいページも! このお話を読んだ後、もし雪が降ったら、スノーマンづくりに挑戦してみませんか。

子ども時代に『スノーマン』のお話と出会ったならば、想像の世界が心の中に作られて、大人になっても「スノーマン」と耳にするだけで、きっとその場所のことを思い出せるはず。そんな貴重な場所が作られることを願って、ぜひ小学生に届けたいお話です。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

2022年11月児童書人気ランキング:第11位から20位はこちら

最後に、他にも新刊から、人気作品をご紹介します

ナナカラやまものがたり(1) くまおばあちゃんのジャム

ナナカラやまものがたり(1) くまおばあちゃんのジャム

どこまでも続く青い海と空にかこまれた「ナナカラやま」は、美しく豊かな世界。ナナカラやまには、動物や花や木や魚、虫や石や風‥‥‥など数えきれないほどのいろいろな生きものー「ナナカラたち」が暮らしています。

人間が昔から物語を語り継いできたように、ナナカラたちもたくさんの語り継ぐ物語を持っています。うれしいこと、かなしいこと、ずっと昔からあったことからつい昨日の出来事まで、おはなしやうたにして楽しみながら大切に伝えるのです。

1巻目の『くまおばあちゃんのジャム』では、くまおばあちゃんが孫のこぐまと過ごす日常の中に、自然にお話が溶け込んでいます。
ミツバチたちにハチミツを分けてもらうかわりに語る「はなひつじやま」の話。
夜寝る前に聞く「たぬきのむすめさん」の話。このお話はとくにこぐまのお気に入りです。

どちらのお話にもナナカラやまの自然の豊かさや恵みがたっぷりと感じられて、かつユーモラスで楽しさがいっぱい。そんなおばあちゃんが語ってくれる物語が作品の大きなみどころですが、さらに美味しいものが出てくるところもとっても魅力的! おばあちゃんが作るやわらかくて白いおだんごに、のいちごとはちみつで作ったできたてのジャムをかけて食べる様子がたまりません。また、自然から何かをいただく時には、必ずかわりに何かを差し出すおばあちゃんの姿勢は、自然を大切にする気持ちをさりげなく教えてくれているようです。

こちらの「ナナカラやまものがたり」シリーズは、2014年に童心社さんより刊行された『ナナカラやまものがたり』に新たな物語が加わり、全3巻となってあらたに誕生したシリーズです。判型がちょっと小さめで子どもの手のひらにすっぽり入りそうな大きさと、ほんのりとした和の色彩の表紙は、子どもだけでなく大人の心も掴んでしまいそうな可愛らしさ。本のすみずみまで丁寧に描かれる自然の美しさと楽しさからは、作者のどいかやさんの自然を敬い、愛する視点がたっぷり伝わってきます。

子どもから大人まで楽しみたい「ナナカラやま」の美しい世界。この先長く読み継がれるシリーズとなっていくことでしょう。子どもたちには、とくに絵本から読み物への移行期におすすめです。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

ちいさなトガリネズミ

ちいさなトガリネズミ

ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞、ニューヨークタイムズ・ニューヨーク公共図書館絵本賞などを受賞し、海外からも高い評価を受けている絵本作家が初めて手がける絵童話!

トガリネズミは働きもの。朝おきてから夜ねるまで、毎日きまった予定をこなし、つつがなく暮らしています。でも今日はひとつだけ、いつもと違うことがありました! ひとめ見たら忘れられない、つぶらな瞳のトガリネズミ。そのささやかでありふれた日常を、独特のおかしみをもって描きます。

紫禁城の秘密のともだち(1) 神獣たちのふしぎな力

紫禁城の秘密のともだち(1) 神獣たちのふしぎな力

北京の広大な城、紫禁城を舞台にくりひろげられる、伝説の神獣たちと小学4年生の女の子、小雨(シャオユウ)の物語。
お母さんが紫禁城で働いている関係で、放課後は毎日のように紫禁城ですごす小雨。紫禁城にいる動物たちとは大の仲良し。ある日、きれいな石のイヤリングをひろってから、小雨の耳に、いつも餌をやっていた野良猫の梨花(リーファー)の言葉が聞こえるようになって……。中国に伝わる龍や鳳凰、ふしぎな神獣たちもたくさん登場して、それぞれと冒険がはじまります。紫禁城の宝物や建物の不思議も描かれ、わくわく感満載のエンタメファンタジー。

いかがでしたか。

気になる作品があったら、クリスマスの贈り物や冬休みの読書向けに、ぜひ手にとってみてくださいね。

 

秋山朋恵(あきやま ともえ) 

絵本ナビ 副編集長・児童書主担当

書店の本部児童書仕入れ担当を経て、私立和光小学校の図書室で8年間勤務。現在は絵本ナビ児童書主担当として、ロングセラーから新刊までさまざまな切り口で児童書を紹介。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、まず本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選ぶことを1番大切にしている。著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。

掲載されている情報は公開当時のものです。
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