【ランキング】2023年1月の児童書人気ランキングBEST10は?
今、絵本ナビで売れている児童書は? 話題になっているのはどんな本? 2023年1月の児童書人気ランキングをご紹介します。さて、今年最初の月のランキングには、どんな作品が入ったのでしょう。小学生の毎日の本選びのご参考に、また、新一年生の入学祝いや小学生の進級祝いのご参考にもお役立てください。
2023年1月の児童書人気ランキングBEST10【2023/1/1~1/30】
濃くて、可笑しくて、ちょっぴり切ない……がまくんとかえるくんが織りなす温かな物語
仲良しのかえる、がまくんとかえるくん。ふたりの間で繰り広げられるのは、濃くて、可笑しくて、ちょっぴり切ない……様々な愛すべきエピソード。アーノルド・ローベルの「がまくんとかえるくん」シリーズは幼年童話の傑作として、子どもから大人まで、たくさんの人たちに40年以上も愛され続けています。
そのシリーズ第1作目が『ふたりはともだち』、5つのお話が収録されています。
春が来たからと大急ぎでがまくんの家に走っていき、「おきなよ!」と大きな声で呼びたてるかえるくん。お日さまがきらきらして、雪も溶け、新しい一年がはじまったかと思うと、いてもたってもいられないのです。ところが、がまくんは布団の中。もう少し寝ていたいのです。11月から眠っているがまくんは「5月半ば頃にまた起こしてくれたまえよ。」なんて言うのです。そこで、かえるくんは……?
がまくんを外に連れ出して遊ぶためなら頭の回転だって早くなるかえるくんと、カレンダーに合わせて簡単に5月だと思い込んでしまうがまくん。最初のお話「はるがきた」で、幼さと可笑しさがたっぷり詰まったふたりのキャラクターを存分に味わうことができます。
続く「おはなし」と「なくしたボタン」では、それぞれのやり方でお互いを思いやっている様子(大いに巻き込みながらね)を、「すいえい」ではちょっぴりブラックな面をのぞかせつつ、思いっきり笑えるエピソードを披露してくれます。
すっかりふたりの世界観に夢中になった頃、登場するのが最後の「おてがみ」です。
悲しそうな顔で玄関にすわっているがまくん。なんでも「もらったことのないお手紙を待つ時間」なんだと言うのです。それを聞いたかえるくんは、がまくんに内緒でお手紙を書くことにします。ところが、配達を頼んだのがかたつむりくんだったので……。
国語の教科書に採用されたことで、今では多くの子どもたちに知られているのがこのお話。いずれ届くことも、その内容までもわかっているお手紙をじっと待つがまくんとかえるくん。その幸せそうな様子に、「手紙」の持つ力を感じずにはいられませんよね。
シリーズ4冊。がまくんとかえるくんのキャラクターを知れば知るほど、どのお話も読み返したくなる珠玉のエピソードばかり。日本では三木卓さんの翻訳で楽しむことができます。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
ノラ猫として生きていくのに大事なこととは?
ひょんなことから、長距離トラックで東京にきてしまった黒猫ルドルフ。土地のボス猫と出会い、このイッパイアッテナとの愉快なノラ猫生活がはじまった……。
まるごと猫の視点で語られるところが何より面白い1冊! 飼い猫からノラ猫の世界に突然入り込んだルドルフに、ノラ猫として生きていくのに大事なことを教えてくれるイッパイアッテナ。勉強することがなぜ大事なのか、どんな風に役に立つのかということも彼の手にかかれば深く納得できてしまうから不思議です。次第にめばえていくアツい友情にもご注目下さいね。
「ルドルフ」シリーズ、つづけて読んでみよう!
第3位は同数の売れで、2タイトルが並びました。
ネートと一緒にナゾを解こう!
みどころ
1982年の発売以来、たくさんの子どもたちに愛され、読み継がれてきた「ぼくはめいたんてい」シリーズの第1巻目。マージョリー・W・シャーマットさんによる全17巻となるこちらのシリーズは、5歳ぐらいから小学校低学年の子どもたちにちょうど良いハラハラさで、子どもたちがはじめて物語の楽しさに出会えるシリーズでもあります。つぎつぎにネートに降りかかるナゾ解きの面白さはもちろんのこと、巻ごとに増えていく個性的な登場人物、ネートからママへの置き手紙の内容など、読めば読むほど多くの楽しみをも発見できるでしょう。
すべての漢字にふりがながついているので、はじめての読み物としてもぴったり。ひとり読みに移る前に、まずは読んであげながら親子で一緒にナゾ解きを楽しんでみるのもいいですね。シーモントさんの温かくユーモアたっぷりの挿絵と、訳者の小宮由さんの柔らかな語り口も、子どもたちの読書をやさしく応援してくれます。お話の最後には「めいたんていのこころえ」もついていて、もし周りでなにかナゾが起きた時の役に立つかも!? さあ、ネートとどんどんナゾを解いて、一緒に名探偵になろう!
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
初めての本格的な冒険物語との出会いに
さあ、リュックサックに道具をつめて、エルマーと一緒に冒険の旅に出発しよう!
これは僕の父さん、エルマーが小さかった頃のある冒険のお話です。ある雨の夜、エルマーは、年取ったのらねこから、「どうぶつ島」に捕らえられているかわいそうなりゅうの話を聞きます。りゅうは、空の低いところに浮いていた雲から落っこちてきたちっちゃな子どものりゅうで、ジャングルの猛獣たちに捕まえられて、川を渡るために働かされているというのです。
エルマーは、すぐに助けに行こうと決心します。早速ねこにどうぶつ島のことや、持っていくものを教えてもらい、旅の準備に取り掛かります。エルマーがリュックサックにつめたのは、「チューインガム、ももいろのぼうつきキャンデー二ダース、わゴム一はこ、くろいゴムながぐつ、じしゃくが一つ、はブラシとチューブいりはみがき‥‥‥」などなどたくさんの道具。そして「どうぶつ島」へと繋がる「みかん島」行きの船に忍び込んだエルマーは、六日六晩たってようやく「みかん島」へ。ここで食料のみかんをリュックいっぱいに詰め込んで、夜の間に「どうぶつ島」へと渡ります。
「どうぶつ島」へ着くと、早速りゅうがつながれている川を探しに、気味の悪いジャングルの中を歩いていくエルマー。ジャングルでは、おかしな喋り方をするねずみや、うわさ好きのいのししに出くわしたり、とら、さい、ライオンなど恐ろしい猛獣たちにつぎつぎと出くわします。猛獣たちはたいていお腹をすかせていて、食べられそうになることもしばしば。さてエルマーは、どんな風に猛獣たちの危険をくぐり抜け、どうやってりゅうを助け出すのでしょうか?
特に注目したいのは、リュックサックに詰めた道具たちの活躍と、見返しに描かれた「みかん島とどうぶつ島のちず」。道具は、はじめはこんなものが何の役にたつのだろう? と思ってしまいそうなアイテムばかりなのですが、エルマーの知恵も合わさって、驚くほどぴったりはまって役に立つ様子にワクワクさせられます。道具を介した猛獣たちとのやりとりもユーモアたっぷり。何回読んでも繰り返し楽しませてくれる場面がいっぱいです。
「みかん島とどうぶつ島のちず」には、エルマーが冒険した場所や、エルマーの足取りが細かく描かれています。地図を見ながらお話を読み進めていくと、よりエルマーと一緒に冒険しているような臨場感が味わえるでしょう。お話の途中で、また一章ごとに、お話を読み終えた後になど、ぜひ地図をたっぷり眺めながら読んでみて下さいね。
日本では、1963年の刊行から50年以上も読み継がれ、幼年童話の最高峰とも呼ばれる本書。作者は、ニューヨーク生まれのルース・スタイルス・ガレットさんという女性で、このお話でニューベリー賞(アメリカで毎年最もすぐれた児童文学作品に与えられる)を受賞しています。さし絵は、お継母さんのルース・クリスマン・ガネットさんによるもの。細かいところまで丁寧に描かれながらも、ユーモアあふれる魅力的なエルマーやりゅう、猛獣たちのさし絵が、物語を一層楽しく盛り上げます。さらに英語版の文字の大きさや書体を決めたのは旦那様のピーターさんだそうで、刊行時は、家族総出でこの本を作るのに取り組まれていたそうです。
この後も、『エルマーとりゅう』『エルマーと16ぴきのりゅう』と続いていく、エルマーとりゅうのとびきりの冒険と友情の物語。内容は5才ぐらいから楽しめるかと思いますが、子どもがひとりで読むのは小学2年生ぐらいまでは難しいのではということと、なかなかのハラハラドキドキの冒険となりますので、はじめはぜひ大人が読んで聞かせてあげて下さいね。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
「エルマーのぼうけん」シリーズ、つづけて読んでみよう!
第5位も同数の売れで2タイトルが並びました。
第5位 ももいろのきりん
るること、世界一きれいで大きいきりんの冒険ものがたり
「まあ、きれい!」
るるこは、お母さんからとても大きいももいろの紙をもらいました。紙を広げると部屋いっぱいになり、上に立つと、部屋じゅうがやわらかなももいろのひかりでいっぱいになりました。
るるこは、この大きなももいろの紙で、世界一首が長くて、世界一強くて、世界一足が速く、世界一きれいなきりんを作ることにします。のりとハサミとクレヨンで、紙の上にまたがりながら全身を使って、どんどん作ります。名前は「キリカ」と名づけました。最後に二つの大きな目と大きな口を書くと、キリカがしゃべりはじめました。
ところが立ち上がろうとするとどうしても立てません。世界一長い首が重くてあがらないのです。そこでるるこはある知恵を働かせ、キリカはるるこを乗せて走り回れるほど元気になりました。けれども次の日、今度は雨のせいでキリカの首がずぶぬれになってしまいます。るるこはまたキリカを元気にできるのでしょうか。さらに、キリカの首のももいろを塗り直すため、二人は「クレヨン山」に向かうのですが‥‥‥。
のりとハサミとクレヨンを使って作った動物が動き出す。なんてワクワクする出来事なのでしょう。折り紙や工作や塗り絵など子どもたちの身近なものからはじまっているところにも、子どもたちが夢中になる秘密がありそうですよね。
大きなキリカの背中に乗って走る場面、「クレヨン山」で出会う不思議な色の動物たちとのやりとり、いじわるな熊との対決‥‥‥と、さまざまな冒険の場面から一貫して伝わってくるのは、るるこがキリカをとても好きで、世界一のきりんだと信じる気持ち。そのまっすぐな気持ちがキリカを強く美しい存在にしているようにも感じます。でもそんなるるこも賢くてたくましくて、とっても素敵な女の子なんですよ。
1965年の出版以来、50年以上も愛されている幼年童話の名作。『ぐりとぐら』『いやいやえん』『そらいろのたね』など多くの絵本と童話を作られた作家、中川李枝子さんによるお話は、読む子どもたちの興味をたちまちのうちにとらえ、中川李枝子さんの夫で画家の中川宗弥さんが手がけられた挿絵は、構図やデザイン、色彩にわたり、今見ても全く色あせない素敵さがあります。元気なるるこちゃんの様子や、部屋いっぱいの紙で作られたキリカが勢いよく動き出す様子、一方で雨に濡れてしおれる様子までもが生き生きと描かれていきます。子どもの頃に読んで、この中川宗弥さんの絵の好きな場面がずっと心に残っているという方も多いことでしょう。
対象年齢は、4歳ぐらいから小学2年生ぐらいまでの子どもたちに特におすすめです。ひらがなが多く、漢字にも全てふりがながついているので、小学1年生や2年生ならひとりで読める子もいるでしょう。ただ、88ページの長さがあるので、よりお話の世界に集中できるように、はじめはできるだけ読んであげることをおすすめします。ぜひ親子でお話も絵も楽しんでほしい名作です。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
- 2022.11.22今こそ子どもと一緒に名作を読もう!『ももいろのきりん』
第5位 トレモスのパン屋
読者の声より
トレモスで一番のパン屋さん。向かいに新しいパン屋ができるのですが、味で負けたと思います。
落ち込んだり、弟子をスパイに送り込んだり、、、、
でも、コンクールで再度優勝できるのか?弟子は裏切るのか?
いろいろスリリングなまま展開していくので、大変面白い。
でもどっちのパン屋も、うまくいってほしいです。
(えみりん12さん 40代・ママ 女の子8歳)
第7位 番ねずみのヤカちゃん
ドドさん夫婦の家の壁と壁のすき間に住む、おかあさんねずみと、四ひきの子ねずみ。そのうち四ひき目は、「やかましやのヤカちゃん」とよばれていました。
どうしてこんな名前がついたかって?
それはね…このヤカちゃん、とてつもなく声が大きかったからなんです。
たとえばこんな風。おかあさんねずみが、ドドさん夫婦に存在を気づかれないよう「けっして音をたててはいけない」と注意している時も「うん、わかったよ、おかあさん」と答える声のなんと大きいこと!他にもおかあさんねずみの注意に対して、全部うんと大きな声で答えるヤカちゃんのお返事の繰り返しが何とも愉快でたまりません。でもお返事のしかたから、ヤカちゃんがとっても素直でまっすぐで良い子だということが伝わってきて、どんどんヤカちゃんを応援したくなってしまいます。けれどもやっぱりその大きな声のせいで、ドドさん夫婦の家にねずみがいることがばれてしまって…。ここからドドさん夫婦のねずみ退治作戦が始まります。ドドさん夫婦とヤカちゃんの対決の結末やいかに…?
繰り返しの楽しさや、ヤカちゃんの声の大きさ具合、ドドさん夫婦とヤカちゃんとのやりとり、ここぞという時に役に立つおかあさんねずみの歌など、注目したい楽しみ満載のこちらの読み物は、一度読んだら子ども達のお気に入りになるに違いありません。『なぞなぞのすきな女の子』でおなじみの大社玲子さんのさし絵もユーモラスで楽しく、特にころころ変わるヤカちゃんの表情と目の動きはみどころたっぷりです。
アメリカ生まれの詩人・翻訳家であるリチャード・ウィルバーさんによって書かれたこちらのお話は、アメリカでは1963年に出版された後、ストーリーテリングによって多くの子どもたちに親しまれているのだそうです。ぜひ日本でも、さまざまな場所で大人から子ども達へ声に出して読んであげると、一層楽しい世界が増すことでしょう。
さて、ヤカちゃんの大きな声のところはどんな風に読みましょうか。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
第8位 おはなしりょうりきょうしつ(1) こまったさんのスパゲティ
かわいい花屋のこまったさんが、休みの日にスパゲティを作ります。アフリカゾウがおしえる、3種類のおいしいスパゲティ。
どの巻から読む? かわいい花屋の奥さん、こまったさんの楽しいお話に美味しいお料理の作り方まで分かる人気シリーズ。
- 2024.09.06「こまったさん」と「わかったさん」、あなたはどっち派?
第9位 なぞなぞのすきな女の子
なぞなぞ遊びは好きですか? 答えるのも楽しいけれど、なぞなぞを出すのも楽しいですよね。特に答えられないような、なぞなぞが出せたら!
この本は、そんな、なぞなぞが大好きな女の子が主人公のお話です。女の子は、一緒に遊べるお友達を探しに森に出かけ、はらぺこオオカミと出会います。お母さんとなぞなぞ遊びをいつもしている女の子は、オオカミにぴったりの、何やら長いなぞなぞを出しました。オオカミは一生懸命考えるのですが、長いなぞなぞに、答えがいっぱい出て来てしまい…あらら? なぞなぞの答えは一つ、ですよね。さあ、オオカミは答えられるでしょうか?
いい考えを出すには、手を頭にあてて目をつぶって考えるといいのよと、アドバイスする女の子。オオカミが目をつぶって考えているうちに、逃げてきてしまうなんて、何て頭がいいんでしょう! 間が抜けたオオカミとおりこうな女の子の楽しいお話が2話入っています。オオカミの表情がユーモラスで、くすくす笑ってしまいそうですね。(そうそう、女の子のお母さんのなぞなぞの出し方もとてもすてきなので、こちらにも注目下さいね。)
本の見返しにも、楽しいなぞなぞがたくさんのっているので、ぜひお子さんと挑戦してみてくださいね。このお話はもともと、作者の松岡享子さんが、人形劇のために作ったそうですよ。手袋や布でオオカミ、女の子、うさぎなどを作って演じてみても、楽しそうですね。
(長安さほ 編集者・ライター)
第10位 ふらいぱんじいさん
まるくてくろくてにっこり顔のこのお方はいったいだれでしょう? みんなの家の台所にもきっとあるはず。このお話はあるお家のふらいぱんのふらいぱんじいさんが旅に出るお話です。なぜ旅に出るようになったかって!?それはこういうわけなんです。
ふらいぱんじいさんは、たまごを焼くのが大好きでした。
けれどもある日、おくさんが新しい目玉焼きなべを買ってきて、たまごを焼かせてもらえなくなってしまいます。
そこで、ふらいぱんじいさんは旅に出ることにしました。
「そうだ、ひろい よのなかに でれば、
この わしだって、なにか
やれそうなものだ。よし、でかけよう。
あたらしい せかいで、だれかが わしを
まっているかもしれない。」
初めて家の外に出たふらいぱんじいさん。外の世界はなんて明るくて広いのでしょう。空には小鳥たちが歌い、ふらいぱんじいさんは希望いっぱいに出発します。
けれどもふらいぱんじいさんの行く先には、困難がいっぱい。ものめずらしいふらいぱんじいさんは、ジャングルの動物たちに「かがみ」や「たいこ」と間違われたり、だちょうに卵をねだって蹴られたり。それでも砂漠を超え、海を超え、どんどん進んでいくふらいぱんじいさん。いっときの安らぎを得たかと思えば急に嵐がやってきたり、波乱万丈の冒険の旅が続きます。
はたしてふらいぱんじいさんは、何かを見つけることができたのでしょうか。
お話は全部ひらがなで書かれていて、字も大きく、読み物への入り口にぴったり。読み始めたらあっという間にひきこまれ、ドキドキワクワクがとまりません。そんな読み応えたっぷりのお話で子どもたちを一喜一憂させ、楽しませてくれるのは、『ちびっこカムのぼうけん』や『くまの子ウーフ』で知られる児童文学作家の神沢利子さん。そして、お話と合わせて大きな魅力となっているのが、堀内誠一さんの挿絵です。堀内さんの描く愛嬌たっぷりでユーモラスなふらいぱんじいさんは、すぐに子どもたちの心を掴むことでしょう。カラフルであざやかな色づかいは今でも全く古さを感じさせないほど、おしゃれで目をひきますよね。
『ふらいぱんじいさん』は、1969年の登場以来たくさんの親子に読み継がれ、2019年の今年で50周年を迎えます。
ふらいぱんじいさんが旅の途中で出会うさまざまな出来事は、子どもたちの心の深いところに残り、いざ広い世界に出ていく時の心強いお守りとなってくれることでしょう。この先も、50年、100年……とずっとずーっと子どもたちそして大人をも勇気づけてくれるこの名作を、大切に伝えていきたいですね。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
2023年1月児童書人気ランキング:第11位から20位はこちら
新刊・話題の作品、ピックアップ!
発売されるなりたちまち話題に! トガリネズミのささやかな日常を愛らしく描いた絵童話
はたらきもののちいさなトガリネズミの1日は、毎朝6時の目覚まし時計からはじまります。朝ごはんははちみつビスケットを3枚、お気に入りのお皿で食べて、決まった時間に、決まった電車で、決まった仕事場にいき、きちんと仕事をはじめます。同僚の信頼も厚くて、ちょっとした会話も楽しげです。帰り道のお買い物もまた、ふわっといい香りが漂ってきそうで……。
本書はボローニャ・ラガツィ賞優秀賞、NY公共図書館絵本賞など、国内外でいくつもの絵本賞を多数受賞しているみやこしあきこさんのはじめての絵童話。「トガリネズミのいちにち」「トガリネズミのあこがれ」「トガリネズミのともだち」の3つのお話が入っています。静謐で、ささやかな楽しみとおかしみの漂う、やさしい日常の空気感に満ちています。
冒頭でまずトガリネズミのかわいいあくびに心を掴まれるし、まじめな仕事ぶりには好感しかないし、おまけに首に巻いているチェック柄のえりまきがまたおしゃれでたまらないのですが、なんと2番目のお話ではえりまきを手放してしまうんですね。トレードマークかと思ったのに、いったい、なぜ!? 気になる方、ぜひ本をお読みください!
みやこしさんが今回水彩と木炭で描いたという陰影のある美しい絵は、今作も期待を裏切りません。
親しみさえ感じる温かい闇の色、モノクロのタッチの美しさはもちろん、晴れた日にトガリネズミが仕事場まで歩くひらけた道や、トガリネズミのつぶらな目に思いがけずうつった美しい景色など、カラーページのはっとするほどの透明感も見どころです。
みやこしさんは10年ほど前、南ドイツの友人を訪ねたとき、散歩中に森でトガリネズミを見かけたそう。その繊細で美しい毛並みが忘れられなかったそうです。本書は、そんな繊細な毛並みのちいさな生きものの愛らしさが、まさにぎゅっと詰まった作品! そばに置いてときどきページをめくりたくなります。たとえば、夜寝る前、明日のいい1日を願って子どもと本を開くひとときにも、ぴったりの絵童話です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
「しごとへの道はひとつじゃない!」新シリーズ、読む「しごとば」が登場!
朝早くから準備を始め、てきぱきと仕事をこなし、開店と同時に毎日楽しみにしているお客さんにパンを届ける「パン職人」。ビシッと制服に身を包み、約1300人の乗客を乗せ、時速285㎞のスピードで東海道新幹線を走らせる「新幹線運転士」。大学のキャンパスの一室で、自分の打ち出すテーマについて実験や分析を続け、論文にまとめていく「研究者」。
颯爽と仕事に打ち込むその姿には、誰もが憧れてしまいます。でも、彼らはいったいどうやって「自分のしごと」を見つけていったのでしょう。
大人気「しごとば」シリーズの作者鈴木のりたけさんが、新たに取り組んだ読み物シリーズ「しごとへの道」。さまざまな職業の人を取材し、その職業を紹介する内容からさらに一歩深く進み、子ども時代から現在まで、どのような人生を歩んできたのかを、コマ割りのコミック仕立てで描き出します。
読み始めると、どの人のストーリーにもあっという間に引きこまれてしまうのは、その道のりが決してまっすぐきれいな一本道にはなっていないから。大きなまわり道をしたり、前が見えなくて悩み続けていたり、挫折を味わったり、紆余曲折、十人十色。人生を変えてくれた言葉や人と出会いの中で、働くことの面白さや喜びを見つけていく様子には、子どもから大人まで、どんな立場の人の心にも大きく響くものがあるのです。
「しごとへの道はひとつじゃない!」
自分の夢を見つけることや、自分の道を進んでいくことは、簡単なことではありませんよね。でも、だからこそ、こんな風にリアルで魅了的に描かれた人たちのストーリーが、読む人の背中を押してくれるはず。熱くて濃密な、鈴木のりたけさんの新境地。また続きが楽しみになるシリーズの誕生です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
「オズの魔法使い」愛蔵版が登場♪ 岸田衿子さんのはずむような文章と堀内誠一さんのカラフルなイラストに注目です。
ある日突然、竜巻に吹き上げられ、家ごと不思議な国に運ばれてしまったドロシーと愛犬のトト。おじいさんとおばあさんがいるカンザスに帰りたい!その願いを叶えるため、国を支配する偉大な魔法使いオズに会いにいくことになります。旅の途中、脳みそがないことを嘆くカカシ、心臓がないことを悲しむブリキのきこり、勇気がないことに悩む臆病なライオンと出会い、一緒にエメラルドの都を目指します。
「オズの魔法使い」は、1900年にアメリカで出版された、ライマン・フランク・ボームのファンタジー古典。物語はミュージカルや映画にもなり、世界中の子どもにも大人にも愛されるようになりました。日本でも多くの人々に親しまれる不朽の名作です。こちらは、そのダイジェスト版ともいうべき作品。物語の見どころをぎゅっと集め、小さい子にもわかりやすく描いた絵本の愛蔵版です。
詩人でもある岸田衿子さんの読みやすくテンポの良い文章に、堀内誠一さんのカラフルで生き生きとした挿絵が添えられます。堀内誠一さんは数々の黄金期の雑誌を手がけたアートディレクターであり、『ぐるんぱのようちえん』『たろうのおでかけ』(共に福音館書店)など、名作絵本を数多く生み出した絵本作家さん。デザイン性が高く、愛嬌たっぷりのユーモラスな挿絵は、子どもだけでなく、大人の心も引きつける魅力があります。
一行は、怪物に襲われたり、ケシの花の香りを吸って眠くなったりと、様々なピンチに遭遇します。そのたびにドロシーは仲間たちと一緒に、魔法の道具の力を借りながら、乗り越えていくのです。この物語は、山あり谷ありの奇想天外の冒険ストーリーである一方、実はそれぞれ大切なものを失ったり、大切なものが欠けていると悩み、傷ついている者たちの成長物語でもあります。脳みそがないはずのカカシは、名案を次々と思いついて仲間の危機を救います。心のないはずのブリキのきこりは涙もろく、勇気がないはずのライオンも、みんなのために敵と勇敢に戦うのです。ドロシーも、自分の望みを叶えるために奮闘します。
知恵と思いやりと勇気を感じる、壮大な冒険物語。個性あふれるキャラクターたちのファンになったら、今度は完訳版を読んで、さらに作品の深い部分を味わうというのもいいですね。まずはこの絵本で、世紀が変わっても古びることのない名作と出会ってください。
(出合聡美 絵本ナビライター)
2023年3月24日全国公開の映画「シング・フォー・ミー、ライル」の原作、「ワニのライルのおはなし」シリーズ!
プリムさんの一家がひっこした東88番通りの家のおふろ場に、大きな緑色のクロコダイル・ワニが!……びっくりしたプリムさんたちも、やがて、芸達者なワニのライルとすっかりなかよしになります。
今、大注目の「ワニのライルのおはなし」シリーズはこちら
いかがでしたか。
ロングセラーから新刊まで、気になる作品があったらぜひ、手にとってみてくださいね。
秋山朋恵(あきやま ともえ)
絵本ナビ 副編集長・児童書主担当
書店の本部児童書仕入れ担当を経て、私立和光小学校の図書室で8年間勤務。現在は絵本ナビ児童書主担当として、ロングセラーから新刊までさまざまな切り口で児童書を紹介。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、まず本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選ぶことを1番大切にしている。著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。
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