【編集長の新宿絵本日記】間の悪さは、世界一。 2019年8月2日
「間の悪さは、世界一」
今朝、息子の口から私に放たれたこの一言。
どうやら私のことらしい。
世界一……。
「あの人って、間が悪いのよね」
「なんか、間が悪いよね」
「ほら、また!」
悪口として人に言うことがあっても(ひどい)、まさか自分がこんなにはっきりと断言されるとは。でも、確かに身に覚えはある。だって、息子に対して「間」なんて気にしないよ。気にしてられないよ。言いたいことは、思いついた時に言いたいじゃない。
あまりの衝撃に、今日一日頭から離れない。
「間の悪さは、世界一」
じゃあ、「間がいい」って、どういうことよ。
こういうこと……?
まのいいりょうし
ある朝、猟師は息子の七つのお祝いのために何か獲ってこようと、手に取った鉄砲をうっかり落とし、下にあった石臼にガチンとぶつかり、筒がへの字に曲がってしまった。
「……なんて間の悪い。」
ところが、それが幸運の始まりだったのです。
ゲンが悪いと止める息子の言葉も一切気にせず「なんの、おおあたりよ」と出かけた猟師が曲がった鉄砲で放った弾は、ぎしゃぎしゃ飛んでいって鴨を13羽まとめて仕留め、たまげて躍りあがったでっかい鯉、木の根と間違えて後ろ足をつかんだ山ウサギ、飛んできた鯉にぶつかった山鳥と……次から次へと猟師の前へ転がりこんでくる。
「こんなことって、あるの!?」
読者が驚く間もなく、運は運を呼び、ものすごいスピード感と大胆さで猟師のふところにご馳走が集まってくるのです。からだ中に獲物を巻き付けた帰りがけの漁師の姿ときたら……そう、それが表紙の堂々たる格好!「間がいい」だけでなく「気もいい」猟師は、近所の人をみんな呼び、大盤振る舞いをして…。
終わってみれば、なんとも気持ちのいい物語。あんまり運がいいと人は可笑しくなってくるものなのですね。この豪快で愉快な昔話を、瀬田貞二さんの再話と赤羽末吉さんの絵で。思いっきり声を出して笑っちゃってくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
絶妙で完璧なタイミングの繰り返しによって起こる奇跡の数々。
だけどそれは狙ったものではないはずで……。
息子にちょっと言われたぐらいで落ち込むようじゃ、
奇跡は起きないのです。
本当にそれが間が悪かったのかどうかなんて、わからない。
もしかして、幸運を呼び起こす絶妙なタイミングだったのかもしれない。
そのくらいの気持ちを持って、今度は堂々と言い返そう。
「なんの、おおあたりよ。」
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磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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