おじさんブームが到来! N田流「おじさん絵本」の楽しみ方とは
子どもだけが読むなんてもったいない。大人も楽しい絵本の世界を、絵本トレンドライター・N田N昌さんが、独自の視点と「ゴイスー」な語り口でご紹介!
最近話題の新しい絵本、注目の作家さん、気になる絵本関連スポットなど、絵本のトレンド情報を大人に向けてお届けします。
大人もクスッと笑える! 魅惑のおじさん絵本特集
巷では、“おじさんブーム”のようでございます。
ドラマでは、『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)、『親バカ青春白書』(日本テレビ系)と、おじさんがモテるドラマが人気。
CMでも、田中みな実さまの夫役を演じるおじさん芸人の飯尾和樹さまが話題でございます。
これまでも“ちょいワルおやじ”や“おっさんずラブ”など“おじさんブーム”はございました。しかし、今回は少々傾向が違うようでございます。
少し、コミカルで癒し系なキャラクターの“おじさん”が注目を集めているようでございます。
絵本の世界でも、おじさんが主人公の“おじさん絵本”はございます。
古くは、ジョン・バーニンガムさまのケイト・グリーナウェイ賞受賞の名作『ガンピーさんのふなあそび』(ほるぷ出版)をはじめ、佐野洋子さまの『おじさんのかさ』(講談社)、おおたけしんろうさまの『ジャリおじさん』(福音館書店)などなど。
そんな“おじさん絵本”の最近の傾向はというと……
なんと!こちらもコミカルで癒し系なキャラクターのおじさんが大活躍なのでございます。そう、今のおじさんブームとしっかりリンクしているのでございます。
そこで今回は、気になる最近の“大人もクスッと笑えるおじさん絵本”を特集させて頂きたく存じます。
まずは、こちら。
ナンセンスなおじさん
長新太ワールド全開! 硬いダイヤモンドも、おじさんの頭でガーン!!
長新太ワールド全開のナンセンス絵本、再刊!
男の子が知っているおじさんの話をします。
そのおじさんは、見た目は普通だけど、何か違います。
車なんか頭でぶっとばしてしまいます。
大きな月も頭でぶっとばしてしまいます。
硬いダイヤモンドも頭で、ガーン!!
でも、オバケのお城を頭でぶっとばすと、中からオバケが出てきて…。
ナンセンス絵本のレジェンド、長新太さまの最新作(最新の復刻版)でございます。初版は1993年刊行。今年5月に絵本塾出版から復刊でございます。
破天荒な展開、長新太節が全開でございます。復刊を期待される作品が多い長新太さまの作品の中で、おじさんモノがこのタイミングで復刊されたのも世の中のおじさんブームにつながるものがあるのかも……でございます。
内容は、ゴイスーに硬い頭を持ったおじさんが、その硬っぷりを繰り返し披露する物語でございます。まさに長新太さまお得意のスタイルでございます。頭の固い大人が読むと「なんのこっちゃ」になるやもしれません。ただ、1回で諦めないで頂きたいのでございます。何回も読むと、どんどん長新太ワールドにハマっていくこと間違いナッシングでございます。秋の夜長でございます。じっくりと、しっとりと何度も読んで頂けたらと……。
ここで、N田流おじさん絵本の楽しみ方をおひとつ、ご紹介させて頂きたく存じます。
この絵本が映像化されたら、誰が主人公のおじさんを演じると面白いか、勝手にキャスティングして、絵本を読むのでございます。
ちなみに、わたくしが『ぼくの すきな おじさん』にキャスティングしたのは、笹野高史さまでございます。
その配役で読み返してみると、また違った面白さが発見できること、間違いナッシングでございます。是非一度、お試し頂ければと存じます。
次にご紹介する絵本がこちら。
佐々木マキさまの“おじさん絵本”でございます。佐々木マキさまといえば、ナンセンス絵本界の重鎮。こちらの作品も、もちろんナンセンスでございます。おじさんがポストに手紙を入れに行く道中、階段から転げ落ちたり、空からマットが落ちてきたり、…次々に災難にあうおはなしでございます。
こちらは姉妹篇の『へらへらおじさん』が先日、月刊絵本『こどものとも』(7月号)で掲載されました。このタイミングで姉妹篇が出たのも、今のおじさんブームと何か縁を感じたりいたします。
ちなみに、姉妹篇『へらへらおじさん』は、会社の帰り道、暴風雨にあったり、ワニに遭遇したり、様々なひどい目に会うのですが、なぜかヘラヘラ笑って楽しそうなおじさんのおはなしでございます。
設定(酷い目にあう)は似ておりますが、おじさんのキャラクターはかなり違います。(見た目も違います。別人でございます。)
わたくしのキャスティングだと、『へろへろおじさん』は、TVシリーズ『Mr.ビーン』のローワン・アトキンソンさま。『へらへらおじさん』は映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で、主人公マーティの父親のジョージ役を演じたクリスピン・グローヴァーさまでございます。上司のビフに頭が上がらず、いつも仕事を押しつけられ、うだつの上がらない気弱な、あの父親役でございます。少々古い映画なので、おじさん世代にしか伝わらないかも…(笑)。日本の俳優さんだと、温水洋一さまでしょうか……。
方言がどえりゃあ おじさん
お次は、4人のおじさんのおはなし。
秀逸な言葉遊びと破天荒な笑いが大人にも人気!丸山誠司さまの最新作でございます。
外国からやってきた3人のおじさん(ルーカス・ブルーノ・アントーニオ)に、日本語を教える日本のおじさん(織田信長)のおはなしでございます。
信長さまはコテコテの尾張弁で3人に日本語を教えますが、なかなか上手くいかないというおはなし。自己紹介をしても、「わしが、おだのぶながだがや」、「オヤ?ニョブニャガ」、「お・だ・の・ぶ・な・が」、「オ・リャ・ダ・メ・ナ・ガ」といった具合でございます。3人が勘違いする(ボケたおす)展開でどんどんおはなしは進みます。言葉遊び絵本はたくさんございますが、これまでにないユニークなスタイルの言葉遊び絵本でございます。
こちらの4人のキャスティングは、考え甲斐がございます。ちなみに、わたくしのキャスティングは、織田信長が佐藤二朗さま。外国人の3人が、竹中直人さま、生瀬勝久さま、大泉洋さまの3人でございます。
ユーモアたっぷり、スウェーデンのおじさん
そして、ラストは外国のおじさんでございます。
こちらは、去年出版されたスウェーデンの絵本でございます。
上品な紳士(おじさん)が、身支度をして家を出るまでのおはなしなのでございますが、ちょっと変わった一人称スタイルの絵本になっております。主人公のおじさんが、読者と会話するスタイルでおはなしが進みます。それも、読者に、お笑いの“ボケ”役を演じさせ、おじさんが“ツッコミ”役を演じるようになっております。「見栄えのいいネクタイがあるといいんだが」とおじさんがいうと、ハエをつまんだ手が画面に出てきて、おじんさんが「うへっ。ハエじゃなくて、みばえだよ」とツッコミを入れたり…こんな感じでおはなしが進んでまいります。
こちらも、なかなかお目にかかれないスタイルの絵本でございます。お笑い好きの方には、たまりまセブンな絵本でございます。
こちらのわたくしのキャスティングは、ドラマ『ドクターX』の大門未知子の師匠役を演じていた岸辺一徳さまでございます。絵本を読んで頂ければ、「あの後ろ姿ね」と、思って頂けるのでは……。
秋の夜長でございます。気になる“おじさん絵本”をオリジナルおじさんキャスティングで是非、お楽しみ頂ければと存じます。
N田N昌
絵本トレンドライター・放送作家・絵本専門士
絵本の最新情報を発信&大人絵本文化、絵本プレゼント文化の普及活動に日々努めております。
(画像は、イラストレーター・作家の網代幸介さんによる著者肖像画)
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