【今週の今日の一冊】様々な表情を見せてくれる素敵な「海の絵本」
今週は「海の日」から始まる一週間。すでに真夏のような天気が続く毎日だからこそ、見ているだけでも涼しい気分になれる「海の絵本」。ぐーーっと潜ると見えてくる深い青の世界。砂浜を歩くと聞こえてくる、よせてはかえす波の音。今年も、様々な表情を見せてくれる素敵な「海の絵本」が集まりました。
2022年7月18日から7月24日までの絵本「今日の1冊」をご紹介
7月18日 たどり着いた「しま」は、生きていた…!?
7月19日 小さな島の灯台に、新しい灯台守がやってきた
火曜日は『おーい、こちら灯台』
その灯台が立っているのは、世界のさいはてにある小さな島。永遠に続くようにと建てられ、船を安全に導くために、遠くの海まで光を送るのです。
「……おーい!……おーい!
おーい、こちら灯台!」
灯台のあかりを灯し続けるのは灯台守の仕事。レンズをみがき、油をつぎたし、ランプの芯を切りそろえる。レンズが回り続けるように、ぜんまいをまき、些細な事も全て灯台日誌に書き綴る。
360度見まわしても海ばかり。上へ上へと続く建物の中は全て円形。らせん階段で塔内を移動し、聞こえてくるのは風の音。こんなところに人が暮らすなんて! でも100年程前までは、本当に灯台守は灯台に住んでいたのです。ひとりで、あるいは相棒と、あるいは家族と。
そんな、想像を遥かに超えたところにある様な「日常」を、この絵本は描き出してくれます。具体的に、美しく、とっても魅力的に。そんな一家のもとに船の荷物とともに届いたのは、思いがけない一通の手紙。そこに書いてあったのは?
2019年コールデコット賞を受賞した本作品。絵本の中心に堂々とそびえ立つ灯台の存在感そのものがこの絵本の魅力であることは間違いありません。日によって全く表情の変わる海の中で、霧の立ち込める風景の中で浮かびあがる灯台、更に陸地から眺める灯台。印象的な景色の記憶は、きっと子どもたちの心の中に刻み込まれていくことでしょう。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者の声より
灯台って、こんなにも危険で孤独で、自由で素敵なの?って驚きました。昔の灯台には人が住んでいたとか、意外に過酷な生活だとか、まったく考えたことなかったけれど、海が好きなら家族でこんな場所に住むのも楽しそうかも。いやいや、公園に行けずにずっと建物の中は地獄かも…なんて、生活を想像するのがおもしろかったです。近代化って、便利でありがたいけれど、ちょっぴり寂しんだなっていうのも伝わってきました。
(みっとーさん 30代・ママ 男の子10歳、女の子8歳)
7月20日 ぼくらのオセアノ号で、世界をまわる旅に!
水曜日は『オセアノ号、海へ!』
さあ、オセアノ号の帆をあげよう。まっ赤なぼくらのオセアノ号で、世界をまわる旅に出発するんだ!
『ナマケモノのいる森で』の作者、ボワロベールとリゴーが、自然への讃歌と敬意をこめて、そして自然を守るために、再びデュオを組んで作品を作り上げました。
海のうえにも、海の中にも、ポップアップの楽しいしかけがいっぱい!
美しいイラストレーションと、しかけの素晴らしさで世界中の話題をよんだ、人気作家による新作しかけ絵本です。
世界6カ国で翻訳。
7月21日 水のなかのふしぎないえへ、いち、にの、さん!
木曜日は『うみの100かいだてのいえ』
今度の100かいだてのいえはついに海の中へ!!
下へ下へと続いていく不思議な家。いったいどんな世界が広がっているのでしょう。
何の話かといえば、子どもたちに大人気の絵本『100かいだてのいえ』、『ちか100かいだてのいえ』に続く最新作がついに登場したのです。
縦開きの絵本をめくりながら上へ上へと登っていった第1作、そして下へ下へと降りていった第2作。次はどんな「100かいだてのいえ」になるのか、子どもたちも大いに予想してきたのではないでしょうか。
そして、期待を裏切ることなくさらに驚かせてくれるのがこの『うみの100かいだてのいえ』なのです。
物語のはじまりのきっかけは、海の上に浮かぶ大きな船で起こります。
「ジャプーン!」
カモメにえさをあげようとしていた女の子の手から、大事にかかえていたお人形が海に落ちてしまうのです。
テンちゃんという名前のついたそのお人形は、あっという間に海の中へ沈んでいってしまいました。その時、不思議な泡がテンちゃんを包み込み、着ていた服もろともすいこまれていきました。その泡の下から現れたのが「うみの100かいだてのいえ」です!
何といっても100かいだて、そして今回は水の中。テンちゃんはラッコさんやイルカさん、ヒトデさんやタツノオトシゴさん、海の中に住む様々な家族に出会いながら、それぞれ工夫が凝らされた、見たことのない素敵な部屋を訪れます。ウツボさん、チョウチンアンコウさんの部屋なんてどうなっているのでしょう。まず想像してみてから読むのも楽しそうですよね。
さあ、テンちゃんは無事に女の子のところへ戻れるのでしょうか。
3冊目もやっぱり、ゆっくりじっくり隅々まで。みんなの好きなように楽しんでくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
「100かいだてのいえ」シリーズ
7月22日 海坊主の子どもたちと海底を探検!
読者の声
海の底が見たい……と、思っただけでこころの声が聞こえてしまう、巨大な卵みたいな海坊主が出現。海の底が見たい人に、見せようと、海をごっくんごっくんと飲んでゆきます。
あらま!すごい展開です。お魚さんたち、大ピンチと心配になりました。苦情がでて、最後は元通りで、やれやれですが海の底の景色も生き物たちもしっかり見ることができました。ページを丁寧に見てゆくと、とても楽しめる絵本だと思います。
(capellaさん 60代 じいじ・ばあば)
7月23日 海辺で砂のお城を作ったら…!?
土曜日は『すなのおしろ』
海水浴客でびっしり埋まった賑やかな海岸。女の子は砂浜で一人張り切ります。
「わたし おしろを つくるのが すきなのよ」
彼女は黙々と砂のお城を作ります。それは普通のお城じゃなく、うんと大きくて立派なもの。ドームや塔があって、ワニを放し飼いできるお堀があって。中に入ればオーシャンビューだし、波の音が聞こえるし、アイスクリームも食べ放題! すぐに世界中から王さまやお妃さまがやってきて、宴会場で派手なパーティ。みんなとっても楽しそう。
ところが、みんなが言い出した。豪華な朝食も遊び場もベッドも砂だらけ。かゆいし、眠れないし、みんなかんかん。仕方ないよね、砂のお城なんだから。そこで女の子は……?
ページをめくるたびにみるみる広がっていくのは、奇想天外、女の子の空想世界。その立派なお城にうっとりしながら、自分もいつか砂遊びをしていたことを思い出すのです。夢中になりながら、手も動かして。本物だと思ってると、やっぱり砂で。そしてやってくるのは、あっと驚く最後の展開。ああ、これこれ。この爽快感。
イスラエルの絵本作家が描く砂のお城は、どこか異国情緒もありながら、楽しむポイントは万国共通。独特な色彩やユーモラスな表情も魅力的。探し絵もしながら、隅々までしっかり味わえる1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
7月24日 海ってほら、不思議な出会いがあるでしょう。
日曜日は『なみのいちにち』
「あさだ! 」
太陽が顔を出すと、わたしの一日がはじまる。ねぼすけたちを起こして、働きものを送り出す。わたしは、波。ほら、ぼうや。怖がらないで、音を聞いてごらん。
「さん ささーん」
波打ち際では、子どもたちと追いかけっこをしたり、自分にそっくりなスカートとたわむれたり。海水浴でにぎわう昼下がりもお気にいりの時間。午後になればちょっとお昼寝。あれ、可愛いお花。添えてくれたのは若い女の人。そこにやってきたのは……?
画面に広がる美しい海を背景に、繰り広げられるのは日常の風景からちょっと不思議な出来事まで。描かれるのは、そこに住む人々の豊かな表情や忘れることのない思い出、そして新しい出会いも。毎日同じようで、少しずつ違う一日。同じ場所なのに、時間によってまるで違う色を見せる景色。おもいのほか愛らしい波の語り口。それらが、人々の様々な思いを全て包み込んでくれるように感じるのは、気仙沼で海と育った作者・阿部結さんが描くからこそなのでしょうか。
海の町で暮らすということ。その場所に行ったことがなかったとしても、存在をしっかりと感じとることができるこの絵本。よせてはかえす波の音を聞きながら、なんだかかえりたくなってくるのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
他にもいろいろ!「海の絵本」
どんなに広くて深い海でも、絵本の中なら自由に泳ぐことができますからね。お気に入りの海があれば、今すぐにでも飛び込んで、楽しい冒険をしてきてくださいね!
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