【今週の今日の一冊】この一冊に、ありがとう。10/27~11/9は「読書週間」
10/27~11/9は「読書週間」(※)。毎年11/3の「文化の日」を中心にした2週間が「読書週間」に制定されています。今年のテーマは「この一冊に、ありがとう」。今週はこちらのテーマに沿って、お気に入りの一冊への思いや、特別な本との出会いについて書かれた絵本と読み物をご紹介します。
2022年10月31日から11月6日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
10月31日 つとむが古本屋で出会った特別な一冊とは…!?
月曜日は『トムと3時の小人』
小学生のつとむが古道具屋で見かけた1さつの古い本。赤い表紙に金色の線でくるくるしたもようが書いてあり、『トムと3時の小人〈下〉』という題がつけられています。
面白そうと思いながらも買わずに帰ってきてしまったつとむはどうしても読みたくなり、次の日、町の図書館で本を探します。司書のおばさんにたずねると出してくれたのは、赤い本にそっくりでありながらも、表紙に〈下〉という文字がない、青い表紙の本でした。
図書館でも1冊しかなく古くて貴重だというその本は、貸出禁止になっていて、つとむは、どっしりとした〈旧館〉にある閲覧室で読み始めます。
お話は、トムという男の子が、しんせきのフローラおばさんの家で体験した1週間の不思議な物語。時間のたびに青いハトが飛び出してくる山小屋の形のハト時計、いつのまにか数がへっているおやつのゼリービーンズ、毎晩かならず見るまぶしいくらいの明るい夢‥‥‥。
「あしたの3時に、見はってごらん」
数々の不思議の理由は、いったい誰のしわざだったのでしょう。
物語を読み終えたつとむは、さらにつづきが読みたくなり、もしかしたら古道具屋で見かけた赤い表紙の本がつづきなのでは? と考え、ふたたび古道具屋をおとずれます。
はたして赤い表紙の本はまだ残っているでしょうか?
さらに、古道具屋で、物語の中に出てきたものと同じような山小屋の形のハト時計を見つけたつとむは、本にまつわる新しい発見をし、心をはずませるのでした。
謎ときのようなドキドキ感がありながら、物語の世界と現実の世界が混ざり合い交錯していく様子に最後までワクワクが止まりません。特筆すべきは、1冊の本の中にもう1冊本が挟まっているという驚きのしかけ!(ぜひ手に取って体感してみて下さいね)
絵本から物語、YA作品までとびきりの物語で読者を楽しませてくれる、たかどのほうこさんの楽しい遊び心がたっぷりと感じられるような贅沢な1冊です。全ページカラーで描かれる平澤朋子さんの色彩豊かなさし絵や古い本の懐かしい雰囲気のさし絵もとても生き生きとしていて、魅力的です。
(続きはこちら>>>)
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
- 2021.09.16【小学3、4年生におすすめの新刊】『トムと3時の小人』
11月1日 『かいがらのおくりもの』は、クマタの大切な本
火曜日は『一さつのおくりもの』
クマタは、『かいがらのおくりもの』という絵本が大好きでした。毎日毎日声に出して文を読み、 ゆっくり絵をながめ、うなずきながらページをめくります。絵本の中には、主人公のキツネの子が、仲良しのリスの子に、1番気に入っている貝がらを、悩んだ末にあげる場面が出てきます。クマタはキツネの子に、「キツネちゃん。きみは、えらいね。ぼくだったら、いくらなかよしでも、いちばんすきなものを あげたりはできないよ。」と話しかけます。
しかし、そんなクマタに、絵本と同じような場面が訪れます。3日3晩大雨が降り続いて山のむこうのふかみどり村が水びだしになり、大人たちが手伝いに行くのを見て、クマタのともだちが「ぼくたちの本もおくろう」とつぎつぎに自分の本を持ってきたのです。もちろんクマタも自分の絵本の中から1冊を選ぶことにします。けれど、汚れや傷がない本は大好きな『かいがらのおくりもの』だけ。そこでクマタは、クマタにとってとても大きな決断をします。
誰かにおくりものをする時、何をあげようか、どんなものが喜ばれるかなどいろいろ悩みますよね。しかもクマタのように自分が大切にしているものを手渡す場面に出くわしたら、どんな選択をすることが正しいのでしょう? クマタは大雨の被害で困っているまだ知らない相手に対して、汚れのある本をおくるなんてとてもできない、と考えます。クマタにとっても大切な本をおくったからこそ、その思いがまっすぐ相手に届き、代わりに思いがけない喜びがクマタに届いたのでしょう。
小学1年生ぐらいからひとりでも読める易しい幼年童話。親子でおくりものについて話しながら読んでみませんか。大人でもじんわり考えさせられるものがありそうです。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
読者レビューより
一年生になる息子と読みました。
くまのくまたは、大好きなお気に入りの絵本があります。とてもとても大切で何度も何度も読み返している一冊。
その絵本の題名は『かいがらのおくりもの』。
”きつねの子がリスの子に貝殻をプレゼントしようと思っています。リスの子が1番気に入った貝殻をあげようと考えていると、それはきつねの子の1番と同じ。どうしようか、あげようか、やっぱりやめようか、迷いに迷い、きつねの子はあげる事にしたのです。...”
ある日、隣町で大雨が降り洪水に。
浸水してしまった町のお手伝いにお父さん達が出掛けます。隣町の困っている子供達にくまた達はお気に入りの絵本を送ることにしました。
くまたは迷います。お気に入りのあの一冊を送るべきか、それとも送らないか。
くまたの決断とその後の展開に心がほっこり。
素敵なお話でした。
(あさのこさん 30代・ママ 女の子8歳、男の子6歳)
11月2日 はじめて本とであったよろこびが伝わる一冊
水曜日は『だいすきなほんくん』
ぼくのもらったプレゼント。なかみは、ほんくん! ページをひらいて、ページをとじて、それから…。いっぱい、いっぱい、たのしいじかんがすごせるよ! はじめて本とであったよろこびを、シンプルな文とカラフルなイラストでつたえます。
読者レビューより
ぼくのもらったプレゼントの中身は本くんでした。ページを開いて、ページを閉じて開いて、なんて楽しい時間なのでしょう。本をもらった喜び、そして読み聞かせしてもらう時の嬉しい気持ちが伝わってきます。 文字数が少ないので小さい子も楽しめます。
(ぼんぬさん 40代・ママ 女の子3歳)
11月3日 本はあなただけの想像の世界を無限に広げて…
11月4日 お気に入りの本がある日、図書室から消えたら!?
金曜日は『貸出禁止の本をすくえ!』
ある日、わたしの大好きな本が図書室から消えたのが、このお話のはじまりだった――小学4年生のエイミー・アン・オリンジャーは、放課後に図書室でゆっくり本を読んですごすのが唯一の楽しみ。でもある日、お気に入りの本、『クローディアの秘密』が、図書室の棚から消えていた。この本が、「子どもにふさわしくない本」として、貸出禁止なったのだ。でも、ある本が子どもに「ふさわしい」「ふさわしくない」って、どういうこと? いったい誰が、どうやって決めるの?
――内気で、いつでもいいたいことをいえずにいたエイミー・アンだったが、貸出禁止騒動をきっかけに、友だちの助けを借りながら行動をおこしはじめる。やがて、その行動が大きな問題となってしまい……。
11月5日 なんでも教えてくれるわたしの本。わたしだけの本
土曜日は『ルリユールおじさん』
舞台はパリ。路地裏の静かな通りにひっそりとルリユールおじさんの店はあります。「ルリユール」とは手作りの製本のこと。ソフィーが大切にしていた植物の図鑑がばらばらになってしまい、途方にくれていると、「ルリユールおじさんのところへ行けば直してくれるよ。」という言葉を聞き、やっと探したのがこのお店だったのです。
おじさんの手によって、ソフィーの目の前で植物図鑑はどんどん修復され、生まれ変わっていきます。その細かい工程が紹介されている絵を見ながら「こんな丁寧な作業があるのか……」と感動せずにはいられません。なにせ製本職人は60もの工程を覚えなければならないそう。やがて、世界で1つだけの美しい植物図鑑が出来上がっていくのと同時に、ソフィーとおじさんとの交流、おじさんとやはり製本職人だった父を思い出していく様子などがとても丁寧に描かれていきます。
最後に金箔の文字が入って完成した瞬間。読者にも、その幸せな気持ちが伝わってきます。今では、全工程をマスターしている職人さんというのは一桁の数しかいないのだそう。そんな「魔法の手」で作られている本というのは、やっぱり存在感が格別なのです。憧れますよね……。
秋も深まる季節にぴったりの、本を愛するちょっと大人の為の絵本です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者の声より
青が印象的な、パリの街を描いた美しい絵に引き込まれ、読み進めるうちに静かな感動で胸がいっぱいになりました。
ルリユールおじさんが父から受け継いだ、本を愛する心、仕事に対する誇り。
著者のいせひでこさんは、私たちにそれを充分に伝えてくれます。
さらに私たちがこの本を通して、子どもたちに伝えることができれば素敵ですよね。
上質な映画を観たような、読後の満足感。宝物のような一冊です。
いせひでこさんの、他の著書も読んでみようと思います。
(ふっちさん 40代・ママ 男の子6歳)
11月6日 読書の喜びを通じて、自信と勇気が少年の胸に…
日曜日は『希望の図書館』
一九四六年、アメリカ。「黒人は、図書館に入れない」とラングストンの母親は言っていた。しかし、新しく越してきたシカゴの町で、ラングストンは、だれもが自由に入れる図書館を見つける。そこで、自分と同じ名前の詩人が書いた本と出会い、母親の「秘密」にふれることになる…。読書の喜びを通じて、小さな自信と生きる勇気を手に入れていく少年の物語。
いかがでしたか。子どもたちにとっても大人の方にも、自分にぴったりくる、お気に入りの本との出会いは特別なものですよね。「読書週間」には全国のあちこちで本と出会えるイベントがあります。どうぞ素敵な一冊との出会いがありますように。
※読書週間とは……
終戦の2年後の1947(昭和22)年、まだ戦争の傷あとが日本中のあちこちに残っているとき、「読書の力によって、平和な文化国家を創ろう」と、出版社・取次会社・書店と図書館が力をあわせ、そして新聞や放送のマスコミも一緒になり、第1回「読書週間」が開かれました。
第1回「読書週間」は11月17日から23日でした。これはアメリカの「チルドレンズ・ブック・ウィーク」が11月16日から1週間であるのにならったものです。各地で講演会や本に関する展示会が開かれたり、読書運動を紹介する番組が作られました。いまの10月27日から11月9日(文化の日をはさんで2週間)になったのは、第2回からです。
それから70年以上が過ぎ、「読書週間」は日本中に広がり、日本は世界のなかでも特に「本を読む国民」の国となりました。
今年の「読書週間」が、みなさん一人ひとりに読書のすばらしさを知ってもらうきっかけとなることを願っています。
選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
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