【今週の今日の一冊】「ひらいてワクワク めくってドキドキ」こどもの読書週間がはじまります♪
今週から5月12日までは、子どもの読書や本に関する記念日が目白押しです。子どもの読書においては、4月23日に「子ども読書の日」があり、この日は、「世界本の日(世界図書・著作権デー)」や「サンジョルディの日」でもあります。そして4月23日から5月12日までは「こどもの読書週間」。 2024年の「こどもの読書週間」の標語は「ひらいてワクワク めくってドキドキ」。
そこで今週は、ページをめくるたびにワクワクさせてくれるような冒険の絵本や、子どもたちの豊かな想像力がどこまでも広がる絵本をご紹介します。
2024年4月22日から4月28日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
4月22日 未来の少女マヤとチョコレートを探す旅に出よう
月曜日は『ミライチョコレート』
「チョコレートって なにかしら?」
マヤが博物館で見ているのは、大昔の「ほん」に描かれている、色んな形のチョコレート。家に帰ってパパやママに聞いても、二人ともよく知りません。1000年後の未来には、世の中からチョコレートがなくなっていたのです。どうしても食べてみたくなったマヤは、チョコレートを探す旅に出ます。そこで出会ったのは、思いもよらない大きな実で……。
表紙の絵の中で、ちょっぴり不思議な服を着た青い髪の女の子が、手に持っているのは、見るからに美味しそうな板チョコレート。今最も注目される絵本作家/美術家ユニットであるザ・キャビンカンパニーが新しく手がけたのは豊かな色彩と壮大なスケールで描くSFの世界!? 1000年後の食事や、街の様子、ジャングルのような木々に覆われた地球。その風景に驚かされながら、何よりショックを受けるのは、私たちの大好きなチョコレートがなくなっているという設定です。
けれど考えてみれば、今を生きる私たちだって、この甘くとろけるチョコレートがどうやって出来上がっていくのがよく知らないのです。
「チョコレートって、何で できているか しってる?」
未来の少女マヤと一緒にチョコレートの秘密を探る冒険をしながら、改めてこの魅力的な食べ物がなくなってしまわないようにと願うばかりです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者レビューより
ちょっと妖しくおしゃれな作品の多いザ・キャビンカンパニーさんの新作ということで、読みたいと思いました。
3024年の日本に住む女の子マヤが、博物館で昔の本を読み「チョコレート」なるものを知ります。
「口の中でとろけるあまーいおかし」と聞いて、どんなものか食べたくなって……。
近未来的なイラストを見ていると、これが本当の未来の姿のように思えました。
(クッチーナママさん 40代・ママ 女の子19歳、女の子16歳、男の子14歳)
4月23日 「子ども読書の日」。本を開いて想像の世界へ。
火曜日は『ほんのなかのほんのなかのほん』
主人公のトムくんが楽しみにしていた海水浴なのに、パパとママは遊んでくれない。ちょっと冒険と一人でおさんぽ。夕方になり帰り道がわからなくなってしまったトムくんの足元に、誰かが忘れていった本が一冊。トムくんがその本をひらいてみると…。今度はトムくんの スキー旅行のお話がはじまります。トムくんが楽しみにしていたスキー旅行なのに、パパとママは遊んでくれない。ちょっと冒険と一人でおさんぽ…。
本のなかに実際に2冊の本が綴じこまれた絵本。言葉は同じで、違う場所での物語が展開します。主人公は物語のなかでどこに行ったのでしょうか。物語の最後で主人公ははればれとした表情です。経験したのは、本を読むということだったのでしょうか、または本の中に入り込んで冒険してきたのでしょうか、はたまたすべてが夢だったでしょうか。
「いながらにして違う世界を旅できる」「同じことばでも違う絵がつくことでちがう世界が広がる」そんな本という存在のおもしろさを、物語のなかで味わうことができる、何だか深(ふか)おもしろい絵本です。
読者レビューより
しかけ絵本、というくくりにしていいのでしょうか。
題名からして、おもしろい予感がして手に取りましたが、本当に、ほんのなかに一回り小さい本がついてる!
そして、ちゃんとお話は続いているのです。というか、繰り返されている。
同じ文でも絵が違えば全く違う話になるのだなぁと実感。
びっくりするようなしかけに、淡々と比較的シンプルな話が展開されます。
話の内容に、もう少し捻りがほしかったかも、と思う私に対して、こどもたちは読めば読むほど、この世界観にはまっていくようで。日常の生活から、どんどん不思議な世界に迷い混んでいく感じと、トントンと一気にその世界から抜け出す感じと、自分達にも起こるかも?!っていう想像が広がるのかもしれません。4歳のしたの娘も毎回、ワクワクした表情で聞いてくれます。
(こりこりこさん 30代・ママ 男の子7歳、女の子4歳)
4月24日 ベッドの上で待っていたのは、無人島での大冒険!
水曜日は『ロビンソン』
毎日海賊ごっこに夢中なぼくら。
学校の仮装パーティーだってもちろん海賊になる…つもりだったけど。
ママがいうんだ。
「ロビンソン・クルーソーはどう?
大好きなお話のヒーローでしょ?」
そうそう、そうなんだ。ロビンソンは最高にかっこいい。
ママの衣装づくりは本格的。
ぼくは本物のロビンソン・クルーソーになっちゃった、友だちは何ていうかな。
ドキドキして学校に行くと、みんなが……大笑いした。
ショックのあまり部屋に引きこもり、熱を出して寝込んでしまった少年を待っていたのは、大海原からたどり着いた無人島!彼は一人きり、自給自足で生きていかなくてはならない。夢にまでみた大冒険の舞台だったのです。
張り切って、夢中になって、自信にあふれていて。だけどふいに訪れる「かなしみ」。世界が揺らいでしまう「瞬間」。子どもたちの多くが体験するそういう出来事は、大概はまわりから見ると大したことのないことだったりします。だけどそこには、これから大人になっていくまでずっと忘れてはいけない「大切なこと」が沢山詰まっているはず。
この絵本は、作者ピーター・シスの実体験をもとにしているからこそ「個人的な出来事」がとても丁寧に描かれていて、読んでいる人の心を動かします。あの、落ち込んだ心で向かった無人島が彼自身をとても強くしたのでしょう。
表現方法の幅も大きく広がり、ピーター・シスの魅力を存分に味わえる傑作絵本です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者レビューより
ピーター・シス自身の仮装写真を見て笑ってしまいました。
この絵本は、作者の思い出を背景にしたお話なのですね。
自らがロビンソン・クルーソーになった気分の夢の世界のお話を、絵をふんだんに使って広げていきます。
学校の仮装大会で、海賊になった仲間と一緒に冒険に旅立つシーンが、とても素敵です。
(ヒラPさん 60代・パパ)
4月25日 めくるしかけで驚きがいっぱい!
木曜日は『いこう!たんけん!ぼうけんのたび』
めくるしかけに驚きがいっぱいの「面白い!鎌田歩の人気かがくえほん」シリーズ。「のりもの」「恐竜」「昆虫」「水辺の生きもの」「どうぶつ」に続く6作目は「探検・冒険」です!
探検、冒険、もうその言葉だけで何が起こるのかドキドキしながらページを開くと……
まずは砂漠を探検。荷物を背負ったラクダを引き連れ進んでいたら突然、ザザーッ!大変、砂山が崩れた!中から出てきたのはタルボサウルスの化石?!
海底を深く深く潜っていくと、沈没船を見つけた!財宝があるかも?覗いてみると……出てきたのはでーっかいダイオウイカ!
雪山登頂、洞窟の地底、南極基地とどんどん続く探検、冒険。最後は地球を飛び出して、宇宙へ向けて出発だ!
ふだんの暮らしの中では体験できないような地球規模、宇宙規模の冒険を味わうことができる本作。しかけをめくって飛び出すのは、冒険のその先にある景色。なんとも壮大でロマンがあって、いつか眺めてみたいという夢が湧き立ちます。鎌田歩さんが描く自然、乗り物や施設、道具はどれも精緻でリアリティがあって、探検する人々のいきいきとした表情も魅力的。子どもたちにはページの隅から隅まで、絵の細部までじっくりと楽しんでほしいなと思います。
宇宙への旅が最後かと思っていたら……その先がありました。
「ただいま」「おかえり」
世界、地球、宇宙。すべてはつながっていることにも気づける冒険の絵本です。
(竹原雅子 絵本ナビライター)
4月26日 くうそうのせかいのとびらがきょうもひらきます!
読者レビューより
子どもの想像力の中に、たくましいエネルギーを感じます。
チーズとポプリ呼び合うあいさつの段階で、もうこの遊びをしようという合図になっていたんですねぇ~。
私は、ねこちゃんの命名にもこの子たちのオシャレさが光っていると思いました。
どのページも、想像力欠如の大人には、圧巻の世界。
二人の少女の言葉遣いも、その世界の臨場感を伝えてくれます。
読み進めるうちに、だんだん私もこの世界へ、入っていきました。
小さい読者さんなら、もっと始めから興奮することでしょう。
(アダム&デヴさん 50代・ママ 男の子16歳)
4月27日 姉妹が真夜中に出会ったのは、大きなかいじゅう!
土曜日は『まよなかのかいじゅう』
「ごおー ぷすー ごおー ぷすー」
真夜中、ものすごい音が聞こえて目が覚めたれいちゃん。隣に寝ているあやちゃんを起こし、ふたりはくらい階段をのぼって2階へ確かめに行くことに。
「ごおおー ぷすー ごおおー ぷすー」
音がひびいている部屋のドアの奥からは、見たことのない葉っぱがぐんぐんのびている。懐中電灯で奥をそうっと照らすと……ベッドの上に眠っていたのは、山のように大きなかいじゅう! 思わずれいちゃんは走り出し、かいじゅうに向かってまっしぐら。れいちゃんも慌てて追いかける。お腹の上まで登りついたふたりは、深呼吸をしてから言うのです。
「かいじゅう ちょうさ、かいし!」
極彩色に彩られた心はずむ夜の時間。小さな姉妹ふたりが真夜中に出会ったのは、ピンク色のふさふさの毛におおわれた謎のいきもの。ふごふごと動く鼻の穴、さわると大きく開いたくちびるに、ぽよんぽよんとはねるお腹の上。おそろしいはずなのに、ふたりはどんどん楽しくなってきて、かいじゅうの上でおおはしゃぎ。得体のしれないものに出会った時の子どもたちの発想力ときたら、なんて豊かなのでしょう。
夢のようでいて、なんだか懐かしい感覚もよみがえってくるこのお話のタネとなったのは、作者の阿部結さんが、幼い頃に実際に聞いていたお父様の地響きのようないびきの轟音なのだそう。ドキドキとワクワクが入り混ざる冒険物語、一緒に楽しんでみてくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
4月28日 窓をあけると…そこにはすごい景色が広がっていて
日曜日は『おばあちゃんちの ふしぎなまど』
毎年夏になるとね、1週間のあいだ、おばあちゃんの家で過ごすの。早起きをして、自転車に乗ったり、ベリーをつんだり、絵を描いたり。そして、お昼寝をするの。そうすると、いつもびっくりするようなことが起こるのよ……。
女の子がおばあちゃんの家の水色の窓をあけると、そこに広がっているのは見たことのない景色! 次の日は、色鮮やかなジャングルかと思ったら、その次の日は、イタリアのサン・マルコ広場でカーニバル。大きな波が打ち寄せてきたり、村でのにぎやかなパーティが開かれていたり。なんて不思議で窓なのでしょう。でも、どこか見覚えがあるような?
ここまでページをめくると、気づく方もいるでしょう。女の子が窓から見ているのは、世界的な名画をもとにした景色ばかり! ルソーにモネ、ゴッホに北斎まで。おばあちゃんと女の子の共通の趣味は絵を描くこと、見ること。きっとそんな話をしているからこそ、豊かで不思議な夢を見ることができるのでしょうね。
絵画をじっと見ていると、「この世界はどうなっているのかな?」「 続きを見てみたいな」「入ってみたいな」と思うことも多いはず。そうやって想像力を刺激されるのも、絵画の大きな魅力の一つだと思うのです。女の子と一緒に、自由な心でアートを味わってみてくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者レビューより
夏におばあちゃんのお家に遊びにきた女の子。
部屋の窓を開けるたびに、違う風景が広がります。その風景というのが、なんと世界中の名画のモチーフなんです。
ルソーのとらの絵や葛飾北斎の富嶽三十六景、ゴッホのぐるぐる渦を巻いた星月夜の絵など、絵に詳しくない私にもわかるものだったので、楽しく読みました。
アートに興味を持つきっかけにもなりそうな絵本です。
(クッチーナママさん 40代・ママ 女の子19歳、女の子16歳、男の子14歳)
※「こどもの読書週間」とは……
子どもたちにもっと本を、子どもたちにもっと本を読む場所をとの願いから、「こどもの読書週間」は1959」年(昭和34年)に誕生しました。もともとは、5月5日の「こどもの日」を中心とした2週間でしたが、子どもの読書への関心の高まりを受けて、「子ども読書年」である2000年より現在の4月23日(世界本の日・子ども読書の日)~5月12日に期間を延長しました。開始当時より、図書館・書店・学校を中心に、子どもたちに本を手渡すさまざまな行事が行われてきました。 幼少のときから書物に親しみ、読書の喜びや楽しみを知り、ものごとを正しく判断する力をつけておくことが、子どもたちにとってどんなに大切なことか……。子どもに読書を勧めるだけでなく、大人にとっても子どもの読書の大切さを考えるとき、それが「こどもの読書週間」です。
(「読書推進運動協議会」HPより http://www.dokusyo.or.jp/)
いかがでしたか。
「こどもの読書週間」には、子どもの本に関するイベントもあちこちで賑やかに行われることと思います。子どもも大人も一緒に本の世界を楽しんでくださいね。
選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
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