【おいしい絵本】vol.9 あたたかくて、ひんやり。その名も…!?『おばけのてんぷら』
食べたことないけれど、言葉のひびきだけで「これは絶対美味しそう!」そう思ってしまうものってないですか?
私は…「おばけのてんぷら」です。
なぜか、この言葉に強烈に惹かれてしまうのです。
「おばけ」の「天ぷら」ですよ。
いったい、どんな味がすると思います?きっと……
大きさは、手のひらサイズくらい?
色味は白っぽくて、衣は薄付き。
(フリットも捨てがたいなあ)
揚げたての熱々をぱりっと食べると、
ほわっとやわらかくて、
中は冷たくてひんやり。
でも。あれ?
食べた途端に、ドライアイスみたいな煙がしゅーっと出てきて、中身がどっかに消えてなくなっちゃった!? もちろん食べ応えなんてなくて、お腹も満たしません。本当に食べたのかな。
それでも、食べ終わった後はしばらく余韻にひたるのです。
「おいしかったなあ。またいつか食べたいなあ。」
……すみません、これはすべて個人的な妄想です。
実際の「おばけのてんぷら」は、せなけいこさんの名作絵本のタイトルです。主人公は、くいしんぼうで楽観的でおっちょこちょいのうさこ。そんなうさこのところにやってくるのが無邪気で無防備なおばけなのです。
おばけのてんぷら
「おばけのてんぷら」、なんて気になるひびきなのでしょう。
おばけのてんぷら・・・つめたいのかな?やわらかいのかな?
せなけいこさんの人気のロングセラー絵本。
想像をめぐらせて楽しんだ記憶が今も残っています。
さてお話は、食べることが大好きなうさこが、こねこくんのお弁当に入っているてんぷらを見つけるところから始まります。なんておいしそうなのでしょう。
うさこはさっそく自分でもつくってみることにしました。お買い物にいって材料を揃え、野菜を切って、ころもをつくって、野菜にころもをつけて・・・熱い油でじゃーっとあげる。
我慢できなくて、あげたてのてんぷらを食べながらたくさん作ります。
すると、おいしいにおいに誘われて、山のおばけがうさこの家にやってきた。
うさこに見つからないように、ちょろちょろ飛び回りながらてんぷらのつまみぐい。
「あー、おいしい!おいしい!」
そのとき、大変! おばけがあやまってころもの中にぽちゃーん!
おばけ、だいじょうぶかな!?
くいしんぼうで、楽天的、小さなことなんて気にしない主人公のうさこ。
無防備でおっちょこちょいのおばけ。
そんなチャーミングな登場人物のおかげで、どの場面も可笑しくてどんどん読み進めてしまいます。
「ああおいしい。てんぷらってだーいすき。」
大人になった今も、うさこに共感してやまない私なのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
どうやら実際の「おばけのてんぷら」は、無事に脱出できたようですね。ほっとしました。(本当は食べてみたいけれども)それにしても、この絵本の始まり方が素敵です。
「うさこは たべる ことが だいすきです。」
出かけていても、頭の中は食べることでいっぱいのうさこ。
ひとのお弁当を見て、味見させてよって言っちゃううさこ。
すぐに作り方を教わるうさこ。
早速実践するうさこ。
お料理上手な人の行動ってこんな感じなのかもしれません。
でも、おっちょこちょいでもあるんですよね、うさこ。だから、とんでもないハプニングが起きるのだけれど…。
案外、大ヒットするメニューってこんなところから生まれるのかもしれない、と思わせてくれる「おいしそうな絵本」でした。
みんな大好き!「めがねうさぎ」シリーズ
磯崎園子(絵本ナビ編集長)
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