懐かしくてたまらない!!「幼年童話」のさきがけとなった児童書シリーズとは!?
「うわ~、懐かしい!」
思わずそう叫んでしまったのは、ある大型書店の児童書コーナーでのこと。読みものが並んでいる棚を眺めていた時にたまたま目に飛び込んできたのは、5歳か6歳ぐらいの時によく読んでいた幼年童話のシリーズ。
思えば30年ぶりぐらいの再会でした。
気づけば、あれもこれも懐かしい! うわ~、うわ~と興奮冷めやらず、何冊もまとめ買いし、幸せな気持ちで帰途についたのでした。
その懐かしくてたまらないシリーズを、絵本ナビユーザーさんのレビューとともにご紹介します。
あかね書房・復刊創作幼年童話
1970年代において、「幼年童話」という分野を創り出し、そのスタイルを確立した名作の数々を復刊したシリーズというのが、あかね書房・復刊創作幼年童話シリーズ。
「幼年童話」といえば、絵本から童話への橋渡しと言われ、今でこそよく聞くようになりましたが、そのさきがけとなったのがこちらのシリーズだったのです。
ラインナップの作と絵のお名前を見ていくと、寺村輝夫さん、和歌山静子さん、佐藤さとるさん、村上勉さん、松谷みよ子さん、西巻茅子さん、山中恒さん、神沢利子さん、舟崎克彦さん、長新太さん、岩村和雄(いわむらかずお)さん、あまんきみこさん、灰谷健次郎さん、谷川俊太郎さん、和田誠さん……(順不同)と、日本の絵本・児童文学界を引っ張ってこられたそうそうたるお名前がずらり。これは面白くないはずがありません。
中には残念ながら現在購入できない作品もありますが、今読んでも全く色褪せない物語がここにあります。
ドキドキも、おかしさも、切なさもあり、ホロリともしてしまう『このつぎなあに』
ほのぼのしみじみ童話
私の年代では、子どもの頃に読んだ人が多く、しかも私の大好きな一冊や思い出の一冊に挙げられることの多い本です。
初めて読んだ時から絵も本の大きさも変わらず、ページを開くと楽しさと共に懐かしさも感じられ、なんだか肩の力が抜けるような気がします。
ドキドキもあり、おかしさもあり、切なさもあり、ホロリとしてしまうところもありと、盛りだくさんに楽しめる、太鼓判を押してお勧めできる本です。
山奥で息子が迎えに来るのを待つおじいさんと、お腹がすくとやって来るたぬきの、ちょっとピントのずれた交流を描いた、ほのぼのとしたお話で、昔の人は、自然や動物達とこうやって上手に共存してきたのかなと微笑ましく感じながら読むことができます。
絵本から少し長めの物語に移行していく頃のお子さんに丁度良い本です。
読んであげるなら、幼稚園年長くらいからでも十分楽しめます。
(金のりんごさん 40代・ママ 女の子13歳、男の子10歳、男の子7歳)
佐藤さとるさんと 村上勉さんの最強コンビによる幼年童話
絵本でもおなじみのジオジオが、幼年童話でも登場です!
大好きなジオジオ
まだ字が分からない次男が、繰り返し繰り返し読んでと持ってきた本です。
ジオジオは、ライオンでみんなから恐れられいます。しかし、年をとって動物を食べたいとは思いません。おかしが大好きなのです。スイーツ作るために、ぞうのブーラーがジオジオ専属のパティシエとして、毎日いろんなすてきなおいしいお菓子を作ってくれます。
誕生日には、ジオジオが特別に注文したケーキを作るために、みんな必死で材料を集めます。さて、どんなケーキになるのでしょうか。ちょっと、ジーンとする場面もあり、次男は一人でも何度も何度も本を読んでいました。
この本の他にも、ジオジオのパンやさんがあります。これとは、また違った設定で、こちらも是非お勧めします。絵本から童話へと、すてきな橋を渡しをしてくれると思います。
(やっちょとやまちゃんさん 30代・ママ 男の子8歳、男の子7歳)
いつも人に積まれている積み木の逆襲とは?長新太さんワールドを童話でも。
堀内誠一さんによるふたごのでんしゃの絵に見覚えのある方も多いのでは!?
電車のゆく末は?
とにかく電車をこよなく愛している4歳の息子に借りてきた本です。
これは、単線を走る2台の電車「べんけい」と「うしわか」のお話。
2台の電車は、市役所の前だけにある複線で、いつもすれ違いながら、仲良く街中を走っている。
でも、いつしか、道路に車が増え、廃止されることになるんです。
こういうお話は他にもあるんだけれど、その後、電車はどうなるの?
この電車はね、団地の前の「こどもとしょかん」に生まれ変わったんです。
あとがきを見ると、東京都日野市には、昔、ほんとうに、団地の中に、これと似た電車図書館があったそうです。
時代とともに、電車は廃止され、なくなっていく。
でも、とまったままでも、次から次へと子供たちがやってくるこどもとしょかんになりましたっていう結末、ハッピーエンドでよかったです。
4歳の息子には、ちょっと文章が長かったかな、と思ったけれど、とにかく電車好きなので、最後までじぃっと絵を見て聞いてくれました。
(たかくんママさん 30代・ママ 女の子7歳、男の子4歳)
神沢利子さんによるちょっと怖いけど、記憶に残る『はらぺこおなべ』
おなべが食べる??
毎日おいしいごちそうを作るおなべばあさんは働くのがいやになって家出をしてしまいます。「わたしゃ たべてくらすのさ」そうなんです。おなべばあさんは、今度は自分がいろんなものを食べて暮らすんだって。おなべばあさんは、怖いくらいにいろんなものを食べました。めんどりにうさぎ、めうしなど・・。食べるたび体は大きくなって、とうとう最後に食べたものは?おなべばあさんはおおきな○○○を食べてお空に飛んでいってしまいました。初めこの絵本のを読んだとき「おなべが食べるなんて~」と思ったけど神沢利子さんの最後のあとがきを読んでなるほど~と思ってしまいました。あとがきもぜひ読んでみてください。
( たまっこさん 30代・ママ 男6歳、女3歳 )
さらに、こちらのシリーズではないのですが、同時期に出版された幼年童話で、多くの人に知られているであろう大人気のお話も合わせてご紹介します。そのタイトルとは……?
年齢によって感じ方が変わる『ふらいぱんじいさん』!
居場所はある
小さい頃、大好きな本でした。なつかしくなって、何十年ぶりかに読んでみました。あー、やっぱりおもしろかった。ちっとも古びないお話です。
子どものころは、旅のおもしろさと、あざやかな色で描かれた絵が好きでした。が、大人になった今は、それだけではありませんでした。
ふらいぱんじいさんは、大好きなたまごを焼くことができなくなり、旅にでます。その決心をした時のセリフに、「ひろいよのなかにでれば、このわしだってなにかやれそうなものだ。よし、でかけよう。あたらしいせかいで、だれかがわしをまっているかもしれない」と、あります。
大人になった今だからこそ、年を重ね、ふらいぱんじいさんに近づいてきたからこそ、胸にしみこんできました。なので、ラストは小さい頃より感動してしまいました。元気をもらえるお話でした。
(あんじゅじゅさん 40代・その他の方)
懐かしいお話に再会して気づいたのは、懐かしくて嬉しくなるこの気持ちは、過去からの贈り物なのだ、ということ。当たり前のことだけれど、過去にその本に出会っていなければ、将来懐かしいと再会する喜びも味わえません。それは幼年童話でなくとも、絵本や、もう少し年齢が上の子向けのお話についても同じで、子どもの頃に1冊の本に出会ったことが、大人になった時にまた別の楽しみとして自分にかえってくるのだということ。子どもに本を読んであげたり、手渡すことは、その時だけの楽しみだけでなく、未来の楽しみをも作り出してくれる可能性が大きいのだと感じた瞬間でした。
さらに大人になった時に子どもの頃に読んだ本に再会することは、本の内容を懐かしむだけでなく、楽しかったかけがえのない子ども時代を思い出すことにも繋がり、そのことがもしかしたら大人になったその子を励ますかもしれない。そんな風に考えていくと、子どもに本を手渡すことは、未来に受け取れる宝物をも手渡すことなのだと思えてくるのです。
そんな宝物のような記憶を、今、目の前にいる子どもたちにどんどん手渡していけたら……。まずはこちらの復刊創作幼年童話シリーズのように、自身が子どもの頃に読んだ懐かしい本から手渡していけたらいいですね。
併せて読みたい!親が夢中になる!絵本の記事
秋山朋恵(絵本ナビ 児童書担当)
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