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第2回「小学生がえらぶ!“こどもの本”総選挙」

絵本ナビ・金柿が聞く「こどもの本総選挙」ができた理由

「こどもの本総選挙」は、全国の小学生に1番好きな本を投票してもらい、その投票結果を発表するというイベントです。2017年に行った第1回こどもの本総選挙では128,055票もの投票が集まり大きな話題になりました。結果発表のイベントは、多くのメディアでも取り上げられ、普段本を読まない子どもたちが、新しい本と出会うきっかけにもなりました。 絵本ナビは、「子どもたちにどのように本を届けるか」を考えた結果、生まれたサービスです。それだけに私たちは、子どもたちに本を届ける、ということにこんなやり方があったのかと、こどもの本総選挙に感銘を受けました。

絵本ナビ・CEO金柿(左),こどもの本総選挙事務局長・岡本さん(右)/撮影:小松顕一郎

そんなこどもの本総選挙が昨年から第2回を実施し、現在結果発表に向けて準備中ということです。そこで今回は、株式会社 絵本ナビ代表取締役社長CEOである金柿(かながき)が、こどもの本総選挙事務局長である岡本さんを訪ねて、こどもの本総選挙誕生までの経緯と第二回実施にかける想いを聞いてみました。

大人の事情ではなく、子どもの好きを大事にしたい

絵本ナビ・CEO金柿(かながき)

───実は第1回が開催されていたときから、ニュースや書店店頭での展開に注目し、こどもの本総選挙がどういう取り組みなのか興味を持っていたんです。

 

岡本:そうなんですね、ありがとうございます!総選挙のニュースは絵本ナビでもたくさん取り上げていただきました。

 

───こんないい企画になんで絵本ナビが関わっていなかったのかと、社内で吠えたことがあるぐらいです(笑)。というのも、こどもの本総選挙って、絵本ナビと同じものを目指していると思っているんです。ひとつは「本好きの子どもや親により深く本を好きになってもらう」、もうひとつは「普段あんまり本に接していない子どもや親に、本のおもしろさを伝える」、という2つの方向性です。

岡本:私たちも、こどもの本総選挙を始めるにあたって、休み時間は図書館ではなく外に遊びに出るような「ドッヂボール男子」に本を手にとってもらうにはどうすればいいか、ということをすごく考えていました。普段全然本を読まないという子どもたちにも、どうやって本をめくる喜びを伝えるか考えることをとても大切にしています。

───今回はじっくりこどもの本総選挙に込められた想いを伺いたいと思います。まずは、どういうきっかけでこどもの本総選挙が始まったのか、教えてもらえますか?

こどもの本総選挙事務局長・岡本さん

岡本:そもそもこどもの本総選挙は、ポプラ社の70周年事業としてスタートしたものなんです。若手社員が集まり、70周年を迎えるポプラ社が取り組むべき新規事業を考えました。そうしていくつかアイデアを出しあっている中に、「子ども向けの本屋大賞ってなんでないだろう」という素朴な疑問がありました。大人や専門家が選ぶ子どもに読んでもらいたい本、というのはありますが、子ども自身が選ぶものはありません。それなら、思い切って子どもたちに投票してもらおう……こうして始まったのが、こどもの本総選挙です。

───伺ってみると、普通のアイデアの上にさらにアイデアが乗っているような印象を受けます。専門家の選ぶ賞ではないもの、というところに、さらに子どもたちに選んでもらおうという発想ですよね。そこからいくと、こどもの本総選挙という企画はできあがりをみれば、なるほどという感じがします。でも企画をそこまでの形にするのは大変だったのではないですか?

岡本:投票の仕組みやルールは、とても長い時間をかけて議論しました。例えば、こどもの本総選挙では、「日本国内で刊行されているあらゆる書籍」を投票の対象としていますが、当初は「新刊のみに絞るべきではないか」「マンガは除外すべきではないか」などの意見がありました。

 

───それでは、実際のルールではマンガを投票してもいいということになっているんですね。

 

岡本:その通りです。いろいろ考え方があり迷いましたが、最終的には「大人の事情ができるだけ入らない方向に考えよう」ということにしました。児童書というジャンルひとつとっても、あくまで大人が作った枠組みです。子どもが好きで読んでいるものであれば、たとえ大人向けに作られたものであったり、マンガであったりしても「こどもの本」であると私たちは考えています。「児童書総選挙」ではなく、「こどもの本総選挙」というタイトルにしたのも同じ理由です。

 

───そんな思いが隠されていたんですね!そういう意味では、新刊か既刊かというのも子どもたちには関係ないですよね。

想定外の反響に、予期せぬ苦労もありました

───しかし、ルールを作るだけでも苦労した上に、実際やってみたらさらに大変だったと伺いました。どういう点が大変でしたか?

 

岡本:初めての試みということで、一から周囲の理解を得なくてはならなかったということでしょうか。特にこどもの本総選挙を成功させるためには、社内外幅広い協力が必要でした。最終的にはたくさんの書店員さん、学校の先生・司書の方々などにご協力いただきましたが、企画について全く知らないみなさんが快く協力できるようにするためには、企画の意義を正しく伝えることが大切であると実感しました。

第一回の投票用紙

───確かに書店員さん、投票開始のポスターをお店に貼ったところで売り上げになるのか?と思うでしょう。それにもかかわらず、最終的にはたくさんの方の協力を得られたわけですから、やっぱりこどもの本総選挙のビジョンが共感しやすいものだったのでしょうね。それで、イベントをやってみた結果や反響というのは、想定通りのものだったんですか?

 

岡本:どちらかというと想定外です(笑)。特に投票数は目標を大きく上回りました。当初10,000票集まれば、統計的にも発表して問題ないものになりそうでしたし、初めての試みとしては大成功だと思っていたんです。それがふたを開ければ、128,055票でした。

───目標の12倍以上ですね!想定と違った要因はどこにあったんですか?

 

岡本:特に学校からの投票が想定よりはるかに多かったんです。おそらく学校の先生方や司書さんは、日頃から読書推進に力を注がれていて、常に子どもたちに本を読んでもらうきっかけを求めているのだと思います。そこにこどもの本総選挙という施策は、企画として納得感があり、好きな本を投票しようということも取り組みやすさがあったのかもしれません。

 

───子どもは人に勧められることより、自分が勧めたがりますよね。私の娘が小学生だったとき、自分の好きな本をクラスにおすすめするという授業があり、なんでおもしろかったのかをそれぞれ書いたらとても盛り上がったという話を聞きました。自分が好きな本について書くってたまらなくおもしろいんでしょうね。

 

岡本:それは大人も同じですよね。きっと本のおもしろさそのものなんだと思います。大人も頼まれているわけでもないのに、本のレビューを喜んで書いているわけですしね。

第一回で集まった小学生の声、声、声…

───絵本ナビがまさにそういうものです。頼まれていないのに大人が「これが好き」って書いてくれています。やっぱり絵本ナビとこどもの本総選挙と目指すところが近い気がします。ここまで聞いていると、初めての試みとは思えないぐらいの成果を収め、さらに目標の12倍も投票が集まったのなら万事成功!といっていいように思えるのですが、そういうわけではなかったんですか?

 

岡本:実は、そこがもうひとつ大変だったところなんです。ほとんどの投票は手書きのものが送られてきているのですが、それらをすべてデータ化しないといけませんでした。1万票なら自分たちでもなんとか手入力できると思っていたのですが、12万票となるとそれはさすがに無理でした。そのため、データ化をするための費用が当初の予定よりかなりかかってしまいました。せっかく集まった投票なので集計しないわけにはいかないですし。でも、出てきた結果を見たとき、こどもの本総選挙をやってみてよかったなと思いました。

 

───1位の『ざんねんな生きもの事典』の他にも、ベスト10に入ったことで話題になった本もありましたよね。特に『ぼくらの七日間戦争』など、さまざまなニュースで取り上げられていました。

 

岡本:ご存知の通り「ぼくらの七日間戦争」は30年以上も前に初版が出たものです。今では小学生を子どもに持つようになった親御さんが、小学生だったころ読んでいたような本です。そんな本が今も読み継がれていて、しかもめちゃくちゃ子どもたちに支持されています。出版業界で働いていると、「ぼくら」シリーズが今も読み継がれているのはなんとなく知ってはいますが、普段児童書に触れない方の多くは知らなかったかもしれません。今子どもたちの間でどんな本が読まれているのかを広く知ってもらうきっかけになったと思います。

「子どもに本を届けたい」という想いをさらに大きなムーブメントに

第2回「こどもの本総選挙」ロゴ:イラスト:ヨシタケシンスケ デザイン:寄藤文平

───こどもの本総選挙は、あらゆる点でニュース的なバリューがあったということだと思います。あれだけニュースで取り上げられるのをまわりから見ていると、第2回はどうするのだろうと思っていました。すでに第2回の投票は終了していますが、前回から2年空いての開催となりました。どういう事情があったのでしょうか?

 

岡本:お話しした通り、こどもの本総選挙はポプラ社の70周年事業で始めたもので、第2回以降の開催を前提にしていませんでした。ところが、全国の学校の先生・司書の方々からたくさん手紙が来るなど、思っていた以上に反響があったんです。これだけ反響があれば第2回をやらないわけにはいかないと思いました。ただ、やるからには、今後も続けていけるような仕組みを作りたいと考えました。

 

───新しい仕組みを作るための準備期間がこの1年だったというわけですね。具体的にはどのように仕組みを整えていったのでしょうか?

 

岡本:一番の変化は総選挙事務局をNPO法人化したということです。第1回は人もお金もポプラ社が持ち出しましたが、それは持続的なあり方ではありません。ポプラ社とは別の組織としてNPO法人を設立することで、出版社や企業からの支援や寄付金の募集をやりやすくしました。また、公平性を確保するために、ポプラ社以外の出版社で働く有志の方々にメンバーに入ってもらいました。事務局のメンバーは全員、普段の出版社での仕事と並行して、こどもの本総選挙の運営に携わっています。

 

───そういう意味では子どもに本を届けたいというビジョンに賛同した人たちが集まっているんですね。第2回の運営はどういう状況ですか?

 

岡本:昨年11月から投票がスタートし、今年の1月15日に締め切りました。現在その集計や結果発表の準備を進めています。5月5日のこどもの日に開催予定の結果発表イベントで、どの本がベスト10に入ったのかを発表します。

───ちなみに投票はどれぐらい集まったんですか?

 

岡本:25万票以上集まりました。第1回のときと違い今回は、周りの方々がこどもの本総選挙を知っているのが大きかったと実感しています。それだけ第1回のインパクトが大きかったのだと改めて感じます。

 

───倍増じゃないですか!確かに企画についてはもう一から説明する必要はなくて、「あれ、第2回をやるんですね!」ってなったんでしょうね。集票も倍増して盛り上がっているのはいいニュースです。運営については、何か新しい試みはあるのでしょうか。

 

岡本:出版社の持ち出しに依存しない、新たな支援のあり方や資金集めの方法を模索しています。実現しているものの一つに、総合コンサルティング会社アクセンチュアとのコラボレーションがあります。今回NPO法人化にあたって、新メンバー募集をしましたが、それと同時にスポンサー企業の募集も告知したんです。それを見たアクセンチュアの担当の方から連絡が来て、スポンサーとして技術協力をしていただけることになりました。具体的にはAI-OCRと呼ばれる読み取り技術を活用し、子どもたちに書いてもらったISBNをデジタルデータにするという一次処理をしていただいています。また、デジタル化できないデータについては社員のボランティアが補正するイベントを行うなど、会社をこえたコラボレーションやネットワーキングにもなりました。

 

───確かに集票が増えたのはありがたい半面、さらにお金もかかりそうですものね。スポンサー集めのような取り組みはどんどん大切になりそうです。最近スタートされたクラウドファンディングも、今後続けていくためには不可欠な施策ということなんですか。

 

岡本:まさにおっしゃる通りです。第3回以降の継続的な開催に必要な資金を集めるため、クラウドファンディングを2月末からスタートさせました。今まではスポンサー集めや、ベスト10にランクインした出版社への協賛金の要請などで資金を集めようとしていました。しかし、一般の方々の中にも、こどもの本総選挙を知っていて、何か力になりたいと思ってくださっている人がいるのではないかと考えました。

 

───僕がまさにそうでした!

 

岡本:クラウドファンディングをスタートしてみると、実際にそういった方からのご支援や熱い応援メッセージが寄せられるようになりました。長い目で見て、継続的に続けていこうとするのであれば、理念に共感して応援してくれるような仲間を増やすのが大事だと思っています。本が好きな人、本を子どもたちに読んでもらいたい人にぜひ支援していただきたいです。

こどもの本総選挙事務局長・岡本さん(左),絵本ナビ・CEO金柿(右)

───こどもの本総選挙の取り組みを見ていると、投票用紙を書いている子どもたち自身がめっちゃ楽しんでいるのが目に浮かびます。それを大人が応援しているというのが、すごくポジティブですよね。私のような子どもの頃本好きだった大人からすると、応援したいなと率直に思えるような取り組みだと思います。クラウドファンディングがスタートしたことで、応援してくれる人が参加する仕組みもできました。子どもたちが本を選び合う、お勧めしあう、楽しむ、投票する、ということを大人が応援しよう、となればいいなと願っています。

 

岡本:本当におっしゃる通りです!今回のクラウドファンディングは、「『こどもの本総選挙』おとな大応援団、目指せ1000人計画!」というタイトルで実施しているのですが、まさに大人が子どもたちの「本が好き!」という気持ちを応援してくれる取り組みに育てばいいなと思っています。

 

───クラウドファンディングがうまくいくことが、今後続けていく条件ということなんですね。全然集まらないと終わっちゃうかもしれない。「終わっちゃっていいんですか!?」というお話ですね。今日はこどもの本総選挙について、たくさんお話を伺うことができました。最後にこの記事を読まれているみなさんにメッセージをお願いします

こどもの本総選挙事務局長・岡本さん

岡本:投票用紙に書かれた「この本を選んだ理由」を読んでみると、子どもたちそれぞれが選んだ本に強い愛着を持っていることを感じます。それが25万人分も集まっているわけですから、こどもの本総選挙の結果というのは、「本が好き!」という想いの結晶です。ただ、その結果を子どもたちに届けるためには大人の協力が必要です。結果発表にあわせたPRに加えて、クラウドファンディングでの支援の輪を広げることで、ますます多くの大人のみなさんにこどもの本総選挙について知ってもらうきっかけにしたいと思っています。そのことが子どもたちに新しい本と出会うきっかけづくりにつながると信じています。みなさんのお力をお借りできると嬉しいです。

 

───ぜひこどもの本総選挙を毎年続けられるようなものに育ててください。それで毎回小学生が「来年の投票のために本を読んでおかないとな」と思ってくれると素敵ですね。そのためにはまず大人が応援をしていくことが大事だと思います。今日は本当にありがとうございました!

クラウドファンディングプロジェクトについて

NPO法人こどもの本総選挙事務局は、クラウドファンディングサービスREADYFORを活用し、5月5日(火・祝)開催予定の「第二回こどもの本 総選挙」授賞式や、来年度の継続開催をあと押しする「おとな大応援団 プロジェクト」を5月20日(水)まで募集しています。
 

・タイトル:「こどもの本総選挙」おとな大応援団、目指せ1000人計画!
・URL:https://readyfor.jp/projects/kodomonohon-sousenkyo
・公開期間:2020年5月20日(水)23時まで
・目標金額:300万円
※本件は目標金額に達した場合のみ、実行者は資金調達が可能なALL-OR-NOTHING形式です。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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