【子どもと絵本のエピソード】保育士がっちょに聞く!ももたろう週間
現役保育士で絵本専門士の大河原悠哉(がっちょ)です。私は公立保育士・幼稚園教諭を計10年経験したのち、現在は株式会社SHUHARIの認可保育園元気キッズにて勤務しています。また、子育て支援のイベントを主催・運営したり、保護者向け・保育士向けの絵本講座をしています。子どもとの絵本エピソードや活用方法についてお話しします。
保育園で『ももたろう』を日替わり読み比べ
前回、『ももたろう』の絵本をご紹介したときに触れました「ももたろう週間」についてお話をしていきたいと思います。「ももたろう週間」って何?と思われた方もいるでしょう。『ももたろう』の絵本は様々な出版社や作者から出ています。その様々な種類のももたろうを日替わりで読む1週間です。ひたすら『ももたろう』を読むのです。
これを行うにあたっての注意点を1つ。無理強いをしないこと。私が行った時も「子どもたちが嫌がったらやめよう」と思いながら始めました。始めてみると「おもしろそう!」「あの『ももたろう』見たい!」と食いついてくれたので読んだ時のエピソードです。
ももたろう週間1日目
福音館書店から出版されている『ももたろう』です。こちらのももたろうは、
- おばあさんが川で桃を見つけ、うちへ持って帰る。
- 桃を割ろうとすると、男の子が生まれる。その子に「ももたろう」と名付け、大切に育てる。
- 鬼が村で米や塩を奪い、姫をさらっていく。
- ももたろうが鬼ヶ島へ行き、鬼退治をする。
- ももたろうに敵わなかった鬼たちはおひめさまを返す。
- ももたろうはおひめさまをお嫁に貰い、おじいさんとおばあさんと幸せに暮らした。
ざっくりとストーリーを挙げればこのようになります。
今までも何度か読んでいた絵本なので、言葉や展開なども覚えていて、ももたろうと犬や猿などの動物たちとのやりとりも一緒に口ずさみながらお話を進めていきます。定番のももたろうでもあるので、親しみやすいのが特徴です。
ももたろう週間2日目
小学館から出版されている『ももたろう』です。こちらのももたろうは、
- おばあさんが川で桃を見つけ、うちへ持って帰る。
- 桃を割ろうとすると、男の子が生まれる。その子に「ももたろう」と名付け、大切に育てる。
- 鬼が村や都へ度々現れ、乱暴をしたり田畑を荒らしたりして、米や宝を奪っていく。
- ももたろうが鬼ヶ島へ行き、鬼退治をする。
- ももたろうに敵わなかった鬼たちは宝物を差し出す。
- ももたろうはおじいさんとおばあさんの待つ小さな家に帰ってきた。
お気づきでしょうか?ストーリー展開が違うということに! 子どもたちはそのようなちょっとした違いを見逃しません。「昨日のももたろうとは違ったよ!」「おひめさまがでてこないね~」など口々に話します。そのちょっとした違いが楽しくなり、また見たいに繋がったように思います。
ももたろう週間2日目に読んだ絵本
日本人なら知らない人はいない、いつの時代でも昔話のベストワン。日本一の桃太郎が活躍する物語に、みな幼いころに心躍らせたことでしょう。
小学館児童出版文化賞受賞の市川宣子先生の文章に、今、人気ナンバーワンの長谷川義史先生が、元気いっぱいの絵を描いてくださいました。
ももたろう週間3日目
絵本館から出版されているユーモアたっぷりの『ももたろう』。正式なタイトルは『だれでも知っているあの有名な ももたろう』です。こちらのももたろうは、あくまでもみんなが知っていることを前提にストーリー展開していきます。
- おばあさんが川で桃を見つけ、うちへ持って帰る。
- 桃を割ろうとすると、男の子が生まれる。その子に「ももたろう」と名付け、大切に育てる。
- 村の人がよく鬼のことを話す。
- 鬼を見たくなってピクニック気分で鬼退治へ行く。
- ももたろうが完勝するが、鬼ごっこで鬼チームに負ける。
- たくさんの鬼とみやげ話をお土産に持ち帰り、みんな一緒に大賑わいで暮らした。
今までのももたろうとは全く違い、面白要素が盛りだくさんの1冊です。ももたろうが負けたり、鬼を土産に連れて帰ったりするなど、「えっ!」「なんで?」といった展開が目白押しです。この絵本はももたろうのお話を知った上で読むと本当に盛り上がりますので、他のももたろうをじっくりと楽しんだ上で読んでいただきたいと思います。
ももたろう週間3日目で読んだ絵本
ついに五味太郎版「ももたろう」が出ました!
なにしろ五味太郎初のむかしばなしですから、ただの「ももたろう」ではありません。
さてさて、どのような味付が?
型破りの楽しさです。どうぞお楽しみに!!
ももたろう週間4日目
いよいよ4日目で最終日です。最後は高陵社書店から出版されている『桃太郎が語る桃太郎』です。桃太郎の目線でストーリー展開していきます。「ももたろう」が漢字で書かれているということにも子どもたちが気付いたのを覚えています。ちょっとした違いも子どもたちは楽しんでいるように感じました。こちらのももたろうは
- おばあさんが川で桃を見つけ、うちへ持って帰る。
- 桃を割ろうとすると、男の子が生まれる。その子に「桃太郎」と名付け、大切に育てる。
- 鬼が都に現れ、お宝を根こそぎ持っていってしまう。
- 桃太郎が鬼ヶ島へ行き、鬼退治をする。
- ももたろうに敵わなかった鬼たちは宝物を差し出す。
- 帰る途中に宝物を都で返し、おじいさんたちの待つ村に帰っていった。
ストーリー展開が違うのを感じられるかと思います。こちらのももたろうは、最後に問われます。「キミが桃太郎ならどんな桃太郎?」と。こどもたち自身に「もし自分なら」を考えさせる一文で終わります。
様々なももたろうを楽しみ、向き合ってきた1週間。子どもたちなりに色々な意見が出て「こんなことを考えていたんだな」と感心したのを今でも覚えています。その当時、絵本を読む順番は子どもたちに多数決で選んでもらいましたが、結果的に良い順番で読めたのかなと思っています。
ももたろう週間を行ってみて…
ももたろう週間を行ってみて感じたことは、同じももたろうでもストーリー展開が1冊1冊違うということ。
子どもたちが特に気にしていたのは、鬼退治をして「持ち帰ったもの」です。おひめさまや宝物、鬼など様々でした。ストーリー展開が違うことは知っていましたが、こんなにも違うのかと思い、子どもと一緒に夢中になりました。
その後、ももたろう週間をきっかけに、「3びきのこぶた週間」や「赤ずきん週間」などを行ったのは、良い思い出です。ぜひ、1つのお話をピックアップして、「○○週間」を楽しんでみてください。もちろん無理強いしないように行ってくださいね!
他にもこんなももたろうがあるよ!
質問コーナー
最近出た本で、子どもに評判の良かった絵本を3冊教えてください。(Nさん)
と質問を頂きました。
最近読んだ絵本の中で、子どもたちの反応が良かった絵本は
- 『はっけよーい』(ポプラ社)
- 『カメレオンのかきごおりや』(アリス館)
- 『ふーってして』(角川書店)
の3冊です。
最近読んだ子どもたちの反応が良かった絵本3冊
(1)『はっけよーい』は、おすもうさんになりきってお相撲をする絵本になりますので、子どもたちと遊びながら楽しめます!読んだ後は、子どもと一緒にお相撲を取るなんてのも良いかもしれませんね!
(2)『カメレオンのかきごおりや』は、季節感のある1冊です。夢のようなかき氷に思わず「食べたーい!」なんて声が聞こえてきました。個人的には夏の定番絵本に決定です!
(3)『ふーってして』は、子どもたちと「ふーっ」と息を吹き合いながら楽しみました。この絵本を導入に吹き絵遊びにも発展できますね!いつかやってみたいと思います。
オススメ絵本を見た時に、子どもと遊べる絵本が自分の好みなんだなと改めて感じました。絵本を通して子どもとコミュニケーションを図れるのは素敵ですよね。自分を振り返る良い機会になりました。ありがとうございました!
大河原悠哉(がっちょ)
公立保育士・幼稚園教諭を計10年経験ののち退職。現在は、株式会社SHUHARIの認可保育園元気キッズにて勤務。 平成29年6月に独立行政法人国立青少年教育振興機構による「絵本専門士」を取得。子育て支援センターや図書館、本屋などでおはなし会や保育者・親子向けの絵本講座や研修を行っている。 現在は、保育士・ライター・子育て支援イベントの主催、運営・講師など様々な顔を持つ。 『【絵本専門士】がっちょの絵本ブログ』を運営。
10月3日オンラインイベントを行います。詳細はこちら≫
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