絵本で育む「食べる力」!
絵本には、子どもに働きかける様々な力が備わっています。絵本がきっかけで、新しいことにチャレンジする気持ちを持てたり、苦手なことに取り組もうと思えたりもします。子どもたちの世界を楽しく広げてくれる絵本は、子育て中のパパママにとっても、大きな味方になってくれること間違いなしです!
この連載では、とくに「これからの時代に必要とされる力」にフォーカスして、それぞれの力について「絵本でこんなふうにアプローチしてみては?」というご提案をしていきたいと思います。
「食べる力」を(すこーしずつ)育んでいこう!
子どもの食事問題! パパママにとって、非常に悩み深いテーマですよね。お野菜が嫌い、好き嫌いが多い、そもそも食べる量が少ない……などなど、いろいろな方向のお悩みがあると思います。私自身も子どもが生まれてからずーっと、食事どきは落ち着かないしイライラする、そんな毎日が続いております。パパママの共通の思いは、子どもにしっかり体にいいものを食べてほしい、それだけです。ただ、そこにいたるまでのハードルの何と多く高いことか。途方にくれますよね。
絵本を読むだけで、それが解消するわけではありませんが、ちょっとでも子どもたちが食べ物や食べることに興味が持てるような、なぜいろんな食べ物を食べなきゃいけないのか理解できるような、そんな絵本を探っていこうというのが、今回のテーマです。
いろいろな食べ物が手に入り、食事スタイルも自分で選べる時代。パパママだけではなく子どもたちにとっても、「食べること」を意識することが大事になってきます。食べることと自分の健康が、すこーしずつ意識のなかで結びついて、楽しい食事につながっていくような、パパママもちょっとは楽になるかも……?という、絵本をご紹介いたします!
一緒にお料理すると食べたくなる
チャーハンのおやまを作ろう!
台所で、包丁がタンタン、トントンと歌うと、にんじんや玉ねぎが刻まれて?。チャーハンが出来上がる過程を、リズミカルに描いた楽しい絵本。
まずは、食べ物に興味をもってもらえる絵本から。
ごはんをあまり食べてくれない、それほど食事に興味はないという子でも、いっしょにお料理することは大好き、ということはあると思います。この絵本で取り上げている“おやまごはん”は小さな子から挑戦できるので、まずはレッツトライです! いろんなお野菜を刻んで入れたチャーハンを、ごはんの型にいれてぽんっとひっくり返してできあがり。ちょっぴり苦手な野菜が入っていても、自分で形を作っただけで、いつものごはんも特別なものになりますよね。ごはんの型は100円ショップにもありますし、小さなお椀につめるだけでもよいので、ぜひやってみてください。とっても盛り上がりますよ。
ばばばあちゃんの料理絵本
子どもたちと作るいろいろな種類のおこのみやき。
やきそば入りのものや、クレープ風のものなどおいしそうなものばかり。あなたのお好みはどれ?
ほかにも「苦手な食べ物を混ぜ込んでしまえる」メニューですと、“おこのみやき”もおなじみですよね。そんな、おこのみやきをテーマにした絵本がこちらです。
ばばばあちゃんは、ちょっと短気だけれど手作り上手でパワフルなおばあちゃん。この絵本では、ホットプレートを使って、おいしそうなおこのみやきや、クレープ、クッキーを作っていきます。とってもおいしそうなのはもちろんのこと、ホットプレートの上で生地が焼けていったりキャベツがしんなりしていく姿は、子どもたちにとって、興味深いものです。絵本を読んだ後、実際に焼いてみて、お料理がどのように変わっていくか体験すると、食材への関心も高まりそうです。
あの手この手で嫌いなものにアプローチ
自分でお料理することから、さらに一歩進んで“自分で育ててみる”ことも、好き嫌い克服の一つの手段になるのではないでしょうか?
この絵本にでてくるしょうたは一度食べて嫌な思いをしたことから納豆が大嫌いです。農家のおじいちゃんは、しょうたと一緒に大豆を育てて一から納豆を作っていきます。自分のために時間をかけて作ってくれた納豆ということを知っているしその過程もずっと見てきて愛着もあります。そして、しょうたは一口食べることができるのです。
自分で育てたからといってなんでも食べられるようになるわけではないですが、食べ物がただ目の前にあるよりも、そうなるまでにどんな手間がかかっているのかを知るだけでも、その食事への思い入れは変わってくると思います。我が家では、昨年の夏、なんとなくキュウリを家庭菜園で育ててみました。それまで、キュウリに見向きもしなかった子どもたちですが、水をやってだんだん大きくなっていくキュウリを見てきたことで、愛着がわいたのかもしれません。食べました! (但し、その一本以降は続かなかったことも正直にお伝えいたします……。)
暗示をかけて好き嫌いを克服?!
チャーリーのいもうとローラには、きらいなたべものがたくさん! とくにトマトは「ぜったい」いやなんですって。 チャーリーは、なんとかしてローラにたべさせようとするのですが…?
さらに一風変わったアプローチで嫌いな物に向かっていく絵本が、こちらです。
主人公の妹は、好き嫌いがとっても激しい子です。主人公であるお兄ちゃんは、考えた末、「これは、ニンジンのようでニンジンではないのだよ」とむりやり言い換える作戦に出るのですが……。
好き嫌いがある子は言うなれば、なかなか意志が強い子とも言えます。その強い意志と自己暗示力を逆手にとって違う暗示をかけてしまえという発想が秀逸で面白い絵本です。我が家の6歳児は読みながら、「ぜったいだまされないぞー!」と叫んでいましたが、意外とまんざらでもなさそうでしたので、ぜひ、一つの手段としてお試しください。
体に良いことを伝えていこう
「プロテイーン サポニーン レシチーン オリゴトー イソフラボーン」
本作の舞台は、江戸時代を思わせる「いそふらのくに」。
ここでは、先代の御殿様が広めた大豆を農民たちが育てて、生計を立てていた。
ところが、その御殿様が亡くなると、突然大豆作りを禁止した「大豆禁止令」というおふれがお城から出されたのだ。
もう生活できないと嘆く農民を助けようと立ち上がったのは、今まさに収穫時期を迎えた大豆たち。
畑を飛び出し、このおかしなおふれをやめさせようとお城に向かうのだが!?
食べ物っていろんな栄養があるのよ体にいいのよ、と伝えてくれる絵本が、こちら。
子どもたちの大好きな戦隊ものになぞらえ、大豆たちが“ダイズレンジャー”となって、不健康なお殿様を改心させていくという絵本です。
おいしい大豆料理を食べて、お肌つるつるほっそり締まったお殿様の姿が、「大豆って体にいいんだ!」ということを、子どもたちの心にしっかりと刻み込んでくれます。
変身するときの「プロテイーン サポニーン レシチーン オリゴトー イソフラボーン」というかけ声に反応してくれれば、さらにしめたものです。「この栄養素は体にこーんないい働きがあってね」と教えてあげられます。そこからさらに、苦手なお野菜や食べ物の栄養についても発展させてみてはいかがでしょうか?
2歳くらいまでは、「栄養の話」をしても、それで食べてくれるということは難しいと思いますが、3歳をこえたくらいからは、反応が変わってきます。子どもの中に「もっと大きくなりたい、強くなりたい」など自分への欲求が出てくるので、そこで
「魚を食べれば頭がよくなるよー」「たまごの白身は筋肉ムキムキで強くなるんだよ」
などの呪文に、ちょっとずつ反応してくれるはず。すぐに食べてくれるとは限りませんが、日々刷り込んでいくことで、「あのときあんなこと言ってたなあ」と、いつの日にか一口パクっといく……ことを信じて、あと一息、一緒にがんばりましょう!
なぜ、食べることは大事なのか
そもそも、なぜパパママたちがこんなに「食べろ食べろ」と言ってくるのかを、わかりやすく子どもたちに伝えてくれる絵本があります。
はらぺこさんになることが、どうして大事なのか一緒に考えてみよう
私たちの体は、寝ているときにだって燃料が必要。体の燃料が足りなくなると、はらぺこさんになります。はらぺこさんになるのは実はとても大事なこと。どうして大事なのか一緒に考えてみよう。
どうしてはらぺこさんになるのかな、はらぺこさんになるとどうなっちゃうのかな、ごはんを食べることはなんで大事なのかな、ということを丁寧に楽しく説明してくれます。パパママの言うことは聞き飽きたと思っている子も、この絵本の言葉は興味を持って聞いてくれるのではないでしょうか。栄養のあるものをしっかり食べる、という習慣を、子どものうちにつけておいてほしい、そんな親の願いを自然に伝えてくれる絵本です。
「それでも食べない……」そんなときには
「ちゃんとたべなさい!」、何度言ってきたことか……というセリフですが、それでも食べないものは食べない、そんなときにはもうこの絵本を読んで開き直りましょう。 おまめの大嫌いな子・デイジーが、晩御飯のおまめを「おまめ、だいきらい」と言って残します。ママは、「おまめを食べたらアイスクリームを食べてもいいから」、「いつもより30分おそくおきていてもいいから」とごほうびで釣ろうとします。それでも食べないデイジーは……というおはなしです。
どんなごほうびを持ち出されたって「おまめだいきらい」と言うデイジーに、我が家の子どもたちも大笑いです。ふだんの食卓で「大嫌い」というと私から鬼の形相でにらまれますが、絵本なので、どんなに言っても怒られません。なので、大声で「だいきらーい」と読んで発散しています。
「〇〇食べたらこれあげる」などは、私もよく使う手ですが、何をしたって食べないときは食べないし、どうにもならないときってありますよね。そんなときには、とりあえず目のまえの子が元気で楽しそうであれば、「まあいいか」とあきらめて、一緒に「おまめだいきらーい」と叫んでみちゃうのも、たまにはいいもの。どんな子にもどんな人にも嫌いなものも好きなものもあるじゃないという内容に、ちょっぴりパパママの心もホッとしますよ。
さいごに
「食べてほしいのに食べてくれない」、本当に苦しい悩みですよね。私もその真っ只中にいます。
一緒にお料理をしたり、声かけを工夫したり、体に良いという話を延々と唱え、「食べ物さんも、食べてくれないと悲しいのよー」と情に訴えてみたり。そのときは食べても、その後が続かず、またスタートに戻る......という日々です。
しかし、本当に最近ですが、ちょっとずつ話を聞いてくれるようになりました! 今まで完全拒否していた食べ物を、少しだけでも口にするようになり、一口二口程度ですが、大きな一歩だと感じます。
元気で、何かしら食べているのであれば、そこまできちんと食べることにこだわらなくてもよいと思います。体質ももちろんありますし細かいアレルギーも発見されています。好きなものがあっても嫌いなものがあっても、それがその子です。ですが、“食べ物”がこれから大きくなっていく体にとってどう大事なのかという知識は伝え続けた方がよいと思います。子どもたちが大きくなっていく過程で、何かに夢中になって食べることがおろそかになることもあるでしょう。ですが、なにかをやり遂げるためには、やはり健康であることが1番大事です。自分で生活していくようになったとき、それまでに刷り込まれた食習慣が、彼らの体を守っていくと思うのです。
ただ、あんまり思いつめるとパパママもぐったりしてしまうと思います。なので、焦らずに、いろんな手段を繰り出し、時には絵本の力を借りて開き直りながら、時が経って子どもたちが納得して口をあけるその日まで! 食べることの大切さを、気を長ーくもって伝えてまいりましょう!
徳永真紀(とくながまき)
児童書専門出版社にて絵本、読み物、紙芝居などの編集を行う。現在はフリーランスの児童書編集者。児童書制作グループ「らいおん」の一員として“らいおんbooks”という絵本レーベルの活動も行っている。6歳と3歳の男児の母。
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