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絵本で伸ばそう!これからの子どもに求められる力

絵本で育む「コミュニケーション力」

絵本には、子どもに働きかける様々な力が備わっています。絵本がきっかけで、新しいことにチャレンジする気持ちを持てたり、苦手なことに取り組もうと思えたりもします。子どもたちの世界を楽しく広げてくれる絵本は、子育て中のパパママにとっても、大きな味方になってくれること間違いなしです!

この連載では、とくに「これからの時代に必要とされる力」にフォーカスして、それぞれの力について「絵本でこんなふうにアプローチしてみては?」というご提案をしていきたいと思います。

コミュニケーション力は、共感することから

子どもたちにとって、コミュニケーション力を培う教育は、昨今とても重要となっていっています。学校教育でも個々での学習だけではなくグループで意見をまとめ発表するなど、コミュニケーション力を求める学習にシフトしています。この流れは今後さらに大きくなっていくはずです。これからの時代は、世界中のさまざまな立場の人たちの存在・立場に共感できることが、社会で活躍する人の条件となるでしょう。以前は、リーダーといえば、人々を引っ張り上げるワンマンタイプがイメージされていましたが、今の世界のリーダーは、共感力をもち多くの人々と積極的にコミュニケーションをとっていく人というように、イメージも変化しています。

そうした時代に、絵本はとてもすばらしい力を発揮します。「絵本」の中のさまざまな物語は、それらに触れることで「どういう状況で人間がどういう感情を抱くのか」を伝えてくれます。その過程で共感力が磨かれます。多くの絵本に触れれば触れるほど、子どもたちは絵本の中で多くの経験をし、心を成長させてくれるはずです。どんな絵本も子どもの心に働きかけますが、今回は、「人の気持ち、コミュニケーションのあり方」というテーマに沿って、絵本をご紹介しようと思います。

相手を思いやり、想像してみる

コミュニケーションとは、思ったことや感じたことを相手に伝えること。まずは、伝える相手がどういう人か、考えなければコミュニケーションの入り口には立てません。

そうした“相手のことを想像する”ことがテーマの絵本に、こんな作品があります。

 

仲良しの二人、しろうさぎのしろちゃんと、はりねずみのはりちゃんのケンカのおはなし

しろちゃんとはりちゃん

しろうさぎのしろちゃんと、はりねずみのはりちゃんは大の仲良し。森の家で一緒に住んでいます。しかし、ちょっとしたことで大ゲンカに。大雪の中へ飛び出して行ったまま帰ってこないはりちゃんの事が気になり、妄想が膨らんで…。果たして二人は仲直りできるのか…?

しろうさぎのしろちゃんと、はりねずみのはりちゃんは、大の仲良し。友達同士でいっしょに暮らしています。何でも気が合い楽しく暮らしていましたが、ある日、はじめて意見の合わないできごとが起き、二人は大げんかになってしまいます。

きっかけは本当にちょっとしたことなのですが、ふだん仲良しな分、ちょっとしたキレツが大きくなってしまうことも、人間関係ではよくあることですよね。そんな訳で、はりちゃんは家を出て行ってしまいました。しろちゃんは最初こそぷんぷんしていましたが、はりちゃんに何か悪いことが起こっていないか想像し始めます。そして、想像すればするほど、しろちゃんにとってはりちゃんがどんな存在だったかを理解するのです。

ささいな気持ちの不一致は、友達や家族など、特に密なコミュニケーションをとる相手にこそ大きな問題に発展すると思います。ただ、そんなときには一歩ひいて、「相手はどんな人なんだろう」「何が好きな人なんだろう」「今、何をしているのだろう」と相手のことを想像することが、コミュニケーションをよりよいものにすることを楽しく伝えてくれる絵本です。

「しろちゃんとはりちゃん」はシリーズとなっていて、他の物語でもちょっとしたことでけんかをしては、相手のことを思いやり仲直りをしていきます。とっても楽しい二人の物語をぜひ読んでみてください。

逆の立場になってみる

相手のことを想像し理解するには、まず、相手の立場に立ってみることが必要ではないでしょうか? そんな「逆の立場」をしみじみと実感できる絵本が、こちらです。

おもちゃって思っていたより、たいへんなんだな

いちにちおもちゃ

おもちゃって、たのしそうだな。よし、いちにちおもちゃになってみよう。

 

いちにちくれよん。紙にこすりつけられて、いたたたた~。
いちにちコマ。ぐるぐる目がまわってきもちわるい。
いちにちぬりえ。ぐちゃぐちゃにぬられて、変な顔。
いちにちつみき。ぐぎぎぎぎ~ 上のつみきが重たいよ~。
けんだま、ピーヒャラぶえ、カスタネットに鉄道模型……。ほかにも、いろんなおもちゃになってみた。だけど、おもちゃって思っていたより、たいへんなんだな~。

楽しい擬音に、ユーモア満点のイラスト、親子で読んで思わず笑える、愉快な絵本。
おもちゃを大事に扱わないお子様、おもちゃをお片づけしないお子様に、おすすめの一冊!

この絵本では、文字どおり「いちにちおもちゃになってみよう」がテーマで、子どもが、ふだん使っているおもちゃの立場を経験していきます。クレヨンになったら顔をグリグリこすられて「キャー、痛いー」となったり、ぬりえになったらぐちゃぐちゃにぬられて、「変な顔になってはずかしいー」となったりします。とってもユーモラスに描かれているのでおしつけがましくなく、それでいて「おもちゃも大変だなあ」と見方も変わり、いつもより丁寧におもちゃを触る気持ちになったり、自分の側からだけ見るのではなく「逆の立場に立ってみる」とどうなるかが自然に伝わる絵本です。

そのほかにも、『いちにちぶんぼうぐ』や、『いちにちどうぶつ』など、シリーズの中でさまざまなものを取り上げているので、子どもに興味のあるジャンルから、さまざまな立場に立ってみるのもいいですよ。

うちの子は、最近急に「おばけこわい」と言い出したので、「おばけもけっこうおもしろいんだよ」と、『いちにちおばけ』を読んでみました。この絵本では、おばけを怖いものではなく身近な楽しい存在として描いているので、子どもも納得したようです。このように、「思い込み」の壁を崩すためにも「相手の立場に立つ」ことはとても有効だなと実感させてくれる絵本です。

「ともだち」、いちばん身近で複雑な関係

子どもたちにとって、一番身近なコミュニケーションをとる相手は「ともだち」です。でも、改めて考えると「ともだちの作り方」って言葉ではなかなか説明できるものではありませんよね。ちょうど新学期を迎えてまもなくのこの時期、仲良しの子とクラスがはなれてしまったり、小学校に入学したてでまだ遊ぶ相手がいないなど、「お友達がいない……」と悩んでいる子もいるかと思います。そんなときにおすすめなのが、こちらの絵本です。

コッコさん、みんなと遊べるようになるかな?

コッコさんのともだち

コッコさんは保育園で1人ぼっち。庭のすみにいて、なかなかみんなと遊べません。ある日先生が「さあ ふたりずつ てを つなぎましょう」といいました。コッコさんは困っていると、1人ぼっちの子が、もう1人いましたよ。手をつなぐと、うれしい気持ちになり、2人はどんどん仲よくなっていきました。引っ込み思案のコッコさんが、みんなと遊べるようになるまでのお話です。

長い間読み継がれている絵本ですが、友達ができていく過程がとても優しくリアルに描かれています。

コッコさんは、なかなかみんなの輪に入れず、入るきっかけもわからず、ただただ目立たないように隅にいます。でもその時、おなじくひとりぼっちの子に気づきます。その子は服の色も偶然同じ。ちょっとしたきっかけで二人はぐんぐん仲良しになります。仲たがいする日もあるけれど、そうしたことを繰り返して、二人っきりの世界がほかのお友達ともつながって、友達の輪が広がっていく物語です。

我が家の子も4月から小学校に入学しました。幼稚園のお友達とは一人離れてしまったため、お友達作りも一からです。「休み時間に何してるの?」と聞いても、一人でタイヤを跳んでいたり自由帳にひたすら恐竜を描いていたり、今のところ、お友達関係は未定なようで親もドキドキしていますが、コッコさんのようにちょっとしたきっかけをつかんでくれるとよいなと祈っています。

また、もうちょっと複雑なともだち関係を描いた絵本に、こんな作品があります。

たかこ

ある日、ぼくのクラスに転校生がやってきた。名前は「たかこ」。
平安貴族の格好をして、「いと はづかし。」なんて言って昔の人みたいだ。
となりの席のぼくは、だんだん仲よくなったけど、みんなと違うたかこをよく思わない子も…。
そんな中、出かけた遠足で、雷と雹にあってしまったぼくたち。
大パニックのクラスをすくったのは、たかこの十二単だったんだ。

審査員の満場一致で優秀賞に決まったという本作。
「みんなちがっていいんだよ」というメッセージをあたたかく、そしてユーモラスに伝えます。
 

ある日、たかこという転校生の女の子が学校にやってきます。たかこは、長い髪に十二単、扇で顔を隠し「いとはづかし」などという平安朝の女の子。筆を使ってノートを書きリコーダーの代わりに琵琶を鳴らすなど、いろいろなことが他の子と違います。この絵本は、“たかこ”という異文化から来た女の子との交流という面もありますが、たかこ本人にフォーカスすると、勉強ができて負けず嫌いの女の子がちょっとしたできごとをきっかけに、個性的なところをからかわれるようになってしまうお話でもあります。人と違うところをからかい、物を隠したりすることはもちろんよくありませんが、たかこにも人の反感を買ってしまう部分があるという難しいシチュエーションです。絵本では、たかこの思い切った行動によって距離が縮まり、互いの壁を取り払って交流するようになります。
人間関係にはトラブルがつきものです。しかし、「この人にはこうした面もある」とお互いを知ろうとすることにより、トラブルをこえてコミュニケーションすることができる、ということも伝えてくれる絵本です。
これらの絵本で描かれた「友達関係」というコミュニケーションから、人と人とはどうつながっていくのかな?ということに関心を持ってほしいと思います。

感じ方は人それぞれ

人とのコミュニケーションで大事なことは、自分と相手では物の感じ方はちがうということを知り、知った上でどう行動するかではないでしょうか? そういったテーマの絵本をご紹介します。

みえるとか みえないとか

宇宙飛行士のぼくが降り立ったのは、なんと目が3つあるひとの星。普通にしているだけなのに、「後ろが見えないなんてかわいそう」とか「後ろが見えないのに歩けるなんてすごい」とか言われて、なんか変な感じ。ぼくはそこで、目の見えない人に話しかけてみる。目の見えない人が「見る」世界は、ぼくとは大きくちがっていた。

この絵本では、まず、目の見えない人の生活・物の感じ方と、目の見える人の生活・物の感じ方を比べて見せます。この二者の違いは読者もイメージしやすいと思います。しかし、そこで終わりではありません。それでは見える人たちは同じ感じ方をするのかというと、そもそも人はそれぞれどこかが“違う”のだということまで示してくれます。そして、自分とは“違う”と思っている人でも、どこか同じところもあるかもしれない、また、違いについて教えあうことは発見につながるのだという、とてもとても深―いところまでヨシタケさんは描いてくれているのです。読むまでは、「難しいテーマが子どもたちに伝わるかな?」とも思っていましたが、子どもたちに読み聞かせてみると、みんな非常にイメージしやすかったようで、「うんうん」とうなずきっぱなしでした。
ヨシタケシンスケさんの絵本は、哲学の要素を含み非常に示唆的です。絵本は、様々なテーマを、絵で視覚化することにより非常に分かりやすく子どもたちに伝えてくれます。ヨシタケさんは、そうした利点を最大限にいかして非常に深いテーマや気づきを絵本に盛り込んで作品を届けてくれています。

また、同じ世界・同じ価値観を持っている友達であっても、やっぱりそれぞれ違う人間同士なのだと自覚する絵本に、こんな作品があります。

こはるとちはる

こはるとちはるはクラス一の親友。
好きなケーキ、好きな服、好きな色が同じなのは嬉しい。
だけど好きな人が同じなのは…嫌な気持ち。

白石一文と北澤平祐が贈る恋の大問題。

こはるには、“ちはる”というふたごみたいな友達がいます。背も同じくらいだし髪型も似ているし好きなものも一緒。好きなものが一緒だと楽しくて、ちはるちゃんのことが大好きでした。でも、初めてちはるちゃんのことが嫌になるできごとがあります。それは、二人ともりょうまくんのことが好き、ということ。今までは好きなものが一緒なほど大好きになっていったのに、なぜりょうまくんのことだけは一緒だと嫌な気持ちになるのだろう?と、こはるは初めての気持ちにとまどいます。

この絵本は「恋の絵本」というシリーズの一冊になりますが、「友達」という関係にさらに「恋」という複雑な感情が生まれることで、自分の気持ち・相手との関係、などなどを深く考えていくお話です。“恋”というと、子どもたちにはまだ自覚は難しいかもしれませんが、コミュニケーションをとる相手に対して、自分はいったいどんな気持ちを持っているのかな?と考えていくことも一緒に伝えてくれる絵本です。

さいごに

現代のコミュニケーションは、直接のやり取りだけではなくSNSを通じたり、1対1だけではなく1対不特定多数であったり、本当に難しいと感じます。ですので、シチュエーションによっても千差万別、「コミュニケーションってどうやるの?」と言われても、パパママも答えに窮しますよね。それこそ人の波に飛び込んで行って、いろいろな立場、状況で経験をするのが一番良い方法だと思います。
ただ、子どもでも大人でも、それが容易にできる人とそうではない人がいます。後者の子の背中を押してくれるものの一つに、本があると思います。一人で考え込んでいても人と人とのコミュニケーションに答えは出ませんが、本の中にあるさまざまな世界を知ることによって、「考えすぎているのかもしれない」「こうしていけばいいのかもしれない」と気づいていくことも多いのではないでしょうか? 私も人の輪に入っていけない子どもでしたが、さまざまな本によって、「こうすればいいのかな?」と一歩ずつ踏み出していけました。大人になってもコミュニケーション上手なわけではありませんが、自分なりの型がわかってきた気がします。

また、コミュニケーション力を高める秘訣として、“相手に興味をもつ”ということも不可欠だと思います。先日、入学したての我が子が小学校で“自己紹介”をしてきました。その自己紹介は、一人が好きなものを5つカードに書いて交換しあうという物で、自分の好きなものを教え、他の子の好きなものを知ることができます。お互いの好きなものに興味を持ち認め合える、すばらしいコミュニケーションの方法だなと思いました。
こうして実際に相手とやり取りしあいながら、絵本を通じて直接出会えない世界のことを経験し、“興味を持ち、想像して、相手の好きに共感する”ということを繰り返していってほしいと思います。その先に、一人よりも二人でいたほうがうんとうれしい、人と気持ちが通じ合った瞬間は震え上がるほど楽しい、子どもたちがそう感じて、コミュニケーションに踏み出していってくれることを願っています。

徳永真紀(とくながまき)


児童書専門出版社にて絵本、読み物、紙芝居などの編集を行う。現在はフリーランスの児童書編集者。児童書制作グループ「らいおん」の一員として“らいおんbooks”という絵本レーベルの活動も行っている。6歳と3歳の男児の母。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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