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絵本で伸ばそう!これからの子どもに求められる力

絵本で育む「レジリエンス」

絵本には、子どもに働きかける様々な力が備わっています。絵本がきっかけで、新しいことにチャレンジする気持ちを持てたり、苦手なことに取り組もうと思えたりもします。子どもたちの世界を楽しく広げてくれる絵本は、子育て中のパパママにとっても、大きな味方になってくれること間違いなしです!

この連載では、とくに「これからの時代に必要とされる力」にフォーカスして、それぞれの力について「絵本でこんなふうにアプローチしてみては?」というご提案をしていきたいと思います。

レジリエンス=乗り越える力

今回は、「レジリエンス=乗り越える力」をテーマに絵本をご紹介したいと思います。“レジリエンス“とは、あまり耳慣れない言葉もしれませんが、近年重要視されている非認知能力(生きる力)のなかでも、最も重要視されている力です。日本語では「困難を乗り越える力、自己回復力、折れない心」とも言われています。

想定外のできごとも多い現代社会で、子どもたちはたくさんの答えのない問題に直面していくことでしょう。困難なできごとに向かった時、失敗した時、それを乗り越えていくことができなければ、せっかくの能力も活かすことはできません。

前回の連載ではコミュニケーション力=共感力を取り上げました。共感力はとても大切な力ですが、人々に共感して課題を見つけ、それに立ち向かうにはレジリエンスの力が不可欠です。共感力とレジリエンスは社会で成功していくために必要な両輪とも言われています。

失敗を乗り越えて成功していく力=レジリエンスを学ぶことは、これからの子どもたちにとって必要なことです。困難を乗り越える物語が描かれるたくさんの絵本から、レジリエンスとは何なのかを今回は学んでいきたいと思います。

大切な人のための底力

困難を乗り越えようとがんばる力は、いったいどこからわいてくるのでしょうか。そんなことを伝えてくれる絵本を、まずはご紹介します。

お母さんのために頑張る!

ゆうかんなアイリーン

病気になったお母さんの代わりに、猛吹雪とたたかってドレスを届けるアイリーン。日が暮れ道に迷い足をくじいたアイリーンは、お母さんを思うことで奮起します。

アイリーンのお母さんは洋服を仕立てる仕事をしています。お屋敷の奥様に頼まれたドレスが仕上がった日、お母さんは風邪で寝込んでしまいます。そこでアイリーンは、お母さんの代わりにお屋敷にドレスを届けに出かけます。しかし外は吹雪です。お母さんもそこまで吹雪が激しいとは思っていなかったのでしょうが、出かけてしまったアイリーンは吹雪の中で道に迷ってしまいます。その後もさんざんな目に遭い絶体絶命です。でも、アイリーンはくじけませんでした。絶対に大好きなお母さんのところへ帰るんだ、と必死で考え危機を切り抜けるのです。

また、同じスタイグさんの作品で、こちらの作品もおすすめです。

世界中で愛され続ける名作

ロバのシルベスターとまほうの小石

ながく愛され続けてきた名作絵本の美しい新版。コールデコット賞受賞の際のスタイグ氏のスピーチ収録。
ある日、ロバのシルベスターは、のぞみがかなう、まほうの小石をひろった。ところが…。水彩で描かれた原画の色合いをできるかぎり忠実に再現した〈新版〉。コールデコット賞に輝き、以来30年以上もの長い間、世界中で愛され続けてきた名作が、美しく生まれ変わって登場。

ロバの子のシルベスターは、触って願うとそのとおりになる魔法の小石を拾います。しかし、家に帰る途中ライオンに会い、逃げようとしてうっかり自分の姿を大きな岩に変えてしまいました。岩になってしまったシルベスターは、魔法の小石に触れないので元の姿に戻れません。戻るためには誰かが魔法の小石を触って「岩よロバになれ」と願わなければいけませんが、この岩がシルベスターだとは誰も思いません。年月だけが過ぎていきますが、お父さんお母さんはシルベスターのことを決してあきらめませんでした。シルベスターも、「お父さんお母さんに会いたい!」と絶望的な状況でも決してあきらめず、奇跡が起きるのです。

 

人は、自分のためだけでは大きな力は発揮できません。大切な人のためだからこそ勇気が出る、底力が出る、そして信じてくれる人が待つからこそあきらめずに頑張りぬける、そういったことを教えてくれる絵本です。

親の立場からも、この2冊の絵本にはとても勇気づけられます。レジリエンスは、子どもの自己肯定感とも大きくつながるものだと思いますが、愛されて優しくされた記憶がその子の心の鎧となって、どんな状況であっても「私は信じてもらえている、がんばれる」と思えるのだろうと思います。親としても手元に置いて、育児に思い悩んだ時に何度も読んで考えたい絵本たちです。

ゆっくり乗り越えればいいんだよ

子どもたちの成長していく途中には、たくさんのハードルがあります。器用にこなせるタイプもいれば、一つのハードルを乗り越えるのに時間のかかる子も。一つ越えるだけでも苦労するのに、その先にもちがった難関がいくつも待ち構えているかと思うと子どもも泣きたくなりますよね。そんな子どもたちを励ます一冊があります。

ちょっとずつ進んでいこう

マルマくん かえるになる

おたまじゃくしのおっぽがのこった、ちいさなマルマくん。うまくおよげなくて泣いていると、はすバスに乗ったがませんせいがやってきて、特別授業をしてくれます。うきわと水中めがねを装着して、泳ぎかたをならいます。マルマくんたちはゆっくりゆっくりかえるになって...... 

マルマくんはかえるの子。でも、まだかえるになりきれず、おたまじゃくしの尾っぽがついています。だからうまく泳げません。がま先生は、優しく辛抱強く、マルマくんたちを教えていきます。泳ぎを教わっていく過程がとても丁寧で、その練習が、マルマくんたちにとって素敵な記憶となっていく様子が描かれています。

途中がま先生は言います。

「こまったことがおきたら、しずかによくかんがえること。そしてべんきょうすること。すると、こまったことはすこしずつすてきなことにかわっていくよ」

子どもたちを励ます素晴らしい言葉です。

この絵本は、「ゆっくりゆっくり乗り越えたことほど、ぴったり身について、そのすばらしい記憶が自信となって勇気を与えてくれるよ、だから怖がらずにちょっとずつ進んでいこう」と子どもたちにエールを送ってくれます。

怒りをパワーに!

ここまでご紹介してきた絵本は、子どもたちのレジリエンスを養うために、周囲はどう働きかけるかを考えさせられる絵本でしたが、次の一冊は、逆境をはね返すためのパワーについて考える絵本です。

ほげちゃん まいごになる

動物園で迷子になったほげちゃん。家族の姿を求めて広い動物園をあっちへこっちへ大冒険です! はてさて無事に家族のもとに戻れるでしょうか?

ほげちゃんは、ゆうちゃんの大事なぬいぐるみです。ある日家族みんなで動物園に出かけましたが置いてけぼりになってしまいます。家族にも会えず絶体絶命の状態に陥るほげちゃんですが、その危機を、ほげちゃんは怒りパワーで脱するのです。

怒るということは、日常生活ではなかなか勇気がいります。大人の世界では感情をあらわにすることは避けがちですし、子どもたちも小学生前後くらいの年になると、年齢なりに空気を読んで行動し始めます。ですが、苦しい状況になった時は、空気なんて読んでる場合はありません。「ふざけるなあ!」という怒りが逆境をはね返す強い力を与えてくれることをこの絵本は楽しく伝えてくれます。

「怒ることができる」ということも、やはり自己肯定感と密接にかかわってくるのではないでしょうか。理不尽な目にあった時、最初は落ち込んでも、「私はこんな目にあうような人間じゃない、こんな目にあうために生きているんじゃない!」と気づかせてくれるものが、自己肯定感なのだと思います。そして、「負けてたまるか!」という強い怒りのパワーを作り出してくれるのです。

ほげちゃんの絵本はシリーズとなっていて、他の作品では、怒ることでの失敗もあり、怒りは諸刃の剣だということも教えてくれていますが、適切に怒ることは、折れない心のためにとっても大事なことなのだと伝えてくれるように思います。

失敗は成功のもと

レジリエンスは、持って生まれた資質に関わらず、後天的にも育てることができる力と言われています。そのために必要なことは「たくさん失敗すること」。そんな子どもの失敗を描いた絵本をご紹介します。

たくさん失敗しよう

くんちゃんのはたけしごと

こぐまのくんちゃんは、お父さんの畑仕事のお手伝いをすることになりました。
お父さんが種をまいてならしたばかりの土を掘り起こしたり、とうがらしの花を摘み取ってしまったり・・・くんちゃんは失敗を繰り返してばかり。
その度に、お父さんから「ちがう!ちがう!」と注意されます。その後くんちゃんは 畑の端に座り、お父さんのやり方をじっと観察しました。
それからお父さんと同じようにじょうろで水をやり、ウッドチャックをおいはらい、小鳥ににっこり笑いかけ・・・最後にはお父さんにほめられて、くんちゃんの表情はパッと輝きました。

こぐまのくんちゃんは好奇心旺盛です。おとうさんおかあさんのやっていることを何でもやってみたくてたまりません。おとうさんの畑仕事のお手伝いをすることにしましたが、勘違いしては失敗ばかり。そこで、くんちゃんは考え、おとうさんのやり方をまず観察し始めます。

この絵本で、くんちゃんは数多くの失敗をしますが、失敗し続けたことにより「なぜ失敗するのだろう」と考えることができました。そして、自分の勘違いに気づき、最後にはおとうさんのやり方を完璧にマスターするのです。

くんちゃんのように、たくさんの失敗をしても最後に成功をすれば、それは失敗も含めて成功体験となります。失敗したって何度でもやり直すことができるんだ、と考えることができるようになれば、その子の心には強いレジリエンスの力が培われているはずです。この絵本は「失敗はたくさんしていい」と子どもにエールを贈り、「失敗すればするほど、その子は強くたくましく成長するんですよ、見守りましょう」と親を勇気づけてくれる絵本です。

応援が勇気を与えてくれる

困難を乗り越え目標を達成したくても、一人では決意はゆらぎがちです。ですが、応援し、一緒にがんばってくれる仲間がいれば乗り越えられることもあります。

応援し励ましてくれる存在

ラチとらいおん

ラチは世界でいちばん弱虫です。犬をみると逃げ出しますし、暗い部屋には入ることができません。そんなラチのところに小さな強いライオンがやってきました。ラチはライオンがそばにいてくれることで少しずつ強くなっていきます。ある日、友だちのボールをとったのっぽの男の子をラチは夢中でおいかけボールを取り返します。ふときがつくとライオンの姿はありません……。あわてたラチが家にもどると、ライオンからの素敵な手紙が残されていました。

弱虫の少年、ラチ。いろんなことを怖がるので友達にもバカにされ、一人ぼっちでいるところに突然小さな赤いライオンがやってきます。そして、「ぼくがきみを強くしてやるよ」と言ってくれるのです。ライオンは特別な知恵を授けてくれるわけではありません。ですが、ラチのそばにいつもいて励ましてくれます。そして、ラチはどんどん強い子になっていくのです。

たぶん、ラチはもともと強くなる素質をもっています。ですが、その才能を発揮するには、応援し励ましてくれる存在が大事なのだと伝えてくれます。

また、応援によってがんばれることを描いた絵本をもう一冊。

「わし、がんばる」

ドン・ウッサ ダイエットだいさくせん!

「ネコノヒー」「スキウサギ」などヒット連発の人気漫画家・キューライスの人気絵本シリーズ第2弾がついに登場。
プクプクおなかの大親分ドン・ウッサが3羽の子分をしたがえ、すらっとしたイケメンウサギをめざし前代未聞の大作戦をくり広げます。
たっぷり笑えて、でもなんだかキュンとする、おとなからこどもまで、みんなで楽しめる一冊です!

ドン・ウッサはウサギの大親分で、三羽の子分がいます。ある日、「わしもやせて、すらっとしたウサギになりたい」と願い、子分たちはキラキラした目で「親分の願いを叶えてあげたい」と思うのです。

子分たちが様々なダイエット作戦を立て、ドン・ウッサは期待に応えようと奮闘します。子分たちのムチャぶりに振り回されながらも「うん、わしがんばる」とけなげにがんばるドン・ウッサの姿がユーモラスで、子どもたちの心をわしづかみにします。ですが、おはなしに笑いながらも、子分たちの全身全霊の応援と、それに応えようとして「わし、がんばる」というドン・ウッサの姿にちょっぴりじーんとしてしまうのです。

どんなすばらしい目標があっても、一人ではくじけがちです。ですが、応援してくれる仲間がいて、その期待に応えたい、仲間と一緒に喜び合いたい、そうした力があれば、心が折れかけても頑張りぬくことがきる、ということをこれらの絵本は伝えてくれます。

さいごに

これまでご紹介した絵本からわかるのは、レジリエンスの力を得るには「その子を信じ励ます」ことが重要だ、ということです。親や周囲の大人たちから「あなたならできる、がんばりぬける」と信じてもらえることが、その子の自己肯定感をはぐくみ、逆境を乗り越える下地を作っていくと思うのです。

ちょうど「レジリエンス」という言葉を意識し始めたころ、子どもの幼稚園で“全員リレー”という行事がありました。クラス対抗でリレーをするのですが、選抜ではなく全員でバトンをつなぎます。幼稚園児ですので、バトンを落とす転ぶが当たり前のように起きます。年少さんクラスですと、転んで泣いてバトンが途ぎれるということはよくあったのですが、それを繰り返し年長さんになると、「自分が走り切らないとバトンがつながらない、勝てない」ということを強烈に意識し始めます。ですので、やはりすべって転ぶことはあるのですが、転んでも瞬時に立ち上がって必死で走っていきます。走ってバトンを渡した後は、パパママのところに走っていって大泣きします。そうした姿を見て、子どもたちが立ち上がり乗り越えるためには「自分だけのものではない大きな目標」をもって、「励ましてくれる仲間」がいて、「なにが起きても安心してかえれる場所」がある、ということが必要なのかなと思いました。

子どもたちの前には、これからも、大きな困難がたちはだかると思います。時には、膝をついてしまうこともあるでしょう。そうしたときに、これらの物語を思い出してほしいのです。そして、実際にも、その子の周りに「立て、立ち上がって走れ」と励ましてくれる仲間たちがいてくれることを願います。

徳永真紀(とくながまき)


児童書専門出版社にて絵本、読み物、紙芝居などの編集を行う。現在はフリーランスの児童書編集者。児童書制作グループ「らいおん」の一員として“らいおんbooks”という絵本レーベルの活動も行っている。6歳と3歳の男児の母。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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