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現役学校司書が本でCheer Up! 中学生に読んでほしいオススメ本

中学生の読書感想文にオススメの本9選~読書感想文が苦手なあなたに~

はじめまして! 山下ちどりです

中学生のみなさん、こんにちは! 学校司書の山下ちどりといいます。
絵本ナビさんでの初めての連載に、ドキドキしています! どうぞよろしくお願いします。
みなさんの学校図書館のカウンターで、雑談をするように、本の紹介ができたらいいなと思っています。
この連載のコンセプトは、「本を通じて中学生のみなさんを応援すること」。
本を通じて、みなさんに毎回小さなエールを送れたら嬉しいです。

夏休みの宿題に「読書感想文」はありますか?

今回のテーマは読書感想文。
日本の夏の風物詩ともいえる、この課題を毛嫌いする人は、悲しいことにとても多いのです。みなさんは、どうですか?

「読書感想文が苦手!」と思っている人にも書きやすいような、いくつかの本をご紹介します。

読書感想文の取り組みは、ときに読書感動(強要)文とか、読書成長文とか、批判的に捉えられることがあります。それはなぜでしょう?
読書感想文が、「誰かの目を意識して、自分ではない誰かが喜ぶような感想文」が「優れた読書感想文」になりがちなことを批判しているのだと私は考えています。

 

まず、私自身が「素敵だなと思う読書感想文」がどんなものかを書きますね。


それは「読んで心を動かされた本について、自分の思いや考えを、文章の形でうまく伝えられているもの」です。

主人公や著者の考え方や行動が、自分の考えと異なるものであれば、それを正直に書けばいいし、わからないことがあれば、どこがわからなかったのか、素直に書いてよいと思います。
「二度と訪れないこの夏の、自分の今の気持ちを、文章という形で残しておけるもの」それが読書感想文です。ね、すてきでしょう?

読書感想文の
2割は、書き方のノウハウを頭に入れておくこと。
6割は、自分がピンとくる本に出会うこと。だと私は思っています。
ここまでできたら、あとは書く作業が2割。この作業には、感想文を読み直して誤字や乱れた文章を調えるところまでを含みます。確認は音読することをおすすめします。

今日は書き方のノウハウを知る本を含めて9冊の本を紹介します。
本は、いくつかのタイプ別にピックアップしました。あなたの心のフラグにピピッと反応するものがあったら、実際に手にとって読んでみてくださいね!

中学生の読書感想文にオススメの本9選

読書感想文がとにかく苦手なあなたは、本を決めるその前に

『ちびまる子ちゃんの読書感想文教室』

ちびまる子ちゃんの読書感想文教室

読書感想文がにがてなあなたも、この本を読めば、ちびまる子ちゃんのまんがで、たのしく書けちゃう!
読書感想文を書くのに大事な「コツ」を、まんがで、ていねいに解説します。
まずは、5つの「満点わざ」のステップで、基本の感想文の書き方を紹介。本の選びかた、タイトルのつけかたから、具体的な構成のしかた、文章力アップのコツまで、ちびまる子ちゃんといっしょに学んじゃおう。さまざまなバリエーションの感想文の作例も収録。
読書感想文だけじゃない、文章を書くことが好きになる、得意になる、一冊です。

高等学校の国語の先生が書いている本です。おなじみの「ちびまる子ちゃん」のメインキャラクターたちが、巻頭の漫画で読書感想文の悩みをおのおの打ち明けています。本のことを書こうとしたらあらすじでほぼ終わってしまった、はまじ。「おもしろかった」しか感想が思いつかなかったブー太郎など、彼らの悩みに「あるある!」と共感を覚えることでしょう。

 

「読書感想文の基本のきから知りたい!」と思う人は、ぜひこの漫画を最後まで読み通してください。あらすじのまとめ方から、書き方の切り口の例、最後のまとめかたまで、さまざまなヒントが載っています。

みなさんは中学生ですから、登場するたくさんのアイデアから、中学生らしいちょっと大人っぽい書き方をピックアップして書くことをおすすめします。昨年までとはひと味もふた味も違う感想文に、自分でもびっくりしてしまうかもしれませんよ!

部活に燃えているあなたや、部活に悩んでいるあなたに

「青春サプリ」シリーズ『青春サプリ。心が元気になる、5つの部活ストーリー』

青春サプリ。心が元気になる、5つの部活ストーリー(全5巻)

感動×涙。リアル中高生の部活の悩みに、共感必至。小5から大人まで楽しめる、青春ショート・ストーリーズ。朝読に最適。

表紙の色が異なる5冊シリーズです。それぞれの本には5つの異なる部活ストーリーが。

競技かるた、吹奏楽、合唱、演劇などの文化部もあれば、野球、バスケ、サッカー、卓球、バレーボール、ダンス、陸上といったおなじみの運動部。そして、「うどん部」→実は活動がとってもハード!、「折り紙同好会」「ねころ部」???といった珍しい部活まで、すべて「実在の学校の、実在の部員の、実在のストーリー」をもとに構成された小説です。

 

この本の魅力は、「案外友だちとは話しづらい、部活のリアルな悩みを、本の中で聞くことができる」こと。華々しい戦績をもつ「強豪校」ならではの悩み(意識高く部活に燃える人たちの中での迷いや悩み)もあれば、珍しい部活ならではの悩みもあります。主人公が、それぞれ弱点や、悩みや、困難に遭遇します。それをどう克服し、あるいは、これまでと異なる方向に意識や方向を変えていくのか……中学生にとって、部活の悩みは現在進行系。だからこそ、実際の友だちには話しづらいし、相談しづらい。でも、本でなら、心の中の深いところを知ることができます。

1巻から5巻までを詳しくご紹介。

青春サプリ。 自分がここにいる理由

テーマは決意。
「『がんばれ』とか『ファイト!』とかそういうのはいらない。コーチングをしろ。先輩が怖くて厳しく言えないなら、部をやめろ。」
ツンデレ鬼監督のキビしい指導にも負けず、男子バスケ部で中核的存在になっていく女子マネージャーのサクセスストーリー、他4話。

青春サプリ。いつだってそこに仲間がいる

感動ストーリー第2弾。

テーマは仲間。
「先生、私、続けます。最後まで踊るって決めてるんです。」仲間たちと一緒に舞台に立てなくても―。
映画「チア☆ダン」で有名になったチアリーダー部「JETS」の9代目、全米5連覇をサポートしたメンバーのほろ苦い青春ストーリー、他4話。

青春サプリ。乗り越えられない試練なんてない

3巻のテーマは勝負。
全日本吹奏楽コンクールで5年連続の全国大会金賞という偉業をなした上磯中学校吹奏楽部。しかし、そのスタートは波乱に満ちていた。コンクール入賞にかける熱き情熱のストーリー、他4話を掲載。「もっと充実した生活がしたい」という思いを持つリアルな中高生たちに「今日もがんばろう!」とちょっぴり前向きな気持ちにしてくれる「読むサプリメント」です。

青春サプリ。自分を変えてくれる場所

4巻のテーマは成長。
現在プロサッカー選手の久保裕也と原川力は、同じ中学校の出身だ。しかし、原川は地元有名なクラブサッカーチームに所属し、久保は実力で劣るこのサッカー部に入部した。この二人がお互いを認め合うまでの友情ストーリー、他4話が掲載。「自分を変えたい」という思いを持つリアルな中高生たちに「今日もがんばろう!」とちょっぴり前向きな気持ちにしてくれる「読むサプリメント」です。

青春サプリ。なりたい自分になれる

5巻のテーマは自分らしさ。
猫が好きな女の子がたまたま知ったのは「ねころ部」。動物愛護を中心とした活動をしている部活である。その「ねころ部」で中心的なメンバーとなった部長ほのぼのしたストーリー、他4話が掲載。「もっと充実した生活がしたい」という思いを持つリアルな中高生たちに「今日もがんばろう!」とちょっぴり前向きな気持ちにしてくれる「読むサプリメント」です。

各巻ごとのタイトルと、取り上げられている部活を見て、心ひかれた巻からぜひ手にとってみてください。そして、感想文に書くときには、1つのストーリーでよいので主人公の悩みを自分なりに分解して、自分ならどう行動するか、自分にぐっと引き寄せて書いてみるといいですよ!

未来ってどうなっちゃうんだろう? と思うあなたに

『つくられた心』

つくられた心

新しくつくられた「モデル校」は、防犯カメラ、集音マイク完備のスーパーセキュリティシステムに加え、クラスにひとりイジメ防止の<見守り役>としてアンドロイド(ガードロイド)が1体、配置されるという。小学校6年生のミカはきれいで気持ちのよい校舎で新しい友だちもでき、新生活に胸を躍らせるが、やがてクラス内に「ガードロイド探し」が始まり……。ホンモノの心って? 人間の心とガードロイドの心の違いって?
──近未来の東京を舞台にした物語ですが、これは「明日の東京」の話かもしれません。AIと人間が共存する社会を読み応えたっぷりに描きます。

この小説は、テクノロジーやAI技術を駆使して、人びとの心や行動が監視される近未来の社会を描いたものです。理想郷(ユートピア)の対義語である暗黒郷(=ディストピア)を描いた小説は、国内外に多くの名作がありますが、今回はみなさんがもっとも身近に感じてくれそうな「学校」を舞台にしたこの本を紹介します。

舞台はスーパーセキュリティシステムとポリスロイドによって、犯罪がほとんどなくなった近未来の東京です。そこに開校された理想教育モデル校には、人間そっくりのアンドロイド「ガードロイド」がクラスに潜入しているというふれこみなのです。開校したばかりの学校なので、クラスメイト達は誰もが初対面。少しずつクラスメイトを知るにつれて、「誰がガードロイドなのか」ということに関心が集まり、「ガードロイド探し」が静かに展開されていきます。

このことが子どもたちに何をもたらすのか。人の心と、アンドロイドの心は、何が違うのか。ぜひ自分自身の心に問いかけ、自分なりの答えを出して感想文に書いてみてください。

物語の最後にアイザック・アシモフの名が登場します。この人について調べたり、彼のロボットを扱ったSF作品を読んで『つくられた心』におけるアシモフの意味を考えてみるのもおすすめです。

世界の状況に目を向けたいあなたへ

『かならずお返事書くからね』

かならずお返事書くからね

アメリカのごく普通の少女、ケイトリンは、新学期が始まって間もなく、学校の課題として外国に住む同年代の子と文通をすることに。それまで聞いたこともないジンバブエという国の少年、マーティンが文通相手になった。手紙に何をどう書けばいいのか迷いながらも、ケイトリンは好奇心に胸をふくらませ、マーティンへ一通目の手紙を書き始める。

 学校や家での出来事を報告し合うなどして互いを知るうちに、手紙の返事を心待ちにするようになった二人。ある日、マーティンから届いた手紙は薄汚れた紙くずに書かれたものだった。その後も、手紙の返事を心待ちにするケイトリンだったが、ついにはマーティンからの連絡が途絶えてしまい……。このときのケイトリンは、まだマーティンの実情を知らなかった。1万キロの距離を越えて心を通わせ、友だちとして支え合った感動の実話。

 「心の奥深くまで染み入る――。思わぬ優しさから、この小さな奇跡は生まれた」――『ニューヨーク・タイムズ』書評

グローバル社会(地球全体を単位として考える社会)という言葉をよく耳にすると思います。突然ですが、アフリカの国を思いつくままいくつ言えますか? アメリカ50州をいくつ言えますか? 私は先日やってみましたが、ここでは言えないくらいお粗末な結果でした……トホホ。

この本は、アメリカに住む女の子ケイトリンと、ジンバブエに住む男の子マーティンが中学校の課題の「文通プログラム」で交流を始めるという、実話をもとにしたお話です。二人の距離は15,000キロメートル以上! 陸を超え、海を超え手紙だけが二人をつなぐ手段です。アメリカのティーンネイジャーとして「普通のくらし」をするケイトリンは、自分の「ふつう」がマーティンにとっては「ふつう」ではないことに、なかなか気づくことができません。ある時ケイトリンはマーティンへの手紙に「写真を送ってほしい」と書きますが、ジンバブエで写真はとても高価で、文通に必要な切手代すら工面するのが難しい状況を、マーティンはなかなか伝えられずにいます。それでも、「必ずお返事書くからね」という言葉を頼りに、文通はゆっくりと交わされていきます。2つの国の中学生の様子だけでなく、彼らの家族についても考えることの多い小説です。
GDP(国民総生産)世界第3位の日本に住むみなさんは、どちらかといえばケイトリンに近い環境でしょうか。

世界にはマーティンのようにきびしい環境に置かれている人たちがいること、また、日本の中にもさまざまな困難を抱えている人がいることにも想像力を広げ、それを感想文に反映できたらすてきだなと思います。

進路や職業を考え始めたあなたに

『角川文庫 外資のオキテ』

角川文庫 外資のオキテ

英語を使う仕事にあこがれていた貴美子は、一念発起して会社を辞め、語学留学を決行。帰国後、悪戦苦闘の転職活動の末、なんとか決まった米系企業で外資での一歩を歩み始める。キャリア志向のヒステリック上司、ステップアップのために職場を切り捨てる無情な先輩……。絵に描いたような癖のある面々に翻弄されながらも、少しずつ仕事の本質に気づき始めて――。外資系企業を舞台に繰り広げられるリアルお仕事成長物語。

夏休みを利用して職業調べや職場体験をして、将来を考えはじめる人も多いと思います。

今回紹介するのはお仕事小説の『外資のオキテ』という本です。みなさん「外資系」という言葉はご存知ですか?外国資本の企業の総称で、英語を自在に扱ってグローバルに活躍する、かっこいいイメージがありますよね。

さて、この本の主人公高村貴美子は「アメリカに留学したい!」という中学生の頃の夢を10年以上後にちゃんと実現させたがんばりやさん。安定した日本企業で得たお給料を貯めて退職し、1年間のアメリカ語学留学を実現。帰国後は憧れの外資系企業で働こう!と就職エージェントを通じて外資系企業にエントリーするものの、書類選考で落ちてばかり。会ってくれた就職エージェントのバイリンガル女性からは「外資系企業において語学留学は留学とは言えません」とバッサリ通告されて、不覚にも涙をこぼしてしまいます。外資系企業の秘書志望だった貴美子ですが、最初に決まったのは、日本から撤退する外資系企業の、事務所閉鎖のため臨時業務。秘書をサポートする期限付きの派遣社員というポジションでした。日本企業とは異なる文化の中で、個性豊かな人たちと出会い、悔しい思いやつらい経験を重ねながら成長する貴美子。その奮闘ぶりに、思わず自分がその仕事を体験しているような気持ちになります。

キラキラした特別な世界に見える「外資系」、そこで働くときのオキテとは?読み始めるときとは異なったイメージになること、うけあいです。

2021といえばオリンピック!と思うあなたに

『小学館文庫 TOKYOオリンピック物語』

小学館文庫 TOKYOオリンピック物語

2020年東京大会決定!日本に再び感動と熱きドラマがやってくる。敗戦国日本の復興を世界へと知らしめたのは前回、1964年の東京オリンピック。奇跡といわれた成功を陰で支えた人々のたゆまぬ努力を描いた傑作ノンフィクションがついに文庫化。
「東京」から「TOKYO」へと世界に日本の復興と実力を知らしめた大舞台。この成功により日本は世界の表舞台に躍り出た。この成功の裏で苦闘した仕掛け人たちのドラマを克明に描く。
予算的にも規模的にも空前絶後の大プロジェクトであった東京オリンピック。各分野から集められた建築家、技術者、カメラマン、デザイナー、シェフ、映画監督、作曲家たち。若く実力もある彼ら、しかし問題は誰ひとりとしてオリンピックを経験したことが無かったことだった……。彼等はいかにしてオリンピックを成功に導いたのか。著者が15年に渡り徹底取材した読み応えのある一冊。本書に登場する人々-市川崑、宮川一夫、黛敏郎、亀倉雄策、谷川俊太郎、高峰秀子、植木等、村上信夫、飯田亮(一部)。NHK、朝日新聞、日経新聞、週刊文春ほか各メディアで大絶賛された傑作ノンフィクション。

上記内容は本書刊行時のものです。

テレビでTOKYO2020を観戦しながら、1964年の東京オリンピックを振り返ってみませんか?

1964年の東京オリンピックは、第二次世界大戦の敗戦から復興をとげ、日本の高度経済成長の起爆剤になったといわれる、当時日本中が熱狂の渦に湧いたオリンピックでした。今ではおなじみの技術が、実は1964年の東京オリンピックで「世界で初めてお披露目」された、というものもあるんですよ。人々の期待と、熱気と、挑戦にあふれたこのオリンピックを各方面から記録したこの本は、文庫本で手軽に読むことができます。芸術的に評価の高い公式ポスターやドキュメンタリー映画、開会式のギリギリ10日前に開業した新幹線、リアルタイム集計を実現した技術や、選手村の食事システムなど。様々な角度からオリンピックを支えた技術と、関わった人のがむしゃらな思いが描かれています。

 

もし、身近に1964年のオリンピックを知っている方がいらしたら、読後にぜひその時の様子を聞いてみてください。本には書かれていない「町のエピソード」を聞けるチャンスです。読書感想文にも独自性が盛り込めるはずです。

この本は一般書なので「細かい字をたくさん読むのが苦手」と思う人は、本書でも紹介されている市川崑監督のドキュメンタリー映画「東京オリンピック」を映像で観てから読み始めることをおすすめします。50年以上前の出来事が、ぐっと身近になって、本のページをめくる速度も進むはずです。

思い込んだら猪突猛進!なあなたに

『もがいて、もがいて、古生物学者!!』

もがいて、もがいて、古生物学者!!

みんなが恐竜博士になれるわけじゃない、でも、思いが続く限り夢はつながる・・・・・・・・・・・・・!​

この物語は、「古生物=恐竜」だった時代に恐竜博士になることを夢見た女の子が、多くのライバルの中で一度は挫折し、そしてそこから新たな夢をつかみとった、サクセス(途中)・ストーリー。

国立科学博物館の若き古生物学者が、ビリから一歩ずつ、もがいて、もがいて、小さな哺乳類化石の研究者になるまでを綴った初めての自伝的エッセイです。

古生物学者を目指す子たちへの進路アドバイスや、巻末には共に切磋琢磨した通称「ジュラシックパーク世代」の仲間との対談を収録。

「古生物」や「研究」に限らずとも、真面目すぎて、自信がなくて、一歩が踏み出せない、そんな多くのイマドキの子たちに届けたい1冊です。

恐竜が大好きな少女が、恐竜を含む古生物の研究者になるために、中高生の時代からさまざまな試行錯誤をしてついに夢を実現していくお話です。著者は古生物学者ですが、古生物(なんなら理科や数学)にぜーんぜん興味がない、というあなたにも読んでほしい本です。
なぜなら、これは恐竜の本ではなくて、(恐竜好きの人が)「夢を実現するための道筋やへこたれない気持ち」について書いたものだからです。それは、どんな夢にも、どんな道にも通じるもの。ダンサーになりたい、スポーツ選手になりたい、お医者さんになりたい、どんな夢にも応用可能です。この著者が目指した道のりは、一筋縄ではいきません。行き先が「立入禁止」になっていたら、突破するまで方法を考える、「立入禁止」の向こう側に向かって叫んでみる、「立入禁止」の前でひたすら努力する、いろいろな方法があることをこの本は教えてくれます。

「自分の夢は叶うのかなぁ」とへこたれそうになったら、ぜひ読んでみてください。お腹の底からパワーがみなぎってきますよ。

いつか、物語に出てくるような冒険にチャレンジしたいあなたに

『行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000km歩いた男の冒険』

行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000km歩いた男の冒険

「冒険界に次世代ヒーロー現る」 『謎の独立国家 ソマリランド』の高野秀行氏推薦! 笑えて泣ける、衝撃の実話。5ch(旧2ch)やまとめ掲示板で首位独占。

渾身のオール書き下ろし&カラー写真も掲載。

ホモに脱がされる/ロバに蹴られる/移動式住居は荷車/鳩を盗まれる

車衝突で荷車半壊/野犬に囲まれて野宿/警察に拘束される/冒険中断の危機!?

――きっかけは、八年前。

当時は海外に興味なんてなかったし、危ないというイメージの方が強かった。

ところが、突然親友のリッキーがフィリピンへ行ったきり、消息不明に……。

そこから始まる、おれの冒険譚。エジプトの砂漠を渡るべく、ラクダ飼いの見習いになったら死にかけたり、モロッコを変態ロバや番犬の子犬、小猫や鳥達と行商したり…。

まあ読んでみてくれ!

暴れロバ「モカ」に、荷車を引かせ、小猫、犬、鶏たちや黄金の鳩らと、徒歩で1059kmモロッコを横断した実話冒険記。21世紀必読!

第一章 行方不明の親友を追ってフィリピンへ

第二章 エジプトでラクダ飼いの見習いになったら死にかける

第三章 ロバ・犬・猫・鳥たちとモロッコ1059kmの野宿旅

「バックパック一つで世界を旅する」なんて、とてもかっこいいですよね。バックパッカーの旅行記は、今も読み継がれている沢木耕太郎の『深夜特急』シリーズをはじめとして、多くあります。現在は感染症の流行や一部地域の治安悪化で、かつてのように海外気ままな旅を簡単に行うことが難しくなってしまいましたが、「いつか日本を飛び出して冒険に出たい!」と思う中学生は多いはず。

今回紹介するこの本は、旅行記の中でもかな~り異色です。お供はバックパック…ではなく、ロバと、犬と猫と鶏と鳩…(!)に人間は著者ひとり。いつの時代か!むしろゲームの世界か?と読みながらツッコミを入れたくなってしまいますが、本のタイトル「リアルRPG譚」の名の通り、仲間を連れた冒険の旅を現実世界で実行してしまうのです。

この著者には他の本もありますが、私はこの本をオススメします。その理由は、海外に全く興味を持っていなかった19歳の頃の著者が、海外に興味を持つきっかけとなったエピソード(行方不明の親友の安否を確認するために、単身フィリピンに渡航)が載っているからです。その後、どんな経験値(ここには書けない…)を積み、どんなキャラバン旅行を行なったかは、本書を読んでのお楽しみです。

みなさんの理想の旅のプランや、旅を実現するための計画を感想文に織り込むのもいいですね!

長い文章はどうしても苦手だけれど、現代社会の問題を考えたいあなたに

『満月をまって』

満月をまって

2000年3月に亡くなった人気絵本作家クーニーの最後の作品。木の声を聴き、風のうたを編む、かご作り職人の美しい心を描いた絵本。

この2021年夏は、多様性や、差別といった言葉を耳にする機会が多かったのではないでしょうか。この本はアメリカの山の中でかご作りをしていた人たちをテーマにした絵本です。絵本だからといって、幼児向けというわけではなく、世界地理や公民を学び始める中学生だからこそ、深い理解と感想を持てる本だと思ったのでご紹介します。

 

8歳の男の子のまなざしを通して描かれる、自分たち家族の仕事と、周囲からの偏見。物語が終わった後にかごの絵と共に書かれている「著者あとがき」を忘れずに読んでください。そしてなぜ主人公は、自信を無くしたのか、その後、自信を取り戻したのか、これまで学んできた知識を総動員して、深く考えてみてください。

世界にある同じような事例を探したり、身近にある差別を取り上げるなど、この作品をきっかけに考えを広げたり、自分で事例を出せるとぐっと中学生らしい感想文になることでしょう。

本を読む第1の目的は「自分が楽しむこと」

いかがでしたか?
みなさんの心のフラグにピピッときた本はありましたか?

 

今回は紙面の都合で、戦争と平和に関する本を紹介することができませんでした。今回紹介できなかった戦争と平和に関する本は、戦争詩の朗読などの形で音声配信「学校図書館ラジオ」内で紹介しています。

本を読む第1の目的は「自分が楽しむこと」だと私は思っています。「読書感想文を書き上げる」という目的以上に、中学生のみなさんが、この夏ステキな本と出会えますよう、心から応援しています。

山下ちどり

 

現役学校司書。
音声メディアstand.fm「学校図書館ラジオ〜本とともにごきげんな毎日」のパーソナリティ。
比較的新刊のお気に入り本や、学校図書館、出版周辺のトピックスなどを配信している。Twitter @nagisalib

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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