【季節の絵本選びとプログラム作り】2023年1月、めでたい・楽しい新年におすすめの絵本
絵本講師として10年以上ご活躍中のふわはねさん。絵本講座や絵本コンサル、絵本の読み聞かせ会などを年に200回以上こなしています。そんなふわはねさんに季節にあった絵本と読み聞かせ会の流れについて語ってもらいました。
二十四節気(にじゅうしせっき)を感じる
二十四節気とは… 1年を12か月さらにその半分、24個に分けた季節を表す名称です。
1月では…
小寒しょうかん(1月6日)小さく寒いと書いて小寒。本格的に寒さが厳しくなる。寒の入りとなり、寒中見舞いが出される頃。
大寒だいかん(1月20日)大きく寒いと書いて大寒。一年で最も寒さの厳しい頃。二十四節気最後の節気。もう春はすぐそこに。
1月のおはなし会
さぁ、新たな年をむかえ、今年もまた絵本と共に一年過ごしていきたいと思っています。
季節や行事を絵本から知る。寒い日に暖かい部屋でお膝の上に座って大好きな人の声で聞く楽しいお話。
片手間ではできないその時間は、振り返ってみても何ものにも代えがたい愛のある温かな時間だったと思っています。
日本の伝統的な行事が色濃く残る年末年始。
手遊びやわらべうた、俳句という言葉遊びに昔話も入れながら、今月のおはなし会、楽しんでいきたいと思います。
【はじまりの絵本】
まずはわらべうたの絵本から『おいちにの だーるまさん 』
さぁ、今年最初のおはなし会。
始まりの絵本は新年にふさわしいおめでたいふたりが主役のわらべうたから。
『おいちにのだーるまさん』
それはこんな始まり
おいちにの だーるまさん
ボール ぽんと けった
(p2−4本文引用)
あれ? 思ってたのと違う(笑)。
こちらのだるまさん。へっこぷっとたれないで、ボールをけったり、シーソーのったり、なわとび飛んだり!
どんどん増えていくだるまさん。わらべうたのリズムは声に出して心地よく、耳に届いてすとんとおちる。
子どもたちもお母さんのおひざでゆらゆらゆれて楽しそう。
最後には赤、緑、黄色、水色、紫の5色だるまさんがそろってどろんここねる。
ボードブックが嬉しい福音館書店0.1.2.えほんシリーズから、2021年9月にハードブック化されたばかりの一冊より始めましょう。
読み聞かせ時間目安<1分10秒>
「おいちにの だーるまさん」のかけ声に合わせて、赤いだるまさんが登場すると、ボールをぽんとけりました。続いて、緑のだるまさん、黄色のだるまさん、水色のだるまさん、ピンクのだるまさんが、順番に登場して、シーソーに乗ったり、泥遊びしたり、元気いっぱい遊びます。わらべ歌からできたリズミカルな文章と、生命力あふれる魅力的なだるまさんの絵の弾むような絵本です。どうぞ親子でお楽しみください。
【季節のお話】
掛け合いが楽しい『だれのあしあと?』
おはなし会のお楽しみは子どもたちとの掛け合い。
「知っている」が嬉しいお年頃の子どもたちとこんな絵本はいかがでしょう。
『だれのあしあと?』
それはこんな始まり
わぁ たくさんの ゆき
あれ だれの あしあと?
(p2−4本文引用)
真っ白い雪の中。ねずみさんが見つけた足あと。
「だれのあしあと?」と当てっこしながら読み進められる楽しい一冊。
子どもたちに身近な動物が次々に登場し、最後の終わり方もほっこりよくて。
雪の上の足あとを見ると、誰の足あとかな?と想像してみたり、たどってみたくなったり、自分の足あとをつけてみたくなったり。
雪の楽しさを教えてくれる一冊。軽井沢にお住まいの作者、accototoさんたちだからこそ生まれた絵本なのかもしれません。
そして何より動物たちの目線が合う感じが私はとっても好きです。
小さな人たちと楽しみたい雪の絵本です。
読み聞かせ時間目安<1分35秒>
あてっこするのが楽しいと子どもたちに大人気!
雪がしんしんと降っています。ねずみくんは、うれしくて外に飛び出しました。すると、おもしろい足あとが!
ブタはハート型、ウサギは、ぴよーんと跳ねている足あと・・・・。かわいらしい動物たちと、あたたかいスープをいただきます。
言葉遊びが楽しい『ごはん山』
さぁ、そろそろお腹が空いてきた。
みんな大好き食べ物の絵本で一息入れて。
『ごはん山』
ごはんが大好きな家族。今日も炊き立てごはんを囲んでニコニコ。
「やったーごはんごはん なんだかお山みたい」
俳句と共にいろんなごはん山が出てきます。
まずは梅干しのっけてすっぱ山。
おはようさん
しろいおやまに
ひが のぼる
うぅ。楽しい!
おつぎはふりかけかけたしゃかしゃか山
そして きをつけろ!といわれているのはなっとう山
おにぎりはさんかく山みゃくとは! おもしろーい!
和食洋食中華にお寿司、なんでもござれのごはんの包容力。
日本語の俳句のリズムが心地よく、子どもたちとごはん山カルタ作りなんてどうでしょう。
ごはん山を考えて、絵を描いて読み札は俳句にして。幼稚園や小学校でも楽しめそうですね。
そんな、絵本からの発展体験もおすすめです。
読み聞かせ時間目安<1分45秒>
【昔話】
今年最初の昔話は『こぞうのはつゆめ』
昔話も一冊ご紹介。
今年もたくさんの昔話をご紹介していきたいと思うのですが、新年を舞台にしたお話といえばこちら。
『こぞうのはつゆめ』
それはこんなお話。
むかしあるお寺におしょうさんと三人のこぞうがおった。
ある年の暮れ、おしょうさんは三人のこぞうさんにこんな話をする。
あるまじないの書いたお札を正月二日の晩に枕の下に入れて寝ると、めでたい初夢が見られる。
その夢の話は誰にも言ってはならないというもの。
正月三日の朝、おしょうさんはこぞうさんたちを集めて聞いた。
「おまえら はつゆめみたか?」おしょうさん、自分で「いうな」と言ったくせに、三人の初夢が聞きたくて聞きたくて…。
さぁ、三人のこぞうさんたち。おしょうさんに夢の話を話すのでしょうか。
このお話、なかなか衝撃の展開!
長谷川摂子さんのリズム良い言葉で読み聞かせ時間7分を超えるお話にどんどん引き込まれ、長谷川義史さんの絵がお話のシリアスさをユーモアで包み込んでおしまいまで、ドキドキワクワクしながら楽しめる。
もちろん最後はめでたしめでたしなんですが、なんでしょう、この尾を引く感じ。
ぜひご自身で感じてほしい一冊。やっぱり昔話は面白い。
読み聞かせ時間目安<7分30秒>
和尚さんに初夢の話を教えなかったばかりに川に流された小僧。
鬼からうばった宝の針で、いまにも死にそうなふたりの姫さまを助けて、めでたし、めでたし。
さて小僧のみた夢とは?テンポのよい痛快な話。
【文学の辞書】
新しい文学の届け方『小学館世界J文学館』
最後はご紹介を一冊。
小学館が創立100周年を機に贈るまったく新しいタイプの「世界文学全集」。
100年間、子どもの本に向き合ってきた小学館が今の時代にふさわしいカタチの
「名作全集」を出したと聞いて、とても楽しみにしていました。
なんとこの一冊で125冊の本(作品)が読める!
見開き1ページの作品紹介ガイドにはあらすじや登場人物、そしてさらに読みたい人向けに本の紹介もある。が。
そこから作品本文へと進めるのはなんと購入者のみ。QRコードから電子書籍へと進むのです。
この本の形式をどう受け止めるかは、人それぞれかもしれません。
でも私は本を読むという小さな一歩への橋渡しになる気がします。
見開き1ページの作品紹介から始まる出会いがきっとある。
このお正月、お年玉の代わりにいかがでしょう。
この本をペラペラとめくるだけでも、たくさんの作家さんの絵が見られて一見の価値ありです。
1冊なのに、125冊。次世代の文学全集!
現代にふさわしい、新しい世界文学全集が誕生しました! 1冊の本を買うことで125冊の世界名作を電子書籍として読める、これまでになかったしくみの全集です。
紙の書籍は、イラストやあらすじで作品を紹介するいわば「名作図鑑」です。気になる作品があったら、ページ端のQRコードを読み込みます。すると自分のデバイスに作品の全文が出現! WiFiさえつながっていればどこででも読める、これまでにない「次世代の読書」が楽しめます。
収録作品は、「シェイクスピア物語」「赤毛のアン」など永遠の名作から、「魔女の宅急便」など現代の名作まで。本邦初訳作品もいっぱいです。くわしくは「J文学館」で検索を!
ほとんどの作品は、この全集のための新訳! 今の子どもたちにぴったりの、リズム感のあることばで訳しました。
各作品につく楽しいイラストも魅力のひとつ。人気画家の描きおろしが中心です。
そして電子書籍ならではの、「3段階のふりがな選択」と「本文音声読み上げ機能」にもご注目を。小さなお子さん、日本語を勉強中の留学生、視覚障害や読字障害をお持ちの方など、多くの人に世界名作をお届けするための工夫がいっぱいです。
【編集担当からのおすすめ情報】
創立以来子どものための本づくりを手がけてきた小学館が、創立100周年の機に贈る、まったく新しいタイプの「世界文学全集」です。
手元には1冊の本、そこから広がる125冊の世界名作。机の上にいきなり自分だけのための図書館ができあがってしまうのです。
「J文学館」の「J」は、児童、ジュニア、次世代を意味しています。作品の選定は小学校中学年~中学生以上を対象としていますが、大人にも読みごたえのある作品が盛りだくさんです。好みの文字サイズで読めるので、シニア世代にもおすすめします!
ひとつだけご注意を。J文学館はストリーミング型配信による電子書籍として作品を読むため、スマホ、タブレット、PCなどのインターネットに接続する機器が必要です。またWiFi環境もご用意ください。そして作品を読むために最初に「アカウント登録」をしますが、登録できるのは個人だけ、そして1冊ひとりだけとなっています。アカウントの「譲渡」「変更」はできません。くわしくは、「J文学館」で検索してご確認ください。
※ご注意
・図書館からの貸し出しでは、電子書籍は読めません。
・一部の電子書籍は、契約の都合上2030年9月以降ご利用いただけなくなる場合があります。
・ご購入前に「利用規約」をご確認ください。(「利用規約」は「小学館世界J文学館」特設サイトからご確認いただけます。)
【その他 1月の読み聞かせにおすすめの絵本】
絵本の読み聞かせについて思っていること
絵本はコミュニケーションツールです。 絵本は子ども達の歩みを助け、その成長を促してくれるかもしれません。 しかしそこには読んでくれる人の温もりを通した生きた声が不可欠です。 人と人とが向かい合い、片手間にはできない読み聞かせだからこそ愛情が注がれるのです。 子どもの持つその心のコップを絵本を使って愛情で満たしてあげてください。大好きな人の声で温もりの中聞く美しく豊かなお話。それはあっという間の子育ての濃密な時間を助け、後にその子どもたちの長い人生の心の支えとなるでしょう。
ふわはねプロフィール
ふわはね(内田 祐子)
大学で児童文学を学ぶ。2005年絵本講師1期生として絵本講師資格取得。関西を中心に企業での定期教室をはじめ、
絵本のつなぎてとして、絵本の作り手と読み手を。親と子を。人と人を繋いでいる。
子育てアドバイザー・JPIC読書アドバイザー
大学2回生と高校2年生の娘をもつ。インスタグラム @fuwahane
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