夏休みお泊まり旅行がさらに楽しみになる! 親子で読みたい「ホテルが舞台の絵本」
子どもだけが読むなんてもったいない。大人も楽しい絵本の世界を、絵本トレンドライター・N田N昌さんが、独自の視点と「ゴイスー」な語り口でご紹介!
注目の新刊や作家さん、気になる絵本関連スポットなど、絵本のトレンド情報を大人に向けてお届けします。
こんなホテルに行ってみたい!
今年の夏は、久しぶりに夏休み&お盆休みに旅行という方、多いようでございます。そこで今回は、旅行のモチベーションも上がる「ホテル絵本」(ホテルが舞台の絵本)を最新のモノも含めご紹介させていただきます。
ホテルの100周年記念パーティーで……?!
インクレディブルホテルは、ほかではありえないくらい、すばらしいホテル。そのホテルが100周年の記念に、盛大なパーティーをひらくことになりました。特別ゲストは、気むずかしくて有名なドローネ公爵夫人! ホテルのピンチに、見習い料理人のステファンは……。 遊び心いっぱいの、たのしい絵本。カレルチャペック紅茶店の代表で、 絵本作家としても活躍中の山田詩子さんの訳が、 ありえないくらいぴったりです!
まずは、こちら『インクレディブルホテル』(BL出版)。インクレディブルとは、映画『Mr.インクレディブル』のインクレディブルと同じで「信じられない」とか「驚くべき」という意味でごさいます。
冒頭でも「このホテルの素晴らしさは他ではありえないくらい。全部が全部、きっちり時間通りなのですから」と記されております。この「時間通り」というところが、お話の伏線になっていたりいたします。立派なホテルで、その100周年のパーティで事件が起こるのでございますが、その一方でホテルの裏側、どういう人たちがどういう仕事をしているかを知ることができる絵本でもございます。ホテルに泊まった際、見えないところでは、こんなことが行われているんだなぁと、より宿泊を楽しめるかと存じます。
どんなお客さんにも居心地のいいホテル
バレンタインさんのホテルには、たくさんの人がやってきます。
お客さんのリクエストにおこたえするのは、娘のエルシーのしごとです。
ある日、こまっているトラをホテルにとめてあげたふたりでしたが……。
「多様性を理解する心」「相手をおもいやる気持ち」の大切さを伝える絵本。
こちらは、2023年3月に出版されたばかりホテル絵本。お話の舞台は母親のバレンタインさんと娘のエルシーが経営するホテル。エルシーはある日、泊まるところのないトラを泊めてあげます。それがきっかけで、これまで来たことのないお客さんが続々泊まりにくるように……。そしてそのお客さんたちのリクエストに、母娘が全力で応えていくというストーリーでございます。どんなお客さんに対しても分け隔てなく対応(歓迎)するホテルを通して、思いやりの心、そして最近よく耳にする「多様性」について親子で語り合える絵本ではないかと……。
ホテルを舞台に、予想を裏切るどんでん返しが楽しいおはなし
早く眠りたいお客さんがナカヨシ・ホテルにやってきました。ところが客室ではネズミがぐっすり。彼は代わりの部屋を探して、部屋から部屋へ。フロアからフロアへ。でも、どの部屋にもブタやクモやキリンたち。そして13階へ行くと――独創的なユーモアに大笑いの絵本。
こちらも、2023年5月に出版されたばかりのホテル絵本。こちらも動物がたくさん登場するホテル絵本でございます。ホテルを舞台に展開するドキドキワクワクのユーモアナンセンス絵本でございます。最後のオチには大人も「なるほど!うまい!」と膝を打ってしまうこと間違いナッシングな絵本でございます。
そして、こちらは日本発のホテル絵本でございます。『もりのおくのおちゃかいへ』(偕成社)で第17回日本絵本賞大賞、『よるのかえりみち』(偕成社)でボローニャ・ラガッツィ賞特別賞、ニューヨークタイムズ・ニューヨーク公共図書館絵本賞を受賞されている、みやこしあきこさまの絵本でございます。
ホテルのオーナーが主人公のお話でございます。ホテルが舞台のお話というより、旅の魅力について語られている絵本かもしれません。この絵本の魅力はなんといっても、リトグラフによる美しく幻想的な絵でございます。見ているだけで楽しい、旅行に行ってみたくなる絵本でございます。どちらかというとパパママにおすすめの絵本かもでございます。
ホテルのお話ばかりなってしまいましたので、最後に「旅館」が舞台のお話を。ユーモア・ナンセンス絵本でもお馴染みのやぎたみこさまの絵本でございます。おじいちゃんと孫の男の子が、宇宙人が経営する怪しい(?)旅館に泊まることに。その旅館で2人は通常の旅館では楽しめないスペシャルなサービスを受けるというファンタジー絵本でございます。同時に「昔は、旅館でショーやお芝居も楽しめたのよ」と、昭和の旅館の雰囲気、かつての旅館トークも楽しめる絵本でございます。
最後に、絵本を読まれる際には是非、「見返し」(表紙や裏表紙の後ろ側)も楽しんでいただけたらと存じます。
『インクレディブルホテル』では、ホテルの床のデザイン。『どなたでもどうぞ! バレンタインさんのホテルのおはなし』では、改修前後のホテルの見取り図など、それぞれ楽しめる工夫を凝らしたものになっております。
N田N昌
絵本トレンドライター・放送作家・絵本専門士
絵本の最新情報を発信&大人絵本文化、絵本プレゼント文化の普及活動に日々努めております。
(画像は、イラストレーター・作家の網代幸介さんによる著者肖像画)
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