【今週の今日の一冊】素敵な「ことば」と出会える本。5月18日は「ことばの日」。
今週は、5月18日の「ことばの日」にちなんで、「ことば」に思いを馳せて考える本や素敵な「ことば」と出会える本をお届けします。「ことばの日」の由来は、「こ(5)と(10)ば(8)」と読む語呂合わせから制定され、「ことば」への興味関心を高め、人と人とが互いに通じ合えることに感謝し、暮らしをより豊かにすることを目的としている記念日なのだそう。
普段何気なく使っている「ことば」について考えてみませんか。
2024年5月13日から5月19日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
5月13日 「ことば」ってなんだろう?
月曜日は『ことばとふたり』
ことばを知らない生きものがいた。浜辺でごろんと横になり海をじっと見つめたり、時には小石を放りなげてみたり。のんびり気ままに暮らしていた。
「たのしい」気持ちになった時には、腕をのばし鳥のようにパタパタし、「おいしい」ものを食べた時は、うしろむきにくるりと三回宙返り。けれどそれをことばで何というのかは知らない。心に冷たい風が吹きぬけ、どうしたらいいのかわからなくなった時、顔をゆがめてただ苦しそうに唸っている。この気持ちを何というかだって、ことばにできないのだ。
ある日、その様子を見ている生きものがいた。ことばを知っている生きものだ。
「かなしい ことが あるんだ」
すぐにわかったその生きものは、ことばを知らない生きものに近づいていき……。
イギリスの高名な詩人ジョン・エガードと絵本作家きたむらさとしによるコラボレーションで生まれた、「ことばのない世界」と「ことばのある世界」で暮らす生きものの、出会いの物語。それぞれのんびり気ままに暮らしていた二人が、最初に心を通わせることのできた「ことば」とは?
自分の気持ちをことばで伝えあい、ことばが多すぎる時はただ黙ってそばにいる。誰かとわかりあえるって、こんなにも素敵なことなんだ! 二人で一緒に過ごす時間を見ながら、誰もがそう思うことででしょう。「ことば」について、感情表現について、そしてコミュニケーションについて。色々な考えを広げていってくれそうな一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者レビューより
言葉を必要としない時間も、言葉で表現する時間も、どちらも大事。そのようなメッセージを受け取りました。
私の好きなシーンは、「自分で自分をハグしながら少しづつ相手に近づいていく」です。
全く面識のない相手だと、なになに、なんなの?と警戒されるようなしぐさだけど、「あなたとハグしたいんですよ、今からこうしますけど、いいですかね?」という意味だと思うとちょっと微笑ましくて、笑えるような。
彼らの間には、言葉の有無という違いはあるけれど、「時間を共有する」という共通点はある。
それが一番のカギなのかなと思いました。
子供にも違いを超えて、何かを共有する価値が存在することに気付いてほしいなと期待してます。
(だっこらっこさん 40代・ママ 女の子8歳)
5月14日 ふたりの友情の言葉が詰まった名場面を何度でも
火曜日は『ふたりはずっと かしこいちえの ことばしゅう』
教科書にも載っている「おてがみ」のおはなしでもおなじみ、「がまくんとかえるくん」シリーズ。
最新刊『ふたりは ずっと』では、既刊の『ふたりは ともだち』『ふたりは いっしょ』『ふたりは いつも』『ふたりは きょうも』の4冊から、がまくんとかえるくんの友情や知恵が感じられる名場面が集められています。
「がまくんとかえるくん」シリーズをしばらく読んでいない人でも、「こんなシーンあったかも!」と思い出せるところもきっとあるはず。
大人になったからこそ心に響く言葉もありますし、子どもの頃にこそ知っておいてほしい言葉もあります。
訳者の三木卓さんからのメッセージにもあるように、二人は仲良しですが一緒に暮らしているわけではなく、それぞれ自分の家を持っています。
一人の時間があるから、二人で遊ぶ時間が一段と楽しいんだろうと思います。
そして、心地よい距離感でお互いを尊重し合う二人の姿には、憧れすら感じます。
身近なところにおいて、時々読み返したくなる絵本です。
(近野明日花 絵本ナビライター)
合わせておすすめ
5月15日 花にまつわる美しい日本語を絵画や写真とともに紹介
水曜日は『日本のことばずかん はな』
和歌や文学作品に登場する花にまつわる美しい日本語に伊藤若冲や葛飾北斎などの絵や美しい写真などが添えられた、
子どものことばの力を育てるシリーズの第二期が刊行します。
監修は国語辞典のレジェンド、37年間、辞書編集一筋の神永曉氏。
四季折々の花にまつわる俳句や和歌を集めたページや
「春の七草」と「秋の七草」を集めたページ、
ユニークななまえのついた花を紹介するページに
「花」が物語の重要なエッセンスとなっている文学作品『源氏物語』についてなど、
日本人が古来より慈しんできた「花」を言葉の面から捉えた一冊です。
そしてその言葉のイメージをさらに広げるビジュアルを厳選し、
美しい絵画や写真とともに紹介しております。
言葉を獲得することは、表現する力を大きく育むことにもつながります。
シリーズの第二期は、「花」「味」「いきもの」と3作刊行予定です。
「日本のことばずかん」シリーズは現在5巻まで刊行中!
5月16日 子どもから大人まで広く愛される詩の数々
5月17日 わたしのことばは、どんな形や色をしているだろう
金曜日は『ことばのかたち』
さっき私の口から発した言葉は、どんな形だったんだろう。
昨日、私が子どもにかけた言葉はどんな色になっていたんだろう・・・。
おーなり由子さんがほんわりと丁寧に描き出したのは、ことばについての絵本。
もしも、話すことばが目に見えたとしたら。
「うつくしいことばは 花のかたち?」「ありふれているけど 嬉しいシロツメクサのようなことば?」
声によって色がかわるとしたら。
「しずかな声なら 青い花」「やさしい声は さくらいろ」
ああ、そんな風にことばを優しく捉えたことあったかな。
小さな花を手のひらで包み込むように、相手のことばを受け止めたことあったかな。
色鮮やかな、美しく可愛らしいことばのかたちが、あっという間に読む人の心を捉えます。
もしも、話すことばが目に見えたとしたら。
「思いもよらないことばが 相手に刺さるのを見ることになるかもしれない」
そうしたら、ことばの使い方は変わるだろうか。
「みじかい正直なことばが こころの湖のふかい場所に すうっとさしこむ」
そのとうめいな青い光を見たとしたら、きっと生涯忘れることはないだろう。
おーなりさんが詩と絵で見せてくれるのは、ことばのむこうにある気持ち。
たいせつな人と交わす心のかたち。
私たちは、こんなにも豊かなやりとりをしているんだと気づかせてくれます。
子どもから大人まで、一度立ち止まって、ゆっくりと体で感じてほしい作品です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者レビューより
言葉には色や形があります。
それを見るのは心の豊かさだと思います。
おーなりさんはそれを視覚的に示してくれました。
自分の言葉が、時には人を傷つけ、時には人を助け、時には人と抱擁しあえること、改めて考えると、言葉の大切さが強く感じられました。
(ヒラP21さん 60代・パパ)
5月18日 ことばを集めるって面白い! 今日は「ことばの日」
土曜日は『ことばコレクター』
「ことば」の持つ力をえがいた絵本。ジェロームが集めているのは、石でもカードでもなくて、「ことば」でした。耳に飛びこんでくることば、心ぞうがどきんとすることば、声に出すと楽しいことば。たくさん集めてスクラップしていたら、ある日…すってんころりん! 転んで全部、ぐちゃぐちゃになってしまったのです。あれ? でも、これ、案外おもしろいかも。そうしてジェロームは、だれも聞いたことがない詩を書き、歌をうたいはじめます…。
読者レビューより
『THE WORD COLLECTOR』が原題。
ピーター・レイノルズさんが紡ぐ言葉の力です。
ジェローム少年はことばのコレクター。
この発想が新鮮です。
その基準も、感性の赴くまま、自由自在で素敵。
もちろん、分類もしてスクラップブックにまとめていたのですが、ある日転んだ表紙にまぜこぜに!?
でも、これが素晴らしい気づきにつながります。
個々の言葉ももちろん素敵ですが、意外な組み合わせが化学反応を起こすのです。
ことばって ほんとうに おもしろい。
そして、ことばコレクションが増えれば増えるほど、自分の気持ちや考えをたくさんの人にうまく伝えられるようになるのです。
さらに、ジェロームのとった行動がすごいです。
小学生くらいから大人まで、ジェロームのメッセージ、しっかりと受け止めたいです。
(レイラさん 50代・ママ)
5月19日 世界にたった一つの、少数言語の単語帳
日曜日は『なくなりそうな世界のことば』
「小さな」言葉の窓からは、広い世界が見渡せる。世にも珍しい、少数言語の単語帳。
世界で話されていることばは、およそ7000もある。しかしいま世界では、科学技術の発展とともに、数少ない人が限られた地域で用いている「小さな」ことばが次々に消えていってしまっている。本書は、世界の50の少数言語の中から、各言語の研究者たちが思い思いの視点で選んだ「そのことばらしい」単語に文と絵を添えて紹介した、世にも珍しい少数言語の単語帳。耳慣れないことばの数々から、「小さな」言葉を話す人々の暮らしに思いを馳せてみてください。
読者レビューより
人と人とが分かり合えるのは言葉が通じ合うからこそと思う。でも言葉で話さなくても気持ちは通じることもある。”ヴェヴァラサナ”はアフリカ・ナミビア地域で20万人が使っているヘレロ語で、「遠く離れていても気持ちはいつも通じ合っている。今は隣にいないけれど、それでも感じる。分かる」という意味だ。どんな国のどんな人でも、そういう気持ちがあることを知ってとてもうれしくなった。
もう一つ気に入った言葉は「ビジン」。ロシア・アムール川下流地域に住むウルチャ人のうち、今ではたった100人ほどが話す「ウルチャ語」で、「やりたいようにやらせておきなよ。なにごとも、あるがままに。無理に変えようとしないで。」といういみだって。そんなふうにゆったりと生きていきたいなあ、子育ても、人間関係も。
いつもそばに置いて、時々開いてみたくなる、小さくて可愛い1冊。
(ホンダナさん 60代・その他の方)
合わせておすすめ
いかがでしたか。
普段、何気なく使っていることばを意識するきっかけになったり、ことばの発見につながったり。
そんなことばについての素敵な本を気になったものから手にとってみてくださいね。
選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
過去の「ことばの日」の記事も合わせてどうぞ♪
この記事が気に入ったらいいね!しよう ※最近の情報をお届けします |