【今週の今日の一冊】雨ってきれい。雨の日の見方を変えてくれる、雨の絵本
間もなくやってくる雨の季節。皆さん、雨の日は好きですか? 雨の日はちょっと外出がおっくうになったり、行事の予定が変更になったり……なんていうこともあるかと思いますが、雨の絵本には、雨の日だからこそ感じられる色や音や匂い、また雨の日ならではの楽しみ方や過ごし方を教えてくれるものがたくさんあります。
今週の今日の一冊は、梅雨前の心の準備に、雨の日をちょっと楽しく素敵に感じさせてくれる絵本をお届けします。
2024年5月27日から6月2日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
5月27日 愛犬といっしょに雨がふるのを待っていると…
月曜日は『ふるかな ふるかな?』(2024年5月新刊)
黄色いレインコート、黄色い長靴に黄色い傘をもって、女の子は愛犬といっしょに雨がふるのを待ちわびています。ふるかな? もうふってくるかな? まだかな? きょうはふらないのかな。……あきらめかけたとき、ぴとっ! と雨粒が。大喜びで、雨の中ではしゃぐ女の子とわんちゃん。ぴとん、ぴちゃんという雨の音にまで聞きほれます。でも、この雨、実はね……というオチが最後のページで明かされます。やさしい気持ちでいっぱいになる、愛らしい韓国の絵本。
5月28日 雨の日に、想像力をふくらませて…
火曜日は『あめのひ』
あさ、目がさめると、雨がふっていた。
男の子は、暗い空と雨粒がうちつける窓をながめながら、家の中でほおづえをついています。
「ああ、そとにいきたいなあ」
おじいちゃんは、「うちにいなさい」というけれど、ぼくは雨のなかであそびたい。
みずたまりにパシャーンってとびこんだり、雨粒を口で受けたり。
でもおじちゃんはこういいます。
「まあ、まちなさい。あめがやむまで」
雨がふりつづく外の世界。
やんだかな?と思っても……まだふってる!
水かさはどんどん増す一方。
どうなっちゃうのでしょう?
イギリスで活躍するイラストレーター、サム・アッシャーの絵本。
灰色で薄暗い外と、あかるい家の中。
ついに雨が「やんだ!」という瞬間の、色あざやかな青空をうつす水。
ページをめくったときのコントラストが心地よい絵本です。
おじいちゃんはぼくのおしゃべりをただ聞いていたわけじゃありませんでした。
「ふねにのって、うみのかいじゅうとあそびたいな」
「みずにうかぶまちにいってみたいな」
ぼくの願いは聞き入れられ……。
おじいちゃんとぼくが、雨がやんだあとに出かけた外の世界には、船がいっぱい、楽しそうなものがいっぱい。
まるで水上の街のカーニバル!
雨がやむまでの気持ちを丁寧に描きつつ、雨がたくさんふったときならではの、ファンタジックな楽しい世界を描き出しています。
おじいちゃんと孫の雨の一日。
美味しいココアがあればさらに素敵。
雨の日に読んで、想像力をふくらませて楽しみたくなる絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
読者レビューより
サム・アッシャーのグラフィカルでみずみずしい絵に感動します。
おじいちゃんと、ぼくのやりとりも素敵で、こころが曇りがちな雨の日もこんな出来事があったらいいですね!
とにかく水の表現と色使いがとても素晴らしく、すみからすみまで見入ってしまう一冊です。
(フリフリフリルさん 30代・ママ 男の子10歳、女の子6歳)
5月29 日 雨の日限定、ゆるるーゆるるるんと進みます
水曜日は『でんでんでんしゃ』
雨が降りだして、虫たちが葉っぱの下で雨宿り。
「みなさーん、あめの ひの おでかけは いかがですかー。
おいそぎでない かたは どうぞ ごじょうしゃくださーい。」
虫たちは、でんでんでんしゃに飛びのります。でんでんでんしゃは、ゆっくりゆるーん。歩いていくより遅くて、ケロケロタクシーが追い越していきます。光るしずくのそばをそろーり通り、葉の上や葉の下や、蔓がすべるつるつる峠をぐるぐるめぐり、時には道に迷って戻ることもあるけれど、でんでんでんしゃの進む道はどこも本当に素敵なのです。さあ、クライマックスはあじさいトンネル。晴れた空みたいなきれいなトンネルを抜けると……。
雨の日限定、ゆるるーゆるるるんと進むでんでんでんしゃ。急いでいない人だけが楽しめる特別なお出かけ。独自の視点から多彩な作品を生みだす林木林さんと、その世界を愛らしく詩情たっぷりに描き出すひがしちからさん。二人の人気絵本作家が繰りだすのは、ささやかだけれど美しく輝く憧れの風景。退屈な雨の日こそ、絵本を開いてゆったりした時間を楽しんでくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者レビューより
でんでんむしの電車に乗って
ゆるりと景色を味わいながらの移動。
ときどき道まちがいなんかもあって
沢山の景色を見ることができて・・。
なんてことのない
ページを繰るたびに景色が変わる
移動系の絵本なんですけど
そのストーリーは
昔の自分を思い出すようでした。
忙しい日常から
出産のために突如、生活のスピードが遅くなる・・。
全て子どもの都合に合わせて
移動も徒歩で・・・。
でも
今まで気づきもしなかった野の草花や
ちょっと寄り道した裏路地に意外なものを見つけたり・・と
視点が変わり
そしてそれは、自分の価値観が変わっていく不思議な体験でした。
効率がいいことが求められる世の中に
一石を投じるような
心豊かになる一冊です。
(やこちんさん 50代・ママ 女の子19歳)
5月30日 「いっしょにあそぼう」と声をかけてきたのは…?
木曜日は『ぽんぽこあめふり』
ぽんたは、たぬきの子どもです。森のひろばでともだちと遊んでいると、雨がふってきました。みんなは、いそいでおうちに帰っていきますが、ぽんたはまだ、遊びたりません。しかたなくうちへ向かっていると、うしろから、「いっしょにあそぼう」と声をかけてきた子がいます。ふりむいてみると、カサをかぶった男の子。「ぼく、あめふりこぞう。雨がだいすきなんだ。あそぼうよ」ふたりは、大きなみずたまりにとびこんだり、ささぶねをつくったり、どしゃぶりの雨も気にせず遊びます。すると「ぼくもいれて」と、池の中からかっぱの子。三人は、すもうをとって、どろだらけに。でも、あめふりこぞうがじゅもんをとなえると、雨がはげしくなり、どろをおとしてくれました。三人がひとやすみしていると、「ぼくもいれて」とやってきたのは…? 『こんたのおつかい』をはじめ、いろいろな妖怪たちが登場する絵本でおなじみの田中友佳子による、雨の日が楽しくなる絵本です。
5月31日 空と雨と、光と時の流れが色とりどりに美しく…
読者レビューより
1歳になったころからの息子の大~好きな絵本
色と模様だけのシンプルな内容なのに
暗い空からぽつり ぽつり ぴしゃっ
雨粒がおちてくるところに夢中です
4歳のお姉ちゃんは そんな弟wひざにのせて
よみきかせ(?)しています♪
赤ちゃん絵本っぽくない色遣い
ちょっとアートっぽくもあり 私も大好き
雨があがって ほわほわ きらきらとした感じが
本当によく表現されていて すごい!です
(すちゃさん 30代・ママ 女の子4歳、男の子1歳)
6月1日 踊ったり歌ったり、生命力あふれる子どもたち!
土曜日は『なんていいひ』
子どもの生命力あふれる「うつくしい一日」
雨が降る中、子どもたちは踊ったり歌を歌ったりと大はしゃぎ。傘を差しながら、外をたのしそうにお散歩します。すると、だんだん雨も止み、子どもたちのまわりがスージー・ブルーに包まれていきます。どんなときでも生命力があふれる、子どもたちの姿が気持ちいい1冊。
絵を手がけたのは、国際アンデルセン賞画家賞を受賞したスージー・リーです。
読者レビューより
雨が降っていて外に出るのもおっくうなはずなのに、どうしてこの子はポジティブなのでしょう。
モノクロームの気持ちが、青く色づいていくところが、とても素晴らしいと思います。
気持ちが弾んでくると、雨も何のそのですね。
みんなで外に出て、傘を差しながら遊んでいたら、雨も上がりました。
このわくわく感がすべての絵本ですが、「なんていいひ」なんて、これ以上のタイトルは無いように思える、絵本です。
(ヒラP21さん 70代以上・その他の方)
6月2日 雨の日のピクニックは、すてきなことがいっぱい!
日曜日は『あめかっぱ』
「きょうは ピクニックびよりですよ」
お留守番をしているなおちゃんに話しかけてくるのは、かっぱ。このあたりでは、雨の日にお留守番をする時は、かっぱと一緒に過ごすのです。なおちゃんは驚いて聞きます。
「あめなのに?」
「あめだから!」
のりで巻いたおにぎりを持って、二人でお出かけです。人通りの少ない道を行き、やってきたのは緑の生い茂る林の中。おやつとふきのかさを買ってもらい、奥へと進むと目の前に広がったのは大きな広場 。真ん中には池があり、ほかの子どもたちもたくさん来ています。どんどん大きくなっていく池にやって来たのは船。「あめがたくさんふらないと辿り着けないところ」に向かうのです。そして着いた場所とは……。
どこもかしこも雨で濡れ、空は重く、どこか全体的に薄暗い……はずなのに。かっぱが案内してくれたその遊び場所の素敵なことといったら! 雨の中に佇む巨木や深い緑の美しさといったら!
「あめのひに みんなで あまやどり。これ、さいこうの ぜいたくです」
そんなかっぱの言葉に思わずうなずきながら、絵本の中の子どもたちと一緒になって静かに雨音に耳を傾けてしまうのです。こんなにも、しっとりと深く味わえる雨の絵本があるなんて。日常のすぐ隣にありながら、果てしないスケールの大きさをも感じさせてくれるこの世界観。むらかみさおりさんのデビュー作品なのだそうです。きっとこの絵本自体が、子どもたちの雨の記憶の一つとして残っていくのでしょうね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者レビューより
雨の日は外にもでかけられないし、つまらない…そんな風に思ってしまいますが、この本はそんな雨の日をわくわくとさせてくれます。
3歳の娘は、主人公と一緒になってあめかっぱと遊んだり、おにぎりを食べたり、五感を刺激されながら読んでいるようです。最初は怖いのかなと思ったあめかっぱの優しいこと、うちにも来ておくれ!と思ってしまいました。
何と言っても、しっとりした空気まで伝わってくるような森の絵が圧巻です。隅々まで描き込まれ、よく見るとかわいい生き物を発見したり…もっと大判で見てみたいと思うほどです。また、扉のページの雨の降る街角の絵は、お話が始まる予感に満ちていて、怖い話なのかな、それとも…と想像をかきたててくれます。
雨で家でお子さんと過ごす日に、ぴったりな一冊だと思います。
(YUさん 30代・ママ 女の子3歳)
いかがでしたか。私が雨の日の絵本で一番惹かれるのは、美しく静かな雨の風景。ゆっくり眺めているだけでなんだか心が落ち着いてくるように思います。絵本ナビでは、他にも雨の日の絵本に関するテーマや記事がたくさんあります。家の中で過ごす日には、ゆっくり手にとって子どもも大人もそれぞれのお気に入りを見つけてみませんか。
選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
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