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絵本作家ひろたあきらの 一冊ぐらい絵本を読んでみませんか?

絵本作家ひろたあきらの 一冊ぐらい絵本を読んでみませんか? vol.6『ジャリおじさん』

僕は今、絵本作家として絵本を作っています。ですが、元々はただの絵本好きでした。それは今でも変わっていません。

 

映画、音楽、漫画、小説、アニメ。大人が楽しめるカルチャーはたくさんあります。それと同じように、絵本だって大人が読んでも楽しめるのです。この連載は、そんな絵本の魅力を、普段絵本を読まない大人にも届けたいという思いで始まりました。

一冊ぐらい絵本を読んでみませんか。

人生の素敵な歩み方

今回紹介する、大人に読んでほしい絵本は『ジャリおじさん』です。この絵本を読むと、ふと自分の人生について考えてみたくなります。みなさん、これまでどんな人生でしたか? たぶんこのコラムを読んでくださってる方ひとりひとりに話を聞いたら、全然違う人生が聞けると思います。

 

僕の人生もなかなか紆余曲折ありました。僕は今、絵本作家として絵本を作っていますが、まっすぐ絵本作家にたどり着いた訳ではありません。ぐにゃぐにゃと曲がりくねった凸凹道を歩いていたら、たまたま絵本作家の道につながっていて、楽しそうだから歩いてみようといった感じで現在にいたります。

 

この先もどんな道が待っているのかわかりません。このまま絵本作家の道を歩き続けるかもしれませんし、全く想像もしていなかった別の道を歩き始めるかもしれません。『ジャリおじさん』を読むと、人生の素敵な歩み方を教えてもらえます。

ジャリおじさん

現代美術の旗手、大竹伸朗が不思議な絵本を作りました。鼻の頭にヒゲのある(!)ジャリおじさんの冒険物語。長い道を歩いていくと変なことが起こるのです。ナンセンス絵本の傑作。

この絵本の作者のおおたけしんろうさんは、現代美術家をされている方なので、とにかく絵がめちゃめちゃ素敵です。他の絵本では見られない表現がいっぱい見ることができて、絵だけじっくり眺めるだけでもとても楽しめます。そして、お話もかなり独特な世界観でどんどん引き込まれます。

 

表紙をめくると物語はこうはじまります。

 

「はなの あたまに ひげのある ジャリおじさんは、いつもいつも うみを みて くらしていました。」

 

次のページをめくると、こう続きます。

 

「あるひの ことです。クルリと うしろを ふりむくと ずうっと きいろい みちが つづいているではありませんか。」

 

ジャリおじさんの背後に、突然黄色い道が現れたのです。ジャリおじさんはこうもり傘を持って、導かれるように黄色い道を歩き始めます。傘のみでふらっと近所に出かける感じで歩き始めるジャリおじさんですが、ここから長い旅が始まります。

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=2668

ジャリおじさんは黄色い道を歩きながら、様々なものに出会います。そして「ジャリジャリ」と挨拶をします。この「ジャリジャリ」は「こんにちは」という意味らしいです。ジャリおじさんは出会った人たちに「このみちは どこへ いくのじゃり」と聞きますが、どこへ続くか知っている人は誰もいません。お気づきの通り、ジャリおじさんは語尾に「じゃり」が付きます。なぜ「じゃり」が付くのかはまだわかりません。

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=2668

ジャリおじさんは日が暮れるまで歩き続けます。夜空には星がキラキラと光っているのですが、星が星座のようにあるものの形になっています。さらにジャリおじさんが歩いていると「ドーン。」と何かにぶつかります。

 

「イテテテテ」

「あらあら あなたは ジャリおじさん」

「そういう あなたも ジャリおじさん」

 

なんとジャリおじさんがぶつかったのは、もう1人のジャリおじさんだったのです。ここからジャリおじさんの新たな物語が始まります。ジャリおじさんはどこまで歩き続けるのか? ジャリおじさんの行き着く場所はどこなのか? この旅の目的はなんだったのか? 是非絵本を読んでみてください。

前触れもなく始まったジャリおじさんの旅を見ていると、自分の人生と重なるところがたくさんあります。そして、ジャリおじさんから学ぶことがたくさんあって、これからの自分の人生が楽しみになります。大人になるといつの間にか息苦しい生活をしてしまいがちですが、ジャリおじさんのようにこうもり傘を一本だけ持って、身軽に生きるのもいいですね。

最近のこと

新しい絵本の原画を制作中です。一生分のアリを描いています。締切間近ですが、今までで一番ピンチです。がんばります。

ひろた あきら

1989年愛知県額⽥郡幸⽥町⽣まれ。吉本興業所属の絵本作家。2019年2⽉に刊⾏したデ ビュー作『むれ』(KADOKAWA)が「第12回MOE絵本屋さん⼤賞2019」の新⼈賞第1位、「第7回 積⽂館グループ絵本⼤賞」第1位、「第3回未来屋えほん⼤賞」の第3位に選ばれるなど多くの絵 本賞を受賞。その後も第2作『いちにち』(KADOKAWA)、『ぐるぐるぴ』(講談社)、『にゃおにゃお にゃお』『ちんぽうがき』(ヨシモトブックス)など、精⼒的に活動を続けている。2021年、幸⽥町絵 本⼤使に就任。絵本を⽤いたワークショップや読み聞かせ会を積極的に⾏う。

5月に発売されたひろたあきらさんの新作は、へんてこ「どっち?」参加型絵本!

どっち?

「だんごむしとかたつむり、うまれかわるならどっち?」「ぼうしとパンツ、かぶりたいのどっち?」「あかちゃんパンダとじゃがいも、だっこしたいのどっち?」参加型絵本。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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