鬼の目にも涙!?ちょっぴり切ない鬼のお話
2月3日は「節分」の日。
「おにはそと ふくはうち」みんなで豆をまいて、年の数だけ豆を食べて。その後は、鬼が活躍する絵本を読んでみましょう!
でも、昔話や絵本の中の鬼は怖いだけじゃないようで…。鬼が登場するおに、読むと必ず泣いてしまうあの名作から、ちょっぴり切ないお話まで。その見た目とのギャップに魅力を感じるのでしょうか。親子でじっくり味わってみてくださいね。
まごころの大切さを感動的に描いた名作
「泣ける鬼の絵本」といえば、浜田廣介の名作「泣いた赤鬼」を思い出す方が多いのではないでしょうか。
友情、孤独、まごころ…鬼の姿をしていても、とても人間的なテーマを扱っているのです。
青鬼の強い意志
「ひろすけ童話」として、教科書にも載った事がある有名なお話です。もちろん、私も子どもの頃読みましたが、青鬼の友情に感動したというよりも、何かやりきれない辛い気持ちになった事を覚えています。
赤鬼は、人間たちの仲間になって仲良く暮らしたいと思いますが、人間は赤鬼の事を恐れて、逃げてしまいます。それを見ていた青鬼が自分が犠牲になる事で、赤鬼を人間に信用させようとします。
最後に青鬼が赤鬼に宛てた手紙が、心を打ちます。それと同時に,みんなと仲良くなりたいだけなのに、何故こんな代償を払わなければならないのか?その疑問を、子どもの頃強く感じたのではないかと思います。
大人になれば、どうしても変えられない現実も知る事になります。このお話では、その現実を受け入れながら、それでも絶望する事なく、自分が犠牲になる事で、他人を生かすという青鬼の強い意志(無償の愛)が描かれているのではないのかと感じました。
大人になって、このお話を読み返してみても、やはり本当に青鬼が取った行動が正しかったのか、分かりません。しかし、時代が変わってもこのお話が人々に強い感動を与えるのは、単なる友情だけではない青鬼の強い意志が、読む人の心を打つのではないのかと感じました。
(ウルトラのぱぱさん 40代・パパ 男の子7歳)
他の「泣いた赤おに」とも読みくらべてみては?
とにかく優しい心を持っている「おにた」が切なくいじらしい
○あらすじ
節分の夜のことです。どのうちからもまめをまく音がして、おにの子のおにたは、いくところがありません。つのをかくす古いむぎわらぼうしをかぶって、まちを歩いていきました。ようやく小さな橋をわたったところに、まめのにおいのしない家をみつけました。そこには、おんなのことおかあさんがすんでいました。おかあさんは病気でした。てんじょうのはりの上で、ふたりのようすをみていたおにたは、おんなのこをよろこばせてやりたいと思います。
○編集部より
おんなのこを思いやるおにたの気持ちが、せつなくいじらしく、いわさきちひろさんの絵とともに、いつまでもこころにのこります。あとがきで作者のあまんきみこさんは、「どうも、このごろのオニは、帽子をかぶりたがっている気がします。そして、雲霧四散したがっているようにさえ思われてきました」と書かれています。・・・おにたは今、どこにいるのでしょうか?
切なくて美しい
姿は鬼だけど、本当は心優しいおにた。
お腹をすかせた女の子のために、雪まみれになってごちそうを用意するおにたの優しさに心が和みました。
しかし、女の子の「鬼が来ればお母さんの病気が悪くなる」の言葉に打ちひしがれ、姿を消してしまうおにた。
おにたは豆に姿を変えて、完全に消えてしまったのでしょうか。
ぱらぱらと静かな音でまかれる豆が、おにたの涙のような気がしました。
お話だけでも心を打つものですが、いわさきちひろさんの絵の美しさがこの作品の切なさと美しさを倍増させていると感じます。
(ともっちーさん 40代・ママ 女の子8歳、男の子4歳)
鬼の報われない想いに、せつなく胸が詰まります
昔、海の真ん中の島に鬼が住んでいて、ひとりぼっちで寂しがっていました。
ある嵐の晩、沖を通りがかった漁船が、遠くに光る鬼の目を家の明かりと見間違えて、助けを求めて鬼の島へやってきました。
鬼はうれしくなって漁師たちの前に現れましたが、漁師たちは肝をつぶし、命乞いをします。
人間たちと一緒に暮らすにはどうしたらよいかを尋ねる鬼に困惑した漁師たちは、自分たちの島は狭いので、鬼が島をひっぱってきたら一緒に暮らせるのだが、と、口からでまかせを言いいます。
これを真に受けた鬼は、島を引っ張って海を歩き、人間たちの島へと行くのですが・・・。
鬼は何の悪いことをしたわけではなく、ただ寂しくて誰かと一緒にいたかっただけでした。
素直で純朴な鬼は、漁師たちに言われたとおりに島を引いて歩き出します。
行く先々の村で、鬼はだまされ、厄介払いを受けますが、それでも鬼は一緒に暮らしてくれる相手を探して島を引くのです。
人間たちの卑怯な振る舞いに怒りを感じますが、人間たちとて家族を守らなければならず、鬼と一緒に住むわけにはいかないのです。鬼の報われない想いに、せつなく胸が詰まります。一方的にどちらが悪いということでないところに、このおはなしの悲しさがあると思うのです。
このおはなしは、作者山下明生氏のふるさと、広島県の能美島の近くにある敷島という無人島にまつわるいいつたえを元に作られています。鬼の引っぱってきた島だから引島、それが敷島になったそうです。作者自身が子どもの頃、誰にも遊んでもらえず感じた孤独、それがこのおはなしのベースになっていて、単なる民話ではない深みを感じることができるのでしょう。
読む者の心に問いかけ、考えさせ、成長させてくれる、素晴らしい名作です。
節分に読みたい絵本♪楽しみ方もたくさん!
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