小学1年生、2年生におくる2018年の課題図書、作品の選び方と感想文の書き方ポイント!
課題図書の季節がやってきました。
さて、読書感想文を書くのに、今年はどの本を選びましょうか?
読書感想文を書く時に、一番大切なのは、ずばり本選び!とにかく、これなら最後まで読み通せそう!面白そう!とワクワクする1冊を選んで下さいね。そして本を選んだら、次は読み方です。今回は、いざ感想文を書く時に役立つ読み方のコツも含めて、まずは読書感想文を書く前の準備のお話からお伝えしていきたいと思います。
その後は早速、2018年度の課題図書に選ばれた作品のご紹介とそれぞれの本に対してどんなところに注目して感想を書いたら良いかについてのヒントをたっぷり。
そして最後に、感想文の基本的な書き方についてご紹介します。
小学1、2年生の皆さんは、はじめて、読書感想文に挑戦するという子も多いことでしょう。どうか、少しでも読んでみたい、書いてみたいというやる気に繋がりますように。
目次
読書感想文に取り掛かる前の準備のお話
作品の選び方と読み方のコツ
- 自分が好きな本、最後まで読み通せそうな本を選ぼう!
(実際に読み始めた後でも、あれ?ちょっと違うかもと思ったら、思い切って違う本に変えてしまっても大丈夫!自分が本当に楽しい、面白い!と思う本で感想文を書こう)
- しっかり読もう!
はじめに1回自由に読む。読み終わったら、その時の感想をまずメモしておく。次にもう1回、今度は、面白いと感じる場面や印象的な場面、人、言葉などに鉛筆か付箋などで印をつけながら読んでみよう。
⇒印をつけた箇所が感想文を書く時の肝になるよ。
- 登場人物の立場になって読もう!
感想文を書く時は、もし自分だったら・・・ということをいつも考えながら読んでいくと、感想が出やすくなるよ。
感想をどんどん引き出すためのコツ
たとえば読んだ本が面白かったと思っても、具体的にどう面白かったかを説明したり、いきなり感想文を書くのは難しいですよね。そこで、どんな風に考えたら、自分の中から感想が出てくるのか、考えるポイントをいくつかご紹介します。お子さんが感想文が続かなくて困っていたら、ここのポイントを参考に、親御さんが問いかけてあげて下さいね。
- まずは誰かにどんなお話だったか、どこが面白かったかを口で話してみよう!書くよりも感想がどんどん出てきたり、会話のやりとりの中で感想が深まることも。
- 本の中で気になった部分に自分で「なぜ?」と問いかけてみよう!
「なぜ、この場面を自分は面白いと思ったのだろう?」
「どんなところが面白かったのだろう?」
「この登場人物が気になったのはなぜなのだろう?」
(自分に似ているから?家族や友達に似ているから?それとも自分と違うから?こんな人になりたいと憧れるから?)
- 本の中に出てくるような体験を自分もしたことがないか考えてみよう。あるいは、家族や友達などから似たような体験を聞いたことがあったら、それを思い出してみよう。
「本の中の主人公と似たような体験をしたことはある?」
- 読む前と読んだ後で本の印象はどう変わった?さらに、読む前と後で自分の考えが変わったことがあったら、それを書いてみよう。
「表紙を見た時、どんなお話だと思った?読んでみてどうだった?」
それでは、2018年度課題図書低学年の部のラインナップの紹介にうつります。課題図書1冊1冊がどんな本なのかを詳しく紹介しながら、どんなところに注目したら感想文が書きやすくなるかについて、ヒントをたっぷりお伝えします!
2018年課題図書 低学年の部ラインナップ紹介
『ルラルさんのだいくしごと』
みどころ
広いお庭のある家に住むルラルさんの暮らしは、いつもなんだか楽しそう。お料理をしたり、自転車でお出かけをしたり、本を読んだり、時にはバイオリンを弾いてみたり。
そんなルラルさん、実は大工仕事の腕前もなかなかのものなのです。のこぎりやトンカチ、カンナにドライバーなど、自分用の大工道具も充実していて、いすやテーブルだって、さささっとつくってしまいます。今日の大工仕事は、屋根の修理です。雨漏りをしないよう、ルラルさんはじっくり調べ、丁寧にひびを埋めていきます。さすがです。
ところが。
…「え?」
ルラルさんが屋根から降りようとすると、思わぬことが起き…。
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こんなタイプの子に特におすすめ!
- とにかく楽しいお話が好き!という子に
- ちょっとしたびっくり!を味わいたい子に
- 毎日忙しい、と感じている子に
- 読んだ後、ほのぼの温かい気持ちになれます
どんな本?
ページ数は32ページで短く、さらに文字も少ない絵本なので、すぐに読めます。絵もかわいらしく明るい色合いなので、楽しい気分で読めます。絵本の中の時間がゆっくり流れていくので、ゆったりとした気持ちが味わえます。(大人の方にもおすすめです。親御さんもぜひ一緒に読んでみて下さい!)
課題図書に選ばれた理由(全国学校図書館協議会による選定理由)
絵の構成がよく、ゆっくり待つルラルさんの気持ちが伝わり、楽しく読める。
『ルラルさんのだいくしごと』の感想文を書く時のヒント
- はしごが倒れてしまって、屋根から降りられなくなってしまった時、またそこに動物たちがやってきてくれた時、ルラルさんはどんな気持ちだったかな?自分だったらどんな気持ちになるだろう?
さらに、そのはしごを動物たちが持って行ってしまった時、どう思った?
- いろいろ予定していたことができなくなってしまったルラルさん、そんなルラルさんをどう思った?自分だったらどうする?
また、予定していたことができなくなったり、予定が変わってしまった似たような体験をしたことはある?あればそれを思い出して書いてみよう。
- 何時間もたってルラルさんのところへ戻ってきた動物たちのことをどう思った?またその時のルラルさんの対応はどうだった?もし自分だったらどんな気持ちになるだろうか?
より感想文を深めたい子へ
「ルラルさんのえほん」シリーズ
『きみ、なにがすき?』
みどころ
ともだちのために、なにかしてあげたいと思ったことはありますか?
このお話の主人公のあなぐまは、とってもともだち想い。けれどもその気持ちがなかなかうまく伝わらないようです。
ある日、草ぼうぼうの家の庭を見て、何か作りたいと考えたあなぐまは、こんなことを思いつきます。
「そうだ、はたけは どうだろう。おいしいものを そだててさ、
どっさりとれたら りょうりして、ともだちをしょうたいするんだよ」
早速、仲良しのこぶたが大好きなじゃがいもを植えようと考え、きっと喜ぶだろうなあと、もてなす時のことを想像して嬉しくなるあなぐま。そのイメージの楽しそうで可愛いらしいことったら!イメージするどの場面からも、ともだちを喜ばそうと一生懸命なあなぐまの様子が伝わってきます。けれどもあなぐまが作ろうと考えたものは、みんながたっぷり持っているものばかりでした。期待が全部外れて、庭に何を作ったら良いか分からなくなってしまったあなぐまに、はりねずみがこんな言葉をかけてくれます。
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こんなタイプの子に特におすすめ!
- 感想文を読み物で挑戦してみたい子に
- ちょっと周りの目が気になってしまう子に
- 自分のことよりも人のことを考えがちな優しい子に
- 友達のお話が読みたい子に
- かわいい動物が出てくるお話が好きな子に
- 友達になにかあげたいと思ったことがある子は共感しやすいお話です
どんな本?
低学年の部の課題図書4冊のうち、唯一、絵本ではなく読み物です。
ページ数は64ページで、文字も縦書きで、他の本よりは長めですが、全部のページにさし絵が入っているので、場面を想像しやすく読みやすいお話です。絵も優しく可愛らしいので、少し長くても絵に惹かれて読みたくなる子がたくさんいそうです。
あなぐまが友達が喜ぶ様子を想像する場面がすてきなので、そこにも注目して楽しんでみて下さい。
課題図書に選ばれた理由(全国学校図書館協議会による選定理由)
日本語が美しく、友だちとの心の交流が共感できる。友だちへの思いが伝わる物語。
『きみ、なにがすき?』の感想文を書く時のヒント
- もし自分が主人公のあなぐまだったら、庭に何をつくる?
- 仲良しの友達のために何かしたいといつも考えるあなぐまのことをどう思った?
- このお話の中で、あなぐま以外に気になった動物はいる?
- 仲良しの友達が次々にあなぐまが作ろうと思っていたものを持っていることを知った時、あなぐまはどんな気持ちになっただろう?自分があなぐまの立場だったらどう思うかな?
(50ページのあなぐまはどんな気持ちだったのだろう?) - 怒ったあなぐまに、友達のはりねずみは優しい言葉をかけました。もし自分だったらどんな言葉をかける?
- あなぐまと似たような体験をしたことはある?
たとえば誰かのために何かをしてあげようと思ったのに、相手には必要なかったということがあったりした?(この問いがちょっと難しい場合には、親御さんが補足して説明お願いします) - 一番最後のページのあなぐまはどんなことを考えているのかな?想像して自由に書いてみよう。
より感想文を深めたい子へ
自分のすきなものは何だろう?なぜそれが好きなのか、「好きなもの」や「好きなこと」について感想を広げてみよう。
自分だけの「好きなこと」について書いている他の本も参考にご紹介します。
好きなものについて考える絵本
『なずずこのっぺ』
こんなタイプの子に特におすすめ!
- ことばに興味がある子に
- 暗号やクイズなどを解くことが好きな子に
- 昆虫や植物に興味がある子に
- 想像することが好きな子に
- 絵が好きな子に
- 長めの読み物や文字の多い絵本が苦手で、絵が多い絵本が一番読みやすいと感じている子に
どんな本?
文字がすべて「昆虫語」で書かれている!!これまでに見たことがない画期的な1冊です。絵とそれぞれの場面で出てくる「昆虫語」を照らし合わせながら、とにかく、自由に想像を膨らませながら、楽しく読んでほしい絵本です。
絵が美しく楽しいので、絵の楽しさをじっくり味わい、「絵を読む」という体験をしてもらえたらと思います。また、詩人のアーサー・ビナードさんによる翻訳が素晴らしく、「ことば」の楽しさにも出合える1冊です。何度も楽しめるでしょう。
課題図書に選ばれた理由(全国学校図書館協議会による選定理由)
絵を読む絵本の原点があり、何度も読む楽しさ、未知の言葉を解読する喜びを味わえる。
『なずずこのっぺ』の感想文を書く時のヒント
- 昆虫の表情、しぐさ、行動を表す絵と、出てくる「昆虫語」を見ながら、昆虫たちの場面場面での気持ちを探偵のような気持ちで探ってみましょう。
- それぞれの「昆虫語」は声に出すとどんな感じかな?声の大きさ、話す早さ、イントネーション、誰に向かって話している?ということに注目していくと、どんな気持ちなのかが伝わってくるはず。そうしたら、自分なりに自由に昆虫の世界のやりとりを解読して、それを原稿用紙に書いていこう。
- 繰り返し出てくる「昆虫語」については暗号のように解読してみるのもおすすめです。自分なりにどんどん解読して、どんどん昆虫の世界に入ってみよう。
- 「昆虫語」をきっかけに、「ことば」について考えてみるのもおすすめです。
より感想文を深めたい子へ
『なずずこのっぺ』で、普段自分が話している「ことば」以外の「ことば」に興味を持ったら、さらにいろいろな「ことば」に出会ってみましょう。
いろいろな「ことば」に出会える絵本
『がっこうだってどきどきしてる』
はじめてのクラス、はじめての学校、みんなどきどきするものだけど……学校だってどきどきしてるって知っていた?
学校がちょっぴり怖い子、苦手な子、いやだなあと思う子たちへ――こんな学校だったら、ちょっと面白いんじゃない?
はじめて新しいクラスに入るとき、新しい学校に行くとき、子どもはみんなどきどきして、ちょっぴり不安を感じるものですが、じつは、学校のほうも不安で心配でしかたなかったとしたら!? 生まれたての学校が、子どもたちといっしょに少しずつ「学校って、もちろん楽しいことばかりじゃないけど、でもやっぱり楽しいかも」と思えるようになるまでを、不安な心によりそって描きました。学校といっしょに、どきどきして、切なくなって、げらげら笑える、唯一無二の学校絵本です。
こんなタイプの子に特におすすめ!
- はじめて学校に行く時、緊張したり、不安だった覚えがある子に
- 学校が好きか嫌いかに関わらず、学校というものが気になる子に
- 学校の気持ちを想像してみたい子に
- 学校とお話してみたいと思う子に
- 自分以外のものの立場で考えることが得意な子に
どんな本?
32ページの絵本で、文字はやや多めです。サンフランシスコ在住のアメリカの作家さんが書いた絵本なので、学校の建物の雰囲気は日本とは違っていますが、おしゃれで楽しい雰囲気のする学校と学校の様子にワクワクできます。
課題図書に選ばれた理由(全国学校図書館協議会による選定理由)
「学校」の視点の表現が新鮮。読者である子どもたちのいろいろな気持ちを引き出せる。
『がっこうだってどきどきしてる』の感想文を書く時のヒント
- 学校のこと、好き?嫌い?それはどうして?
まず学校が好きか嫌いか、それはなぜなのかから書きだしてみると、いろいろ出てきて感想が書きやすいかも。
- 自分が通っている学校は、どんなことを毎日感じているか、想像しながら書いてみよう。学校はどんな時間が楽しくて、どんな時間を嫌だって思ってるかな?
- 絵本の最後に、学校のいいところを〝ようむいんさん”が教えてくれる場面がありますが、学校の良いところはどんなところだと思う?
より感想文を深めたい子へ
学校についてよりたくさん知ったり、考えたりするために、学校について書かれた本をいろいろ読んでみるのもおすすめです。いつも通っている学校に対して、新しい発見があったり、感じることがあったら、メモしておいて、感想文に書いてみましょう。
学校や学校生活がよく分かる絵本
読書感想文の書き方
さて、感想文を書く本が決まったら、次は書き方です。
読書感想文の書き方の本を参考に、感想文の組み立て方の例を2つほどご紹介します。
※低学年の部の文字数は、本文800字以内です。
感想文の書き方例 その1
参考図書:『読書感想文がスラスラ書ける本 小学1・2年生』(上條晴夫/企画・監修、永岡書店)より
はじめ、なか、おわりの三つのまとまりで書く
はじめ
本の説明やその本を読んだ理由を書く
(どんなお話なのか、自分が読んだ本のことを人に教えてあげるつもりで)
- 題名を説明するorどんなお話かを説明するor主人公や出てくるものを説明するor表紙を説明する
- 本を読んだ理由を書く
なか
- 心にのこった場面の説明とその場面で自分が思ったことを書く
おわり
- 本を最後まで読んで、いちばん強く思ったことを書くまとまり
- 強く思ったこと、主人公と自分をくらべて考えたこと、これからしたいことなどを書くと良い。
感想文の書き方例 その2
参考図書:『お父さんが教える読書感想文の書きかた』(赤木かん子/著、自由国民社)より
- 原稿用紙を赤いペンで3行ずつ、四角く囲んで、低学年の場合は、13~14ブロックに分ける。
- 最初のブロックに、感想文の題名と名前を書く。
- 2番目と3番目のブロックには動機(本を選んだ理由)を書く。
- 4番目のブロックには場面設定(あらすじ)を書く
- 5番目のブロックには、4番目に書いたことへの感想を書く。
- 4と5の「あらすじを書いてそれについての感想を書く」を何回か繰り返す。
- 本の話と自分の体験を比べて書く
- 結論を書く。
読書感想文に役立つ本のおすすめ
いかがでしたか?
課題図書のラインナップの中から読みたい本は見つかったでしょうか?
なんとなく読書感想文が書けそうな気がしてきましたか?
今年の読書感想文は、読むのも書くのも、ぜひ楽しんでみて下さいね!!
秋山朋恵(絵本ナビ 児童書担当)
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