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おいしい絵本。

vol.13 おじいちゃんのこだわり、と言えば…?

 

「ほら、今日もまた切ってるよ!」

 

小さい頃、おじいちゃんのうちに遊びに行くと、必ず確認していたのは、おじいちゃんの朝ごはん。おじいちゃんは、毎朝必ずトーストとコーヒーなのです。こんがり焼いた食パンになぜか焼き海苔をのせます。そして…パンをはさみで切るのです!

 

幼いながらに衝撃だったその光景。兄と一緒によくのぞいては驚いていたものです。でも、だんだん慣れてくると、なぜかそのパンが特別に美味しそうに見えてくるのです。パンの厚みも、焼け具合も、コーヒーを合わせるのも、いつも一定。おばあちゃんの和食の料理はいつもとても美味しかったのに、朝食はいつも一人だけパン。不思議なものです。
「もしかして、はさみで切るから美味しいのかも?」
未だに試したことはないので、真相は闇の中。そのはさみの色形だけはよく覚えています。

 

そういえば、父も朝はトースト派。
でも、こだわりの焼き方と言えば、「おもち」です。
お正月、息子と実家に帰れば、おもちを焼いてくれるのは必ず父。

 

こんがり焼いたおもちに、しょうゆをたっぷり。そしてなぜかチーズを一切れ、さらに七味唐辛子をたっぷりかけます。大きな海苔で包み込んで「はい、どうぞ」。これを気に入った息子は、家に帰っても、おもちの時は「あれがいい!」と言い出すのが恒例なのです。

 

こうしてみると、おじいちゃんって何かしら一つはこだわりの「食べ方」があるらしい。それは決しておばあちゃんが作るものではなくて、自分でつくるもの。大事なのは味だけでなく、その行程も含まれているところが面白い。孫たちの記憶に強烈に残っていきます。

 

そして、そんな「おじいちゃんのこだわり」を最高に美味しそうに描いているのがこの絵本!

おじいちゃんとパン

おじいちゃんとパン

おじいちゃん、今日は何をぬるんだろう?「ぼく」がじっと見ている前で、甘いものが大好きなおじいちゃんは、毎日パンに色々なものをのせて食べている。

こんがり焼いたパンにバターをぬって、イチゴジャムをたっぷり。あんこをのせる時は、きなこもかける。マシュマロをのせるときは、半分に切って軽く焼く。そして…

「なんだ ちびすけ 食べたいのか
 しかたねえな」

そう言って、ひと切れくれるのです。そうしているうちに、ぼくも成長していき、すっかり大人になった頃…やっぱり、おじいちゃんは「とっておき」の1枚をつくり、食べているのです。

この絵本のみどころは、とにかくおじいちゃんのつくる美味しそうなパン!のせるものによって、焼き方を変えたり、順序がちがったり。量だってケチケチしないでたっぷりと。切り方だって、こだわっている。見ているだけで、パンへの愛着が伝わってきます。この絵本の作者は、コミック『ごはんのおとも』で累計10万部のヒットを生んだ新進気鋭の作家さん。納得の出来上がりです。

それにしても、好きなものに妥協しないおじいちゃんの魅力的なこと。読み終わる頃には、そんなおじいちゃんを見ているのが好き、という「ぼく」の気持ちにすっかり共感してしまいます。そういえば、私のおじいちゃんも毎朝こんがりトーストとコーヒーって決まっていたっけな…。

 

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

http://www.ehonnavi.net/ehon/115662/%E3%81%8A%E3%81%98%E3%81%84%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93%E3%81%A8%E3%83%91%E3%83%B3/

こんなおじいちゃんがいたら、例え交わした言葉が少なかったとしても、ずっと心の中に生き続けるんだろうな。素敵です。

 

ところで、旦那さんのこだわりといえば…なんだろう? トーストではなく「お米派」というところだけは確実なのですが。こだわりの食べ方が生まれる瞬間って、あるのかしらね?

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部

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