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おいしい絵本。

vol.14 美味い出汁は「見て」味わう。

 

私はうどんが大好きです。

 

「もちもち、つるつる」の麺を思いっきりすするのがたまらない。でも、程よく温かいおつゆに麺がひたっている感じ、麺をすっかり食べ終わった後に旨味をたっぷり含んだおつゆを飲んで余韻を楽しむ感じ、最後にどんぶりをどんと置く感じも全部含めてたまらない。

 

もっと言えば、出汁の匂いをお店の前でかぎながら「うどん食べたいなあ」と思うのも、狭くて窮屈なお店や食堂などで思ったより美味しいうどんに出会った喜びも、美味しいけどちょっと量が足りないと感じる時も、食べるまで時間が経ってぬるくなっちゃったうどんも全部含めて好き。

 

寒さで冷え切った体がうどんで暖まる瞬間も、暑さで食欲ないのにうどんなら食べられた時も嬉しくてたまらない。

 

今日は「たぬきうどん」か「きつねうどん」か迷った時、選んだ方がその日欲していた味にぴったり来ていた時の喜びは一番かもしれません。

 

だけど、実際にうどんを食べに行っても、意外に満足な気持ちになれることってあまりないのです。条件が味だけじゃなくなっているからなのでしょうか?


だけど、この絵本。
なんだか美味しそうな出汁の色にそまっているこの絵を見た途端。
見つけた!って思ったのです。
 

きつねうどん たぬきうどん

きつねうどん たぬきうどん

きつねうどんが大好きな、きつねくん。
たぬきうどんが大好きな、たぬきくん。

そんな2ひきがいい匂いにつられて、うどん屋さんにやってきちゃった。
もう出だしを見ただけで、ワクワクしちゃいます。
だって、私は「うどん」が大好き。
きつねうどんも、たぬきうどんも、どっちか決められないくらい大好き。
だから匂いにつられちゃう気持ちもわかるし、店構えだって期待できる。
一体2ひきがどんな顔をして食べるのか見たくてたまらない。

さて、きつねくんとたぬきくんはお店に入る前に、ちゃんと葉っぱを頭に乗せて人間の男の子に変身します。そして、しこしこ、つるつる、もちもち、ぷりぷりのうどんを、それはそれは美味しそうに食べるのです。もちろんおつゆも全部飲んで。お金が葉っぱとどんぐりなのは、ご愛敬。いいよね、こんなに喜んでいるんだもの。お店のご主人も笑って見送ります。

だけど、すっかり常連になった頃、思わずけんかが始まります。

「きつねうどんとたぬきうどん、どっちが一番美味しいか」
「たぬきがいちばん!」「きつねがいちばん!」

とうとう2ひきは取っ組み合いに!!
そこで、ご主人は2ひきをお店の台所へ連れていき…。
一体結論は出たのかな? 仲直りはできたのかな?

それはともかく、最後の場面では、ここのお店はすっかり大繁盛。
当たり前です。だって…「ほんものの」たぬきうどんときつねうどんが食べられるんですから!

お話はもちろん、なんだか画風にも色彩にもうどんの美味しさがにじみ出ている様な…つまり、うどん好きにはたまらない、可愛くて美味しい絵本なのです。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

https://www.ehonnavi.net/ehon/117651/%E3%81%8D%E3%81%A4%E3%81%AD%E3%81%86%E3%81%A9%E3%82%93%E3%81%9F%E3%81%AC%E3%81%8D%E3%81%86%E3%81%A9%E3%82%93/

温かくて、味がしみていて、親しみやすくて、手ごろ。
そして、嬉しそうにうどんを手にしているきつねくんとたぬきくんの愛らしいこと!
ああ、私にとっての「美味しい絵本」ってこんな感じだなあ…と思わせてくれた1冊です。

磯崎 園子(絵本ナビ編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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