vol.14 魔法のたべもの絵本『スープになりました』
小さい頃、レストランに連れて行ってもらうと、頼むものはいつも一緒。
「スパゲッティミートソース」と「コーンポタージュスープ」。
特に「コーンポタージュスープ」は絶対。他のものを食べる時でも必ずお願いしていたものです。何がそんなに好きだったのでしょう。
まずはあの色味。クリーム色に輝くパステルカラーに、白い生クリームの線がなんとも魅力的。それを少し大きめのスプーンで向こう側にすくうのも上品な感じがして気持ちが高まります。
それから触感。とろーりとろとろなものが大好き。味だって、お料理とおやつのちょうど間くらい。甘めなのに、甘すぎない。
大切なのは、頼んだらすぐに出てくるところ。お料理を待っている間にスープを飲める。この段取りも含めてなくてはならない存在、それが「コーンポタージュ」。どうやら子ども心に神格化していたのでしょうか、「コーンポタージュ」が注文できないお店では、ちょっと機嫌が悪かったりして。
だけど、まさかあのスープが、あの大きなとうもろこしから出来ているなんて。それを理解した時の感動も忘れられません。だって、魔法みたい。あんなつぶつぶしたものが、こんなにとろとろ、綺麗なクリーム色になっちゃうなんて!
…ところが、どうやら魔法のスープは「コーンポタージュ」だけじゃないらしい!?
続きはこの絵本でどうぞ。
スープになりました
美味しそうなにんじん。
オレンジの鮮やかな発色と表面の小さな白い筋が食欲をそそります。
ページをめくると…
「スープになりました。」
一瞬でみんなが大好きなスープに大変身です。
白いカップにとろーりにんじん色のスープがよく映えています。
ごくっ。
じゃがいもは、とろんとろんのスープに。ごくごく。
真っ赤なトマトは、さらさらスープに。さらさら。
ひんやりスープもふわふわスープもありますよ。
でもやっぱり大本命はとうもろこし!
とろっとろのスープに変身、そこに…ちゃぽん。
スープにつけて食べたいものといったら、やっぱり「あれ」ですよね。
次から次へと美味しそうな野菜とスープが登場するこの絵本を作っているのは、彦坂有紀さん、もりといずみさんによるユニット「彦坂木版工房」。そう、リアルすぎてお腹が空く!と話題になった『パン どうぞ』の作者です。パン、ケーキ、コロッケと続いて、最新作はスープ。もちろん全て木版画です。
一見するとわからないのですが、真っ赤に熟れたトマトも、深みのある緑が味わい深いほうれんそうも、つぶつぶとうもろこしも、よーく見ると木肌の模様がうっすらと見えてきて、確かに木版画だとわかるのです。特に圧巻なのは、スープにフランスパンが浸かっている場面。なんでも、スープの箇所は版木をしっとりとさせ、パンの箇所はカラッとさせて刷っているのだとか! 質感の違いもみどころのひとつです。
とはいえ、子どもたちには細かい説明は必要ありませんよね。
美しく変身した絵本のスープを一緒にごっくん。
実際に食卓でもごっくん。
親子で心からあたたまってくださいね。
(磯崎 園子 絵本ナビ編集長)
魔法を最大限に美しく見せてくれるのがこの絵本。
子どもたちだって、この魅惑的な食べ物の仕組みを本能的に理解できちゃいますよね。
今だったらさらさら飲めるトマトスープが好みかな。ふわふわのほうれん草スープもからだに良さそうだし、カリっと焼いたパンをつけて食べるのも捨てがたい。大人になったものです。
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磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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