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絵本で伸ばそう!これからの子どもに求められる力

読み聞かせがつらいパパママへ

絵本には、子どもに働きかける様々な力が備わっています。絵本がきっかけで、新しいことにチャレンジする気持ちを持てたり、苦手なことに取り組もうと思えたりもします。子どもたちの世界を楽しく広げてくれる絵本は、子育て中のパパママにとっても、大きな味方になってくれること間違いなしです!

この連載では、とくに「これからの時代に必要とされる力」にフォーカスして、それぞれの力について「絵本でこんなふうにアプローチしてみては?」というご提案をしていきたいと思います。

ちょっと番外編・どうする? 「つらくない」 読み聞かせ

これまでの連載では「この絵本の読み聞かせは、こんな力につながるよ!」という内容をご紹介してきましたが、今回は、ちょっと番外編です。

最近、「9割のパパママ、読み聞かせがつらい」というニュースを見ました。そのほかにも、「読み聞かせがいいのはわかってるけど、できない。すごくプレッシャー」という意見も聞いたことがあります。それを聞いたとき、私も「わかるー!」とすごく共感してしまいました。

パパママたちは、毎日忙しくて、家に帰ったら夕ご飯にお風呂に明日の用意に、フル回転。布団に入ったらもう眠くてたまらないのに、読み聞かせ……。私も疲れて眠くてふらふらの頭で文章を追っていて訳がわからなくなり、気づけば「おかあさん、同じページ何度もしゃべってるー」なんて言われたことも多々あります。その頃は、すっごくつらかったです。今となっては、「無理してやるもんじゃない……」と思うようになりましたが、やらないことにも罪悪感を感じてしまうんですよね。

これまで、いろいろと絵本をご紹介してきましたが、実のところ私もそこまで真面目にやっているわけではありません。ただ、子どもを見ているとやっぱり「やらないよりはやった方がいい」という実感もあります。

そこで、嫌々やるよりは、ちょっとした工夫で細く長く読み聞かせを続けられる、そんなライフハック的読み聞かせにおススメの絵本と裏技を、今回はご紹介したいと思います。

楽に読める絵本を選ぼう!

まずは、楽に読める絵本を選びましょう! 読み聞かせが寝かしつけのルーティンに組み込まれているご家庭も多いかと思いますが、子どもたちが寝つくまで読み続けるのは大変です。そこで、たくさん読んであげなくても、文章少なめで勢いで読めて、「あー、楽しかったね、さあ寝よう」と終われる絵本を、ガンと1冊だけ読んで寝てしまいましょう!

親子でストレス発散

おおごえずかん

「あっ!はちがとまってるよ!」

思わず声に出したくなる楽しい表現で「あいうえお」を覚えよう!
「あ」から「ん」まで、「あいうえお」全ての文字ではじまる表現の絵本です。表現にちなんだシンプルで暖かいイラストが、親子の笑いをさそいます。親子いっしょに明るく元気よく、大きな声で読んでみてください!

疲れてしまって、もう頭も舌も回らない、そんなときにはこの絵本です。なんと「あー!」から「んー!」まで、51音叫ぶだけ。頭が働いていなくても読めます。気持ちが落ちているときだって、ストレス発散できちゃいます。

自然に叫べる絶妙なシチュエーションが描かれていますので、パパママも反射的に声を出せますし、読んで確認していただければなのですが、子どもたちが大好きな「おしり」が登場するシチュエーションも盛りだくさん。子どもは笑って、大人もすっきり。おたがい気持ちよくなれる絵本です。

叫び声で51音もあるのかしら?と読み始めは思ってしまいましたが、例えば「ぬ」なら「ぬおー!」など、「うまいっ」と感心してしまうパターンもたくさん、非常に楽しい絵本です。

勢いで読んでしまえ!

むしプロ

カブト対クワガタ!夢の対決のはじまり~!!ここは真夏のオオクヌギスタジアム。カブト組とクワガタ組は、あま~い木の蜜を巡って大バトル。

疲れているときに長めの絵本を読むのはつらいと思います。ですが、この絵本なら、ノリノリで読み切ることができますよ。「むしプロ」とは虫のプロレスを略した言葉。カブトムシとクワガタの五番勝負が絵本で繰り広げられ、全編を通してプロレス実況調に読むことができます。プロレス実況でおなじみの「あーっと!」や「おーっと!」も随所に出てきて一緒に叫べば眠気もふっとびます。ふだんプロレスになじみのない子でも、パパママの「あーっと!」「おーっと!」というふだん見ない姿を見るだけで大受けです。そもそも読み聞かせは子どもに受けないとテンションが下がってしまうものですが、その点、この絵本はテッパンですのでぜひ読んでみてください。疲れていれば疲れているほど、振り切って読むことができる絵本ですよ!

語感に親もいやされる~

たぷの里

あの『夏がとまらない』のギャグ漫画家、
藤岡拓太郎の初めての絵本です。
何度読んでも笑える不思議なリズムです。

擬音語の絵本は子どもたちが大好きですよね。絵本の中でも擬音語だけひろって「ガガガ―、ゴゴ―、キキ―!」と叫んではニコニコしている子もよく見ます。

そして、この絵本も擬音語たくさん。たぷたぷのお肉がたまらない力士「たぷの里」のお肉が「たぷ、たぷ」としているだけのシュールで楽しい絵本です。子どもといっしょに「たぷ」「たぷ」と言うだけでも、その語感にとっても癒されます。

文字も少なく、基本的に「たぷ」なので、とっても楽で気持ちいい絵本です。

とりあえず歌おう!

絵本を「読む」と思うと負担感を持ってしまいますが、歌を歌ってあげるだけでもじゅうぶんコミュニケーションになりますし、疲れて頭が働かなくても歌であれば口から自然に出てきてくれます。そんな歌絵本をご紹介していきます。

文字を追わなくても歌える童謡絵本

おばけなんてないさ

 

誰もが歌ったことのある童謡「オバケなんてないさ」が、せなけいこのユーモアあふれる貼り絵で楽しい絵本になりました。楽譜つき。

子どもたちの大好きな歌「おばけなんてないさ」の絵本です。歌詞に絵がついているので、子どもは画面からも楽しめますし、パパママは「おばけなんてないさーおばけなんてうそさー」と歌ってあげるだけでOKです。もちろん、絵本なしにただ歌ってあげるだけのときもありますが、絵本だと子どもは歌も絵も両方楽しめるので、集中して聞いてくれる率も高いです。歌詞もストーリー性があって、歌っているパパママも楽しい一石二鳥の絵本です。

節をつけて自然に歌える絵本

おみせやさんでくださいな!

子どもたちの大好きな「おかいもの」絵本です。動物たちの町の「ふれあい商店街」には37のお店があります。クマのパンやさん、タヌキのとうふやさん、トラの花屋さんなど、楽しい愉快なお店です。品物がしっかり描き込まれていて、どれを買おうかと迷いそうです。しかも、ちょっと隠れたストーリーがあって、最後に嬉しい驚きが待っています。探し物をする楽しみもあり、1冊でいろいろ楽しめる絵本です。

読み聞かせがつらいという意見の中には、「感情をこめて読むことに慣れない」というものもあります。読み聞かせは感情をこめて読まなくても問題ありませんが、どう読んでいいかわからないと読み聞かせのハードルも上がってしまいますよね。

そんなとき、『あっちゃんあがつく たべものあいうえお』でおなじみ、さいとうしのぶさんの「ことばあそびえほん」シリーズは、とってもありがたーいシリーズです。節をつけて歌いながら読めるので気負いなくサラサラと読み進められますし、とってもテンポがいいんです。特にこの『おみせやさんでくださいな』は、楽しいお店やさんがたくさん出てきて、それを見るだけでも楽しいですし、パパママが疲れているときには、「今日は〇〇やさんまでね」と区切って読むこともできる、満足度の高い1冊です。

究極的には「読み聞かせない」?!

読み聞かせが大変ならば、まずは、「本という存在を意識する」ことから始めてもよいのではないでしょうか? 読み聞かせる余裕がなければ、究極的には「読み聞かせない」。一人で読める、もしくは遊べる絵本を使ってとにかく「本に触れる」ことを習慣にすればよいのです。

ひとりで遊べる、しかけ絵本

お?かお!

口を動かすと目がキョロキョロ。ベロをひっぱり、あっかんべえ。鼻を動かすと目が閉じて「おやすみなさい」。顔の一部を動かすと、表情がかわる、これまでになかった「顔のしかけ絵本」。

子どもが小さい頃手にとり、今も大変お世話になっている絵本です。顔のいろいろなパーツを動かして遊べるしかけ絵本で、ちょっとパーツをいじるだけでも表情が変わって、何度やってもいつまでやっても飽きずに楽しめます。文章もついていますが、触るだけでも楽しくとても丈夫できているので、0歳からでもお座りができるようになれば楽しく遊べますよ。兄弟へ読み聞かせをするときに、本の内容を上の子に合わせると下の子がついていけないという問題があると思いますが、私はそんなときに、下の子にこの絵本を触らせて待ってもらったりもしました。

同じシリーズに『ころりん・ぱ!』という絵本もありますが、こちらは絵本の中にあるたまを指でころころ転がして遊べ、指でいろいろなルートをたどることで方向感覚も養えます。

手先、指先を使った遊びは発達にもよいですし、いろいろな意味で大変大助かりなシリーズです。

めくって楽しい「かくれんぼ」しかけ絵本

のりものいろいろかくれんぼ

なにがかくれているのかな?―いろんな形のかたぬきページをめくると、かくれていたのりものが次々とあわられる楽しいしかけ絵本。

こちらも、一人でも楽しめるしかけ絵本です。いろいろな乗り物が画面の中にかくれんぼしていて、めくるとその姿が現れます。一人でパカパカとめくって遊んでも楽しいですし、親子で乗り物クイズをしても楽しめます。

この絵本は、赤ちゃんから楽しめるよう細部まで考え抜かれていて、色使いも形も分かりやすくすばらしいのですが、何より使われている言葉が、文字を覚え始めの1~2歳の子に内容も分量もぴったりなんです。うちの子が始めて声に出して読んだ絵本がこの絵本なのですが、何度も見ているうちに自然に口ずさむようになりました。

シリーズとなっていて、さまざまなかくれんぼが楽しめます。お子さんが興味のありそうなジャンルから選んで遊んでみてください。

じっくり遊べる、探し絵絵本

トミカをさがせ

ミニカーたちの旅がはじまったよ。まちのなかにはいろんな車が走っているね。ブック&タックのなかまたちはどこにいる? きみは見つけられるかな?

もう少し年齢が上がったら、“さがし絵”絵本も一人で楽しめるようになります。我が家は男の子で、早くからトミカにドハマりしましたので、この絵本シリーズは大重宝しました。

トミカの写真絵本となっていて、さまざまなシチュエーションからお題のトミカを探して遊べます。各画面で、働く車推しの画面もあればレーシングカー推しの画面などなど様々な車が所せましと並んでいて、トミカは本物の車を精巧に模して作られているので、見ているだけでも大満足です。

 そのほか、なぞなぞ絵本でも図鑑でも、その子の興味のあるものを自分で読んでもらえばいいのです。ときどき絵本の中のものを「これなに?」と質問されると思いますが、それに答えてあげるだけでも立派なコミュニケーションの時間になります。

そのほかにも、貼ってはがせるシール絵本や書いて消せる絵本など、子どもたちが自分で読んで遊べる絵本はたくさんあります。どんな形でも本は本。読み聞かせではなくたって、「本がある環境」を作っておくだけでも読書の習慣につながっていきます。疲れているときは無理せずこうした絵本を楽しんでもらいましょう。

読み聞かせを楽にする方法

読み聞かせ、できればやってあげたいと、たくさんのパパママが考えていると思います。でも、プレッシャーに考えないでください。食育もそうですが、最終的に帳尻を合わせればよいのだと思います。
例えば……
「毎日やらなくていい」
と思います。「毎日〇〇冊読みましょう」という指針もいろいろありますが、読めるときにたくさん読んであげればよいと思います。平日は無理せず寝て、お休みで余裕のあるときだけ読み聞かせをしてあげてもよいのではないでしょうか?
また、
「得意な人がやればいい」
とも思います。
読むことは誰もが得意というわけではありませんし、ママでもパパでも得意な方が担当したり、力を借りられるのならおじいちゃんおばあちゃんにお願いしたりしてもよいと思います。また、図書館や児童館、書店などでも定期的に読み聞かせ会があります。ふだん読まない意外な絵本に子どもが興味を示すかもしれません。今は、コロナ禍で中止しているところも多いですが、その分オンライン上の読み聞かせ会も増えています。
そして、読み聞かせは、
「いつでもどこでもいい」
はずです。
寝る前に読み聞かせと決めてしまうと、布団の上に座った時点でふらふらになってしまい、自分が沈没してしまうことも。朝でも昼でも、もう少し元気があって親子のタイミングのよい時に読み聞かせをしてみるのも一つの手です。
息子が保育園に通っていた時、お迎えの際、ベビーカーを対面式にし息子の上に絵本をのせて、読み聞かせしながらぶらぶらと帰ることもありました。「今読んでおけば夜は読まなくていいか」と、「家に帰ったらやることリスト」が少し減ってほっとした気持ちにもなりました。
子どもの側も、「今パパママとゆっくりしたいなあ」というタイミングがあると思います。お互いのタイミングの合ったときにたっぷり読んであげればよいと思います。

さいごに

読み聞かせは、「やらなければならない」と思うとよけい負担に感じますよね。私も、いろいろなところで「読み聞かせを習慣に」と聞いていましたし、仕事柄もあったので必死で読み聞かせていました。一番つらかったのが下の子の出産直後で、上の子に構ってあげるためにも読み聞かせはしてあげたいけれど、下の子の世話は待ったなしのてんてこまいです。しかもスクワットしながらでないと寝ない!という子でしたので、夜に眠くてしようがないままスクワットで寝かしつけながら上の子に絵本を持ってもらって立ちながら読み聞かせする……という、なんの荒行!という毎日でした。読み聞かせ後、気絶するように寝る日々が続いてようやく「ちょっと待て私」と無理があることに気づきました。必死で読み聞かせして、よけいくたびれて子どもにイライラしてしまうのでは本末転倒です。それ以降いろいろ手抜き技を試行錯誤して今に至ります。

 

それでもなぜ、読み聞かせを続けているかというと、「もうこの字が読めるの!」ですとか、「こんな本にも興味あるんだ」など、子どもの成長や特質に気づいて「おおっ」となる瞬間もまた、読み聞かせにはたくさんあるからなんですよね。

また、私は子育てへの不安が常にあるのですが、自分に照らし合わせて、「子どもの好きなことや向いていることさえ見つかれば人生なんとかなる」ということだけは実感しています。絵本は、それこそ世の中のあらゆるジャンルの学問・考え方が子どもに向けて書かれていますので、日々、「こんなことは興味あるかな? こんな方向性は好きかな?」と子どもに投入し、読み聞かせは観察実験の場と化しています。上の子は、比較的好き嫌いがはっきりしていて、トミカにはまった後、4歳くらいからはずっと恐竜にドはまりしているので、これを軸にして可能性をのばしていけばよいかなと思っています。下の子はまだまだ「これが好き」という部分は見えないので、この子の方向性を発掘すべくいろいろな絵本を読んであげる毎日です。

 

このように、読み聞かせの目的をどう考えるかでも、アプローチの方法はいろいろです。読み聞かせをコミュニケーションの一つと考えるのももちろんですし、読書習慣をつけさせたいという考え方もあり、ご家庭によって目的は千差万別かと思いますが、漠然と読み聞かせをするよりは目的やゴールがあった方が、読み聞かせに張り合いも出てくると思います。それぞれのご家庭にあった読み聞かせの方法を、ご紹介したやり方なども試しつつ、ぜひ探していってみてください。

徳永真紀(とくながまき)


児童書専門出版社にて絵本、読み物、紙芝居などの編集を行う。現在はフリーランスの児童書編集者。児童書制作グループ「らいおん」の一員として“らいおんbooks”という絵本レーベルの活動も行っている。6歳と3歳の男児の母。

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