【2023年版】小学6年生の夏の読書を応援! 読書感想文にも。
6年生の皆さん、本は好きですか?
6年生ぐらいになると、クラブ活動や塾やその他さまざまなことに忙しくて、とても本を読む時間なんてない! という声も聞こえてきそうですが、夏休みに読書感想文の宿題が出ると、なにか読まなきゃ……という気持ちになりますよね。本をまるごと読んで感想を書く。ちょっと面倒だな、うまく書けるかな、と後ろ向きの気持ちになってしまう人も多いかもしれません。この一見面倒だなと思われる読書感想文の宿題を乗り越える一番いい方法! それは本選びにあります。とにかく自分が好きだなと思う本や興味のあるテーマの本を選べば、だいぶ気持ちが楽になるはず!
2023年の絵本ナビ児童書ジャンルの夏のテーマは「本選びを楽しもう!」。
今夏、小学生の皆さんが面白い本と出会えるよう、新刊を中心に、選りすぐりの面白い本を学年別に紹介していきます。さらに一冊読んで気に入ったら、つぎに読む本に繋がるよう、同じ作家さんの本やテーマが共通している作品なども合わせて紹介していきますね。
小学生の皆さんが夏の間に、心に残る面白い本と一冊でも出会えるよう、応援します。
絵本ナビで紹介する「読書感想文におすすめの本」の選書のポイント
- テーマがはっきりしていて分かりやすい
- 読みやすい
- 表紙やタイトルに惹きがあり、読んでみたい! という気持ちになるもの
- 読み終えた時に心に残る何かがあること
の4点を重視して選書しています。
※本記事では、小学6年生向けとして3冊おすすめ作品を紹介しておりますが、無理なく読めそうなもの、逆に簡単すぎないものを選ぶことが一番大切です。小学6年生向けのおすすめ作品でピンとくるものがなかった時には、前後の学年(小学5年生向けや中学生向け)のおすすめ作品もチェックしてみてくださいね。
小学6年生の読書を応援! 読んでみたくなる本を探してみよう
『ガリバーのむすこ』(小学館)
小人の国リリパッドの様子がとにかく面白い!
どんなお話?
舞台は現代。家族や友人たちに囲まれてアフガニスタンで幸せな毎日を送っていたオマール少年は、戦争がやってきたことで生活が一変。難民となり、お母さんとともに、親戚の叔父さんがいるイギリスを目指します。しかしオマールがたどりついたのは、かつてガリバーが流れついた小人の国リリパット国でした。オマールは、島の住人たちにガリバーの息子だと思われ、歓待されるのですが……。三百年前に書かれた『ガリバー旅行記』と現実の難民問題を結びつけ、冒険物語を通して、難民問題を身近に感じさせてくれるお話。
注目ポイントは?
約300年近く前に書かれた『ガリバー旅行記』に出てくる小さな人たちの国リリパッドが舞台になったお話です。『ガリバー旅行記』のお話を知っていたらなお楽しめるでしょうし、知らなかったという人はこの本の後に『ガリバー旅行記』を読んでみるのも面白いかと思います。
この作品の面白さは、なんといってもリリパッド国で暮らす小さな人たちの可愛らしさや優しさ、その暮らしぶりと、この国に流れ着いたオマール少年との交流でしょうか。背が小さいことで悩んでいたオマールがここでは巨人と呼ばれるのも面白いところです。
オマール少年がリリパッド国にたどり着いてからしばらくは、明るく楽しい場面が続きます。体の大きさが全く違うオマール少年と小さな人たちがどんな風に交流するのか、楽しい挿絵とともに注目してみてくださいね。でも忘れてはいけないのは、オマールが戦禍で故郷を追われ、流れ着いたということ。ハラハラドキドキの冒険物語でありながらも根底には「難民問題」があります。誰ひとり知らない、言葉も通じない、文化も違う国でただひとりどうやって暮らしていくのかという不安や、途中で離れ離れになったお母さんが生きているのか心配するオマールの気持ちを想像すること、また、異質な他者を心から親切に受け入れるリリパッド国の姿勢など、実際に「難民」の話が身近にある私たちが学べることがたくさんあります。さらに、一見平和そうに見えるリリパッド国もまた悲しみの歴史を抱え、戦争の危機が直前に迫っています。人と人が争うことの発端にあるものについても考えるきっかけとなる一冊です。
つぎ、なにを読む? 同じ作者のマイケル・モーパーゴさんの本
『ラベンダーとソプラノ』(岩崎書店)
何に向けて頑張るのが正しいことなのだろう?
どんなお話?
小学六年生の真子が所属する合唱クラブは、「今年こそ金賞を」というプレッシャーで、先生や部長からの厳しい声がけの元、どんどん練習がハードに。不登校になる下級生も現れ、息が詰まりそうになっていく真子。しかし、ソプラノの美しい歌声を持つ同級生の朔に誘われて、商店街の合唱団の練習に参加するうちに、歌うことの楽しさを取り戻していきます。
注目ポイントは?
合唱コンクールの金賞をめざして、どんどん厳しくなる練習。合唱部内の空気や人間関係もどんどん悪くなっていきます。いい賞をとるために頑張りたい先生や部長と、そこに疑問を持ち始める真子。さてあなたなら、どちらに共感しますか?
さらに、合唱部の練習と、商店街の合唱団の練習の違いや所属している人との考え方の違いも注目どころです。商店街の合唱団には、同級生でソプラノの声が美しい朔をはじめとして、本屋の店主や、一見冷たそうな中学生女子、お肉屋さんのおじさん、おにぎり屋の店員の女性たちなど、年齢や性別もさまざまな人たちが所属していて、それぞれに、真子に気づきを与えてくれます。
「頑張る」ということに対して、考えるきっかけになりそうな言葉がたくさんある中で、とくに同級生の朔の「楽しくやるってことを、頑張らなくていいってことだと思ってるよね。」という言葉は考えるヒントがたくさん詰まっているように感じます。今頑張っていることに対して、何のために頑張るのか、頑張っているのかを見つめてみると、いろいろな感想が浮かんでくるのではないでしょうか。
つぎ、なにを読む? クラブ活動、課外活動をめぐるお話
『だれもみえない教室で』(講談社)
こんな気持ちになったことはある? 子どもの気持ちを代弁するような一冊
どんなお話?
ある雨の日、家に帰った清也のランドセルに入っていたのは小さな茶色い粒。生臭いような匂いがして、それは金魚のエサでした。清也はすぐに、放課後、教室に残っていた颯人と、連と歩、幸太郎の仕業かも……と思い当たります。もともと仲が良かった五人でしたが、最近は颯人との関係がぎくしゃくしていたのです。けれども三年生から仲の良かった連もその場にいたのになぜ止めてくれなかったのか、そのことが一番清也を苦しめます。一方で連も止めなかった自分を責め、どうにか清也に謝って許してほしいと思うのでした。
「いじめ」の被害者になってしまった清也。加害者となった颯人、連、歩、幸太郎、このうち、連と歩と幸太郎は傍観者でもあるでしょう。さらに、なにかおかしい、と気づきながら教室を出てしまったクラスメイトの乃亜も傍観者のひとりです。本書では、金魚のエサがランドセルに入れられた事件に対して、被害者、加害者、傍観者の立場の思いが綴られていきます。
また、忙しさや体面からコトを大きくしないようにする学校側や担任の先生の思いも交錯し、大人たちは、本当には解決していないのに解決したようにコトを運んでいきます。それぞれが救われる道はいったいどこにあるのでしょうか……。
注目ポイントは?
全体は221ページありますが、14章に分かれていて、連の目線で語られる「オレSIDE」、清也の目線で語られる「ぼくSIDE」、担任の原島先生の目線で語られる「先生SIDE」、颯斗の目線で語られる「もう一人のオレSIDE」で、それぞれの気持ちを聞いていくように読めるので、展開が気になってどんどんページをめくってしまうでしょう。連、清也、渉、幸太郎、颯人、乃亜、はたして自分は誰にいちばん近いでしょう。また、子どもたちだけでなく、先生の立場で語られる内容にはなにか気づくことがいろいろあるかもしれません。
どの登場人物に共感するかは人それぞれだと思いますが、きっと現実の学校生活や友達関係、先生のことなどが頭に浮かんで、いろいろな気持ちになりながら読んでいくことでしょう。たくさん感情が沸き上がってくる分、感想文に書きたいことがどんどん出てくるという人もいるでしょうし、一方で、身近にあるかもしれない問題だからこそ、文章にまとめるのが難しいという人もいると思います。
本書の中に出てくる、大人が子どもたちに聞き取りをする場面や、大人が子どもたちを仲直りさせる場面などには、そうじゃない、と共感するところがたくさんあるのではないかと思います。そして現実の世界でもきっと、そうじゃない、という思いを抱いたことがあるのでは? だからこそ本書のような作品で、自分が感じるもやもやの原因がどこにあるのかを見つけてほしいと思います。
いかがでしたか。
高学年向けの作品は、描かれる状況も複雑になり、それに伴って、さまざまな感情が描かれていきます。だからこそ、なんとなく感じていたもやもやの原因がどこにあったのかにふと気づける場面と出会えたり、うまく言葉にできなかった感情を代弁してくれるかのような場面と出会えることがあります。そんな場面に出会えたら、きっと「本って自分の味方なんだ!」ということが感じられるはず。今夏、どうか良い出会いがありますように。
秋山朋恵(あきやま ともえ)
絵本ナビ 副編集長・児童書主担当。書店の児童書仕入れ担当、小学校の図書室司書(8年)を経て、2013年より絵本情報サイト「絵本ナビ」に勤務。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選び、さまざまな切り口で紹介している。編著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。
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