【今週の今日の一冊】読みくらべで味わう「クリスマスのまえのよる」
「クリスマスのまえのよる」、どんな奇跡が起こるのでしょう? クリスマス・イブをテーマにした絵本は、世界でも日本でもたくさん作られています。代表的なものが、クレメント・クラーク・ムーアによる詩『クリスマスのまえのばん』。約200年近く前にアメリカで生まれ、その後世界中の人々に愛されている有名な詩です。そしてこの詩が、今私たちが知るところのサンタクロースのイメージをかたち作ったといわれています。
今週は、「クリスマスのまえのよる」をテーマにして、さまざまな描き方をされている絵本をご紹介していきます。読みくらべをしてみるのも楽しいですし、もちろんオリジナルのお話も一緒に味わってみてくださいね。
2023年12月11日から12月17日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
12月11日 世界中で200年愛される名詩のあたらしい絵本
月曜日は『クリスマスのまえのよる』
これまで数々のイラストレーターたちが絵をつけてきたクレメント・C・ムーアの詩に、現代的でポップなイラストをつけた新作クリスマス絵本をお届けします。絵を手がけたのは、ニューヨークで活躍するデザインスタジオ。詩の新訳は、ミュージシャンの坂本美雨さんです。思わず声に出して読みたくなるリズミカルな言葉で、古典に新たな力を吹き込んでいただきました。
大人も子どももともに、サンタクロースがやってくるのを楽しみに待っている「クリスマスのまえのよる」の世界が、夢をおおきくふくらませてくれます。
12月12日 わるい子にはサンタさん、来ないのかしら…
火曜日は『よるくま クリスマスのまえのよる』
あしたは楽しいクリスマス。
でも、ぼくは心配でねむれない。
だって、サンタさんは「いいこ」にしか来ないんだもん。
ぼくは……
ちょっぴり不安な夜を過ごすぼくのところにやってきたのは、「よるくま」。
夜みたいに黒くて、胸にはお月さまがひかっている、ぼくの可愛いともだち。
だけど、よるくまはサンタさんを知らないって言うのです。
「おかしいな、クマの子にはサンタさん、こないのかな」
そこで、ぼくはよるくまにサンタさんのかわりになることを思いつきます。
クリスマスツリーの飾りの中から、彼が選んだのは、おうちと、ちいさなイエスさま。
それからひこうきも。よるくまに手渡したその瞬間、あたりが真っ暗になり。
よるくまとぼくが一緒に過ごす、ふしぎで素敵な夜の時間。
そこにはあるのは優しさと、甘さと、あたたかさと……
あ、ぼくがもどりたい場所は!
酒井駒子さんが描く、愛らしく繊細なぼくとよるくまの交流。クリスマスの飾りや夜の風景の美しさ。それらも相まって、読み終われば、とっても幸せな気持ちになって、安心して眠りにつけるのです。クリスマスの夜、親子で一緒に読んでくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者の声より
悪い子「ぼく」の不安な気持ちが、よるくまの優しさで癒されて行く様子がとても上手に描かれています。
ああ、子どもの頃ってこんな風に不安な気持ちを抱いて眠ることがあったなあと自分の幼少時代を思い出しました。そして母となった今、母親が抱きしめてくれることが子どもにはこんなに幸せなんだ、と教えられました。
(owlpostさん 30代・ママ 男の子1歳)
12月13日 くつしたに入るようにとデザインされた絵本
水曜日は『クリスマスのまえのよる』
クレメント・C・ムーアは、アメリカの神学者。いまから188年も前の1823年のクリスマス、病気がちだった娘を笑顔にしようと、この詩を書きました。いまでは世界中の常識ともなった、赤い服に白いひげ、ちょっと太った笑顔のサンタクロースのイメージは、この詩によって世界中に知られるようになったのです。
絵を描いたのは30年ほど前に亡くなった人気絵本作家のロジャー・デュボアザン。斬新でモダンな色使いとあたたかなタッチで、この絵本がアメリカで人気を博したのは1954年のことです。イブの夜にプレゼントをいれるくつしたに入るようにとデザインされた縦長サイズで、まさにクリスマスプレゼントのための絵本。日本でこれまで紹介されていなかったことが、奇跡のよう。
宝石のようなクリスマス絵本を、ぜひ、愛する人への贈り物として!
読者の声より
お父さんは見てしまいました!鈴の音を鳴らしながら屋根の上に降りてきたそり。煙突から降りてきたすすだらけのおじいさん。目が合うとウィンクして出て行くサンタクロース。本当に目の前で見ているかのような雰囲気にさせられました。クリスマスにピッタリのお話でした。
(morimoriさん 30代・ママ)
12月14日 長年愛され続ける名詩をオルゴールの音色と共に
木曜日は『オルゴールしかけえほん クリスマスのまえのよる』
ネジを巻き物語の世界へ。
「そとで なにやら 音がして
とうさん ベッドを とびだした」
クリスマスのまえのよる、父親がサンタクロースに出くわします。
リズミカルな詩とチャーミングなサンタが印象的で
長年愛され続ける名詩をオルゴールの音色と共に楽しめます。
ネジを巻くと「ヒイラギ飾ろう」が流れます。
読者の声より
クリスマスの前の夜の絵本は我が家も1冊ほしくて、クリスマスプレゼントの1つとして子どもに贈ったことがあります。
クリスマスシーズンにぴったりなお話で、サンタクロースを想像させるにもまさにぴったりなストーリーですよね。こちらはオルゴールしかけ絵本なので、また豪華ですね!!
(まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子12歳)
12月15日 ターシャが80歳で描いた色鮮やかで美しい世界
金曜日は『クリスマスのまえのばん』
イブの夜、サンタは空からやってきた! サンタのイメージを定着させた有名な詩を美しい絵本に。1999年にターシャが全面的に絵を描き直した新版。静かな雪のイブのようすをオールカラーで情感豊かに描いた美しい絵本です。
読者の声より
テューダーの絵が大好きなので、この本はどうかな、と見てみたら。なんとも美しい!!!
一年中で、クリスマスの夜にだけ感じる特別な神聖な静寂が、見事に表現された世界。子ども達が寝静まった後に、そっとページを開いたのですが、心はもうクリスマス。子どもの頃、クリスマスの前の晩に感じていたことが、具現化されて絵本になったようで、一気にひき込まれました。
(ポピンズさん 30代・ママ 女の子7歳、男の子3歳)
12月16日 現代の要素も加わって、美しいクリスマス絵本に…
土曜日は『サンタクロースとあったよる』
その日はクリスマス・イヴ。
煙突を通って暖炉に現れた、白ひげの太ったおじいさん。
もちろん彼は、サンタクロース!
背中におぶった袋のなかには、あふれんばかりのプレゼント。
暖炉のそばの靴下へ、プレゼントをつめ姿を消す。
夜空をかけるトナカイと、彼らの引くそりは次の街へ─
クリスマス・イヴと聞けばだれしもが描くそうした風景は、おおよそ200年前に発表されたとある一編の詩がもとになっています。
その詩が1823年のクリスマスイヴのさらに前夜、新聞に掲載されると、たちまち評判となり世界中に広まって、誰しもが知る現在のサンタクロースとクリスマスの姿を確立しました。
そんな古典的名詩をもとに、お手本のようなクリスマスを描いた本作。
にじむ暖炉の灯り、ふかふかのおおきな赤いベッド、緑色のカーテン、にぎやかに飾りつけられた部屋─
そうしたクリスマスカラーで彩られたページと、かたや耳にしんと響いてきそうなほどの静かな夜の雪景色の対比がとてもあざやか!
それが絵のふわふわとやわらかなタッチと相まって、それぞれのページから皮膚に染み入るようなリアリティをもって冬の温度が伝わってきます。
だれもがイメージするクリスマスそのままの光景に、かつて抱いたクリスマスイヴのなつかしいわくわくが、胸によみがえることまちがいなしです。
本作の文中ではカットされているのですが、原作の詩に登場する「ネズミ」たちもその姿はしっかりと描かれていて、やわらかな画風で描かれた彼らの愛らしいことといったらありません。
サンタクロースの生き生きとした姿もさることながら、ネズミたちをはじめとした動物のかわいらしさも楽しい一冊です。
ところで、原作者であるクレメント・クラーク・ムーアさんに詩のインスピレーションを与えたのは、自分のそりの鈴の音だそうですよ。
ふと鳴った鈴の音のひとつから、世界中で愛されることになるクリスマスの光景が生まれたなんて、なんともロマンチックですね。
(堀井拓馬 小説家)
読者の声より
まずこの絵本、表紙のイラストから幸福感が漂ってきます。サンタクロースを目撃するのは、この絵本の中では小さな子(赤ちゃん)。
登場するサンタクロースも、赤い服に白い髭、私の想像するサンタクロースに近いものでした。一時的なものではなく、長く読めるクリスマス絵本を娘に買ってあげたく親の私が読みましたが、飽きのこない美しいイラストで素敵でした!
クレメントクラークムーアの詩での絵本は他も出ているので、読み比べてみるのも面白いと思いました。
(まゆみんみんさん 30代・ママ 女の子5歳)
12月17日 セントニコラスが登場するアメリカの古典絵本
日曜日は『クリスマスのまえのばん』
「クリスマスの前の晩のことでした」で始まるクレメント・ムーアの物語詩。1822年のクリスマス前夜、ムーアは子どもたちを喜ばせようと『セントニコラスの訪れ』と題する詩を書き、この詩が後に『クリスマスの前の晩』(T was The Night Before Christmas)としてよく知られる米国の古典となりました。今でもクリスマスが近づくとあちらこちらで耳にする口承詩には、クリスマス前夜のワクワクした喜びと不思議な神秘が満ちています。
イラストは1902年、『オズの魔法使い』の挿絵で知られるウィリアム・W・デンスロウが姪のために描き上げたもの。ちょっぴり劇画風でコミカルなスタイルは、100年前の作品とはいえ逆にモダンな印象を与えます。
時代を感じさせる丁寧な布の装丁からは、作り手のまごころが伝わってきます。
読者の声より
クレメント・ムーアの「クリスマスのまえのばん」は、いろんな人が絵本にしているクリスマス絵本の定番でしょうか?
訳の違いも面白いのですが、原詩を見ると、渡辺茂男さんの訳が一番オリジナルに近いように思います。そして、このデンスロウ版の特徴は何といっても絵の楽しさでしょう。サービス満点で、クリスマスが楽しくなると思います。サンタクロースのコスチュームがグリーンなのも、何だか新鮮です。
(ヒラP21さん 60代・パパ )
合わせておすすすめ!「クリスマスのまえのよる」
選書・文:磯崎園子(絵本ナビ編集長)
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