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月別児童書ランキングBEST10

【ランキング】2024年4月の児童書人気ランキング発表&おすすめ新刊紹介

2024年4月の児童書人気ランキングBEST10【2024/4/1~4/30】

今、どんな児童書が読まれ、売れているのでしょう。この記事では、絵本ナビの1ケ月の売上ランキングから、人気の児童書情報をお伝えします。さて、この4月は、4/15から開催中の「2024 絵本ナビ×岩波少年文庫 名作フェア」が好評で、岩波少年文庫がぞくぞくとランキング入り!ちょっと珍しいベスト10のラインナップとなりました。その中でもどんなタイトルが人気があったのでしょう。また、2024年4月に刊行された注目の新刊も合わせてご紹介します。

もしあなたの時間が、知らないあいだに盗まれていたとしたら? 「忙しい」「時間がない」と感じている人ほど手にとりたい名作!

岩波少年文庫 127 モモ

赤ちゃんからお年寄りまで、すべての人間が平等に持っている24時間。自分の時間を自由に使えるのは当たり前? でも、もし、あなたの時間が、知らないあいだに盗まれていたとしたら……?

どこからともなくやって来て、町の円形劇場の廃墟に住みついたモモ。みすぼらしい服装に、ぼさぼさの巻き毛をした小さな女の子モモは、豊かな想像力と、特別な力を持っていました。モモに話を聞いてもらうと、ふしぎなことに悩みがたちどころに解決してしまうのです。

ある日、町に灰色の男たちが現われてから、すべてが変わりはじめます。「時間貯蓄銀行」からやって来た彼らの目的は、人間の時間を盗むこと。人々は時間を節約するため、せかせかと生活をするようになり、人生を楽しむことを忘れてしまいます。節約した時間は盗まれているとも知らず……。異変に気づいたモモは、みんなに注意をしようとしますが、灰色の男たちに狙われるはめになります。

不気味で恐ろしい灰色の男たちに、たったひとりで立ち向かうモモ。彼女をひとりぼっちにしようとする時間泥棒たちのずるがしこい作戦の数々! いったいどうなっちゃうの? と、予想できない展開にハラハラドキドキ、目が離せません。そんなモモに手を差しのべるのは、時間をつかさどる不思議な老人マイスター・ホラと、ちょっと先の未来を見通せるカメのカシオペイア。彼らとモモとの哲学的なやりとりは、私たちに対する問いかけであり、「時間とは日々の生活であり、その人自身である」という真理を教えてもくれます。そして疲れてしまったモモの心を、温かいもので満たしてくれるのが、黄金色のクロワッサンとホットチョコレート! この最高の組み合わせは絶対に忘れられません。

「モモのところに行ってごらん!」困ったことがあるとき、人々はこう言います。モモは、生きていく上で何が一番大切か、何を守るべきかを知っているのです――友だち、想像力、自由。遊ぶ時、モモと子どもたちは想像力を全開にして驚異の大冒険に乗り出します。その興奮を、みなさんもぜひ一緒に体感してください。「時間がない」「そんなの役にたたない」なんて口にしがちな、忙しがっているすべての子どもと大人に読んでもらいたい一冊です。この物語を読めば、時間に対する考え方が変わってしまうかもしれません。

ネートと一緒にナゾを解こう! シリーズは全部で17巻!

ぼくはめいたんてい(1)

1982年の発売以来、たくさんの子どもたちに愛され、読み継がれてきた「ぼくはめいたんてい」シリーズの第1巻目。マージョリー・W・シャーマットさんによる全17巻となるこちらのシリーズは、5歳ぐらいから小学校低学年の子どもたちにちょうど良いハラハラさで、子どもたちがはじめて物語の楽しさに出会えるシリーズでもあります。つぎつぎにネートに降りかかるナゾ解きの面白さはもちろんのこと、巻ごとに増えていく個性的な登場人物、ネートからママへの置き手紙の内容など、読めば読むほど多くの楽しみをも発見できるでしょう。

すべての漢字にふりがながついているので、はじめての読み物としてもぴったり。ひとり読みに移る前に、まずは読んであげながら親子で一緒にナゾ解きを楽しんでみるのもいいですね。シーモントさんの温かくユーモアたっぷりの挿絵と、訳者の小宮由さんの柔らかな語り口も、子どもたちの読書をやさしく応援してくれます。お話の最後には「めいたんていのこころえ」もついていて、もし周りでなにかナゾが起きた時の役に立つかも!? さあ、ネートとどんどんナゾを解いて、一緒に名探偵になろう!

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=11928 楽しく個性的な登場人物がいっぱい!

好きな巻から読んでも!(17巻だけは最後に読むのがおすすめです)

わたしたちってふたごだったの!? 夏休みを過ごす子ども村ではじめて出会ったふたりが考えたある計画とは?

岩波少年文庫 ふたりのロッテ(改訳)

おたがいを知らずに別々の町で育ったふたごの姉妹ルイーゼとロッテ。ある夏、スイスの林間学校で偶然に出会ったふたりは、別れた両親を仲直りさせるために、大胆な計画をたてるのですが……。待望の新訳。

第4位 ふたりはともだち

がまくんとかえるくんのユーモラスで温かい友情物語

ふたりはともだち

仲良しのかえる、がまくんとかえるくん。ふたりの間で繰り広げられるのは、濃くて、可笑しくて、ちょっぴり切ない……様々な愛すべきエピソード。アーノルド・ローベルの「がまくんとかえるくん」シリーズは幼年童話の傑作として、子どもから大人まで、たくさんの人たちに40年以上も愛され続けています。

そのシリーズ第1作目が『ふたりはともだち』、5つのお話が収録されています。

春が来たからと大急ぎでがまくんの家に走っていき、「おきなよ!」と大きな声で呼びたてるかえるくん。お日さまがきらきらして、雪も溶け、新しい一年がはじまったかと思うと、いてもたってもいられないのです。ところが、がまくんは布団の中。もう少し寝ていたいのです。11月から眠っているがまくんは「5月半ば頃にまた起こしてくれたまえよ。」なんて言うのです。そこで、かえるくんは……?

がまくんを外に連れ出して遊ぶためなら頭の回転だって早くなるかえるくんと、カレンダーに合わせて簡単に5月だと思い込んでしまうがまくん。最初のお話「はるがきた」で、幼さと可笑しさがたっぷり詰まったふたりのキャラクターを存分に味わうことができます。

続く「おはなし」と「なくしたボタン」では、それぞれのやり方でお互いを思いやっている様子(大いに巻き込みながらね)を、「すいえい」ではちょっぴりブラックな面をのぞかせつつ、思いっきり笑えるエピソードを披露してくれます。

すっかりふたりの世界観に夢中になった頃、登場するのが最後の「おてがみ」です。

悲しそうな顔で玄関にすわっているがまくん。なんでも「もらったことのないお手紙を待つ時間」なんだと言うのです。それを聞いたかえるくんは、がまくんに内緒でお手紙を書くことにします。ところが、配達を頼んだのがかたつむりくんだったので……。

国語の教科書に採用されたことで、今では多くの子どもたちに知られているのがこのお話。いずれ届くことも、その内容までもわかっているお手紙をじっと待つがまくんとかえるくん。その幸せそうな様子に、「手紙」の持つ力を感じずにはいられませんよね。

シリーズ4冊。がまくんとかえるくんのキャラクターを知れば知るほど、どのお話も読み返したくなる珠玉のエピソードばかり。日本では三木卓さんの翻訳で楽しむことができます。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=373

第5位 岩波少年文庫 飛ぶ教室

友だちや先生との深い心の結びつきがどんなに尊いものかを感じさせてくれる、ケストナーの名作。

岩波少年文庫 飛ぶ教室

ボクサー志望のマッツ,貧しくも秀才のマルティン,臆病なウーリ,詩人ジョニー,クールなゼバスティアーン.生いたちも性格もまったくちがう少年たちはそれぞれに,悩み,悲しみ,そしてあこがれを抱いています.寄宿学校でくり広げられる,涙と笑いがつまったクリスマスの物語.新訳.

第6位 岩波少年文庫 19 エーミールと三人のふたご

『エーミールと探偵たち』の続編。再会した仲間たちが巻きこまれる今度の事件は?

岩波少年文庫 19 エーミールと三人のふたご

どろぼうを追跡という少年たちの大活躍から2年。エーミールはふたたびベルリンをたずね、仲間たちと再会する。が巻きこまれる今度の事件は? 「エーミールと探偵たち」の続編。

第7位 岩波少年文庫 みどりのゆび

自分の頭で考えること、行動すること、自分にできる方法で周囲に希望を与えつづけること。大切なメッセージがたくさん込められた一冊

岩波少年文庫 みどりのゆび

やさしい両親に愛され、何不自由なく育ったチト少年の指には、不思議な力がありました。彼は、どこかに触れるたび、そこに落ちていた種を芽吹かせ、花を咲かせることができる「みどりのゆび」を持っていたのです。それだけではなく、とてもかしこく、物事の本質を見抜いてしまう子どもです。しかし、決まりきった考えや古い考え方にとらわれた大人たちは、「ほかの子どもと同じじゃない」と心配するのです。

悲しみや貧しさ、苦しさを見るたびに、チト少年はなにかをせずにはいられません。気がめいるような刑務所に花を咲かせ、囚人たちに感動する心と、草木を育てる楽しさを呼び覚まします。病院で出会った病気の少女を花で包み、笑顔と生きる喜びをもたらします。動物園では動物たちのふるさとの植物で檻をいっぱいにします。やがて、自分の愛するお父さんが武器をつくっている商人だと知ったチト少年は……。

本書のタイトルになっている「みどりのゆび(Green fingers)」という言葉は、草木を上手に育てる人のことを言う時に使います。枯れかけた植物をよみがえらせたり、見事なお花を咲かせたり。みなさんの身近にも、みどりのゆびを持つ人がいるのではないでしょうか。花や緑は、人を幸せな気持ちにしますよね。だから、チト少年は、世の中をもっとよくするには、花を咲かせればいいと考えます。えっ、それだけ!? と思われるかもしれませんが、意外なところに花が咲くことによって、町の外観や制度、そして人の気持ちまでもが、いい方向に変わっていくのです。

チト少年が何かを知るたびに抱く疑問は、シンプルで根本的で、心を深く揺さぶります。自分の頭で考えること、行動すること、自分にできる方法で周囲に希望を与えつづけること……。チト少年の姿を通して、人間が生きていく上で、忘れがちだけれど、忘れてはならない大切なものがたくさんつまった物語です。

「どうしてこの規則があるの?」「どうしてみんな同じじゃないといけないの?」こんな疑問を抱いた子どもたちに、ぜひこの本を手にとってもらいたいです。そして、自分にとっての「みどりのゆび」ってなんだろう? と、ゆっくり考えてみるのも素敵なことではないでしょうか。

第8位は、同数の売れで4タイトルが並びました。

第8位 岩波少年文庫 510 科学と科学者のはなし 寺田寅彦エッセイ集

身近なありふれた物の中にも、さまざまな科学の原理や法則が潜んでいる。

岩波少年文庫 510 科学と科学者のはなし 寺田寅彦エッセイ集

電車の混雑には法則があるか? 虫たちはいったい何を考えているのか? 身近な自然や世の中の出来事を、細やかに観察しながら書きつづった明治の物理学者による科学エッセイ。

第8位 岩波少年文庫 18 エーミールと探偵たち

ベルリンの街を舞台に、エーミールと少年たちがお金を盗んだ犯人をつかまえる大騒動!

岩波少年文庫 18 エーミールと探偵たち

おばあちゃんをたずねる途中の列車で、大切なお金を盗られてしまったエーミール。ベルリンの街を舞台に、少年たちが知恵をあわせて犯人をつかまえる大騒動がくりひろげられます。

第8位 岩波少年文庫 60 点子ちゃんとアントン

お金持ちの点子ちゃんと貧しいアントン。それぞれの悩みを持ちながらも明るく勇敢に解決していきます。

岩波少年文庫 60 点子ちゃんとアントン

お金持ちの両親の目を盗んで、夜おそく街角でマッチ売りをするおちゃめな点子ちゃんと、おかあさん思いの貧しいアントン少年との友情物語。つぎつぎと思いがけない展開で、ユーモラスに人生を語ります。

第8位 みどりいろのたね

色や形は似ているけれどまったく違う種とあめ。土の中でユーモラスなやりとりが繰り広げられます。

みどりいろのたね

まあちゃんのクラスでは、畑に種をまくことになりました。
先生からひとり5こずつみどりいろの種をもらいます。まあちゃんはその種となめていたメロンあめを一緒に埋めてしまいました。

さて、ここは土の中。
ちっとも水をやらないなまけもののまあちゃんの種は、暑くてのどが渇いて「ぶつぶつ」「ぶーぶー」。
でもメロンあめだけは水をもらえなくったって平気です。
なんだか様子が変だと気づいた種たちは、メロンあめに向かって、
「へーんなやつ!」
けれどもメロンあめだって負けてはいません。
「ぼ、ぼくはとびきり うまい メロンあめさ!」

種たちとメロンあめは、にらみ合ってにらみ合って、そしてとうとう……!

土の中でのユーモラスなケンカ。色や形は似ているけれどまったく違う種とあめ。
そこに思わぬ助け合いが生まれて、とびきりの奇跡!?を起こします。

まあちゃんの種はいったいどうなっちゃうんだろう? そんな読者の心配を一気に吹き飛ばすスカっと気持ちの良い展開。たかどのほうこさんが描く世界は、なんてユーモラスで心をホッとさせてくれるのでしょう。

『まあちゃんのながいかみ』「つんつくせんせい」シリーズなどの絵本を楽しんできた親子の皆さん、たかどのほうこさんによる物語は、小学1年生から中高生、さらには大人まで、それぞれの年齢で楽しめる作品がたくさんあります。そんなたかどのほうこさんの物語世界への入り口に、まずこちらから手にとってみませんか。

さらに太田大八さんによる挿絵にもユーモアがいっぱい。種やメロンあめの表情に注目しながら読んでみて下さいね。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

2024年4月児童書ランキング第12位から20位にランクインしたのは……

おすすめ新刊読み物情報

最後に2024年4月の新刊から、おすすめの作品をご紹介します。

※対象年齢は目安です。

安房直子さんの新シリーズが刊行になりました。

安房直子さんの、小学校低学年から読みやすい作品に、人気のイラストレーターさんが挿絵をつけた絵ぶんこシリーズが刊行開始されました。全9巻の刊行予定だそう。お話と合わせて、各巻を担当されたイラストレーターさんが表現される安房直子さんの物語世界をじっくり味わいたいですね。

『安房直子 絵ぶんこ(1) ふろふき大根のゆうべ』『安房直子 絵ぶんこ(2) 猫の結婚式』

安房直子 絵ぶんこ(1) ふろふき大根のゆうべ

安房直子絵ぶんこシリーズ第1弾!
さむいさむい夕ぐれどき、峠の茶店の茂平さんは、山道で出会ったふしぎなイノシシにほりたての大根をわけてあげました。するとその晩……。
こころがぽっとあたたかくなる、やさしい童話集。全9巻刊行予定です。   

安房直子 絵ぶんこ(2) 猫の結婚式

のどかな日曜日の朝のこと。新聞を読んでいると、のら猫のギンが結婚式の招待状をとどけにきました。「じつは、こんど結婚することになりまして」……さて、そのお相手は?ユーモアあふれる語り口と読後の余韻が心地いい!心がぽっとあたたかくなるやさしい童話シリーズ、第2弾。 

小学1、2年生向けの新刊

フランスに住んでいるアンリくんと仲良しのねこの楽しいお話。『こんにちは、アンリくん!』の続巻です。

アンリくん、どうぶつ だいすき

アンリくんは、フランスにすんでいます。
なかよしのねこのミシェルくんも、
同じ家にすんでいます。

ふたりはおばさんの住む農場に
あそびにいきました。
農場には、いろいろな動物がいます。
ミシェルくんは、牛や馬、犬、ニワトリ、
どの動物も「にがてだよ」といいます…。
(「アンリくん、どうぶつだいすき」)

ある日、アンリくんはミシェルくんを、
昼ご飯にしょうたいします。
ミシェルくんは、ナプキンを見て、
これはなに? フォークを見て、なにに使うの? と、テーブルマナーを知りません。
出てくる料理に、手をつけません…。
(「およばれ」)

ミシェルくんが薬を買いに行くというので、
アンリくんはいっしょに薬局に行きました。
アンリくんは、薬剤師さんに
「熱はあるの?」ときかれ、
「ありません」
「おなかが痛いの?」「いいえ」
「頭がいたいの?」
「いいえ、薬をほしがっているのは、
ぼくじゃなくて、ネコのミシェルくんです」
とアンリくん。
でも、ほんとうは…? 
(「くすりをかいに」)

楽しいお話が3つ入った
『こんにちは、アンリくん!』続刊です。

うちの「おひめさま」は、わたしじゃなかったの?! ユニークな視点で、家族の愛情を描いた物語。

さかのうえの ねこ

うちの「おひめさま」は、わたしじゃなかったの?! 坂の上にたつ、大きな出窓のある家で暮らすエステラ。おかあさんは、毎日おいしいごはんをつくってくれ、おとうさんはお仕事からかえってくると、たくさんあそんでくれます。でも、ある日「いいこで まっていてね」と言い残して、おかあさんがでかけてしまいます。ひとり残されたエステラは不安でいっぱいになりますが……。ユニークな視点で、家族の愛情を描いた物語。

パンダが和菓子を作る? 町の人たちは大騒ぎ!

わがしやパンダ

ぼくのうちは和菓子屋さん。笹の葉を使ったお菓子が自慢なんだ。そこへある日、かわいいパンダがやってきた! パンダが和菓子を作ると、町でたちまち評判に。ついには町長がこう宣言した。「この町に、パンダがくるなんて、すばらしい! 『パンダまつり』をひらきます!」……パンダに夢中になる町の大騒ぎをユーモラスに描きました。オールカラーの楽しい挿絵が全見開きに入り、読み物に親しみ始めた低学年にぴったりです。

小学3、4年生ぐらいからおすすめの新刊

「雨降る本屋」の日向理恵子さんと吉田尚令さんから届いた、冒険ファンタジーシリーズの幕開けです。

いばらの髪のノラ(1) 黄金の心臓 第1巻

かつて人間とともに地上で暮らしていた魔女は、〈神炉の火〉を手に入れた人間たちによって地上を追いやられて以来、交わることがなかった。主人公の魔女ノラの心臓は生まれてすぐに一度、止まりかけた。ノラの心臓をなおしてくれたのは、地上の人間の医者だった。“魔女は心臓で魔法をかける”のだが、ノラは自分の意思ではなく驚いた拍子にしか魔法をかけることができない。一度止まりかけた心臓のせいで、しかも人間にさわらせたせいで。ノラは自分が落ちこぼれの魔女で、姉さんたちのお荷物だと思いながら暮らしていた。
ある日ノラは、北の塔の書庫で一冊の古い本に書かれていた「黄金の心臓」という言葉を見つける。それは魔法の力を正しく強くするもので、地上のどこかにあると。ノラは〈黄金の心臓〉を見つけ出すために、地上へと旅立つ。
人間が見つけた〈神炉の火〉とは、神炉という地底の種族が自ら生み出す力を利用することだった。人間は神炉を地上へと引きずり出して利用してきたが、それでも神炉を飼い慣らすことはできていなかった。不安定な神炉が暴走することによる被害も少なくない。神炉の生け贄のために育てられた少女リンゴを、ノラは助け、行動をともにするようになる。
猫と人間のハイブリッドとして作られたタタン。人間の町で出会う少年ヒオ。〈時の牢獄〉にとらわれているシュユ・シン。魚の森の〈ラ〉……さまざまな出会いが、あるときにはノラを支え、あるときには不安で涙を流しながら〈黄金の心臓〉を探し求めるノラの旅がはじまる。

「ここはきみの国、いっしょに冒険にでかけよう」岡田淳さんの心はずむ楽しい冒険ものがたり

机の下のウサキチ

ずっと、まっていたんだよ
ここはきみの国、いっしょに冒険にでかけよう

大雨の日、ひとりでるすばんをしていた小学生の一平。
おじいちゃんの書斎の、古い机の下にもぐりこむと
いつのまにか、ふしぎな野原にまよいこんでいた。
そこでであった大きなウサギ、ウサキチは一平をキョチとよび、
キョチをずっとまっていたこと、そしてそこはキョチの国だという。
ふたりは、ウサキチがなくした、はねる力をとりもどすため、さいはて山へ旅に出る。

心はずむ岡田淳の冒険ファンタジー。

小学5、6年生ぐらいからおすすめの新刊

おばさんが話してくれたのは、ねがいをかなえてくれる「ねがいの木」のお話

ねがいの木

宿題をしようとおばさんの家にやってきたわたし。庭の大きな木を描くために雨がやむのを待っていると、おばさんがお話をしてくれました。
それは、ねがいをかなえてくれる「ねがいの木」のお話。木は、ある時は町をつくり、ある時は恋をかなえ、ある時は戦争をおこすのでした――。
「ねがい」とは、希望でしょうか、欲望でしょうか、それとも祈りでしょうか。
1982年の雑誌「日本児童文学」に掲載の作品を、世界中にさまざまな争いが起きている今、お届けします。

竜に助けられたという子どもたち。でもこれからどうすればいいの?

ラナと竜の方舟 沙漠の空に歌え

気がついたら、沙漠の町の前に立っていたラナ。隣にいた男の子ジャミルは「竜に乗って空を飛んできた」と言いますが、ラナは、いつ、どうやって来たのか覚えがありません。
その町は、沙漠のオアシスだったのが、いまでは人には見えない〈蜃気楼の町〉になっていました。竜は、いのちの危険にさらされている子どもを救いだして連れてきていたのです。
故郷から逃げ出そうとしていた自分も、危ないところを助けられたのだろうか? そうだとしても、これからどうすればいいの? どこへ行けばいいの? どう生きていきたいのか、ラナは自問します。
イランやトルコなどの中近東に造詣の深い著者が、死の危険と隣り合わせの子ども達への思いをこめて綴った、方舟の町を舞台にした物語。

設計図なしで、大きなものから小さなものまでなんでもつくっちゃう、ビルダーの頭の中をのぞいてみよう!

ブロックでなんでもつくる!ビルダーの頭の中

レゴRブロックとの出会いは1歳のとき。学生のころから作品制作と発表を続け、大学では「東大レゴR部」を創部。そして日本初の「レゴR認定プロビルダー」に!

設計図なしで、大きなものから小さなものまでなんでもつくっちゃう、ビルダーの頭の中をのぞいてみよう!

「みんなの研究」は、みんなの「知りたい」を応援する、あたらしいノンフィクションのシリーズです。

中高生から大人の方におすすめの新刊

自分を縛っている「透明なルール」に気づくことができたなら……。勇気をもらえる物語。

透明なルール

中学受験国語で出題多数の小説、
『キャプテンマークと銭湯と』『ソノリティ はじまりのうた』の佐藤いつ子氏最新作!
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平凡な中学生・優希は、クラス替えでたまたま「1軍」のグループに入れたものの、本当の自分を隠して生きている。
成績が悪いフリをするし、オタクなところは絶対にバレたくない。クラスメイトの投稿に「いいね」をつけるかどうかも悩む。
そして家でも、生理用品を買ってと親に言えない・・・・・・。

「周りからどう思われるか」を気にするあまり、生きづらさを感じる優希が、不登校ぎみの転校生やマイペースなクラス委員との心の交流を通じて、
自分を縛る<透明なルール>に気づき、立ち向かっていく。
教室の雰囲気やSNSの同調圧力に息苦しさを感じる全ての人に、勇気をもたらす爽やかな物語。

いかがでしたか。

岩波少年文庫の名作から、刊行されたばかりの新刊まで、日々の本選びの参考にしてみてくださいね。

秋山朋恵(あきやま ともえ) 

絵本ナビ 副編集長・児童書主担当

書店の本部児童書仕入れ担当を経て、私立和光小学校の図書室で8年間勤務。現在は絵本ナビ児童書主担当として、ロングセラーから新刊までさまざまな切り口で児童書を紹介。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、まず本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選ぶことを1番大切にしている。著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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