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月別児童書ランキングBEST10

【ランキング】2024年9月の児童書人気ランキング&おすすめ新刊紹介

今、絵本ナビで売れている児童書は? 話題になっているのはどんな本? 2024年9月の児童書人気ランキングを発表します。秋の読書や読書週間に向けて、何か面白い本はないかな、と思ったら参考にしてみてくださいね。合わせて、2024年9月刊行の新刊の中からおすすめの作品もご紹介します。

2024年9月の児童書人気ランキングBEST10【2024/9/1~9/30】

第1位は、7月8月から引き続き『ふたりはともだち』。国語の教科書でも長きにわたり掲載され、季節を問わず、一年間ずっと人気のある作品です。

濃くて、可笑しくて、ちょっぴり切ない……がまくんとかえるくんの温かい友情物語

ふたりはともだち

仲良しのかえる、がまくんとかえるくん。ふたりの間で繰り広げられるのは、濃くて、可笑しくて、ちょっぴり切ない……様々な愛すべきエピソード。アーノルド・ローベルの「がまくんとかえるくん」シリーズは幼年童話の傑作として、子どもから大人まで、たくさんの人たちに40年以上も愛され続けています。

そのシリーズ第1作目が『ふたりはともだち』、5つのお話が収録されています。

春が来たからと大急ぎでがまくんの家に走っていき、「おきなよ!」と大きな声で呼びたてるかえるくん。お日さまがきらきらして、雪も溶け、新しい一年がはじまったかと思うと、いてもたってもいられないのです。ところが、がまくんは布団の中。もう少し寝ていたいのです。11月から眠っているがまくんは「5月半ば頃にまた起こしてくれたまえよ。」なんて言うのです。そこで、かえるくんは……?

がまくんを外に連れ出して遊ぶためなら頭の回転だって早くなるかえるくんと、カレンダーに合わせて簡単に5月だと思い込んでしまうがまくん。最初のお話「はるがきた」で、幼さと可笑しさがたっぷり詰まったふたりのキャラクターを存分に味わうことができます。

続く「おはなし」と「なくしたボタン」では、それぞれのやり方でお互いを思いやっている様子(大いに巻き込みながらね)を、「すいえい」ではちょっぴりブラックな面をのぞかせつつ、思いっきり笑えるエピソードを披露してくれます。

すっかりふたりの世界観に夢中になった頃、登場するのが最後の「おてがみ」です。

悲しそうな顔で玄関にすわっているがまくん。なんでも「もらったことのないお手紙を待つ時間」なんだと言うのです。それを聞いたかえるくんは、がまくんに内緒でお手紙を書くことにします。ところが、配達を頼んだのがかたつむりくんだったので……。

国語の教科書に採用されたことで、今では多くの子どもたちに知られているのがこのお話。いずれ届くことも、その内容までもわかっているお手紙をじっと待つがまくんとかえるくん。その幸せそうな様子に、「手紙」の持つ力を感じずにはいられませんよね。

シリーズ4冊。がまくんとかえるくんのキャラクターを知れば知るほど、どのお話も読み返したくなる珠玉のエピソードばかり。日本では三木卓さんの翻訳で楽しむことができます。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

国語の教科書でもおなじみ「おてがみ」の名場面

おまけつきの4冊セットも人気です!

【ギフトBOX】(特製A5版クリアファイル付き)アーノルド・ローベル ベストセレクト4冊セット

第2位も、一年を通して人気のあるシリーズ。低学年向きのなぞ解き物語でありながら、大人でもなかなか解けない面白さと、ネートの本格的な探偵ぶりが人気です。

ネートと一緒にどんどんナゾを解いて、名探偵になろう!

ぼくはめいたんてい(1) きえた犬のえ(新装版)

9歳のネートは探偵です。
今日もネートの元に1本の電話が入りました。
仲良しの女の子アニーから、なくなった絵を探してほしいとの依頼です。

すぐにアニーのところへ駆けつけるネート。
まず、アニーの話をじっくり聞き、部屋の中をくまなく調べます。
次に、その絵を見た他の人たちー仲良しのロザモンド、弟のハリー、犬のファングについて丁寧に調査していきます。
はたしてネートは、アニーのなくなった絵を発見することができたのでしょうか。

一見、すぐに解けそうと思わせておきながら、意外になかなか解けないナゾの面白さと、ネートのツボを押さえた探偵ぶりに子どもも(大人も!)たちまち心を掴まれてしまいます。
また9歳という年齢でありながら、どんなナゾが来ても常に落ち着き、周りから頼りにされているネート。子どもたちは、自分と同じぐらいの年齢の子の活躍とカッコよさにたちまち憧れてしまうのではないでしょうか。一方でパンケーキが大好物で、気が付けばいつもパンケーキを食べているところには親しみを感じてしまいますね。

こちらは、1982年の発売以来、たくさんの子どもたちに愛され、読み継がれてきた「ぼくはめいたんてい」シリーズの第1巻目。マージョリー・W・シャーマットさんによる全17巻となるこちらのシリーズは、5歳ぐらいから小学校低学年の子どもたちにちょうど良いハラハラさで、子どもたちがはじめて物語の楽しさに出会えるシリーズでもあります。つぎつぎにネートに降りかかるナゾ解きの面白さはもちろんのこと、巻ごとに増えていく個性的な登場人物、ネートからママへの置き手紙の内容など、読めば読むほど多くの楽しみをも発見できるでしょう。

すべての漢字にふりがながついているので、はじめての読み物としてもぴったり。ひとり読みに移る前に、まずは読んであげながら親子で一緒にナゾ解きを楽しんでみるのもいいですね。シーモントさんの温かくユーモアたっぷりの挿絵と、訳者の小宮由さんの柔らかな語り口も、子どもたちの読書をやさしく応援してくれます。お話の最後には「めいたんていのこころえ」もついていて、もし周りでなにかナゾが起きた時の役に立つかも!? さあ、ネートとどんどんナゾを解いて、一緒に名探偵になろう!

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=11928 楽しく個性的な登場人物がいっぱい!

続けて読みたい人に……「たんていてちょう」のついた17巻セットもあります。

【ネートのたんていてちょう付】ぼくはめいたんてい全17巻セット(ギフトラッピング込)

第3位は、同数の売れで2タイトルが並びました。どちらも長く読み継がれるロングセラーの名作です。

初めての本格的な冒険物語との出会いに

エルマーのぼうけん

さあ、リュックサックに道具をつめて、エルマーと一緒に冒険の旅に出発しよう!

これは僕の父さん、エルマーが小さかった頃のある冒険のお話です。ある雨の夜、エルマーは、年取ったのらねこから、「どうぶつ島」に捕らえられているかわいそうなりゅうの話を聞きます。りゅうは、空の低いところに浮いていた雲から落っこちてきたちっちゃな子どものりゅうで、ジャングルの猛獣たちに捕まえられて、川を渡るために働かされているというのです。

エルマーは、すぐに助けに行こうと決心します。早速ねこにどうぶつ島のことや、持っていくものを教えてもらい、旅の準備に取り掛かります。エルマーがリュックサックにつめたのは、「チューインガム、ももいろのぼうつきキャンデー二ダース、わゴム一はこ、くろいゴムながぐつ、じしゃくが一つ、はブラシとチューブいりはみがき‥‥‥」などなどたくさんの道具。そして「どうぶつ島」へと繋がる「みかん島」行きの船に忍び込んだエルマーは、六日六晩たってようやく「みかん島」へ。ここで食料のみかんをリュックいっぱいに詰め込んで、夜の間に「どうぶつ島」へと渡ります。

「どうぶつ島」へ着くと、早速りゅうがつながれている川を探しに、気味の悪いジャングルの中を歩いていくエルマー。ジャングルでは、おかしな喋り方をするねずみや、うわさ好きのいのししに出くわしたり、とら、さい、ライオンなど恐ろしい猛獣たちにつぎつぎと出くわします。猛獣たちはたいていお腹をすかせていて、食べられそうになることもしばしば。さてエルマーは、どんな風に猛獣たちの危険をくぐり抜け、どうやってりゅうを助け出すのでしょうか?

特に注目したいのは、リュックサックに詰めた道具たちの活躍と、見返しに描かれた「みかん島とどうぶつ島のちず」。道具は、はじめはこんなものが何の役にたつのだろう? と思ってしまいそうなアイテムばかりなのですが、エルマーの知恵も合わさって、驚くほどぴったりはまって役に立つ様子にワクワクさせられます。道具を介した猛獣たちとのやりとりもユーモアたっぷり。何回読んでも繰り返し楽しませてくれる場面がいっぱいです。
「みかん島とどうぶつ島のちず」には、エルマーが冒険した場所や、エルマーの足取りが細かく描かれています。地図を見ながらお話を読み進めていくと、よりエルマーと一緒に冒険しているような臨場感が味わえるでしょう。お話の途中で、また一章ごとに、お話を読み終えた後になど、ぜひ地図をたっぷり眺めながら読んでみて下さいね。

日本では、1963年の刊行から50年以上も読み継がれ、幼年童話の最高峰とも呼ばれる本書。作者は、ニューヨーク生まれのルース・スタイルス・ガレットさんという女性で、このお話でニューベリー賞(アメリカで毎年最もすぐれた児童文学作品に与えられる)を受賞しています。さし絵は、お継母さんのルース・クリスマン・ガネットさんによるもの。細かいところまで丁寧に描かれながらも、ユーモアあふれる魅力的なエルマーやりゅう、猛獣たちのさし絵が、物語を一層楽しく盛り上げます。さらに英語版の文字の大きさや書体を決めたのは旦那様のピーターさんだそうで、刊行時は、家族総出でこの本を作るのに取り組まれていたそうです。

この後も、『エルマーとりゅう』『エルマーと16ぴきのりゅう』と続いていく、エルマーとりゅうのとびきりの冒険と友情の物語。内容は5才ぐらいから楽しめるかと思いますが、子どもがひとりで読むのは小学2年生ぐらいまでは難しいのではということと、なかなかのハラハラドキドキの冒険となりますので、はじめはぜひ大人が読んで聞かせてあげて下さいね。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=534

声の大きなヤカちゃん、大活躍!?

番ねずみのヤカちゃん

ドドさん夫婦の家の壁と壁のすき間に住む、おかあさんねずみと、四ひきの子ねずみ。そのうち四ひき目は、「やかましやのヤカちゃん」とよばれていました。
どうしてこんな名前がついたかって?

それはね…このヤカちゃん、とてつもなく声が大きかったからなんです。

たとえばこんな風。おかあさんねずみが、ドドさん夫婦に存在を気づかれないよう「けっして音をたててはいけない」と注意している時も「うん、わかったよ、おかあさん」と答える声のなんと大きいこと!他にもおかあさんねずみの注意に対して、全部うんと大きな声で答えるヤカちゃんのお返事の繰り返しが何とも愉快でたまりません。でもお返事のしかたから、ヤカちゃんがとっても素直でまっすぐで良い子だということが伝わってきて、どんどんヤカちゃんを応援したくなってしまいます。けれどもやっぱりその大きな声のせいで、ドドさん夫婦の家にねずみがいることがばれてしまって…。ここからドドさん夫婦のねずみ退治作戦が始まります。ドドさん夫婦とヤカちゃんの対決の結末やいかに…?

繰り返しの楽しさや、ヤカちゃんの声の大きさ具合、ドドさん夫婦とヤカちゃんとのやりとり、ここぞという時に役に立つおかあさんねずみの歌など、注目したい楽しみ満載のこちらの読み物は、一度読んだら子ども達のお気に入りになるに違いありません。『なぞなぞのすきな女の子』でおなじみの大社玲子さんのさし絵もユーモラスで楽しく、特にころころ変わるヤカちゃんの表情と目の動きはみどころたっぷりです。

アメリカ生まれの詩人・翻訳家であるリチャード・ウィルバーさんによって書かれたこちらのお話は、アメリカでは1963年に出版された後、ストーリーテリングによって多くの子どもたちに親しまれているのだそうです。ぜひ日本でも、さまざまな場所で大人から子ども達へ声に出して読んであげると、一層楽しい世界が増すことでしょう。
さて、ヤカちゃんの大きな声のところはどんな風に読みましょうか。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=6564 ヤカちゃんの声の部分だけ文字が大きくなっています。

第5位は、同数の売れで4タイトルが並びました。

第5位 おおきなおおきなおいも

秋といえば……。思いっきり想像を膨らませて読みたい名作

おおきなおおきな おいも

いよいよ明日はいもほり遠足。あおぞらようちえんの子ども達は、それはそれは楽しみにしています。ところが…当日は雨。いもほり遠足は一週間延期です。先生は仕方ありませんねって言うけれど。

「つまんない つまんない」

でも大丈夫。おいもは7つ寝ると、いっぱい大きくなって土の中で待っててくれるんですって! そのおいも、どのくらい大きくなっていると思う? 子ども達は想像しているうちに紙に描いてみたくなりましたよ。大きな大きな紙を用意して、それでも足りないからのりで貼り合わせてもっと大きくして。絵具を筆で「ごし ごし しゅっ しゅっ」「ぴちゃ ぴちゃ しゃっしゃっ」…もっと紙を足して。もっともっと。

ああーーーすごい!!
絵の具で描いたおいもの大きいこと、大きいこと。
先生もびっくり仰天。

「こーんな大きなおいも、どうやって掘り出すの?」

さあさあ、そこから子どもたちの素敵な想像の世界が膨らんでいきます。
綱引きみたいにして引っこ抜いて、ヘリコプターでようちえんまで運び、みんなで洗ったら、プールに浮かべ…!?

発売から40年以上経ってなお読まれ続けているこのお話。実際の園での遊びからヒントを得て作られたのだそう。自分たちの想像を超えたとんでもなく大きなおいも。そのインパクトは一度読んだら忘れることはありません。「いもざうるす」や「おいもパーティ」、印象に残っているシーンは沢山あるけれど、その全てがシンプルな線画。そこに効果的に使われているのが、サツマイモを思わせる紫一色のみというのも驚かされます。それでも子どもたちの生き生きと動き回る様子や、先生の役割、主役であるおいもの桁外れな存在感が伝わってくるからです。

いもほり遠足の前に。雨で退屈になっている子どもたちに。お絵描きやごっこ遊びが大好きな子どもたちに。子ども達の心を存分に刺激してくれる絵童話です。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=241

第5位 わかったさんのおかしシリーズ(全10巻セット)

わかったさんの新刊発売で、既刊の10冊も注目を浴びました。

わかったさんのおかしシリーズ(全10巻セット)

ファンタジーの世界で楽しいおかし作り
ゆかいなお話とおいしいお菓子の作り方が一冊で楽しめる好評シリーズ。クリーニング屋さんのわかったさんが、配達の途中でまきこまれる不思議な世界。お話のなかに、お菓子作りのカギがあり、巻末には、作り方の実際をわかりやすく解説しています。

読者レビューより

我が家の小学校2年生の娘が,小学校1年生の時にはまったシリーズです。
小学校の学級文庫にもあったようで,有名さ人気さがうかがえると思います。
親の私が子供の頃からあるシリーズ児童書なので本当ロングランですね!
女の子の入学祝いにぴったりなセットに思いました。
「こまったさんシリーズ」より,やや文章量が多いので小学2~3年生になってもまだ楽しめると思います。
(まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子8歳)

第5位 ぼくはアフリカにすむキリンといいます

「地平線のむこうに すむ きみへ」

ぼくはアフリカにすむキリンといいます

手紙を出したり受け取ったりする楽しさや、新しい誰かとの出会いの喜びが伝わるお話。キリンがペンギンのことを想像して真似する姿はユーモアたっぷり。地平線のこちらから向こうまでなが―い距離を行き来する手紙のことを想像したり、手紙をやりとりするそれぞれの気持ちを想像しながらゆったりとした気持ちで楽しんで下さい。

第5位 大きい1年生と小さな2年生

1、2年生に読んであげたい名作

大きい1年生と小さな2年生

お話に登場するのは、体は大きいけれど弱虫の1年生のまさやと、体は小さいけれどしっかり者でけんかも強い2年生のあきよです。読む子どもたちは、それぞれどちらに親近感を覚えるでしょうか?

まさやは1年生になったばかり。家から学校までの「がけのあいだのみち」がこわくて仕方がありません。狭くて暗いし、木はしげっているし、時々カラスも鳴いていてこわいのです。けれどもお母さんからひとりで学校へ行くのよ、と言われ困っていると、次の日、2年生の子どもたち四人が迎えにやってきて、まさやはあきよに手をつないでもらい、登校するようになります。まさやはあきよがいるだけで心強い気持ちになり、だんだんあきよの強さとしっかりとした様子に憧れるように‥‥‥。一方であきよもまた、まさやを見守ることによって、体は小さくても自分は大きいのだという自信が湧いてくるのでした。

そんなある日、事件が起こります。
あきよが好きな「ホタルブクロの花」を、「じんじゃの森」に探しに行くことになったあきよとまり子(あきよの友達)とまさや。傷を作りながらもあちこち探して、やっとの思いで二つだけ手にするのですが、帰り道に3年生の男の子たちとケンカになり、踏みつぶされてしまいます。その時、あきよが泣く姿を始めて目にしたまさやは、あきよのために「ホタルブクロの花」を取りに行こうと決意するのでした。そして1週間後の日曜日、「ホタルブクロの花」がたくさん咲いているという遠い場所にある「一本スギの森」に向かって歩き出します。ひとりで学校へも行けないまさやが大きな勇気を出して頑張る姿がみどころです。

こわいものがたくさんあるまさやも、体が小さいことに強いコンプレックスを持っているあきよも、それぞれの悩みは本人たちにとっては深刻なものでしょう。大人も読んでいるうちに自分が子どもの頃に感じていた悩みや感情を思い出し、子どもたちが目にしている毎日や世界がありありと感じられるような体験をするのではないでしょうか。中でも「しっかりする」というのは、いったいどういうことなのか? とまさやが考える場面では、小学生になったらしっかりしなさい、しっかりしなくちゃいけない、と言われるのは昔も今もずっと変わらないテーマなのだなあ、と思わせられました。

1970年の刊行以来、50年以上も読み継がれているこちらのお話は、『おしいれのぼうけん』『ロボット・カミイ』でおなじみの児童文学作家古田足日さんが残された名作です。小学1、2年生の子どもたちが抱える不安や悩みはどんなに時代が変わっても変わらない普遍的なものであること、しかし、きっかけさえあれば、短い間でぐんと成長するたくましさを秘めていること、まさやとあきよがお互いに関わりながら大きく成長していく様子に子どもは子ども同士の関わりの中で育つ、という真理を見たりなど、何度読んでも胸を打つものがたくさんあります。

子どもたちが1、2年生のうちにぜひ出会わせてあげたい作品です。
しかし長さは166ページとボリュームがありますので、1、2年生でひとりで読めるという子はなかなかいないでしょう。ハラハラする場面もたくさんありますので、大人がお話の案内人となって読んであげることをおすすめします。各章の表題も、「ぼく、おなか すいたあ」「子どもには、たいていのみちは、はじめてのみち」「しんせつなおじさんか? ゆうかいはんか?」など、とても魅力的。章ごとに毎日1章ずつ読んでいくというのもいいですね。子どもたちへの応援の気持ちをたくさん込めながら、ぜひご家庭や教室で、読んでみて下さいね。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

第9位 しょうがっこうが、きらいです!(2024年6月新刊)

学校に行きたくないと思った日には…

しょうがっこうが、きらいです!

「わたし、学校、いきたく ないみたい」
一年生のマユは、朝から胸の中がモヤモヤしています。

「どうして?」と驚いてたずねるパパに、
どうしてなんだろう。
べんきょうがつまらない? きゅうしょくがいや? いや、なんか自由じゃないのが嫌なのかも。
といろいろな理由をつぶやきながらも、胸のモヤモヤが晴れないマユ。

今日は五時間目のせいかつでしゃぼんだまをやる日。しゃぼんだまをたくさん作るための「ひみつのどうぐ」として、とっておきのストローをたくさん準備してくれたママは、マユを励ますように送り出します。

学校では、一緒にいるのに友だちにだけ声をかけるみさきちゃんや、いつもマユのものを借りようとする隣の席の粗暴なぎんちゃん、おまけに給食にはきらいな野菜が出て……マユのモヤモヤはどんどん大きくなるばかり。そうしてしゃぼんだまのじかんがやってきて……。

なんとなく学校に行きたくないなって思う日、小学生のみんなもきっとあるでしょう。
でも「がっこうが、きらい」というのは言っちゃいけない言葉のようにも思えて『しょうがっこうが、きらいです!』というタイトルにドキッとした子も多いのではないでしょうか。
また、学校に行きたくないと思った時、マユと同じように自分でも理由が分かるような分からないような……と思うことも多いかもしれません。

でも、マユが学校で体験するあれこれをお話で読んでいくと、どうしてモヤモヤしていたのか、なぜ学校に行きたくないと思っていたのかがだんだん見えてきます。読むみんなも似たような体験をしたことがあるかもしれませんね。
そんなマユの心の機微を丁寧に描くのは、児童文学作家の山本悦子さん。学校での出来事のひとつひとつや友だちとのやりとりに、子どもたちがいかに敏感に反応しているのか。小学生のみんなが読んだらきっと共感するでしょうし、大人が読むと、子どもの心の繊細さに気づくきっかけにもなるように思います。

その一方で、ちょっとしたことからモヤモヤが一気に消えて楽しくなれるのも、子どもたちが持っている大きな力でしょう。
すぐに解決できないこともあるかもしれないけれど、ずっとは続かない。朝は気が重くても、帰りにはすっかり気持ちが晴れているかもしれない……。

読むと心が温かく励まされるような一冊。モヤモヤした時には思いきって『しょうがっこうが、きらいです!』って宣言するだけでも気持ちが軽くなるかもしれませんよ!

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

第10位 わかったさんのスイートポテト(2024年9月新刊)

「わかったさんのあたらしいおかし」シリーズとして刊行スタート!

わかったさんのスイートポテト

1987年の1巻発売後からたくさんの読者に読みつがれているロングセラーのわかったさん。作家・寺村輝夫の発想を絵として形にしてきた永井郁子が、世界観ごと受けついで物語と絵を描き、新たに「わかったさんのあたらしいおかしシリーズ」として刊行をスタートします! クリーニングの配達中にサツマイモほりを手伝ったわかったさん、気がつけばスイートポテトを食べたいというヤーぼっちゃんのために、あっちこっちへ走りまわることに…!?

2024年9月児童書人気ランキング:第11位から20位はこちら

昨年9月のランキングと比べてみる!?

2024年7月8月のランキングはこちら

おすすめ新刊読み物情報

最後に、2024年9月の新刊から、おすすめ作品をご紹介します。

※対象年齢は目安です。

小学1、2年生におすすめの新刊

まずご紹介したいのは、2024年7月、8月、9月と、一冊ずつ刊行された「パインさん」シリーズ。真面目そうなパインさんが巻き起こす騒動にユーモアたっぷり。つぎは何が起こるのだろうと、一冊読むと他のお話も読んでみたくなってしまいます。全ての見開きに楽しいさし絵がたっぷり入っていて、読み物の体裁でありながらも、絵本のように読めます。とくに5歳から7歳ぐらいの子どもたちのはじめてのひとり読みにおすすめです。

 

『パインさんのごちゃまぜかんばん』『パインさんのむらさきのいえ』『パインさんのおるすばん』

パインさんの ごちゃまぜ かんばん

パインさんは、かんばんやさんです。
パインさんの住むリトル・タウンのかんばんは、すべてパインさんが書きました。
大きいかんばんや、小さいかんばん、文字だけのかんばんや、イラストつきのかんばん。
パインさんはどんなかんばんでも作れます。

ある日、町のかんばんが古くなってきたため、パインさんは町じゅうの全てのかんばんを作り変えることになりました。町じゅうのかんばんってすごい量ですよね……。けれどもパインさんはかんばんを書くのが大好きなので、どんどん作っていきます。
そして出来上がった新しいかんばんを取り付けるという日、なんとパインさんの大事なメガネが見あたりません。仕方なくよく見えないままにかんばんを取り付けると、あっちもこっちもあべこべで、次第に町中が大変なさわぎに!

皆さんが普段見かけるかんばんが、全然違うところについているなんて、いったい想像ができるでしょうか。本の中では、楽しい絵でかんばんのあべこべぶりをたっぷり見せてくれます。
町の人たちが慌てる様子にはハラハラ・ドキドキ。けれどもこのドタバタぶりにはユーモアがいっぱいで、思わず口があいてしまったり、頬がゆるみっぱなしになってしまいそう。

全ての見開きに楽しい絵が文と同じぐらい入っているので、読み物の体裁でありながらも、絵本のように読める一冊。絵本から読み物への移行もスムーズに進めてくれることでしょう。とくに5歳から7歳ぐらいの子どもたちのはじめてのひとり読みにおすすめしたい作品です。

また、お話を読み終えたら、ぜひあとがきの「作者のことば」を大人と子どもで一緒に読んでみてほしいと思います。こちらには作者のレオナード・ケスラーさんが、かんばんを好きになったわけが書かれています。この「作者のことば」を読むと、なぜこのお話がこんなにワクワク楽しいお話になっているのか、その秘密が分かりますよ。

この後も続いていく「パインさん」シリーズ。真面目な働きモノなのに、うっかり屋の楽しいパインさん、いったい次はどんなゆかいなお話を見せてくれるのでしょうか。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

キリギリス、マツムシ、モンシロチョウたちの、ささやかで愉快な日々

バッタマンション

虫たちがくらす小さなマンション、「バッタマンション」。メゾン・ド・グラスホッパーというりっぱな名まえがあるのですが、くらしている虫たちはみんなただ「バッタマンション」とよびます。
 

ハロウィーンの夜、魔女たちはモビールから離れて、いたずらを仕掛けに外の町へ。

ハロウィーンまで、まってなさい

おもちゃ屋さんで、四人姉妹の魔女のモビールが売られていました。ハロウィーンの夜、魔女たちは動きだし、順番に魔法の呪文をとなえて、自分たちにいじわるしたお客をこらしめにいきます! ただ、すえっ子のナネットだけは、まともな呪文を知らなくて……。魔女たちのいたずらに手かげんなし、でもさいごは心温まる楽しい絵物語。

小学3、4年生におすすめの新刊

「青空小学校いろいろ委員会」シリーズ最新刊は、「日直」がテーマ

日直もがんばってる

四月にはじめての「委員」を決めるとき、みんな、なかなか立候補しなかったのだけど、あとから思えば「本当はやってみたかったな」「あのとき、手をあげればよかったかな」……。だけど、みんなのためにできるお仕事は、委員会のほかにもありました! そう、日直! さぁ、はりきって……いきたいところだけれども、今日の日直は、(だれにもいったことはないけど、ひそかにさりげなく頼りになるキャラになりたくて、実は日直の日が楽しみな)渡辺ユウイチと、(だれにもいったことないけど、みんなの前に立つのが苦手で、実は日直も大きらい!!!な)横川クミコのふたり。うまくいくでしょうか?

小学5、6年生から大人の方におすすめの新刊

町はずれにある蔵を改造したブックカフェ。そこではあなただけの物語が待っています。

くらくらのブックカフェ

<児童文学のトップランナー5人がつむぐ珠玉のアンソロジー第四弾。くらくらするような物語をあなたに!>

みなさんは、蔵を知っていますか。
もしかしたら観光地で見かけたことがあるかもしれませんね。二階建ての家くらいの細い建物で、外から見るとストンとした長細い形をしています。ちょっと変わった形なのですぐに分かるかもしれませんね。瓦屋根で、白壁や黒い板張りのことが多く、入口以外に窓はありません。
もともと蔵は、穀物や家財などを入れておくための建物でしたが、最近では、内部をリフォームしてカフェや雑貨店として使われていることがあります。

私もそんな蔵カフェのマスターの一人です。自慢のカフェラテを飲みながら、本が読めるブックカフェで、店には何千冊もの本があります。
ある町の住宅街でひっそりと営業していますが、ちょっと不思議なことがおこるらしく、小学生にも人気です。
どんな不思議があるかですって?
それはカフェにやって来た人たちにきいた方がいいですね。
なにしろ私の仕事は、やって来たお客さんのために、その人にぴったりの飲み物やスイーツをお出しするだけなのですから。いえ、だけではないかもしれません……。

さあ、今日はどんな人たちと出会えるでしょう。
相棒の猫たちと一緒に、みなさんのお越しをお待ちしています。

松岡享子さん自らが語るために訳し、大切に語ってきたお話が一冊の本に

中国のフェアリー・テール

ティキ・プーは大きな画塾で下働きをしている少年です。けれど魂の奥底には、誰よりも芸術への思いが熱く燃えていました。画塾にかけられた300年前の画家ウイ・ウォニの最晩年の傑作に憧れ、ティキ・プーは人目を忍んで絵を描くようになります。するとある夜、彼の切実な願いが通じ、絵の中から老画家が現れます。絵を描きたいという思いに胸を焦がす貧しい少年と、はるか昔に世を去った偉大な画家との交流を美しく描いた1冊。

  

いかがでしたか。

落ち着いて読書のできるいい季節。10/27~11/9は「読書週間」もあります。何を読もうか迷ったら参考にしてみてくださいね。

 

秋山朋恵(あきやま ともえ) 

絵本ナビ 副編集長・児童書主担当。書店の児童書仕入れ担当、小学校の図書室司書(8年)を経て、2013年より絵本情報サイト「絵本ナビ」に勤務。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選び、さまざまな切り口で紹介している。編著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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