【今週の今日の一冊】おじいちゃん、おばあちゃんが教えてくれる大切なこと(敬老の日に向けて読みたい絵本)
その広くて豊かな人生経験から、示唆に富む知恵やことばをくれるおじいちゃんやおばあちゃん。
今週は、「敬老の日」に向けて、おじいちゃん、おばあちゃんが教えてくれる大切なことを感じ取れるような絵本を集めてみました。子どもたちとの交流や関わりの中に大切なメッセージが伝わってきます。
読む人それぞれのおじいちゃん、おばあちゃんを思い浮かべながら、手にとってみませんか。
2024年9月9日から9月15日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
9月9日 お米作りをしていたおばあちゃんから学んだことは…
月曜日は『もったいないばあさんの おばあちゃん』
『もったいないばあさん』誕生から20周年! 待望の新作は、子どもの頃のもったいないばあさんと、もったいないばあさんのおばあちゃんのおはなしです。もったいないばあさんは、田んぼでお米作りをしていたおばあちゃんから感謝をすること、生きものたちへの思いやり、命のつながり、敬うことなど、大事なことは何かを学んできました。
本書を読まれた方の中には、幼い頃の思い出やふるさとを思い出されることがあるかもしれません。大切にされてきた日本の心を未来に伝えるために、お子さん達にも読んでいただけたらと思います。
「だいじなことは みんな おばあちゃんから おそわった。つたえないのは もったいない」
原画は、イネの一本一本、和紙を染めて切って貼って、大変な時間と手間をかけて作られました。ぜひ、じっくりと見てていただきたいです。
読者レビューより
もったいないばあさんは、自分もおばあちゃんから大事なことを教わったといいます。
そのように大切なことの継承が人伝えだと言うことを感じつつ、昔の稲作りを考えました。
人々の助け合い、田んぼに生息するものたちを大切にする心、どちらも時代とともに希薄になってきたものかも知れません。
便利さ、社会の変遷、懐古的になってしまってもいけませんが、何事にもありがたさの目で感じる心は大切ですね。
(ヒラP21さん 70代以上・その他の方)
9月10日 おばあちゃんはなんなんなんでも知っている。
火曜日は『なんなんなん』
花たちに声をかけながら庭仕事をしているおばあちゃんに、ぼくは聞いてみる。
「ね、なんのために いきているのかな?」
おばあちゃんはなんなんなんでも知っている。
「なんなんなん……」
言いかけて、おばあちゃんはぼくにささやいた。
「そのこたえを さがすんだよ」
ぼくは旅に出た。出会った人たちに聞いてみる。
「なんなんなんのために いきているんだろう?」
漁師さん、俳優さん、町はずれのねこ、大工さん。みんながそれぞれ答えを持っている。ぼくはそれを聞いて、わかるようなわからないような。他の人にもどんどん話を聞いていく。そして、ある時出会った哲学者の話を聞いているうちに、ぼくはいてもたってもいられなくなって……。
アメリカのベストセラー作家のコンビによって生まれたこの絵本。「人は何のために生きているのか」。聞くと難解に思えるこの問いかけに、これ以上ないくらいシンプルに、けれど壮大なスケールで、全体的にユーモラスな雰囲気を漂わせながら答えてくれるこの絵本。声に出して読めば、小さな子どもにも身近で楽しく読ませてくれるのは、ユニークな翻訳の効果でもあるのでしょう。
ぼくの旅は決して短いものではないけれど、大切なのは自分の中から何かが「わいてくる」ということ。そのためだったら、いつまででも旅は続けていられる。そんな風に思わせてくれるこの絵本は、忘れられない一冊になりそうです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者レビューより
変わったタイトルが気になり、手に取りました。
「なんのためにいきているのかな?」
そんな子どもの素朴で壮大な疑問におばあちゃんは答えます。
「そのこたえをさがすんだよ。なんなんなんのためかな」と。
アーサー・ビナードさんならではの訳文は、想像力を広げ心に残りました。
おしゃれなイラストだなと思ったら『わたしのいえ』や『なずずこのっぺ』を描いた作家さんでした。色遣いがとても素敵です。
(クッチーナママさん 40代・ママ 女の子19歳、女の子16歳、男の子14歳)
9月11日 「すばらしいことがおきるには、じかんがかかる。」
水曜日は『おじいちゃんのくるみのき』
秋に実をつける“くるみ”。一粒のくるみをもとに、祖父、子、孫、さらにその先へと広がる命のすばらしさを伝える絵本です。
ある朝エミリアが目を覚ますと、ベッドの横には青い木の実がひとつありました。それは、くるみの実。エミリアへのプレゼントです。おじいちゃんは、この木の実の由来をエミリアに語って聞かせます。
おじいちゃんは、エミリアと同じくらいの年に海を越えてこの国にやってきました。小さいカバンとくるみの木の実を一つ持って。くるみは小さな鉢に植えられ、引っ越しをするたびにおじいちゃんと共に移動してきました。くるみが苗木になったころ、おじいちゃんはおばあちゃんと出会い、今の家にやってきて、立派なくるみの木になるよう庭の土の中に植えられたのです。
今や、おじいちゃんのくるみの木は、見上げるほど大きく、枝を伸ばし茂っています。横にはエミリアのママが植えた中くらいのくるみの木も。そしてエミリアも、くるみの木を育てる日が来たのです。
エミリアは植木鉢に青い木の実を埋めました。鉢の中で、くるみは芽を出し育っていきます。しかし、それと反比例するように、おじいちゃんの腰はまがり一日のほとんどをアームチェアですごすようになりました。ゆっくり育っていく苗木を見ながらエミリアはおじいちゃんに尋ねます。
「いつか きに なる?」
「なるとも」とおじいちゃん。
「すばらしいことが おきるには、じかんがかかる。たとえ、じぶんが みられなくても かならず おきるんだよ」
おじいちゃんが遠い海の向こうの国から大切に持ってきたくるみの実。それは今、ごつごつした枝を広げ、天高くそびえる大きな木になりました。その横にはママとエミリアの木も。これらの木は、これからもずっと一緒にここで育っていくことでしょう。すばらしいことは、長い時間をかけて起こります。おじいちゃんもママもエミリアも、それらを見ることができなくても、おじいちゃんから始まった物語と、すばらしい命のつながりは、これからも続いていくのです。
いつか自分がいなくなったとしても、その一部は受け継がれている、そうした巡る生命の尊さを、ぜひ感じ取ってください。
(徳永真紀 絵本編集者)
読者レビューより
移民として海を渡ったおじいちゃんが持ってきた1個のくるみ。それを大事に育てると、その隣にお母さんがくるみを植える。そして今度は娘のエミリアが、その隣にくるみを植えるのです。
大きさの違う3本のくるみの木が並ぶ姿は、命がつながっていくことを感じさせてくれ、感動します。
「すばらしいことがおきるにはじかんがかかる」というセリフが胸に響きました。
(クッチーナママさん 40代・ママ 女の子19歳、女の子16歳、男の子14歳)
9月12日 おじいちゃんのやさしくて心強いおまじない
木曜日は『だいじょうぶだいじょうぶ』
ぼくが今よりずっと小さかった頃、ぼくとおじいちゃんは、毎日のようにお散歩を楽しんでいました。それは、家の近くをのんびり歩くだけだけれど、冒険するような楽しさにあふれていたのです。おじいちゃんと手をつないで歩いていると、ぼくのまわりは魔法にでもかかったみたいに、どんどん広がっていくみたいで。
でも困ったことに、出会いや発見が増えるたびに、怖いことや不安も多くなっていきます。そんな時、いつもおじいちゃんはぼくの手をにぎり、おまじないのようにつぶやくのでした。
「だいじょうぶ だいじょうぶ」
この世界で生きていくのって、結構たいへん。だけど、おじいちゃんの「だいじょうぶ」は本当にすごい。その言葉には、全ての不安を包み込んでくれている様な不思議な強さがあるのです。心が落ち着いてくるのです。子どもに読んであげているうちに、その言葉の響きにいつの間にか励まされていた、という大人の方もいるのでしょうね。そして、思うのです。
「この世の中、そんなに悪いことばかりじゃないな」
作者のいとうひろしさんの言う通り、大人も子どもも、少し行き詰まったなと感じたら、こんな風にゆっくり、のんびり、歩いてみるのがいいのかもしれませんね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者レビューより
10年前、初めてこの本に出会った時、なんて優しいんだろうと思いました。今、読み返してもその気持ちは変わらず、そして読めば読むほど、奥が深いなあと感じます。おじいちゃんと孫のふれあいが淡々と描かれてる内容ですが、この関係がとても大切なことだと思うのです。子供は毎日なにげない生活から、たくさんのことを学んで成長します。こんなおじいちゃんに見守られて優しい時間をすごせたら、子供はきっとやさしい子に成長するでしょう。そして「だいじょうぶだいじょうぶ」という言葉を心に刻みながら一つ一つ乗り越えていく勇気をもらい、子供が成長したら、またその「だいじょうぶ」をおじいちゃんに返していく。親子でも同じですね。作者のいとうさんも、きっとこんな子育てをしていったのではないでしょうか。いとうさんの優しさがにじみでている本です。
「だいじょうぶだいじょうぶ」、これからもみんなにこの本を伝えていきたいと思います。
(みわっこさん 50代・せんせい)
9月13日 かけがえのない穏やかな日々の記憶
金曜日は『おばあちゃんのにわ』
ぼくのおばあちゃんは、もとはニワトリ小屋だった家に住んでいる。毎朝お父さんが、ぼくを車でおばあちゃんの家に送ってくれると、おばあちゃんは庭でとれた野菜がたっぷり入った朝食を用意してくれる。ぼくらはあまり喋らない。でも、ぼくがオートミールをこぼすと、そっとひろいあげ、それにキスをして、ぼくのおわんにもどす。おばあちゃんは、長いあいだ、食べるものがなくて困ったことがあったのだ。
それから二人は学校に向かう。雨がふると、おばあちゃんはゆっくり歩き、ミミズを探す。土をつめた小さなガラス瓶に入れ、学校が終わると、野菜を育てているおばあちゃんの庭に放つ。ふたりはいつもそうしてた……おばあちゃんがニワトリ小屋を出て、ぼくの家に来るまでは。
数々の賞を受賞した前作『ぼくは川のように話す』のコンビによって、再び生まれた心温まるこの絵本。著者であるジョーダン・スコットの祖母との思い出がもとになっているのだそう。
台所の窓から差しこまれる光の美しさ、畑の中で寄りそうように立つふたり、おばあちゃんを見つめるぼくの眼差し。シドニー・スミスによる、情感あふれるいくつもの印象的な絵を眺めながら感じ取れるのは、多くは語らなくとも通じ合うふたりの空気感。ポーランドからの移民であまり英語がうまくしゃべれなかった祖母と、言葉を発することに苦しんでいたであろう彼。ふたりにとって、この時間がどれだけ心地良いものだったのだろうか。
大切な記憶がそのまま閉じ込められているようなこの絵本。自分の中の懐かしい感情と結びつきながら、最後の場面に胸を打たれてしまうのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
9月14日 おばあちゃんが語る大切な思い出のひとつひとつ
土曜日は『おばあちゃんのたからもの』
「おばあちゃん、このしわにはどんな思い出が入ってるの?」大好きなおばあちゃんにきいてみると、おばあちゃんの顔のしわには、ひとつひとつに大切な思い出がつまっていたのです。祖母と孫娘のやり取りを描いた心温まる絵本。
9月15日 おじいちゃんおばあちゃんと過ごすとっておきの時間
日曜日は『うさこちゃんのおじいちゃんとおばあちゃん』
うさこちゃんは、おじいちゃんとおばあちゃんを時々訪ねます。2人はうさこちゃんのことが大好きなので、来るととても喜びます。おじいちゃんは大工仕事が上手で、うさこちゃんがずっと欲しかったものを作ってくれています。おばあちゃんは編み物が得意です。おばあちゃんは編み方を教えてくれたので、うさこちゃんはおばあちゃんのために初めてあるものを編みました。おじいちゃんとおばあちゃんと過ごすとっておきの時間です。
読者レビューより
孫を思うお爺ちゃんと御婆ちゃんの気持ちが伝わってくる絵本でした。主人公の為にプレゼントを買うのではなく手作りするところが素晴しいなと思いました。手作りしてもらったプレゼントを主人公はずっと大切に使うと思いました。こうして手作りする事の温かみや心を込められる素敵な時間を持つ事が出来る素晴らしさを身近なお爺ちゃん御婆ちゃんから学べる主人公は素晴らしい環境だと思いました。私もプレゼントは主人公のお爺ちゃん達の様に手作りしたいなと思いました。
(なびころさん 30代・ママ 女の子1歳)
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選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
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