ゴミ箱をかぶった泥棒に、噛みつく卵?……今、人気絵本作家の「幼年童話」がアツい!
この春、親子で楽しんでもらいたい!話題の“幼年童話”特集
先日、新聞で「ミステリー作家が児童書!?の謎」という記事を読みました。
内容はというと……出版不況が続く中、児童書の販売額は10年前に比べて1割近く増えており、業界ではそこを狙って、児童文学作家ではなく一般文芸のミステリー作家や人気作家を投入! 未来の読者の獲得や育成に取り組んでいる、という内容でございました。ちなみに、その記事には辻堂ゆめさま(『ばんざい!ぼくらのフシギ島』)、知念実希人さま(『放課後ミステリクラブ』)などが名を連ねておりました。
人気ミステリー作家が手掛けた話題の児童書
児童書の販売額増加の理由については、「ブックスタート」事業の浸透、さらに小学生は中高生に比べて生活にスマートフォンが溶け込んでいない、などの理由が挙げられておりました。さらに、AIが爆速で進化する中、土台となる子どもの語彙力や読解力が、むしろ重要視されるようになっております。そういう事情もあって、絵本から一歩進んで、一人で読みきれるようになる「幼年童話」の需要も高まっているのではないかと存じます。
そうしたなか、春は子どもが少し背伸びをする季節でございます。これまで楽しんできた絵本から、物語の世界が少し広がる「幼年童話」に挑戦するのにもぴったりのタイミングでございます。そこで今回は、この春“絵本からのステップアップ”にオススメ! 親子で楽しめる、大人も楽しめる、最近話題&人気の絵本作家の幼年童話をご紹介させていただきます。
まずは、こちら。昨年4月に出版された阿部結さまの『どろぼうジャンボリ』(ほるぷ出版)。2020年のデビュー以来、2021年の「MOE絵本屋さん大賞」新人賞で『ねたふりゆうちゃん』が5位に入賞すると、またたく間に絵本界の注目を集める存在となった阿部結さま初の幼年童話でございます。こちらは「MOE絵本屋さん大賞」第3位、「TSUTAYAえほん大賞」第3位、第9回「未来屋えほん大賞」の大賞など、たくさんの賞を受賞しております。
風変りなどろぼうが夜ごと盗み出すものとは……?
この町に住む、風変わりなどろぼう。名前はジャンボリ。町のみんなが眠る夜、ジャンボリはあるものを、こっそりとぬすみだします。それはジャンボリにとって、とっても大事な宝物。ある日、あたらしい町長がやってきて、町のみんなから大切なものを奪います。ジャンボリが夜ごと集めつづけた「あるもの」が、あるとき、町にちいさな奇跡を起こして……。
大切なものを取り戻すためにできることや、偶然がもたらす奇跡が、ユーモラスで豊かなタッチで生き生きと描かれます。国内外で注目を集める実力派絵本作家、阿部結が手がけるはじめての絵童話。読むたびに、心が大きくふくらむ物語です。
お話はというと……あるモノを盗む泥棒が主人公でございます。その風貌ですが、なんと頭にごみ箱をかぶっております。泥棒が登場するお話は世の中に数多ございますが、こんなチャーミングでパンクな風貌のどろぼうは、これまでに見たことがございません。盗むモノも、これまでにないアイテムでございます。なんと「捨てられた手紙の種」。何度も書いた下書きや、結局出せないままになった手紙でございます。これはまさに文中にある“はだかんぼうのきもち”でございます。
これだけで「これから何が起こるのか?」と興味津々ですが、展開もこれまでにないものでございます。子どもはもちろん、大人にも紙の手紙の温かさや魅力を再認識させてくれるお話でございます。読まれた際には、これを機会に親子で手紙を書き合うのもよろしいかと存じます。
お次は、昨年11月にシリーズ第3弾の『フニフとワムくん つきよのかえりみち』(佼成出版社)が出たばかりの人気絵本作家、はせがわさとみさまの『ぞうのフニフとわにのワムくん』でございます。大親友のぞうのフニフとわにのワムくんが織りなす、心温まる童話シリーズの1作目です。
大親友のぞうのフニフとワニのワムくんが織りなす、心温まる童話シリーズ第1弾
素直でちょっぴりおちゃめなぞうのフニフと、おおらかでしっかり者のわにのワムくんは、とってもなかよし。「ねえ、風ってどこからやってくるのかな?」。ある日、ふたりは風のかくれ家をさがしにいくことにしましたが、思った以上に風が強くて――。「風はどこへ?」ほか、3編収録。
はせがわさとみさんが紡ぐ、フニフとワムくん、ふたりの感性を通して語られるさまざまなことばが、読者の心をあたたかく包み込みます。
友だちっていいな、そんなふうに思わせてくれる作品です。
はせがわさまは、絵本はもちろん幼年童話でも高い評価を受けている作家さまで、幼年童話『きみ、なにがすき?』(あかね書房)は2018年の「青少年読書感想文全国コンクール」課題図書にも選ばれております。こちらのシリーズはすべてテキストと絵の両方を担当されていますが、はせがわさまの作品には「テキストだけ」担当のものと「絵とテキスト両方」担当されているものとがございます。絵本の世界でこの二刀流はとても珍しく……絵とテキストそれぞれがゴイスーに評価が高いということでございます。児童書界の大谷翔平でございます。
「フニフとワムくん」シリーズはどれも、いくつものお話が楽しめるようになっておりますが、ひとつとしてハズレはございません。「がまくんとかえるくん」シリーズのように長く愛されること間違いナッシングな、子どもから大人まで楽しめる幼年童話でございます。ぜひ、はせがわさまの幼年童話をご体験くださいませ。
3つ目は、繊細で美しい鉛筆画で大人からも大人気の絵本作家、しおたにまみこさまの幼年童話でございます。しおたにさまは2018年に『そらからきたこいし』(偕成社)で絵本作家デビューし、この作品が「MOE絵本屋さん大賞」新人賞2位を受賞。その後、2021年に初の幼年童話『たまごのはなし』(ブロンズ新社)を刊行されました。こちらは「ブラチスラバ世界絵本原画展」で金牌を受賞、さらに「第27回日本絵本賞」大賞も受賞され、大きな注目を集めました。
卵がある日突然目を覚ましたかと思ったら、独り言を語りだし、寝ているマシュマロに噛みついて起こしたり……。大人の読者をも引きずり込むシニカルでシュールな世界観が、しおたにさまの魅力でございます。生きている卵やマシュマロを描いた絵本はこれまでにもございましたが、しおたにさまが描くその姿形は、かつてないほどシュールでございます(昨年刊行された『くも』の雲の姿形にも度肝を抜かれました)。それだけではございません。展開だけでなく、テキスト(口調)もゴイスーにシュールでございます。まだ未体験の方には、ぜひご体験いただきたい世界観でございます。
今回、お三方の幼年童話をご紹介させていただきましたが、みなさん、ゴイスーに面白い、心温まる絵本もたくさん描かれていらっしゃいますので、そちらも是非是非、あわせてご体験いただければと存じます。
そして最後に、私ごとでたいへん恐縮でございますが、ひとつ、ご報告をさせていただければと存じます。わたくしがテキストを担当した絵本『どうどうどうどうどうぶつえん』(世界文化社)が4月16日に発売になります。
絵は人気絵本作家の高畠純さまでございます。月刊絵本に掲載され、ご好評をいただいたことから、このたび単行本として出版される運びとなりました。思わず声に出して読みたくなる、クセになる、これまでにない新感覚の絵本でございます。是非是非、ご体験いただければと存じます。
2026年4月16日発売! N田N昌さんの新刊絵本
読んだら最後、つい口ずさんじゃう!クセになる新感覚絵本
・「ぱかぱかぱかぱかぱかぱかアルパカ」 声に出して読みたくなる、不思議な言葉遊び動物園にようこそ!
・ちょこっと聞こえる次ページの言葉でクイズ遊びができます! ex.おらおら→オランウータン
・動物なりきりごっこで 大盛りあがり!
「ぱかぱかぱかぱかぱかぱかアルパカ」…。思わず声に出して読んでみたくなる、不思議なことば遊び動物園へようこそ。ページをめくればリズムがはずみ、子どもも大人もつい口ずさみたくなる、読みたくなる。ハムスターやアルマジロ、フラミンゴたちも、ゆかいなオノマトペにのってご来場をお待ちしています。読めば読むほどクセになる、口が勝手に動きだす新感覚絵本。親子で声をそろえれば、楽しさはさらに広がります。読み終わっても、気がつくと「ぱかぱかぱかぱか…」とつぶやいてしまう不思議な絵本です。
N田N昌さんの絵本
「じゃあね」「さよなら」
夕方、公園で遊んでいたこどもたちが家に帰っていきます。
「いいなぁ いいなぁ」
遊具のパンダは他の遊具が止めるのも聞かず、ぴょんぴょんと公園外に出ていってしまいました。
「ぼくもいっしょにかえっていい?」「みんなあそぶのやめてまでかえるんだからすごくたのしいことがあるんでしょ」と、一人のおとこのこを背中に乗せて、ぴょーんとその子の家へと向かいます。
「ただいまー」とおとこのこ。
(ただいまってなんだろう)。
パンダはおとこのこが入った家の窓から中をのぞいていると、ごはんをつくるママ。仕事から帰ったパパと三人で食卓を囲む楽しそうな姿が。パンダは急に公園に帰りたくなり・・・。
ふだん何気なくしている、大切なことに気づく心温まるお話。
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