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絵本トレンドライターN田N昌の “大人だってもっと絵本読みたいの!”

年末年始におすすめ! 大人も読みたいバスの絵本特集

慌ただしい年末を過ぎると、いよいよお正月。実家への帰省や、ちょっとしたお出かけなど、バスに乗って移動する機会も増えるタイミングでございます。
また、バスに乗ることは、窓の外に流れる景色を眺めたり、新しい乗客を迎えたりと、日常を離れ新しい体験や未知の場所へ向かうイメージもあり、年末年始に読むのには、縁起がよろしいかと…、ということで今回はバス絵本を特集させていただきます。

バス絵本といいますと、まず思い浮かぶのが、2005年出版の『いただきバス』(鈴木出版)に始まる人気絵本作家、藤本ともひこさまの「いただきバス」シリーズ(鈴木出版)でございます。『おしょうがつバス』、『たなばたバス』『おつきみバス』、『まめまきバス』など、人気作ばかりでございます。今年10月にも新刊の『クリスマスバス』が出版されております。子どもたちに大人気の絵本シリーズでございます。

また、ナンセンス絵本好きのわたくし的には、ナンセンス全開の長新太さんの『ムニャムニャゆきのバス』(偕成社)、『タコのバス』(福音館書店)が大好きでございます。『タコのバス』は、単行本化されていないので、ご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、ナンセンス絵本好き、長新太ファンの方には、是非ご体験頂きたい絵本でございます。

他にも子ども達に人気の楽しいバス絵本はたくさんございます。バス絵本を特集した記事もたくさんございます。そこで今回は、大人も楽しめる最近出版された「しっとり系?」にしぼってご紹介させて頂ければと存じます。

まずは、今年6月に出版された林木林さま翻訳の『きいろいバス』(あすなろ書房)。

忘れ去られたバスの物語

きいろいバス

子どもたちを送迎するピカピカの黄色いスクールバス。時は流れ、乗りこむ者は老人になったり、家のない人々になったり、元気なヤギになったりしましたが、そこには常によろこびがあふれていました。しかし、とうとう乗る者のいなくなったバスは、じっとするしかありませんでした。小鳥一羽もはばたかない、川べりのはらっぱのすみっこで。すると……。

忘れ去られた黄色いスクールバスが、ふたたび幸せに輝ける場所を見つける物語です。

お話の内容はというと…、役目を終え廃棄されたスクールバスが、その後、様々な乗客を乗せることになる定年後のスクールバスの第二、第三の人生(バス生)について描かれております。アメリカの絵本ということもあり、絵も内容も大人も存分に楽しめる作品になっております。

また、この絵本は、作者の実体験がこの制作のきっかけとなっております。作者のローレン・ロングさまは、近所の森(ランニングコース)で、放置されている黄色いバスに出会い、そのバスの生涯について毎日思いを巡らせることが生きる目的や、その人の歩んできた道のりについて、そして他者に何かをしてあげたとき、人がどんなふうに思うのか?について考えるきっかけとなったと語っておられます。

ちなみに、アメリカ映画でもよく登場しますが、アメリカでは黄色いバスといえばスクールバスでございます。夕暮れ時でも見やすい色として1939年から「スクールバス・イエロー」として標準色に選ばれているそうでございます。

 

さらにちなみに、東京観光の定番、「はとバス」も黄色でございますが、こちらは1980年頃、車両イメージの統一のためレモンイエローになっております。こちらは、バスが大きく見えること、遠くから見ても曇や日陰でも、バスをすぐに見つけられること、東京のビル群の中を走っていても色が映える、目立つことなどの理由から黄色になったとのこと、でございます。

お次は、『バスが来ましたよ』(アリス館)でございます。

こちらも実話から生まれた絵本でございます。お話の内容はというと…、

バスを舞台にした親切のリレーの物語

バスが来ましたよ

全盲になった男性が、小学生に助けられながら続けた、バス通勤。「バスが来ましたよ」その声はやがて、次々と受け継がれ…。小さなひとこと、小さな手。でも、それは多くの人の心を突き動かした。小さな親切のリレーの物語。

目の病気で視力を失った男性が10年以上も同じバスで通学する小学生たちに支えられながら通勤を続けたという、心温まるお話でございます。

こちらは、作者の由美村嬉々さまが、小学生が代を重ねながら10年以上も視覚障害のある方のバス通勤をサポートし続けたという、10行ほどの新聞記事をオンラインで読んだのが制作のきっかけとなったそうでございます。先ほどの『きいろいバス』もそうですが、大人もいろいろ考えさせられるお話でございます。親子で一緒に読んで、いろいろ会話するのにもよろしいかと存じます。

そして3冊目は、『バスザウルス』(亜紀書房)でございます。

こちらも、先ほどの『きいろいバス』と同じ、役目を終えて廃車となったバスの物語でございます。

『海獣の子供』で人気の漫画家が圧倒的画力で描く、不思議でやさしい夜の絵本

バスザウルス

森の中に打ち棄てられた1台のバス。
何十年もの間、忘れられて、錆びて、雑草や蔦がからまって、もうボロボロ。
ある日、とうとう手がはえ、脚がはえ、バスザウルスになって動き出した!

初めて歩いて疲れたバスザウルスがバス停で休憩していると、乗り込んできたのはおばあさん。
それから毎晩、決まった時間におばあさんを乗せてバスザウルスは夜をゆく。
だんだん乗客も増え、見えるもの、見えざるものを引き連れていく。

でもある晩、おばあさんの姿が見えなくなった。
バスザウルスはくる日もくる日もおばあさんを待ち続け……。

作・絵は、『海獣の子供』などで人気の漫画家の五十嵐大介さまでございます。絵本も何冊も手がけられております。絵がとにかく素敵なのでございます(大人好みかも…)。森の中で捨てられ長い時間が経ちボロボロになり、足が生え、尻尾が生えたバスの姿がとても魅力的でございます。

お語はというと…、長い間忘れられていたボロボロのバスが「バスザウルス」となって深夜の街を歩きまわっていると、バス停のところで、ひとりのおばあさんが乗車してきます。それから、毎日、同じ場所で同じ時間にお婆さんを乗せましたが、ある日を境におばあさんは姿を見せなくなってしまいます。すると、バスザウルスは…。というお話でございます。(続きはぜひ、絵本でご体験くださいませ)

 

 

以上3冊、少し年齢層高め(小学生)、大人にもおすすめの絵本かと存じます。絵本好き、バス好きのパパママにはぜひ親子で読んで頂きたい、おすすめのバス絵本でございます。

N田N昌

絵本トレンドライターとして絵本の最新情報を発信。
放送作家、絵本作家、絵本専門士としても活動中でございます。

@NtaNmasa

 

(画像は、イラストレーター・作家の網代幸介さんによる著者肖像画)

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