夏休み!「絵日記の絵本」特集
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今回は夏休みということで、普段なかなかお目にかかる機会の少ない「絵日記の絵本」について特集させていただきます。
ご紹介する前に……。昭和世代のわたくしなどは、夏休みといえば「絵日記」でございましたが、最近の小学校では宿題が減ってきているそうでございます。絵日記の宿題も減っているそうでございます。ひょっとしたらイマドキの小学生の中には“絵日記”自体を知らない子もいるのかも、でございます。減っている理由としては、家庭の多様化、忙しさへの配慮。さらに、プライバシーや安全面の配慮、「どこへ行った」「誰と会った」などを書かせることで、個人情報が外部に漏れる懸念などがあるからだそうでございます。これも時代なのでございましょうか……。
そうしたなか、絵日記文化を絶やさないため、絵日記文化を伝えるためにも、絵日記絵本を是非お子様と共にご体験いただければと存じます。
ナンセンスの神様、長新太流「絵日記絵本」は……?
まず、絵日記の絵本で頭に浮かんだのが個人的にも大好きな長新太さまの『くもの日記帳』(絵本塾出版)でございます。去年(2024年)、絵本塾出版から復刻されました。
余談ですが、絵本塾出版では長新太さまの本をいろいろ復刻させております。長さまの代表作でもある『ちへいせんのみえるところ』を今年復刊。さらに、長さまが生前に残した未発表のラフに荒井良二さまが絵を描いた超贅沢コンビのナンセンス絵本『にゅーっ でたよでたよ』も今年、出版されております。
長新太さんの絵本(絵本塾出版)
もう少々脱線させていただくと、今年は長新太さん没後20年でございます。様々なところで追悼イベントが行われております(今後も行われるはずでございます)。ちなみに、子どもの本の専門店「クレヨンハウス」さまでは、没後20年哀悼フェア『長新太さんはすごい! 子どもたちが好きなわけだ。』を開催中でございます。また、このフェアにはクレヨンハウスだけでなく、全国85の書店さまが参加されているそうです。是非是非、足をお運びいただければと存じます。
本題に戻りますと…。こちらは、「くも」といっても「蜘蛛」ではなく「雲」の描いた絵日記でございます。さすがナンセンス絵本のレジェンド、長さまでございます。ぷかぷか空を流れている雲の日常がまさに絵日記形式で綴られております。日常といってもただの日常ではないのが長さまでございますが。いろんな形(モノ)になって、いろんな所にいって、いろんなことをするのでございます。ある日は、入道雲になって雷をおとしたり、ある日は、ハワイの上に行ったり、かき氷の中に入ったり……。

まさにナンセンス絵本の醍醐味を味わえる絵本でございます。
こちらを読まれたら、お子さまも「わたしも、ぼくも、絵日記書きたい!」と思うこと間違いナッシングでございます。学校に提出しなくても是非是非、描いて夏休みの思い出にしていただければと存じます。
そしてもう一冊。こちらも長新太さま。『ヘンテコどうぶつ日記』(理論社)でございます。1989年に出された幼年童話でございます。
ヘンテコゆかいな動物絵日記
こちらは、みなさまお馴染みの動物たちの絵日記でございます。絵本同様、長新太ワールドが存分にお楽しみいただけます。幼年童話といっても、短いお話が全部で6つ入っておりますので、6冊の絵本という感じでお楽しみいただけるかと。日記の作者(主人公)は、お馴染みの動物たちではございますが、お話(設定)は、バスの運転手のタヌキが怪獣を乗せて大変なことになったり、ゾウが大きな魚に鼻を食べられたり、中身は奇想天外、長新太節が炸裂でございます。ナンセンス&シュールが存分にお楽しみいただけるかと存じます。
次は1994年に出された『おさる日記』(偕成社)でございます。
絵は、人気絵本作家の村上康成さま。そして文は、和田誠さまでございます。和田誠さまは、イラストレーター・グラフィックデザイナーとして知られ、200冊以上の著作を残されています。「週刊文春」の表紙を長年担当されていたので、そちらでご存じ方も多いかと。また、エッセイストや映画監督としても活躍、ユーモアと知性あふれる作品で多くの人々を魅了した日本を代表するクリエイターのおひとりでございます。今作のように絵本の文章だけでなく、文、絵両方を担当された絵本、谷川俊太郎さまとコンビで絵を担当された絵本、いろいろ出版されております。余談ですが、料理愛好家、平野レミさまの夫、女優の上野樹里さまの義父でもございます。
絵日記の作者(主人公)は、小学生の男の子、男の子の父親が1匹のサルを家に連れ帰るところから始まるお話でございます。猿はどんどん成長していきます。ところが、その猿はどんどん男の子(人間)に似ていきます。そんなサルと男の子の成長を綴った物語(絵日記)でございます。と、思っておりましたら、とんでもないラストがおまけに付いてくる絵日記絵本でございます。さすが、和田誠!と感服すること間違いナッシング。絵は村上康成さま、文は和田誠さまという、大人も楽しめる超贅沢な絵日記でございます。

最後にご紹介するのは、『ソフィー・スコットの南極日記』(小峰書店)。オーストラリアの絵本でございます。こちらは、「絵日記」というより「絵旅行記」と言った方がよろしいかもでございます。
9歳のソフィー・スコットの わくわく、どきどき 南極冒険絵日記
9歳のソフィー・スコットは、船長さんのパパといっしょに南極にいくことになりました。氷山にびっくりしたり、ペンギンやアザラシやシャチとであったり、友だちができたり、オーロラに目をみはったり、猛吹雪にあってパパの船にもどれなくなったり……わくわく、どきどきする毎日です! この本の作者、アリソン・レスターはオーストラリアの初代〈子どものためのローリエット(桂冠作家)〉に選ばれ、遠征隊の研究員として南極にいきました。この作品では、レスターの分身ともいえるソフィー・スコットが、好奇心いっぱいのまなざしで、驚きにみちた南極をながめ、日記に記します。レスターは、豆知識ももりこみながら、親しみやすく、美しい、南極物語を書きあげました。
父親に南極に連れて行ってもらった少女の、その30日間の道中が詳細に綴られております。その道中で起こったこと、その時の女の子の気持ちがリアルに描かれております。それもそのはず、作者のアリソン・レスターさまが、実際にオーストラリア南極遠征隊の研究員として南極へ行ったその体験がベースになっているのでございます。
物語の中では、オーロラを初めて見たり、ペンギンと出会ったり、友だちができたり、猛吹雪にあったり、ワクワクドキドキはもちろん、図鑑を読んでいるような気分になるくらい、とにかく情報(雑学)が満載なのでございます!知的好奇心を存分に満たしてくれること、間違いナッシングでございます。

さらに、作者のアリソン・レスターさまが実際に現地で撮った写真、レスターさまが旅行の間、世界各地の学校や家庭に送ったメールをもとに子ども達が描いてくれた絵もたくさん載っております。
是非是非、「絵日記」を描きたくなる、旅行(冒険)に行きたくなる絵本、ご体験くださいませ。

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