【ふわはね絵本のある時間】8月におすすめの本
絵本講師として10年以上ご活躍中のふわはねさん。絵本講座や絵本コンサル、絵本の読み聞かせ会などを年に200回以上こなしています。そんなふわはねさんに季節にあった絵本と読み聞かせ会の流れについて語ってもらいました。
二十四節気(にじゅうしせっき)を意識してテーマを組み立てる
二十四節気とは…一年を12か月さらにその半分、24個に分けた季節を表す名称です。
8月では…
立秋りっしゅう(8月7日)暑さがピークを迎えていますが暦の上では秋を迎えます。この日を境に暑中見舞いは残暑見舞いに。
処暑しょしょ (8月23日)暑さが止まるという意味の処暑。日中はまだまだ暑さが続きますが朝夕頬にあたる風や、耳に届く虫の声に秋の気配を感じる頃です。
こちらの2点を意識しながら絵本のテーマを考えます。
親子読み聞かせ会<想定>
- 対象年齢:0歳~5歳
- 時間:30~40分程度
読み聞かせのはじまりは「いつもの手遊び歌」から
さぁ、絵本とお歌の「ふわはね絵本のある時間」。実際に「読み聞かせ」会をするイメージで流れをご紹介します。
始まりはいつも同じ手遊び歌を歌っています。
♪はじまるよったらはじまるよ はじまるよったらはじまるよ
いーちといーちでにんじゃだよ ドロン!
始まりと終わりの大切さを2月に書きました。
【ふわはね絵本のある時間】読み聞かせのはじまりは「いつもの手遊び歌」から
そして毎回初めに読む絵本もあります。
【ふわはね絵本のある時間】同じ絵本を読み続けるよさ『こんにちは』
さあ、今月も絵本の時間を始めましょう。
まずは【季節の絵本】から
これを読まずに夏は終われません『かにこちゃん』
暦の上では秋といえどもまだまだ暑さはピーク。
この絵本を読まずして夏は終われません。
『かにこちゃん』
朝日と共に起きだし波とたわむれ砂山のぼり…。
のぼって みよう すなの やま すこ すこ すこ すこ
音とリズムがとてもよく、大好きな人の声はその耳に心地よく届き、人の話を聞くという力となります。ぜひ子ども達をおひざにのせてお日さまの色と共に楽しんでほしい一冊です。
<読み聞かせ時間目安 1分10秒>
赤をテーマにした絵本で、赤いカニを主人公に、朝日がのぼり夕日が沈むまでの海辺の一日をダイナミックに表現しています。
リズミカルで想像力をかきたてる豊かな文章にあわせて、絵本のなかをあちこちと動き回る、かわいいかにこちゃん。かにこちゃんに打ち寄せる波しぶきや、燃えるような赤い夕日など、魅力あふれる絵でかにこちゃんの一日を描きます。
乳幼児向け「くもんのはじめてであうえほんシリーズ」第1弾として、岸田衿子・堀内誠一の優れた絵本を復刊しました。
1967年に世界出版社より刊行された『からーぶっくふろーら かにこちゃん』を大幅に加筆・修正したものです。1987年より公文式教室の読書教材に収録され、以来、多くの子どもたちに喜ばれているお話です。
台風の度に思い出す絵本『たいふうがくる』
そして8月23日から処暑(しょしょ)になります。
あまり聞きなれない言葉かもしれませんが夏から秋へと季節が変わる頃です。
この時期は台風が起こりやすいといわれます。台風の日の絵本があるのをご存知でしょうか。
『たいふうがくる』
台風が近づくたびにこの絵本を思い出します。台風が心配で窓の外を覗く自分が表紙の男の子と重なります。
浮き輪を持ち窓の外を心配そうに見る男の子。風になびくカーテンが台風を知らせます。
黒、墨一色で描かれたみやこしさんの絵は、台風の訪れと共に海に行きたかったぼくの心の動きをも繊細に表します。みやこしさんの絵本の世界は唯一無二で、子どもも大人もその世界へふわっと誘いその時間を共有します。
そこは少し不思議で不安で心細さを感じながらも優しい。大きな被害は困るけれど台風が来るたびに本棚から出番を待つこの本があります。
<読み聞かせ時間目安 2分20秒>
【手遊び歌絵本】
アレンジがきいてさらに楽しい手遊び絵本『りんごごろごろ』
子ども達の大好きな手遊びが絵本になりました。
フランス民謡「フレールジャック」のメロディで歌うこの手遊び。
♪りんごころころ
みかんかんかん
ピーマンピーピー
トマトとことこ
と韻を踏んだ言葉が歌声にのり、そこに手遊びが重なり楽し~い!
お馴染みのメロディに身近な果物や野菜、楽しい手遊び。森あさこさんの優しく少しユーモラスな絵がぴったり。ご家庭でお話し会でぜひ楽しんでください。
<読み聞かせ時間目安 1分10秒>
【旬の絵本】
旬をいただきます『スープになりました』
旬の食べ物について最近とても意識して食べるようにしています。
旬の食べ物はたくさん採れるので安いだけでなく、美味しくその栄養価も高いと言われます。
そしてその時期に適した栄養を持ち、なおかつ自然に育つということは無理をさせていないということ。それは安全へとつながります。
どんなことにも旬があり、子ども達を見ていても、興味を持った時の吸収力はすごいですよね。
無理して覚えさせようとしていた時のあれは何だったんだ、というくらい。この絵本を見るといつも思います。
うまみと栄養をぎゅっとつめ愛情をまといスープとなる。浮世絵の手法で摺られた木版画のこの絵本を読んでいると、その温もりまでが感じられ、大好きな人の声を通して記憶とリンクし、味覚までも刺激します。
<読み聞かせ時間目安 1分30秒>
やりたいの力は何ものにも勝る『ピーレットのやさいづくり』
ピーレットとピフは畑を耕し、種を撒き水をやり…
何度も失敗し、カラスやにわとりたちに邪魔をされ、その度に自分で考え工夫をし乗り越え育つ野菜たち。やりたいと思う気持ちは最強の力となります。
家族という最小単位の社会の中で失敗を繰り返し学び、経験値を上げ少し大きな保育園、幼稚園、小学校、中学校…へと社会を広げていく。そこでまた失敗し学び経験し、子どもは大人へとなっていくのではないでしょうか。
この絵本は私に改めて失敗して学ぶ事の大切さや子どものたくましさを見せてくれました。
<読み聞かせ時間目安 6分5秒>
ウェーデンから、とてもかわいらしい「やさいづくり」の絵本の登場です。
ピーレットは犬のピフといっしょに、やさいを育てることにしました。まずは畑をたがやして、それから種をうえ、芽がでてきたら草とりをして……。
作物を育てて取り入れ、売りに出すまでのハラハラドキドキの過程を、子どもの目線にそって表情豊かに、ていねいに描いた作品です。
一度見たら忘れられない魅力的な絵は、スウェーデンでは『長くつ下のピッピ』のさし絵でも知られる、イングリッド・ヴァン・ニイマンさんによるもの。描かれた畑をじっとみていると、つぼみがすこしずつ咲いていったり、細かい変化が周到につけられています。ぜひご覧になってみてください。
【伝える絵本】
本当に大切なことがシンプルに描かれた戦争の絵本『へいわとせんそう』
このテーマも8月には外せません。
『へいわとせんそう』
戦後75年。次の世代に伝える戦争の恐ろしさ平和の尊さ。
今私に出来ることはなんだろうと考えます。それは絵本を読むということ。
この絵本は、恐怖だけを植えつけるということなく、余白の中多くのことを感じさせてくれます。それは年齢や経験が進めば進むほどよりその奥の方までも見えてきます。本当に大切なことが年齢を問わず描かれている、すごい作品です。
<読み聞かせ時間目安 1分30秒>
くらべてみると、みえてくる。「へいわのボク」と「せんそうのボク」では、なにが変わるのだろう。同じ人や物や場所を見開きごとにくらべると、平和と戦争のちがいがみえてくる。これまでになかった平和絵本!
<本作に寄せて>
戦争が終わって平和になるんじゃない。
平和な毎日に戦争が侵入してくるんだ。 谷川 俊太郎
【行事の絵本】
特別な日の絵本『はなびのひ』
今年は花火大会、あるのでしょうか。日本の花火大会の起源は、江戸時代の八代将軍徳川吉宗の頃と言われています。
江戸ではコレラが流行し、たくさんの人が亡くなった。その慰霊と厄払いをかねて、現在の隅田川で花火大会をおこなったのが始まりとされている(『二十四節気のえほん』PHPより)
ぜひそんな願いや想いもこめて今年もあったらいいなぁという気持ちと、三密をさけるとなると難しいよなぁという気持ちに挟まれこんな絵本を開きます。
『はなびのひ』
お江戸のお話。花火職人の息子のぽんきちがお父ちゃんに夜食の握り飯を届けるというところから・・・。
花火の日の特別感。お江戸の町屋の面白さ。
かみゆいに傘屋に寺子屋にかるわざし…馴染みのない世界かもしれませんが、子どもたちは昔の文化や歴史に触れ少しずつこんな時代があったことをイメージすることができます。
たしろさんの描く動物たちが生き生きと絵本の中で個性的に生きていて、そして今なお続く花火という日のドキドキ感ワクワク感、日が暮れるのを待つ間の待ちきれない気持ち、そして上がる花火を目の前で見たときの音や色や周りの人達と一体になって驚いたり歓声をあげたり拍手をしたり。そんな特別な日がこの絵本には詰まっています。
今年は絵本でがまんかもしれませんが手の届くところにこんな素敵な花火の絵本がある幸せをかみしめて、今日も私は絵本を読みます。
<読み聞かせ時間目安 3分10秒>
【アンケートに寄せられた質問にお答えします】
4歳の娘と月に一度本屋さんへ行き、娘が選んだ絵本を一冊買うようにしています。
とても大きい本屋さんで絵本コーナーも広く冊数もかなりの量なのですが、展示や置いてある絵本の質もよく、この本屋さんならどれを選んでいいよ!と安心できる本屋さんなのですが、いつも一瞬で中も見ずに「これ」と選びます。
なぜそれを選んだのか聞いても明確な答えはあまり返ってきません。せっかく好きな本を選べる機会なのに、あっさりしすぎて親としては物足りなく感じてしまいます。
4歳で絵本を吟味して選ぶというのは難しいのでしょうか。何か意味があって選んでいるのでしょうか。このままのやり方でいいのか悩んでいます。
ご質問ありがとうございます。月に一冊好きな絵本を!素敵ですね。
もちろんまだまだ人生経験の浅い子ども達。たくさんある本からどれでも!というのは難しいかもしれません。
迷うお子さんには一緒に選んだり、大人が何冊かおススメしている中から・・・なんて方法もありです。
娘さんのようにサクッと決められるお子さんにはそれでいいのかと思います。
絵本は出会いです。どうしてその絵本にしたのか聞きたいのはこちら側の問題。
明確な答えが欲しいのは”大人”です。お子さんが「失敗した」と思ったら、次はもう少し丁寧に見てから慎重に買うようになるかもしれませんね。どんなことも経験だと私は思っています。
失敗したらいい。自分で選ぶ力をつけたらいい。自分はまだ4歳だけれど生きてきた感性で選んで欲しい。
親が望む言葉を探して言う子どもよりもとても素敵だと思います。
ぜひ毎月娘さんが選んだ絵本の棚を作ってあげてください。
そうすると今、娘さんが興味のあるものや面白いと思っているものがなんとなく見えてくるかもしれませんね。
気持ちを言葉にするのはまだ難しいかもしれません。でも少しずつプレゼンテーション力をアップさせてあげましょう!
どうしてこれが欲しいのか。自分にとって必要か。そんな力も絵本選びだけでなくお菓子を選ぶときなど遊びを通して身につくといいですね。
ご質問ありがとうございました。
ご感想ご質問募集しています。末尾のアンケートよりぜひお待ちしております。
ご感想も嬉しく読ませていただいています。ありがとうございます。
その他 8月の読み聞かせにおすすめの絵本
絵本の読み聞かせについて思っていること
絵本はコミュニケーションツールです。 絵本は子ども達の歩みを助け、その成長を促してくれるかもしれません。 しかしそこには読んでくれる人の温もりを通した生きた声が不可欠です。 人と人とが向かい合い、片手間にはできない読み聞かせだからこそ愛情が注がれるのです。 子どもの持つその心のコップを絵本を使って愛情で満たしてあげてください。大好きな人の声で温もりの中聞く美しく豊かなお話。それはあっという間の子育ての濃密な時間を助け、後にその子どもたちの長い人生の心の支えとなるでしょう。
ふわはね(内田 祐子)
大学で児童文学を学ぶ。2005年絵本講師1期生として絵本講師資格取得。関西を中心に企業での定期教室をはじめ、
【ふわはね絵本のある時間】では、読者のみなさんからの感想や質問を募集しております。アンケートよりご意見をお寄せください。
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