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パパも絵本を楽しもう!

【パパも絵本を楽しもう!】読み聞かせの達人パパが選ぶ3月の絵本

「子どもに読んであげる絵本を、パパが選ぶのってすごく楽しい。パパ自身がもっと絵本を楽しんだら、いろんなことを子どもと分かち合えるし、自分にも返ってくる。ママとパパ、複数の目線で選ぶと、子どもの本棚はすごく豊かになるんです。」  そう語るのは、イベントなどでの読み聞かせ活動歴10年以上、ロングセラー絵本の知識はもちろん新刊情報もいち早くキャッチしている読み聞かせの大ベテラン、奥平パパ。2児のパパでもあります。
たとえば、好きな詩を共有するように、パパも絵本を通して子どもたちに思いを伝えられたらいいですよね。
気負わず楽しく、パパ目線で絵本選び。奥平パパから子育て中のパパたちに向けて、絵本を選ぶコツと季節のおすすめ絵本を紹介します!

パパが選ぶ、3月に読みたい絵本

パパが選んだひなまつりの絵本

3月の絵本ということで、尊敬する石井桃子さんの書かれたこの作品をご紹介します。

母娘の雛人形をめぐる物語

三月ひなのつき

よし子はまだひな人形を持っていない。お母さんが規格品を買い与える気になれないからです。ひなまつりを通して母と子の心の交流をすがすがしく描いた童話。

自身が小さい頃におばあさんからもらった小さな雛人形は素晴らしいものだったけれど、戦争で焼けてしまった、でもそれがあまりによいものだったので、自分の娘には安易なものをあげたくないと思う母親、それでも自分の雛人形がほしいと思う娘。それぞれの気持ちがしっかり描かれていて、読後はとても優しい気持ちになります。母子家庭である母娘の暮らしぶりはとても慎ましやかですが、丁寧に生きていた、そんなことも、今はとても重要なことのように思えます。

おばあさんからいただいたお雛様が今のおかあさん、そして娘のよし子にどう影響を与えているかというおかあさんの考え、「日本一上等のものじゃなかったわよ。でも、心がこもってたから、そこに説明できないようなものがうまれたんだろうと思うの。・・・おかあさんが、おひなさまをだいじにした気持ち、おかあさんが、おひなさまを見て、いろいろ感じたこと、それが、みんな、きょう、おかあさんを助けてくれてると思うの。おかあさんのつくる服は、みんなが喜んで、お店で買うのより、ずっとたくさん、お金をはらってくださる。そして、よし子は学校へいってる・・」、ひな祭りというひとつの行事を通して気持ちのつながりを伝えていく、こういう丁寧なくらしを今一度思い起こしたいと思います。

絵は舞台芸術家としても知られる、朝倉摂さん。(色)鉛筆で描かれた絵は、ちょっと硬質な印象を持ちますが、カラーの挿絵はコントラストがあり、ハッとするくらい鮮やかです。

チェンジ・ザ・ワールド!

夏のオリンピック/パラリンピックは開催できるのでしょうか、ちょっと心配です。そもそもオリンピック/パラリンピックは、「日本が世界からどのように見られているか、日本の相対的な立ち位置を確認することのできる場である」とNHK番組「日曜討論」で為末大さんが発言されていました。これは、今回の森・前組織委員長の発言にはじまるゴタゴタを受けてのものですが、これらホモソーシャルにどっぷり浸かった一連の動きは、ずいぶん前から当たり前に「なくなった」と思っていたことがそうでもないんだと、僕自身にとっても、一人の男性として自分の考え方を含めて改めて振り返る契機にもなりました。男性保育士の友人からは、彼らがその世界では逆に男性であるがゆえの壁を感じていると聞いたこともあります。まだまだ世界には変えていかないといけないことが横たわっているのですね。
ご紹介するのは、こちらの本。

道を切り開いた女の子たちのリアルストーリー

世界を変えた100人の女の子の物語

Rebel Girl〈反骨心を持った、勇敢な女の子〉。世界各国で活躍した100人の女性の物語を美しい肖像画と共に紹介。世界を席巻したとびっきりのポジティブストーリーが日本上陸!

夢を持ち、自分の力を信じて道を切り開いた女性の話が100人分、詰められています。その最初に取り上げられているのがアウン・サン・スー・チーでした。改めて民主主義というものが何なのかを問われている今、ぜひアウン・サン・スー・チーからはじまる女性たちの生き方を読んでほしいと思います。この本が特に素晴らしいのは、取り上げられた100人の肖像画が、世界から集まった60名の女性イラストレーターによって描かれていること。細かく書き込まれシワの一本一本が再現されたもの、はたまた簡素化された線でシャープに表現されているものなど、多様な絵を見るだけでも楽しめます。先ごろ惜しまれつつ亡くなったRBGことルース・ベイダー・ギンズバーグも取り上げられていますよ!

安野光雅さんの遺した本

福音館書店から雑誌としてでている「こどものとも」。ときどきバックナンバーフェアみたいな形で過去の作品も入手できることがありますが、書店ではふつう最新号だけが手に入れることができます。そして今、店頭には、年末に亡くなった安野光雅さんの最後の作品『なぞなぞ』が並んでいます!(2021年3月号)。ぜひ記念に手にとってほしいと思いました。

なぞなぞ
こどものとも 2021年3月号

 

作・絵:安野 光雅

我が家にある安野さんの本で、特に思い出深いのが、『あいうえおの本』です。「あ」から「ん」まで、その言葉から始まる様々なものが描かれています。中心に書かれた絵〜例えば「あ」だったら「アンパン」や「蟻」、そしてその周りを囲む装飾と思われる部分にも、隠し絵がいっぱい。探し絵本だ、と高らかに宣言するのでもなく、そっと提示されているところがまたかっこいい。言葉を覚え始めた息子と、いろいろなものを探しながら読んだことを懐かしく思い出します。

ことばの美しさを感じられる1冊

あいうえおの本

「あ」はあんぱん、「い」はいえ……、左ページにはひらがなが、そして右ページにはその文字で始まるものの絵が、1見開きごとに描かれます。木で組み立てられ、木目まで美しく描かれたひらがなの文字と、どこかなつかしい日本の伝統的な形の絵がみごとに結びつきます。さらに、ページのまわりには文字に関連した飾りも描かれ、その中にも絵が隠れています。字を覚えるためではなく、ことばの美しさを感じることのできる1冊です。

2012年に放映されたNHKの番組「日曜美術館」で安野さんが出ている回が先日再放送されていました。東日本大震災のあとだったからか、最後に原発の再稼働や電気の不足の話になって、安野さんは「最近の(ぜいたくな)世界はあまり感心しない」と言ったあと、「電気がなくて暮らせない、不便であるという人がいるけれど、そんなことはないのではないか。人は何かがなくなったとしてもそれを余儀なくされたら、そのように生きていくはず、その中で掴み取るものがある、楽しさがあるはず。もっと地道に生きよう」ということを語っていらっしゃいました。ここでもやはり、丁寧に生きることの重要さを指摘されたような気がしました。

『ひなまつり ルンルンおんなのこの日!』ひな祭りのうんちくがいっぱいのこの本は、パパもきっと好きになる。

歴史を変えた50人の女性アスリートたち』『世界を変えた50人の女性科学者たち』この視点での本は他にも何種類かありますが、好きな切り口から読めます。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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