子どもの本の可能性に挑み続けた児童文学者、石井桃子さんの生涯
『クマのプーさん』『ちいさなうさこちゃん』『ピーターラビット』『ちいさいおうち』などの翻訳や、『ノンちゃん雲に乗る』『ちいさなねこ』などの創作物語で有名な石井桃子さん。
そればかりでなく、「岩波少年文庫」「岩波の子どもの本」の立ち上げ、家庭文庫の開設と普及など、編集者として、子どもの本の普及の実践者として、日本の児童書の世界に大きな功績を遺しました。
子どもの本の可能性に挑み、児童文学の礎を築いた文学者・石井桃子さんの生涯を、石井桃子さんが携わった本とともにご紹介します。
石井 桃子(いしいももこ)
1907年埼玉県生まれ。1951年に『ノンちゃん雲に乗る』で文部大臣賞受賞。1953年児童文学に貢献したことにより菊池寛賞受賞。童話に『三月ひなのつき』『山のトムさん』、絵本に『くいしんぼうのはなこさん』『ありこのおつかい』(以上福音館書店)、翻訳に『クマのプーさん』『たのしい川べ』(以上岩波書店)など多数。
<写真提供:(公財)東京子ども図書館>
生い立ち、運命の本との出会い
石井桃子さんは、1907年3月10日、埼玉県北足立郡浦和町(現在のさいたま市)で金物屋を営む旧家の6人きょうだいの末っ子として生まれました。
埼玉県立浦和高等女学校(現在の埼玉県立浦和第一女子高等学校)卒業後、1924年4月、日本女子大学校(現日本女子大学)に入学。
在学中から文藝春秋社を創設した菊池寛氏に英語力を買われ、外国の雑誌や原書を読んでまとめるアルバイトを始めます。
日本女子大学校卒業後、文藝春秋社に入社。
そして、1933年のクリスマスイブに、運命の本『THE HOUSE AT POOH CORNER(『プー横丁にたった家』の原書』と出会い、大きな感銘を受けて、翻訳を始めました。
そして、この最初の出会いから7年後、戦時中であった1940年に『熊のプーさん』が岩波書店から刊行されることとなります。
石井桃子さんが翻訳した、「クマのプーさん」シリーズ
「クマのプーさん」シリーズの決定版!
イギリスの詩人が幼い息子のために書いた楽しいファンタジー.クリストファー・ロビンが,クマのプーさんやコブタなど,大好きなおもちゃの動物たちとくり広げるゆかいなお話.
心がほんわかする本
ディズニーのアニメであまりにも有名になりすぎているので、原作を読んだことがない人が多いのではないか。話の中に出てくるクリストファー・ロビンは作者の息子、クマのプーさん・コブタ・イーヨーなどは息子の持っていたぬいぐるみ(巻末にこれらのぬいぐるみの写真がある)である。つまり自分の息子に向かって、普段一緒に遊んでいるぬいぐるみが活躍する話を語って聞かせたのが、この話である。だからわが子への愛情にあふれ、読んでいるとクスクス笑う箇所はあるが、ゲラゲラ大笑いするようなものではなく、いつの間にか心がほんわかしてくる本です。
(オカズさん 50代・パパ 女の子21歳、男の子18歳、男の子9歳)
石井桃子さんにとっての「運命の本」
おなじみのクリストファー・ロビンと仲間たちが住む森へゆくと,わたしたちはいつでもすてきな魔法の冒険に出会えます-.プーやコブタたちのところへ,はねっかえりのトラーがあらわれました.『クマのプーさん』の続編.
プーさんというとディズニーのイメージが先行する方も多いかと思いますが、本当のプーさんの方がずっと複雑で魅力的なお話です。
小さい子には文章が古風なことや、言葉遊びが難しいことで、
少し難解かと思います。
(だからといって新訳は望んでません。石井桃子さんの名訳を大事にしたいです)
でも、気長に読んであげることで、成長とともにどんどん深く楽しめるお話だと思います。
このお話の魅力のひとつは人間味(?)のある複雑な性格のキャラクター達です。
プーさんが自分の頭のわるさに結構なコンプレックスを持っていたり、
コブタが自分の臆病さを見抜かれぬよう必死になりつつ、みんなに讃えて貰いたがっていたり。
そして哲学的なラスト。
大人になってからも何度も読み返しては、
大人になるってこういう事かな、と自分に飲み込ませて切なくなっています。
(こみかんそうさん 20代・その他の方 )
80年記念の愛蔵版もぜひどうぞ
大きな絵と文字で、低年齢の子も読みやすい「はじめてのプーさん」シリーズ
石井桃子さん訳、くまのプーのはじまりのお話です。
「そうら、クマくんが、二階からおりてきますよ。バタン・バタン、バタン・バタン、頭をはしご段にぶつけながら、クリストファー・ロビンのあとについてね。」
こんなふうにはじまります。
クリストファー・ロビンのお父さんは、クリストファー・ロビンに「ひとつしてやってくれない?」とたのまれて、プーにお話をすることになります。
どんなお話かというと、「じぶんが出てくるおはなし。プーって、そんなクマなんだよ」。
つまりこれは、プーのためにお父さんが話した、プーが出てくるおはなしなのです……。
はちみつをたべたいクマのプー。
大きなカシの木の下で、蜂がブンブンいう音をきき、蜂っていうのはどうしてブンブンいうんだろね?と考えます。
そしてはちみつをとるために木にのぼりはじめますが……おっこちて失敗!
クリストファー・ロビンの助けを借りようと考えます。
(ここで、クリストファー・ロビンが「それ、ぼく?」とおそるおそるお父さんに聞いて、顔を真っ赤にするのがとても愛らしい場面です。)
プーが頭をひねって、風船をつかって、はちみつをとろうとします。
そのために自分を黒くぬって「黒雲」のふりをする……!?
クリストファー・ロビンでなくたって、「ばっかなクマのやつ!」と笑いたくなっちゃうかもしれません。
プーのへんてこな奮闘ぶり、詳細はぜひお話を読んでみてくださいね。
E.H.シェパードのカラー挿絵がふんだんに入り、絵童話のように読むことができます。
本書「はじめてのプーさん」シリーズは、石井桃子さんの名訳そのままに、一話ごとに楽しめるのがポイント。
言葉の言い回しはやわらかく、古めかしいと感じるところもあるかもしれませんが、全体的にのんびりとあたたかく響きます。
キャラクターの「プーさん」しか知らない方には、一度ぜひ手にとってほしいお話の世界です。
プーをはじめ、百町森のなかまたちがいきいきと暮らしているようすが、手にとるように伝わってきますよ。
はじめてのプーさん
くまのプーさんは、キャラクターではよく知っていますが、原作は読んだことがありません。
「クマのプーさん」「プー横丁にたった家」を読んでみたいとは思っているのですが、まだ読めておらず。
そんな折、「はじめてのプーさん」のシリーズが3冊出ているのを知って、まずこちらから読んでみたいと思いました。
お父さんが、クリストファーロビンにねだられて語るという設定でお話が始まります。
お話がちょうど良い長さだったので、読みやすかったです。
カラーの挿絵がたくさんあって、可愛かったです。
(クッチーナママさん 40代・ママ 女の子16歳、女の子13歳、男の子10歳)
「はじめてのプーさん」シリーズ全3巻、こちらもどうぞ!
初めての創作物語、戦争、そして農場・酪農経営
1934年6月から1936年6月まで新潮社で「日本少国民文庫」の翻訳・編集に関わったのち、児童図書室兼出版社「白林少年館」を立ち上げ、
編集者として『たのしい川邊』(1940年)、『ドリトル先生「アフリカ行き」』(1941年)の2冊を発行しました。しかし、その後は戦局の悪化もあり、白林少年館は解散となりました。
1942年、初めての創作『ノンちゃん雲に乗る』の執筆を開始。半年ほどでお話は完成しましたが、戦時中ということもあり、すぐには日の目を見ることはありませんでした。『ノンちゃん雲に乗る』が世に出るのは戦争が終わった後のこととなります。
1945年、宮城県栗原郡鶯沢村(現在の栗原市)で友人とともに土地を開墾し、農業を始めますが、経営は厳しいものでした。
東京の友人に預けてきた『ノンちゃん雲に乗る』が1947年出版され、ベストセラーになったことで、その印税を元に酪農も始めますが、様々な苦労があり資金不足に悩むこととなり、農業を始めて5年後、東京と宮城を行き来する生活となっていきました。
この時期に携わった本
大好き!子どもの頃の食わず嫌いを後悔。
ロングセラーですので、私が子どもの頃、図書館に数冊並んでいたような本だったと思います。
なのに、なぜか読んだことがありませんでした。
おそらく、明朝体?の線の細い活字がずらっと並んでいるのを見て、読み通せる自信がなかったのだと思います。日本の長編物語は悲観的で、欧米の物語にあるような前向きな姿勢がないという先入観もありました。
装丁も、挿絵もアーティスティックに振りすぎて、今の私にとっては好みなのですが、子どもの頃の私は魅力を感じなかったのでしょう。
もう少し文字の線が太い本はたとえ長編でもいくらでも読んでいたのですけどね…
さて、大人になってこの本を手に入れ、読んでみて、なぜ、子どもの頃に読まなかったのだろうと少し後悔しました。
主人公は子どもの頃の私にそっくりで、これほど共感できる相手もいなかったのではと思います。
雲の上の世界のできごとを描いたファンタジーであり、しかしそこで語られる内容はノンちゃんの日常であり…と、独特な構成が魅力的です。
また、ヨーロッパ的なファンタジーではなく「高砂のおじいさん」という極めて日本的な登場人物がノンちゃんと読者をファンタジーの世界に誘うのも素敵です。
真面目な優等生のノンちゃんと対照的な自由奔放なお兄ちゃん。高砂のおじいさんはお兄ちゃんの視点に立つことの大切さをノンちゃんに教えてくれます。立場の違いを考え、相手のことを思いやること。今の日本では果たしてどのくらいの大人がそれをできているだろうかと思います。
それから、「嘘をつかない」ということ。とても大事なことだと皆分かっているはずなのに、こちらも軽視している大人が多い気がします。
嘘をつかないという態度がどれほど大切か、そのことが非常に印象深く描かれている点も心に残りました。
最近、決してそのような教訓めいたことを表には出さずに、面白いストーリーの奥にそのような価値が感じられる物語の重要性が増しているような気がしてなりません。そのような意味でも心に留めておきたい作品です。
読み終えたあと何とも言えない気持ちになり、高校生の娘にも勧めました。娘も溜め息混じりに、この本が好きだと言っていました。
私がすっかり石井桃子さんのファンになってしまった一冊です。
(てんちゃん文庫さん 40代・ママ 女の子18歳、男の子15歳、女の子10歳)
白林少年館出版部で編集に携わった、今も読み継がれる名作
「沼のほとりのパドルビー」に住む名医ドリトル先生は,オウムのポリネシアから動物語を習い,世界中の動物たちから敬愛されています.ある日アフリカのサルの国から,ひどい疫病が流行しているから救ってほしいという訴えを受けた先生は,犬のジップたちをひきつれて冒険の航海に出発します.ドリトル先生物語の第1作目.
おもしろかったからつぎも読みます
ドリトル先生がどうぶつと話せるようになったからびっくりしました。
オウムのポリネシアは頭がいいと思いました。
かいぞくにつかまったらどうしようと思いました。
ドリトル先生はすごいです。
おかねもちになったらすぐにびんぼうになったからおもしろかったです。
おもしろかったからつぎも読みます。
(はなびや2号さん 10代以下・その他の方 )
「岩波少年文庫」「岩波の子どもの本」の立ち上げ
再び上京した石井桃子さんは、1950年より、「岩波少年文庫」の立ち上げのための編集企画を任されます。
また、1953年には、岩波書店の絵本のシリーズである「岩波の子どもの本」の立ち上げにおける編集も任されることになります。
「岩波少年文庫」を通して、世界の児童文学の古典と新しい傑作を日本に伝え、敗戦の傷が残る日本で生きる少年少女たちに、生きる楽しみと将来への希望を与えました。
そして、「岩波の子どもの本」を通して、次の世代まで受け継がれる数多くの名作絵本が、たくさんの人が買いやすい価格で出版され、「幼いころから絵本を読む」という幼児期の読書習慣が、文化として広がっていったのです。
「岩波少年文庫」「岩波の子どもの本」で石井桃子さんが携わった代表作
1950年12月25日に創刊された「岩波少年文庫」の記念すべき第1弾のうちの1冊
ノールウェイの農場に住む4人きょうだいは,両親といっしょに村じゅうの牛をあずかって,山の牧場で夏をすごします.オーラとエイナールは,雨の日も風の日も牛をつれて山の奥ふかく分け入り,牛追いという大仕事をやりとげます.ゆたかな自然にかこまれたこどもたちの素朴な日常生活を,あたたかく描いた名作.
疑似体験をしてもらいたい
ノールウェイの有名な作家が60年以上前に書いた物語です。
作者の子どもたちがモデルだそうです。
ノールウェイの農家が今でもこのような生活をしていないだろうし、まして日本の現代の子どもたちには想像もつかない生活です。
女の子と男の子が2人ずつの4人の兄弟が、いきいきと描かれています。
第一部は農場での生活が丁寧に書かれていて、何気ない毎日とどこにでもあるような兄弟の関係とそれぞれの子どもの性格が書かれています。
第二部は、山の牧場へ家族で移り、村中から牛ややぎを預けられ世話をします。
こちらは、どきどきするような出来事の連続です。
ここから物語が始まれば楽しく読めるかもしれませんが、子どもたちの性格や関係が丁寧に書かれているからこそ楽しめるのです。
最初は根気が居ると思いますが、このような物語を読んで、一緒に冒険し成長してもらいたいと思います。
両親を助け、水汲みや薪割り、牛追いをするのが10歳と8歳の男の子です。
読んでいると本当にそんな幼い子ができるのだろうかと思ってしまいます。
両親も子どもたちを信頼して任せます。
失敗しても叱ったりしません。
子どもたちは自分がどんなに役に立っているか実感していきいきと仕事をしています。
「人は、たのしいことも、つらいことも、あるがままにうけ入れなければならないのです」10歳の男の子がそう自分に言い聞かせています。
でも、子どもらしいところもたくさんありました。
8歳の男の子が書いた手紙はとてもつたないものです。
今の日本の8歳の子はもっとしっかりと書きます。
しかし、この物語の男の子たちはとても勇敢です。生きる力に満ち溢れています。
男の子たちが牛追いでもらったお駄賃の使い道に泣かされました。
妹たちやお世話になった人へ贈り物をし、お母さんにも欲しいものをなんでも買ってあげるといいます。
お母さんは涙を流します。
しばらく前に息子が、初めてもらったお給料でプレゼントを買うからねと言ってくれたことを思い出しました。
その言葉だけで嬉しいお母さんの気持ちがよくわかりました。
(おるがんさん 40代・ママ 女の子、男の子)
昔話よみやすい
昔話だと子どもに理解できないものもおおいですが
岩波の本はこどもでも楽しめると思います。
石井さんの文章が愛情があるので安心して読むことが出来ます。
絵も素朴でいいなとおもいます。
三つ話がはいっているので、夜の読み聞かせにちょうどいいです。
(もぐもぐもぐもぐさん 30代・ママ 男の子4歳、男の子1歳)
幼い日,本のぎっしりつまった古い小べやでひねもす読みふけった本の思い出―それはエリナー・ファージョンに幻想ゆたかな現代のおとぎ話を生みださせる母胎となりました.みずみずしい感性と空想力で紡ぎだされた,国際アンデルセン賞作家の美しい自選短篇集.
ファージョンの いろんなお話が楽しめます
ファージョンのお話は 語りで聞くことがよくあります
ムギと王さま 本の小べや1 の中には 14のお話があります
長いのや 短いお話も いろいろあります
声を出して読むのもいいですね~
子ども達に語ってあげたいな~
探しながら読んでいます
ムギと王さまも良いお話しです
本の小べや2も読んでみます
お話は 楽しいです
(にぎりすしさん 60代・その他の方 )
ピーターがある日,うす暗い小さな店で手に入れた古い小船は,なんと魔法の「とぶ船」でした.この船に乗ったピーターたち4人きょうだいは,古代のエジプトやウィリアム征服王時代のイギリス,さらには北欧神話の世界アースガルドにまで冒険旅行をします.作者が幼い息子のために書いた空想物語の傑作.
4人きょうだいは、とぶ船で時間旅行を続ける。ウィリアム征服王時代のマチルダを現代に連れてきたり、古代エジプトやロビン・フッドの時代ではどきどきの大冒険。歴史の舞台を駆け回るタイム・ファンタジーの傑作。
時空を超える船
冒険というテーマでのブックトークを担当した際に
指導いただいている先生より薦められた本です。
1939年に発表された、イギリスの作家による作品。
ピーター、シーラ、ハンフリ、サンディの4人兄弟の冒険物語。
上巻は、ピーターがとぶ船を手に入れるいきさつから始まり、
いくつかの冒険が展開していきます。
不思議なお店で興味を惹いた小さな船を買ったピーターは、
その船の不思議な力に気付きます。
それは、願うと、その船は大きくなったり小さくなったりし、
希望の時と場所へと連れて行ってくれるのです。
イギリスが舞台のため、その時空はイギリス人には馴染みのある時代や場所、
ということで、日本の子どもたちにとってはやや想像しにくいかもしれません。
でも、自由に希望のところへ連れて行ってくれる船なんて魅力的です。
また、子どもたちの冒険もスリリングです。
兄弟たちの個性も丁寧に描かれています。
やはり、下巻までしっかり読んでほしいですね。
(レイラさん 40代・ママ 男の子17歳、男の子15歳)
70年以上も色あせない、「岩波子どもの本」シリーズ第2回配本作
きれいなぴんく色の壁に、すてきな窓と玄関。小さいけれど、丈夫でしっかりしたつくりの「ちいさいおうち」がたっているのは、静かな田舎の丘の上。
朝になるとお日さまがのぼり、夕方にはお日さまがしずみ。
夜になれば、お月さまをながめ、遠くに見える町のあかりを見ながら想像をする。
春になれば、りんごの花が一斉に咲き、夏になると丘はひなぎくの花で真っ白になり。
秋には、木の葉が黄色や赤に染まり、冬がくると、辺りは一面の雪景色。
この、夢のように美しく変貌する自然の景色の中心にいる「ちいさいおうち」。
住んでいる人たちは畑仕事をし、子どもたちは池で泳ぎ、熟したりんごをつみ。
それらを、動かずにじっと見ています。
この幸せな光景がずっと続くと思っていたのに、ある日変化の時が訪れます。家の前にやってきたのは自動車。自動車はどんどん増え、やがてスチームシャベルが丘を切り崩し、道をつくり始めたのです! 「ちいさいおうち」の前に広い道路が出来上がると、あっという間に景色は変わっていきます。背の高いビルがたち、夜には外灯がつき、電車が通り、高架線が通り……。
そこにあるのは「時の流れ」。なにも変わらずにそこにいるだけなのに、どんどんみすぼらしくなっていく「ちいさいおうち」を見ながら、小さな読者は何を思うのでしょう。きっと同じようにしょんぼりし、ひなぎくの花が咲く丘を恋しく思うのではないでしょうか。
70年以上も前に誕生したこの『ちいさいおうち』は、アメリカを代表する絵本作家の一人、バージニア・リー・バートンの傑作絵本です。 細部に渡って考え抜かれた構図、デザイン、そして美しい色彩。多くは語らずとも、その思いがシンプルに伝わってくる文章。現在に至るまで、多くの表現者たちが影響を受けた1冊としてこの作品をとりあげるのも納得の完成度なのです。
2019年11月に、バートン生誕110年を記念して、より原作に使い色彩で美しく生まれ変わった改版が発売となりました。表紙の“HER-STORY”の文字、献辞の“To Dorgie”の文字がよみがり、巻末には、バートンの息子さんによるあとがきが収録され、よりこの作品を深く味わうことができます。かつて子どもの頃に読んできた大人の方も、もう一度読み直してみることをおすすめします。
自然と共に生きるしあわせ
私も娘も共に大好きな絵本。絵を見ているだけで、本当にゆったりとした温かい気持ちになれます。
気に入った本に出会うと、必ず1ページずつ絵を真似て、自分の絵本をつくる娘ですが、この本を読み終えた瞬間にも、「描いてみたい!」と、目を輝かせていました。
でも、表紙の絵を見ながら、「この人(バートン)のデザイン、ちょっとおかしいよね。だって、自然の木は、こんなふうにりんごが生らないもん!」なんて、アメリカを代表する絵本作家のバートンに向かって、少々の苦言も!!
りんご並木のすぐそばで生まれ、物心ついた頃からりんごの木に登って育った娘ならではの感性かもしれません。
だからこそ、ちいさいおうちの自然や田舎を思う心もよく理解できるのかな、と思います。バートンは、他の絵本の中でも、現代社会への警鐘を鳴らすシーンを多く取り入れていますが、ちいさいおうちの周りにも高層ビルが立ち並び、「もう いつはるがきて、なつがきたのか、いつがあきで、いつがふゆなのか わからない」都会へと変わってしまった寂しさを、娘もちいさいおうちの気持ちになって、感じていたようでした。
そして、ちいさいおうちがお引越しをして、再び、昔のようなしあわせな日々が戻ってきたとき、
「あっ、子どももいるよ。犬や猫も!」と、ちいさいおうちにも命が注がれたことを、心の底から喜んでいました。
「お日さまを みることができ、お月さまや ほしも みられます。そして、また、はるや なつや あきや ふゆが、じゅんに めぐってくるのを、ながめることもできるのです。」
そのことが、どんなにしあわせなことか・・・今まで深く考えたこともありませんでしたが、部屋の中や庭に陽射しが差し込み、夜は静かに星を見ながら眠り、季節の移り変わりを肌や目で感じることができるのは、とても、とても贅沢で、有り難いことなのですよね。
(ガーリャさん 40代・ママ 女の子6歳)
バージニア・リー・バートンさんとの共作、こちらもどうぞ
子どもの好奇心を刺激する、「岩波子どもの本」シリーズ第3弾配本作
語りつがれた日本の民話の中から《なぜ》のおはなし3つ.「おそばのくきはなぜあかい」「おししのくびはなぜあかい」「うみのみずはなぜからい」.初山滋氏の美しい幻想的な画面が子どもの夢を広げます.
モダンなイラストで楽しむ昔話
レトロな佇まいの表紙が気になって、手に取りました。
タイトルのお話のほか、「おししのくびはなぜあかい」と、「うみのみずはなぜからい」の、3つの昔話が入っていました。
最後のお話は知ってましたが、前の2つのお話は知らなかったので、知れて良かったです。
文章も読みやすく、イラストもおしゃれというかモダンでとても素敵でした。
(クッチーナママさん 40代・ママ 女の子16歳、女の子13歳、男の子11歳)
海外留学、児童文学の研究会結成、そして児童図書室の開設
1954年5月、岩波書店を退社し、ロックフェラー財団研究員として海外留学する機会を得ます。
約1年間、アメリカやヨーロッパの児童文学や児童図書館の活動、出版活動を見学し、欧米の子どもの本の現状を学びました。
翌年帰国した石井桃子さんは、鈴木晋一さん、瀬田貞二さん、松居直さん、いぬいとみこさんの5人で「ISUMI会」を結成し、日本の子どもの本を再評価するための研究を始めます。
1957年には、村岡花子さんやや土屋滋子さんたちと共に「家庭文庫研究会」を結成。翌年1958年に、荻窪の自宅の一室に児童図書室「かつら文庫」を開きます。
「かつら文庫」での家庭文庫活動は、『子どもの図書館』(岩波書店、1965年)にまとめられ、日本各地での家庭文庫活動の普及につながりました。
「かつら文庫」は1974に財団法人の認可を受けた公益財団法人「東京子ども図書館」へと引き継がれ、現在でも次世代を担う子どもたちのための大切な場所として、愛され続けています。
この時期に携わった本
「家庭文庫研究会」の働きかけで誕生した翻訳絵本
ねこを1匹ほしいおじいさんが、丘こえ谷こえ探しに出かけ、100まんびきのねこがいる丘を見つけました。世界中の子どもに愛され続けている絵本の古典です。
子どもの本の不思議
読み聞かせのお勧めリストには必ず入っている本ですし、石井桃子さんの訳なので、読んでみました。
本の見返しの部分の猫の絵や、白黒で描かれた本文の絵がとても斬新で素敵でした。
なるほど、これは読み継がれるのも当たり前だよね、と思っていたら、途中から展開に目が点になってしまいました。
あんなにたくさんいた猫が、消えてしまった・・・それで、「きっと、みんなでたべっこしてしまったんですよ」「おしいことをしましたねぇ」なんて、のんきな反応でいいの~?
でも、大人がショックを受ける程には、子どもはひどいとは思わないみたいですね。
これが、子どもの本の不思議というところでしょうか。
自分でも子ども時代に読んでみたかったですね。
(金のりんごさん 40代・ママ 女の子12歳、男の子9歳、男の子7歳)
子どもの心に魔法をかける、石井桃子訳の名作絵本
やや大雑把なタッチの絵と、とても大きな文字で、独特の雰囲気を醸し出しています。ひとつひとつ、眠りについていく様子を読んでいくと、心が落ち着いてくるのがよくわかります。文章に無駄がなく、美しい詩を読んでいるようです。
最後に神様へ祈りを捧げる場面では、子供たちへの想いがこもります。ぜひ寝る前に子供に読み聞かせたい作品です。
神様の創った本
本を読み出すと止まらない娘なので、
我が家では寝る前に本は読まないのですが
この本は特別のようで、最近は寝る前の一冊になっています。
初めて読んだ時、娘は夢見るように深呼吸し
「この本って、神様が創ったのかしら」といいました。
読み始めてすぐに、神様を強く感じたらしいのです。
最後に本当に神様が登場したので、娘と一緒にびっくりしました。
娘いわく、この本を読むと、なんだかゆったりした気分になってくるそうです。
眠りを誘うのに最適に言葉が選ばれているのでしょうか。
石井桃子さんの訳は、本当にすばらしいです。
途中、ハチが巣でなく花の中にいるのが、娘としてはしっくりこないらしいですが(眠るためには巣に帰るはずなのにとのこと)
とにかく、ここ最近で一番お気に入りの一冊です。
(やこちんさん 30代・ママ 女の子4歳)
家庭文庫の普及のきっかけとなった、「かつら文庫」での7年間の活動記録
石井桃子集 5 子どもの図書館
出版社: 岩波書店
1950年代半ばに欧米のすぐれた公共図書館の児童室を視察した著者は,日本の遅れを痛感し,自宅を開放して58年に小さな図書室を開いた.本を読む子どもたちのいきいきとした表情と喜びを描き,話題になった実践記録『子どもの図書館』(岩波新書,1965年刊)を,「かつら文庫」が今年40周年を迎えたのを機に増補する.
2008年 101歳で永眠のその時まで挑み続けた生涯
1994年には、8年かけて書き上げた自伝的長編小説『幻の朱い実』(岩波書店)を刊行。
1998年9月から1999年3月の間には、全7巻の全集『石井桃子集』も手掛けました。
児童文学者として長年に渡り子どもの本の世界に多大な貢献を与えたことに対して、第1回子ども文庫功労賞(伊藤忠記念財団・1984年)、日本芸術院賞(1993年)、朝日賞(2007年度)など数々の賞が送られました。
2008年、101歳で永眠するそのときまで、子どもたちに豊かな文学を届けること、子どもにとって一生の友だちである本との出会いのために、子どもの本の可能性に挑み続けた生涯でした。
この時期に携わった本
読売文学賞受賞。8年の歳月をかけて書き上げた、早世した友との交流を描く長編小説
晩秋の武蔵野,明子は,カラスウリの実がたわわに垂れる家で女子大時代の先輩蕗子と運命の再会をした.満洲事変から破局へとすすむ激動期に,深い愛に結ばれて自立をめざす2人の魂の交流を描く.児童文学にうちこみながら,心の奥底に温めつづけた著者生涯のテーマを,8年かけて書き下ろした渾身の長編1600枚.全2冊
石井桃子さんの功績をまとめた全集、第1弾
戦時中に執筆し,戦後ベストセラーとなって脚光を浴びた作品.小学2年の少女ノンちゃんの眼を通して,ふつうの家庭の幸せが温かく描かれる.おひなさまが欲しい女の子の繊細な胸のうちをつづった小品を併収.
なんとも素敵な児童書です
児童文学者石井桃子の功績は数多ある。
海外の児童文学の翻訳、家庭図書館の活動、作家としての執筆。
なかでも、この作品は石井桃子の代表作でもある。
初版の刊行は1947年、戦後間もない時期である。出版社が変わって刊行された1951年には第1回芸術選奨文部大臣賞を受賞、その後映画にもなった程だから大いに読まれた。
今はこうして彼女の著作集の第1巻に収録されてはいるが、もっと広く読まれてもいいのではないか。
決して古びていない、いい作品だ。
主人公は小学2年に進級したばかりの女の子、田代信子ちゃん。ノンちゃんと呼ばれている。
ある日ノンちゃんが目を覚ますと、お兄ちゃんとお母さんがいない。ノンちゃんには内緒で、東京に行ったらしい。(ちなみにいうと、ノンちゃんは小さい頃に赤痢になったので今は東京から少し離れた土地で暮らしている)
ノンちゃんは拗ねて、ずっと泣きっぱなし。
家も飛び出して、なんと池に映った雲の中に飛び込んでしまうのだ。それがタイトルの由来。
雲の飛び移ったノンちゃんはそこでおかしなおじいさんに出合って、自分のことや家族のことを話すことになる。
話すうちに、大嫌いだったお兄ちゃんがちっとも嫌いでなくなったり、よくできると思っていた自分がそうではないことに気がついたりする。
特にノンちゃんのお父さんはのんきそうだが、しっかりと子どものことを見ている。
子どもの躾とはこうやってするのかと感心する。
こういう作品がもっと読みやすい文庫本なんかで刊行されたらどんなにいいだろうに。
(夏の雨さん 60代・パパ )
石井桃子さんの功績をまとめた全集
2006年、99歳で改訳新版を出版
いつも色あせた青い服を着ているワンダが「あたし,ドレスを百まい持ってる」と言い張るので,クラスの女の子たちはからかわずにいられませんでした…….『百まいのきもの』,50年ぶりの改訳新版.
夢をみること想像すること
たとえ貧しい暮らしをしていても、たとえ友達にからかわれる
ことがあったとしても、ワンダのように、夢をみることができて
想像することができたならば、きっと大丈夫。
そう思います。
1まいきりしかドレスがなければ、想像してみることですよね。
百まいのドレスを。
実際に百まいドレスを持っている人よりも、遥かに素敵な、色鮮やか
なドレスを描くことができるだろうなあって思います。
本当の貧しさというものは、生活のことではなくて、心のことかも
しれない。ワンダの暮らしぶりを想像することができずに、からか
って平気でいられるようなペギーみたいな人のことかもしれない。
最後に、ワンダの描いた百まいのドレスの絵にふれて。
からかっていたペギーやマデラインも自分のありようをふりかえる
ことができたから、安心しました。
(ぽこさんママさん 40代・ママ 女の子4歳)
え、この本も!?石井桃子が遺した名作
「子どもの文学はおもしろく、はっきりわかりやすく」という規準を示して、子どもの本の世界に大きな影響を与えた石井桃子さん。
出版から長い年月を経った今も多くの人が読み親しんでいるベストセラーを、数多く遺しています。
「え、この本も石井桃子さん!?」と驚かれる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
次の世代まで読み継ぎたい、石井桃子さんの名作をご紹介します。
可愛いだけじゃない、ユーモアや皮肉もたっぷりの奥深い名作
いたずらっこのピーターは、お母さんの言うことを聞かず、マグレガーさんの畑に忍び込みます。れたすやさやいんげん、はつかだいこんを食べた後、ぱせりを探していると、目の前に現れたのはマグレガーさん。怒ったマグレガーさんはピーターを追いかけます。何度かマグレガーさんに捕まりそうになりながら、上着も靴もなくして命からがら逃げ帰ったピーター。疲労困憊のピーターに、お母さんは煎じ薬を飲ませてくれました。
子供には読み聞かせで
4歳と2歳の子供達に読みました。
ピーターラビットシリーズは、本の大きさからして幼児向きかと思われそうですが、物語が長いので2歳の娘は最後まで聞くこともあれば、途中でどこかへ行ってしまうこともあります。
4歳の息子は最後まで聞いてくれ、楽しんでいます。
私自身、小学校2年生の時に学校の図書館で手にとってみたのですが、一人では読むのが難しかったのを覚えています。その時は「絵本すら読めないバカな私…」と落ち込んだのを覚えています。
現在読み聞かせをして思うのは、ピーターラビットシリーズは、普段使わない言葉が時々でてきて、結構難しいです。
ですから小学校低学年までは、自分で読ませるよりも、読み聞かせてあげてほしいと思います。
(土筆さん 30代・ママ 男の子5歳、女の子3歳)
『ピーターラビット』シリーズこちらもどうぞ!
オランダ語の「ナインチェ」を「うさこ」と名付けた、石井桃子さんの翻訳の妙
「ふわふわさんに ふわおくさん
2ひきの うさぎが すんでいます。」
とっても耳馴染みのあるこのフレーズ。世界40言語以上に翻訳されているディック・ブルーナ「うさこちゃん」シリーズの代表作です。
ある晩、仲良く暮らすふたりのおうちのお庭に、天使がやってきます。赤ちゃんが生まれるというのです。そうして誕生したのがうさこちゃん。動物たちがうさこちゃんを見に、次々にやってきます。
「あかちゃんが おうまれになって おめでとう」
みんなとっても嬉しそう。だけど、うさこちゃんはくたびれて、こっくりこっくり。じきにおめめもふさがって…。
小さい頃から繰り返し読んでもらった、大好きなうさこちゃんの絵本。小さな四角いサイズ画面から、まっすぐこちらを見るうさこちゃんやそのお友達。可愛らしいお花や動物たち(洋なしの形はこの絵本で覚えたっけ)。めくるたびに目に飛び込んでくる鮮やかな色彩。シリーズは子どもの成長に寄り添いながら、たくさんのお話が生まれていき、子どもたちとうさこちゃんは、すっかりお友達になっていくのです。
そんなうさこちゃんが、みんなに祝福されながら登場するのが、この絵本。ママの語りかけも自然と優しくなっていきます。きっと我が子を重ね合わせているのでしょうね。小さい子どもたちにも、その空気が伝わり、とても心地の良い時間が流れます。
今でもうさこちゃんを見れば、お友達に再会したような気持ちになります。何年経っても色褪せないブルーナの絵本の世界。ぜひ親子でゆっくり味わってくださいね。
大好きな赤ちゃん絵本
私は個人的に赤ちゃん絵本と言われる絵本が大好きです。
この「ちいさなうさこちゃん」もその中の大好きな1冊です。
ふわおくさんに天使がささやきます。
もうすぐ赤ちゃんが生まれますよって。
なんて幸せなことでしょう。
うさこちゃんの誕生です。
ミッフィーとしてたくさんの絵本やお話やグッズがあふれていますが、
この絵本がその原点なのでしょうね。
うさこちゃんという世界中のアイドルを自分の娘と重ねてしまう、親バカな私。
はじめての赤ちゃんにプレゼントしたい絵本、子どもを授かる幸せな気持ちをかみしめながら読んでいただきたいそんな絵本です。
(ハッピーカオリンママさん 30代・ママ 男の子7歳、女の子6歳、女の子3歳)
まだまだある、石井桃子の素晴らしい創作物語
囲炉裏端はなくなっても
原田泰治さんの描く日本のふるさとの情景が浮かんでくるような作品。石井桃子さんの文章も耳に心地よく、とても穏やかな気持ちになれます。お話自体は短く、決して派手さはないけれど、「やかまし村の春・夏・秋・冬」の日本版とでも言えるような絵本です。
大人も子どもも季節を五感で感じながら生きていた時代。春には春の、秋には秋の楽しみがあり、そのすべてが四季の自然や行事と結びついていたんですね。そんな中で、のびのびと、感受性豊かに育っていく子どもたち。大切なことはみんな周りの人たちや自然が教えてくれていたんだな、と思います。
海外で生まれ育った娘には、「じゅうばこ」や「むしろ」など、初めて聞く言葉もあり、私たち大人が読むのと違って、懐かしさよりも真新しさを感じたかもしれませんが、昔も今も変わらぬ子どもたちの元気な姿には、くすくす笑いながら共鳴していたようです。
囲炉裏端はなくなっても、リビングに家族が集う時間、大切にしたいですね。
(ガーリャさん 40代・ママ 女の子6歳)
「やま三部作」こちらもどうぞ
はじめて出会う物語絵本として最適
繰り返しの言葉が楽しい赤ちゃん絵本から、ストーリーのある物語の世界への入口に最適のおすすめ絵本です。
主人公の子猫が子猫にとったら大大冒険を経験します。最後は母さん猫に助けられ安心する。行って帰ることの繰り返しで成長していく、幼い子の気持ちに添った、お話です。
古い絵本なので、絵には時代を感じますが、今でも本当に子どもたちはよく聞きます。
(ハルクンさん 50代・その他の方 )
石井桃子さんの創作絵本、こちらもどうぞ
石井桃子さんのことをもっと知りたいあなたへ
日本における「子どもの本」の世界を切り開いてきた石井桃子さん。
どのような思いでその活動に携わってこられたのか、石井桃子さんをこんなにも動かしたものはなんだったのか。
そんな、石井桃子さんの想いをまとめたこの一冊を、ぜひお読みください。
子どもが本を好きになるには。翻訳、創作など、「子どもの本」の開拓者・石井桃子が伝える、心をゆたかにする本とのつきあいかた。大江健三郎との対談、講演録などを集成した初の談話集。
子どもが本を好きになるには?翻訳、創作、読み聞かせ…「子どもの本」の開拓者、石井桃子が伝える、心をゆたかにする、本とのつきあいかた。初のインタビュー・講演・対談集。大江健三郎(作家)、吉田洋一(数学者)、吉原幸子(詩人)との対談も収録。
「岩波少年文庫」創刊のころ
「岩波の子どもの本」の頃
はじめに魔法の森ありき
子どもに媚びないピーターラビットの物語
「ノンちゃん」が心に生まれたとき
一世紀という時のなかで
子どもと読書
幼児のためのお話
テレビでは代用できない
子どもに歯ごたえのある本を
子どもが読む本・聞く本(対談 大江健三郎)
子どもと図書館(対談 吉田洋一)
名作・名訳よ永遠に(対談 吉原幸子)
本との出会い・人との出会い(インタビュー 川本三郎)
雪が降っているのに、それは暖かい世界でした(インタビュー 金井美恵子)
石井桃子さんの声が聞こえてきそうな
本のタイトルに「石井桃子談話集」と付いているが、収録されているのは3つの対談、それと2つのインタビュー、それと聞き書きが数篇、さらにエッセイという構成になっている。
本のタイトルはそのうちのエッセイのひとつから付けられている。
興味をひいたのは、石井桃子さんの対談やインタビューの相手である。
大江健三郎、吉田洋一(この人は1898年生まれの数学者で、『零の発見』の著者)、吉原幸子(この人は詩人)、この3人は対談相手。
インタビューしているのは、川本三郎と金井美恵子(金井さんは作家)の2人。
対談はどちらがホストでもゲストでもなく、攻守互いにせめぎ合うような形になるが、インタビューとなるとやはりゲストである、ここでいえば石井桃子さんの輪郭から本質に至るまでもいかに浮彫りにするかが問われることになる。
そのあたりはやはり川本三郎さんはうまく、「本との出会い・人との出会い」と題されたインタビューでは浦和の生まれた幼年時代から日本女子大での学生生活、その後の編集者の時代、そして戦争、東北での農業生活とうまく話が聞き出せている。
最後は1950年に岩波書店に戻って少年文庫の編集に携わるところで終わってしまうのが、少し物足りたく、残念ではあるが、石井さんが観た映画の話などさすが川本三郎さんだ。
聞き書きの中で「本を読む」とはどういうことかと聞かれた石井さんは、「そういうことを考えたことがないくらい、あって当たり前のこと」と答えている。
そういう人だから、本のこと、子供たちのこと、図書館のこと、をずっと考え続けてこられたのだろう。
(夏の雨さん 60代・パパ )
石井桃子さんが遺した本、想い、言葉
もし、石井桃子さんがいなかったら、日本における「子どもの本」は全然違うものになったことでしょう。
(絵本ナビも存在しなかったかも?)
それほど、日本での子どもの本の世界に大きな影響を与え、「子どもが心から楽しんで読む本」を届けるために多大なる業績を遺されたのです。
最後に、これほどまでに子どもの本を想い続けた石井桃子さんが遺した有名なことばを、全ての子どもたちと、子どもに関わる大人たちにご紹介します。
子どもたちよ
子ども時代を しっかりと
たのしんでください。
おとなになってから
老人になってから
あなたを支えてくれるのは
子ども時代の「あなた」です。
石井桃子
2001年7月18日
参考文献:
『石井桃子のことば』(中川李枝子、松居直、松岡享子、若菜晃子ほか) 新潮社
『プーと私』(石井桃子) 河出文庫
編集協力・執筆:洪愛舜(ほんえすん/ライター・編集者・絵本作家)
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