【クリスマス】贈り物には、マーガレット・ワイズ・ブラウンの耳心地のいい文章で味わう絵本を…
「まちにまったクリスマス・イブの夜。あたりはしずかに雪がふっています……」
クリスマスの気分にぴったりくるのは、マーガレット・ワイズ・ブラウンの耳心地のいい文章で味わう絵本。『クリスマス・イブ』『ちいさなもみのき』などのクリスマスのお話だけでなく、長く愛され続ける『おやすみなさい おつきさま』『たいせつなこと』も合わせて贈りものにするのはいかがでしょう。年齢を越えて、きっと喜んでもらえるはずです。
耳心地のいい文章がクリスマスの気分にぴったり…「マーガレット・ワイズ・ブラウンの絵本」
マーガレット・ワイズ・ブラウンのクリスマス絵本
静かで美しいクリスマス
まちにまったクリスマス・イブの夜。あたりはしずかに雪がふっています。「ねむるまえにみんなでしたへいってクリスマス・ツリーにさわっておねがいごとをしよう」。ねむれない子どもたちは、そっとベッドをぬけだして、階下へ冒険にでかけました。そこで子どもたちがみたものは…。『おやすみなさいおつきさま』で有名なマーガレット・ワイズ・ブラウンの遺作に、イタリアの舞台美術家出身のベニ・モントレソールが絵をつけた、静かで美しいクリスマスの絵本。
おとなが、静かに
お話に出てくる子どもたちと同じ、我が家は4人兄弟。ちょうどぴったりだな、と思いながら読み始めましたが。静かな、静かな、イブの夜のじんわり、あたたかい、お話。
我が家の4兄弟は、まだちびもいるので、このお話を、みんなでしみじみ味わうのはもう少し先かもしれません。でも、一番上の小学2年のお兄ちゃんは、ひとりでじっくり読んでくれるかな。
私としては、大人が、夜、温かいお茶を飲みながら、ゆっくり、自分の時間を過ごすときに、ぴったりの絵本だと思います。
(よにんこママさん 30代・ママ 男の子8歳、男の子6歳、女の子4歳、女の子1歳)
もみの木が家にやってくることを心から待ちわびているのは…
小さなモミの木は、ある日、男の人によって掘り出され、家へと運び込まれました。その家には病気で歩けない男の子がいたのです。男の子とモミの木はクリスマスを一緒に過ごします。そして冬が終わるとモミの木はまた森に返されるのです。それから何年もクリスマスが来るたびに、モミの木は男の子と共に楽しく過ごしました。けれど、ある冬、いつになっても男の人は、モミの木を掘り出しにはきませんでした。男の子が心配でたまらないモミの木は……。
クリスマスの空気
ひんやりとした、クリスマスの空気が、感じられる絵本でした。クリスマスの絵本も、毎年少しずつ手に入れたいと思っているのですが、この絵本もぜひとも手元に置きたいな。静かで美しくて厳かなクリスマスを手に入れることができるように思うからです。バーバラ・クーニーさんの絵もとても美しくていいです。
(ぽこさんママさん 40代・ママ 女の子3歳)
どんな夜に読んでも、心に染み入るロングセラー絵本
おやすみなさい、いい夢を見てね。
絵本を開けば、そこに広がるのは大きな「みどりのおへや」。
よく見れば、ベッドに寝ているのはうさぎのぼうや。
もう、寝る時間かな。
おへやには、絵の額がふたつ、赤いふうせんに、黒いでんわ。
こねこが二匹いて、素敵なお人形の家もあります。
おばあさんが編み物をしながら、見守ってくれています。
おつきさまもおやすみの時間。
ぼうやは、お部屋の中のひとつひとつに声をかけていきます。
「おやすみ あかりさん」
「おやすみ あかいふうせん」
こねこさんに、てぶくろも、とけいさんもねずみさんも。
ほらほら、だんだん静かになって……
この絵本を読んでいるおともだち、みんなも。
おやすみなさい、いい夢を見てね。
1947年アメリカで初版が発売されて以来、世界中で読みつがれているこの絵本。小さな子どもたちは、この月の光に照らされた、ちょっぴり不思議な雰囲気の「みどりのおへや」が大好きなのです。ぼうやを中心に、まだあかりのついた部屋の場面から始まり、視点は壁にかかった絵の中へ、さらにお部屋の反対側の方へと移り、椅子の上にはいつの間にかおばあさん。ぼうやは一人じゃ寝れなかったのかな……時計の針の経過を見て想像をしながら夜のひとときを過ごします。
そして、ぼうやと「おやすみの儀式」をしながら、だんだんと暗くなる「おへや」と一緒に気持ちのよい眠りへと誘われていくのです。
淡々と、でも耳心地のいい繰り返しの言葉を聞きながら、一方で眺めているお部屋の世界はどんどん広がっていき。暗くて怖いと思っていた夜の世界も、ちょっとだけ素敵に思えてくる……そんな風に、絵本を通して世界中の子どもたちが「おやすみの時間」と仲良くなっていったのかもしれませんね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
あなたにとって、たいせつなのは……?
スプーンは、手でにぎれて、そのくぼみで色々なものをすくいとる。
でも、スプーンにとって大切なのは、それを使うと上手に食べられるということ。
ひなぎくは真ん中が黄色く、くすぐったい香りがする。
でも、ひなぎくにとって大切なのは、白くあること。
雨にとって大切なのは?
草にとって、りんごにとって、空にとって大切なのは?
自分たちの身の回りのものと一つ一つ向き合い、
優しく語るその文章を読みながら、読者はゆっくりと思いをめぐらせます。
そしてその静かな時間を決して邪魔することなく、
それでも印象的で美しい絵が、私たちの形のない思考を助けてくれるのです。
1949年にアメリカで出版されて以来読みつがれているこの絵本。マーガレット・ワイズ・ブラウンとレナード・ワイスガードによって生まれたこの傑作は、内田也哉子さんの丁寧な翻訳により、日本でも幅広い年齢層の読者に愛され続けています。
子どもたちにとって、本当に大切なこと。
今、自分が本当に大切にしなくてはいけないこと。
何度だって確かめたい時。答えがわからなくなった時。
目の前にあるものをしっかり見て、耳をすましてみる。
誰かの声を聞いてみる。
この絵本を読んでみる。
すると、何回だって答えてくれます。
「あなたは、あなた。
あなたにとって、たいせつなのは……?」
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
ギフトにおすすめ「マーガレット・ワイズ・ブラウンの絵本4冊」
絵本ナビのクリスマス2021 特設ページ公開中!
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
撮影:所 靖子
この記事が気に入ったらいいね!しよう ※最近の情報をお届けします |