お笑い芸人・ギャグ漫画家・「日本絵本賞」受賞の絵本作家! “たなかひかる”の「シュール絵本」特集
子どもだけが読むなんてもったいない。大人も楽しい絵本の世界を、絵本トレンドライター・N田N昌さんが、独自の視点と「ゴイスー」な語り口でご紹介!
注目の新刊や作家さん、気になる絵本関連スポットなど、絵本のトレンド情報を大人に向けてお届けします。
”たなかひかる”の絵本「頭がよくならない」シリーズとは?
ナンセンス絵本というジャンルはございますが、シュール絵本というジャンルは、あまり目にいたしません。もし、シュール絵本というジャンルがございましたら、第一人者であることが間違いナッシングな、注目のこの方を今回ご紹介いたします。
シュールとナンセンス、何が違うのと聞かれると非常に難しく、そのあたりは、お手数をおかけいたしますが、ネット検索していただくか、今話題のChatGPTで聞いて頂ければと存じます。ただ、現状の使われ方としては、本来の意味ではなく、お笑いの場でよく使われている「シュール」の使われ方が主流になっているように存じます。「ベタ」の対極にあり、テーマが鋭角であったりするもの、こんなイメージでございましょうか……。
前置きが長くなりましたが、ここ数年、とにかく書評やレビューで、どの絵本作家さまよりも「シュール」という褒め言葉を集めていると思われるのが、お笑い芸人でギャグ漫画家、そして絵本作家の「たなかひかる」さまでございます。
昨今、絵本を出版されているお笑い芸人さまはたくさんいらっしゃいます。そんななかにあって、歴史のある「日本絵本大賞」をはじめここまで多くの絵本の賞を受賞されている芸人さまは、たなかさまの他にはいらっしゃらないのではないかと……。
お笑い芸人、ギャグ漫画家、絵本作家。京都府出身。グレープカンパニー所属。漫画家としての代表作に『サラリーマン山崎シゲル』、『私たち結婚しました』(小学館)、『つまねこ』(講談社)などがある。絵本に『ぱんつさん』(第25回日本絵本賞受賞)、『ねこいる!』(以上ポプラ社、第6回未来屋絵本大賞3位、MOE絵本屋さん大賞2022総合第5位、第3回TSUTAYAえほん大賞7位)、『おばけのかわをむいたら』(文響社、第13回リブロ絵本大賞入賞、MOE絵本屋さん大賞新人賞第3位/静岡書店大賞第2位)がある。漫画連載の他、広告、テレビ番組とのタイアップなど活動は多岐に渡る。
新刊『すしん』(ポプラ社)の帯には、「出した絵本の受賞率は驚異の100%!」の文字も踊っております。デビュー作の『ぱんつさん』(ポプラ社)は第25回日本絵本賞受賞、『ねこいる!』(ポプラ社)は第6回未来屋絵本大賞3位、MOE絵本屋さん大賞2022総合第5位、第3回TSUTAYAえほん大賞7位、『おばけのかわをむいたら』(文響社)は、第13回リブロ絵本大賞入賞、MOE絵本屋さん大賞新人賞第3位/、静岡書店大賞第2位)でございます。
あくまでわたくし個人の意見でございますが、たなかさまは子どもの感性、絵本のツボを心得ていらっしゃるのではないかと。子どもが大好きな擬音の使い方も秀逸でございます。どの絵本も子どものツボを鷲掴みでございます。
まだ、「たなかひかる」絵本、未体験の方はぜひ、この機会にご体験いただければと存じます。
デビュー作にして日本絵本賞を受賞、『ぱんつさん』
こちらが、デビュー作にして日本絵本賞を受賞した『ぱんつさん』。キャッチコピーは、「注意・この本では頭はよくなりません」でございます。
お話の中で起こっていることは、まさにシュールで奇想天外でございます。ただし、お笑い好き、ナンセンス絵本好きの大人が読むと、「やられた」感、満足感がございます。構成がゴイスーなのでございます。なんともいえない読後感を味わって頂けるのではないかと存じます。もちろん、お子様は大爆笑でございます。
「日本絵本賞」受賞コメントとして、「お笑いの戦い方は、思っていた以上にたくさんあるのではないか。そんな希望を込めての挑戦でした。内容はありません。メッセージ性も全くありません。ただ、子どもたちの柔軟な考えが育つ材料にちょっとでもなれたらいいなと思って作りました」とのこと。読者である子どもにしっかりと向き合っていらっしゃるのではないかと存じます。
思わぬところから、ただ、ただ、ねこが現れる、『ねこいる!』
こちらは、「頭がよくならない」シリーズ第2弾でございます。帯には「子供も大人も爆笑中」と記されております。こちらは、お笑い芸人の要素が強めの絵本かと。お笑い好きの方ならお分かりかと存じますが、フリップ芸(鉄拳、いつもここから、バカリズムさまなどでお馴染みのめくり芸)を見ている感覚で読み進められる絵本でございます。もちろん、絵本ならでは(子どもが大好きな)「探す・発見」の要素も、しっかり入っております。
シュールに振り切ったお寿司絵本『すしん』
そしてこちらが、2023年2月に出版されたばかりの新刊『すしん』でございます。「頭がよくならない」シリーズ第3弾でございます。ご存知の通り、「お寿司」絵本は子どもに大人気でございます。たくさん出版されておりますが、ここまでシンプルで、シュールに振り切ったお寿司絵本はないのではないかと存じます。
帯には注意書きとして「すすし、すしすしんすすすしすしん」(訳:これは、無意味をたのしむえほんです!)と記されております。中身は、擬音・擬態語(オノマトペ)のオンパレードでございます。それも、ほぼほぼ、たなかさまオリジナルのオノマトペでございます。作者は無意味を楽しむと書かれておりますが、ちゃんと物語があり、秀逸なオチもご用意されております。それでいて、超シンプルで無意味に楽しめるところが、この絵本の魅力ではないかと。
重ねて申し上げますが、ナンセンス好きのパパママは是非一度、ご体験いただければと存じます。ハマると最高なのでございますが、なかには、「意味不明…」で終わってしまう方もいらっしゃるかもしれません……、それがシュールの世界かとも存じます。
たなかひかるさんの絵本
N田N昌
絵本トレンドライター・放送作家・絵本専門士
絵本の最新情報を発信&大人絵本文化、絵本プレゼント文化の普及活動に日々努めております。
(画像は、イラストレーター・作家の網代幸介さんによる著者肖像画)
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