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絵本トレンドライターN田N昌の “大人だってもっと絵本読みたいの!”

大人もハマる! 言葉遊びが楽しくなる「石津ちひろ」絵本特集

子どもだけが読むなんてもったいない。大人も楽しい絵本の世界を、絵本トレンドライター・N田N昌さんが、独自の視点と「ゴイスー」な語り口でご紹介! 
注目の新刊や作家さん、気になる絵本関連スポットなど、絵本のトレンド情報を大人に向けてお届けします。

「ことばを大切にすることは、人生を大切にすること」

はやくち言葉、だじゃれ、回分、しりとり、…言葉遊び絵本は、たくさんございます。2月には「早口言葉絵本」、前回は「しりとり絵本」をご紹介しました。そして今月は、言葉遊びの女王、回文の女王と言われている絵本作家、石津ちひろさまを特集させていただきます。

石津 ちひろ

 

1953年愛媛県生まれ。早稲田大学文学部仏文科卒業。3年間のフランス滞在を経て、絵本作家、翻訳家として活躍中。『なぞなぞのたび』(フレーベル館)でボローニャ児童図書展絵本賞、『あしたうちにねこがくるの』(講談社)で日本絵本賞、『あしたのあたしはあたらしいあたし』(理論社)で三越左千夫少年詩賞を受賞。訳書に『リサとガスパール』シリーズ(ブロンズ新社)他多数。

石津さまといえば、詩人・絵本作家・翻訳家として数々の絵本を手掛けていらっしゃいます。と同時にゴイスーな数の言葉遊び絵本をだされております。

 

ボローニャ国際児童図書展賞を受賞している『なぞなぞのたび』(フレーベル館)など、なぞなぞの答えを絵の中から見つけだすまったく新しいタイプの「リドルブック」シリーズ。さらに、あいうえお作文、早口、しりとり、さまざまな言葉遊び絵本を出されています。

なかでも、ゴイスーなのは回文絵本でございます。回文とは、上から呼んでも下から呼んでも同じ文章になる言葉遊びでございます。この回文を作るのが天才的なのでございます。一度お会いしたことがございますが、その場で紙に書き込んだりせず、さらりと作られてしまうのでございます。しかも、「しかめっ面」でなく「ニコニコ笑顔」で作られるのでございます。講演会やイベントの際に、お客さんの名前で作られることもあるとか…。その特殊能力(?)の理由については、ご本人もよくわからないと話されておりました。

デビュー作は、圧巻の回文絵本!

そんな石津さまの絵本デビュー作が新装版も出ている『まさかさかさま 動物回文集』、回文絵本でございます。

石津ちひろ×長新太! ユーモアとエスプリに満ち満ちた回文絵本

まさかさかさま 動物回文集 新装版

 

きりんねていてねんりき――前から読んでも後から読んでもオ・ナ・ジ。ユーモアとエスプリに満ち満ちた回文に長さんの絵がおもいっきり楽しい。坂田おさむさん、中島らもさんが推薦する本。

この絵本の中には、なんと100個近い回文が登場します。それもただの回文ではございません。すべて「動物」を使った回文になっております。さらに、ゴイスーなのは、この絵本に載っていない回文もたくさんあったそうでございます。絵を担当された長新太さまがセレクトしてこの数になったとか。回文を作られた方がある方は、この数がいかにすごいかお分かりだと存じます。

そして、その回文に絵を付けられたのが、わたくしも大好きなナンセンス絵本のレジェンド、長新太さまでございます。一枚漫画(一コマだけの漫画)を目ざして漫画を描かれていた長さまが、回文の女王の石津さまの回文に絵を付けられているのでございます。見応え、読み応えがないはずはございません。超贅沢なコラボでございます。ちなみに、この絵本の中でわたくしが一番好きな回文は、「ちんぱんじいからかいじんぱんち」(チンパンジーから怪人パンチ)でございます。長さまの絵もとても笑えます。是非、ご体験くださいませ。

いっしょに作って「ことば」を楽しもう

石津さまの回文絵本をもう一冊。こちらもわたくしが大好きな人気絵本作家の高畠純さまとのコラボでございます。

読んで楽しい、見て楽しい!「ぞう」と「さる」の回文絵本

ぞうまうぞ・さるのるさ

 

上から読んでも下から読んでも、まったくおんなじ。思わず笑っちゃう、さかさことば遊び絵本。ぞうさんとさるさんのシンプルでユーモアたっぷりの楽しい回文絵本です。さあ、いっしょに作ってみよう。頭の体操です。

高畠さまといえば、ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞受賞など、数々の絵本の賞を受賞、ゴイスーに素敵な動物の絵を描くことでも有名でございます。そして実は、言葉遊びの絵本の絵もたくさん描かれております。そんな高畠さまと石津さんがタッグを組んだ回文絵本でございます。読んで楽しい、見て楽しいに決まっております。間違いナッシングでございます。ちなみに、こちらで登場する回文は、「ぞう」と「さる」だけ。にもかかわらず、お腹いっぱいになる程、回文をお楽しみ頂けます。「ぞうくんは ごはん くうぞ」「さるでも モデルさ」「さる バイトだと いばるさ」、…。遊び心満載の石津さんの回文に、高畠さまが、どんな絵を描かれているのか。是非、お二人の回文と絵をご体験くださいませ。

そして、回文絵本を楽しんでいただいた後には是非、親子でも回文作りを楽しんで頂けたらと存じます。日本語、言葉の面白さを親子でご体験くださいませ。

訳を読み比べて「ことば」を味わおう

石津さまといえば、翻訳家として数々の人気絵本も翻訳されております。代表作としては、今年の春、6年ぶりに最新作が出版された「リサとガスパール」シリーズでございます。

さらに、注目すべきは(もちろん、新作も注目でございます)、最新作と同時に出版された新訳版の「リサとガスパールのレストラン」でございます。

生まれ変わった新訳版でおくる「リサとガスパール」シリーズ

リサとガスパールのレストラン

うさぎでもない、犬でもない、とびきりキュートなパリの住人、リサとガスパール! 訳文を全面的に見直し、生まれ変わった新訳版でおくる人気絵本シリーズ。「リサとガスパール通信」つき。

「わたし、リサ。いま パパとママ、おねえちゃんのビクトリア、いもうとのリラ、それにガスパールもいっしょに、おばさんのうちに あそびにきているの。きょうは みんなで レストランに いくんだ。わくわくしちゃう!」

「リサとガスパールのレストラン」といえば、シリーズのなかでも人気の作品でございます。日本で出版された当時(2005年)のものは、子どもにも読みやすいように文章を短くするなど、翻訳にアレンジが加えられていたそうです。それに対し、今回の新訳版は、フランス語で書かれた原書に忠実に翻訳されているそうでございます。もちろん、翻訳者は両方とも石津さまでございます。

是非、親子で読み比べて楽しんで頂けたらと存じます。石津さまの翻訳の素晴らしさ、日本語の奥深さをご体験いただけるはずでございます。フランス語を嗜まれていらっしゃる方は是非、原書とも読み比べて頂ければと存じます。

https://www.ehonnavi.net/specialcontents/contents.asp?id=1654

先日、NHKの「ラジオ深夜便」というラジオ番組に石津さまがご出演され、番組のアンカー&聞き手の絵本専門士の資格を持つNHKアナウンサーの村上里和さまと絵本トークに花を咲かせておられました。そのときにも回文話(『まさかさかさま 動物回文集』)のお話をされていました。また、石津さまの詩(『あしたのあたしはあたらしいあたし』)についても、触れられました。

声に出して読みたい、言葉遊び満載の詩集

あしたのあたしはあたらしいあたし

アナグラム(つづり換え)や早口言葉、少女の気持ちをときに元気に、ときにナイーブにうたった詩など、著者の第一詩集。全28編。

お話の中で個人的に印象的だったのは、イジメのあったクラスで、『あしたのあたしはあたらしいあたし』の詩を何度も朗読していくうちに、イジメがなくなったというエピソードでございます。その際に、石津さまがおっしゃっていのが、「ことばを大切にすることは、友人、自分を大切にすること、人生を大切にすること」という言葉でした。とても心に刺さりました。

是非是非、石津さん絵本、そしてたくさんの絵本を通して、たくさんの素敵な言葉と出会って頂ければと存じます。

N田N昌

絵本トレンドライター・放送作家・絵本専門士
絵本の最新情報を発信&大人絵本文化、絵本プレゼント文化の普及活動に日々努めております。  

@NtaNmasa

 

(画像は、イラストレーター・作家の網代幸介さんによる著者肖像画)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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